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2008年度までに次世代省エネ住宅の比率を5割に高める

2004年07月11日

住宅産業向けの新聞を発行している、新建新聞社のホームページに、
国土交通省と経済産業省が2008年度までに次世代省エネ住宅の比率を5割に高める、という目標を両省で推し進める
という記事が載っていました。

次世代省エネルギー基準というのは、住宅の省エネルギーを促進させるために、住宅の断熱・気密・日射遮蔽の性能などを定めたもので、1999年3月30日に告示されました。

次世代省エネルギー基準では、冷暖房の負荷によって、日本を6つの地域に分類しています。
北海道のような寒い地域が(いち)地域、沖縄のように温かい地域は、VI(ろく)地域に分類されています。

東京、千葉、埼玉、神奈川、大阪、福岡など、日本の人口の 約8割(約1億人)が住む地域は、IV(よん)地域です。

新建新聞社の記事中には、
「国交省では、住宅性能表示制度を利用した住宅のうち21.5%が次世代省エネレベルの等級4を取得しており(2002年度)、その率が上昇傾向にある」
とありますが、そもそも、住宅性能表示制度を取得するのは比較的性能の良い住宅です。

詳しい統計を見た事はありませんが、日本全体では、次世代省エネ基準をクリアしているのは、新築の3割以下ではないかと思います。次世代省エネルギー基準の住宅を作る経験・知識を持った人は業界では比較的少数派と言えます。

次世代省エネルギー基準において、I地域や、II地域など寒い地域は諸外国の基準と比べるとほぼ同等あるいはそれ以上であり、少し厳し目の基準になっています。


しかし、IV地域以南の基準は、次世代省エネルギー基準を満たす住宅を常日ごろ建てている業者にとっては結構甘めです。つまり、慣れている業者にとっては、「余裕でクリアできる基準」という事です。

次世代省エネルギー基準になると、住まいの何が変わるか?
熱が逃げる割合が一番大きいのは窓などの開口部なので、サッシは複層ガラス(ペアガラス)が、今より一般的になるでしょう。アルミサッシよりずっと断熱性の高い、樹脂サッシの割合も増えます。また、断熱材の厚みも厚くなります

現在、関東近辺のマンションの断熱は、現場発泡の物が多く、壁面部分の断熱材の厚みは 25mmが一般的ですが、次世代省エネルギー基準を満たすためには、35mm以上必要です。

鉄骨造の場合、次世代省エネルギー基準を満たすためには、基本的に外断熱工法を採用することになります。この時の断熱材の厚みは、最も性能の高い種類の物を使っても、壁面で 50mm以上、屋根面で 115mm以上は必要です。(IV地域の場合)

戸建ての一般的な木造住宅の場合、断熱材にグラスウールの16kという種類を使うと、次世代省エネルギー基準を満たすためには、壁面には 100mmの厚みが必要です。(IV地域の場合) 北海道の場合には、150mm必要です。

「国が急に住宅の省エネルギーに本腰を入れはじめたのはなぜか?」と言うと、次世代省エネルギー基準を満たせない住宅が一般的であると、京都議定書で定めた温室効果ガスの排出量目標を達成出来ないからです。

新建新聞社の記事の中では、"状況次第では「次世代基準の義務化も選択肢としてはある」(国交省)"とあります。
次世代省エネ基準をクリアする性能の住宅であれば、結露に悩む事はほぼ無くなるでしょうし、冷暖房費用も大幅に削減出来ます。

私は、欧米のように省エネルギーの基準を法律で義務化した方が良いと思います。現在、高いからと敬遠される場合がある複層ガラスも、省エネ基準の義務化が進めば出荷量が増え、価格も安くなるでしょう。
今から10年後には、日本では複層ガラスが常識になっているかも知れません。

外断熱への流れ

2004年10月13日

先日、青森県が環境調和建築の指針を作り、その中に外断熱が入っていることを知りました。
建物のライフサイクルを通じて地球環境と共に人の環境に配慮した建物を作ろうという狙いです。

今後、断熱改修は各地で増えるでしょうし、このような指針を定めるのはいいですね。

長寿命化の項では、

  1. 階高・床面積・床荷重等にゆとりを持たせることにより、内部機能の変化に柔軟に対応可能で、維持管理が容易になるよう検討する。
  2. 耐久性・耐震性等に優れた建築材料・工法の活用により、建築物の長寿命化を図る。
  3. 維持管理・更新が容易である等の合理的耐久性を有する設備機器・システムの採用を図る。

というのがありますが、いいですね~。
まだ詳しい解説は読んでいませんが、読むのを楽しみにしてます。

他の都道府県でも、同じような指針を作ってくれるといいのですが。

奥が深い断熱。屋根断熱、天井断熱、桁上断熱、床断熱、基礎断熱

2004年10月17日

最近、高気密高断熱や、外断熱など断熱に関する言葉を耳にすることが多いかと思います。高気密高断熱と謳っていても、性能を見るとそうでないのもありますし、外断熱と言っていても怪しいものもあります。

残念ながら、現在の建築業界ではこの断熱に関する知識が浅い人の方が多いのではないでしょうか。実際の現場でも、断熱材が全て適正に入っているのはかなりまれでしょう。

断熱材はその取り付け位置によって、工法の呼び方が変わります。
よく聞くのは、外断熱と内断熱。

これが木造だと、外張り断熱、充填断熱(柱間断熱)になります。

細かい部位で言うと、

 ・屋根断熱
 ・天井 〃
 ・桁上 〃
 ・床  〃
 ・基礎 〃
など多種多様です。

屋根断熱 天井断熱
屋根断熱 天井断熱

床断熱 基礎断熱
床断熱 基礎断熱

住まいの温熱環境を向上させるには、単に断熱材を厚くしただけではダメで、断熱、防湿(気密)、換気、冷房、暖房などをトータルとして考えなくてはいけません。

また、結露やカビを生じさせない為の知識として、水蒸気の理論や微生物の理論が必要になります。
温度に関しては熱理論(熱工学)、換気に関しては換気工学や流体工学が、そして外気条件としての気象学、冷温の熱源としてエネルギー論など、幅広い知識が必要となります。

このように考えると、断熱というのは非常に奥の深いものです。

私は、断熱を学んでいくと、最終的には住む人の健康と地球環境としてのエコロジーにたどり着くと思います。

断熱性能や気密性能など、建物の性能を上げれば上げるほど、エネルギー密度の低い自然エネルギー(太陽熱・光や、地熱など)を利用しやすくなります。この辺りをシュミレーションするのはなかなか面白いのではないでしょうか。

現実的には、日本の建物の性能はあまり上がっているとは言えません。
建物の性能を上げるのは、小さい頃からエコロジーや地球環境について学び、コンピューターも比較的得意(各種シュミレーションに有利)な、今の20~30代の世代が頑張らなくてはいけないと密かに思っています。

音更町で見かけた断熱改修現場 オーストリア・ウィーンで見かけた断熱改修現場
北海道 音更町で見かけた断熱改修現場 オーストリア・ウィーンで見かけた断熱改修現場
(木造軸組工法。室内のリフォームと併せて、押出発泡ポリスチレン3種 50mm厚を外貼断熱工法で断熱改修。サッシも樹脂サッシへ) (かなり古いレンガ造の建物。レンガをモルタルで平らにした後、発泡スチロール 75mm厚を、湿式外断熱工法で断熱改修。固定はビス。赤いのは塗り壁の下地となる樹脂のメッシュ)

屋根だけ外断熱で、その他は内断熱のマンションは有効か?

2004年11月23日

最近、
「検討中のマンションは、(壁は内断熱で)屋根だけ外断熱なのですが、これってどうなんでしょうか?」
というご質問を何度かいただきましたので、お答えしたいと思います。

現在作られているマンションは、外壁部分は内断熱であっても、屋根は外断熱にしてあるのがほとんどです。

結論を言うと、現在一般的なマンションで、屋根だけが外断熱工法であっても、建物全体としては、あまり意味はありません。
理由は以下の3点です。

1.屋根の断熱材の有無・厚みが関係あるのは最上階の住戸だけ
2.屋根よりも、外壁の面積の方がずっと広い
3.根本的に、断熱材の厚みが薄い

それぞれの理由を、以下に書き出します。

1.屋上の断熱材の有無・厚みが関係あるのは最上階の住戸だけ

屋根の断熱が意味あるのは、最上階だけ マンションの屋上は、仕上げやその色にもよりますが、夏の時期には表面温度が60℃以上になります。80℃近くになることも珍しくありません。
この高い温度から建物を守るために断熱材を施工するのですが、屋根部分の断熱材の効果があるのは、最上階だけです。
最上階より下の住戸においては、屋根の断熱材が1メートルであろうと全く無かろうと、大きな差はありません。

例えば、5階建てのマンションにおいて、1~4階にお住まいの方にとっては、屋根の断熱が何であったとしても、住まいの温熱環境に大きな影響は与えないということです。


2.屋根よりも、外壁の面積の方がずっと広い

普通のマンションでは、屋根の面積よりも、外壁の面積の方が広くなります。これは、階数が増えれば増えるほど顕著になります。

幅20m、奥行き10m、階高3mのマンションがあるとします。それぞれ、階数が増えると外壁面積と屋根面積は以下のようになります。

部位 平屋建て 3階建て 10階建て 20階建て 30階建て
屋根の面積 200m2
外壁の総面積 180m2 540m2 1800m2 3600m2 5400m2
屋根:外壁 1:0.9 1:2.7 1:9.0 1:18 1:27

非常に簡単な計算ですが、10階建てでも外壁の面積は、屋根の10倍近くになります。
面積が狭い屋根だけ断熱材を厚くしても、面積が広い壁部分が低断熱では、意味がありません。


3.根本的に、断熱材の厚みが薄い

現在のマンションでは、屋根の断熱には35mmの厚みのポリスチレンフォームという断熱材を使うのが一般的です。この厚みだと断熱材の材料費は1平方メートル当たり1,000円程度で、建物全体からしたら、ほんのわずかな費用です。(ちなみに、一般的な床のフローリングは、1m2当たり数千円です。)

しかし、35mm程度の厚みでは断熱性能が足りません。
次世代省エネ基準をクリアするためには、最低でも80mm。理想としては、100mm以上が必要です。

断熱について分かっている設計者であれば、屋根の断熱厚みを35mmにするというのは到底考えにくいのです。
外断熱を採用する本来の目的は、高断熱化、つまり省エネルギーのためなのですから。(つまり、高断熱でなければ外断熱の必要は無いのです)

長くなりましたが、このような理由で、屋根だけ外断熱というのは建物全体としては効果は薄いと言えます。

大阪で外断熱マンションの打ち合わせ

2005年01月17日

大阪に行ってきました。

今回大阪に行ったのは、外断熱のマンションに関する打ち合わせのため。

その中で、あることを私が提案。その提案実現するかどうかは分かりませんが、実際に出来て、期待通りの性能が出たらかなり面白い物件になりそうです。

私の中では、特別不可能なことでは無いと考えているのですが、どうなることやら。いずれにせよ、外断熱でなければ実現不可能な方法です。

内断熱だ、外断熱だ といろいろ言われていますが、私が見ているのは外断熱を前提条件としたもっと先の話。
今回のケースが上手くいき、外断熱の普及に少しでも貢献できれば良いと思っています。

一戸建てで、断熱材の入れ忘れが多い個所とは?

2005年01月28日

一戸建てで、断熱材の入れ忘れが多い個所があります。

それは、床下点検口と小屋裏点検口の裏

この部分は、平面詳細図などを見ても、断熱の詳しい仕様が書かれていないことがよくあります。

布団に入っていても、足を出していると寒いのと同じで、家も部分的に断熱材が無いところがあると、全体として温かくはなりません。
点検口裏側の断熱材入れ忘れ
小屋裏の点検口を開いたところです。手で開いている点検口の裏側にも断熱材が必要です。

断熱がしっかりしているかどうかは、頭の中で家をいろいろな方向から切ってみて、断熱材を結んだ線が一筆書きできているかどうかで、判断できます。

一戸建ての内覧会の時には、ぜひチェックしてみてください。

京都で、外断熱の建物の冷暖房について打合せ

2005年02月03日

印南さんから連絡があり、急遽決まった京都での打ち合わせ。


のぞみに乗って約2時間半(雪のため到着は約10分遅れ)
地下鉄に乗り換えて、打ち合わせ場所の大学へ。

学生時代に、この大学の学生や先生と一緒に研究を行ったこともありますが、来たのは初めて。

打ち合わせの内容は、外断熱の建物の冷暖房について。


東京や大阪の暖房負荷というのは、スウェーデン(ストックホルム)と比べると4分の1程度しかない。しかし、暖房負荷が少ないといっても、東京や大阪でも暖房は必要で、必ず考えておかなければいけない。

日本には夏があり、30℃を優に超えるほど暑く、湿度も高い。エアコンは必須だ。賃貸のアパートでも、エアコンが無ければ借り手が遠のいてしまう。

スウェーデンやドイツ、ヨーロッパの多くの地域では、夏は湿気が少なく日本ほど暑くもないため、冷房はあまり深く考える必要がなく、冬をいかに快適に過ごせるかが重要になる。

夏の冷房(除湿)と冬の暖房。ここに、日本の建物の難しさがあると思う。
でも、その難しさを考えるのが面白い。

建物の外側の性能と、性能に投じるコスト。
建物の性能を上げたことによって、どれだけ冷暖房設備を小さくできるか?その設備の寿命は?メンテナンス費用は?交換費用は?実現可能なのか?
考えることはたくさんある。

最終的にどのような形になるか分からないが、現時点でも建物の性能は、一般的に建てられているものと比べ2倍以上の性能。
20年や30年ではなく、もっとずっとずっと先を見た建物です。

この建物がきっかけとなって、日本の住まいの品質がずっと高いものになったいいなと思っています。


袋入りグラスウール断熱材の施工方法

2005年02月19日

今日は品質チェックで、断熱材の確認。
前回伺ったとき、建物の精度を確認しましたが、良い精度に仕上がっていました。

ご依頼者と待ち合わせた後、どんな感じに仕上がってるかな~ と期待して行ってみると、あらら!断熱材の留め付け方法が全部間違っています。

誤った施工例 誤った施工例
柱の内側に断熱材が留め付けられています。 取り付け部分を拡大して見たところ。

日本で売られている一般的なグラスウールは、袋に入っており、両側に「耳」と呼ばれるビニールシートが2cmくらい出ています。正しい施工方法は、この「耳」を柱や間柱(まばしら)の上で重ね、ビニールシートを連続させなくてはいけません。
(ちなみに、このビニールシートは壁の中の結露を防ぐためにあり、防湿層(ぼうしつそう)といいます)

今回の物件では、グラスウールの「耳」が柱の中に入っており、ビニールシートが連続していませんでした。また、柱と柱の間隔に合わせて、グラスウールを切っていないため、室内側に膨らんでいました。

大工さんに、「これはマズいですよ。なぜこうしたのですか?」 と尋ねると、耳を重ねることも、その理由もご存知ない様子。しかし、このような事はたまにあること(本当はいけないのですが)なので、大工さんに正しい施工方法を伝えて全てやり直しです。

施工してあったグラスウールを全て取り外し、寸法を合わせながら再度取り付けていきます。
正しい施工にするため、私も服を着替えて工事に参加。

途中からは私だけでなく、ご依頼者も工事に参加。作業が終わる頃には、慣れた手つきで奇麗な仕上がりになっていました。
断熱材を取り付けるご依頼者
断熱材を取り付け直しているご依頼者(お施主さん)

 

断熱材修正前 断熱材修正後
before after
断熱材修正後 断熱材修正後
修正後の断熱材の様子1 修正後の断熱材の様子2

グラスウールのような繊維系断熱材の工事自体はそれほど難しいものではありませんが、本当に正しくやろうとすると、結構面倒です。現実的には、正しく施工されていない方が多いのではないでしょうか。

どんなにいい材料を使っていても、施工が間違っていては性能が100%発揮されません。
その材料にもいくつもの種類、メーカーがあり、工法も多数あります。家を作るというのは大変ですね。

長時間の工事、Sさん、お疲れ様でした!

北海道・札幌。大規模修繕で外断熱リフォームしたマンション。樹脂サイディング採用も。

2005年05月23日

今日は札幌で内覧会。これで、4ヶ月連続の北海道です。

始発の地下鉄に乗って、羽田空港へ。
いつもの朝は座れない電車も、始発ならラクラク座れます。

飛行機は予定通りに新千歳空港に到着。空港から現地まではあまり時間的に余裕がありませんでしたが、時間前に現地到着。
雨が降る中、早速チェックです。

お昼には、北海道らしいものを・・・と考えていましたが、時間があまりないことと、近くのお店がどこにあるか分からなかったことから、結局はコンビニ弁当。食べたらすぐに再開です。

小さな問題はいくつかありましたが、大きな問題はなく、5時頃にチェックは終了。地下鉄に乗って、札幌駅に向かいます。

電車に乗っている途中、ある物件のことを思い出して、札幌駅の1つ前で下車。(行こうと思っていたのですが、この時はすっかり忘れていました)

携帯で場所を調べ、警察署に寄って道を聞き、調査機材の入った重たいスーツケースを引きずりながら歩くこと、約30分。思ったより距離があり、途中で通り過ぎたのかと思っていたころ、ようやく現地に到着です。

外断熱改修マンション 到着したのが、右の建物。
明るい色と窓の感じから、一見ホテルのようにも見えます。
しかし、この建物は築31年、11階建て、約120戸の既存マンションです。
外壁に古さを感じないのは、昨年の末に大規模修繕が終わっているからです。
しかもその大規模改修は普通の外壁改修ではなく、「外断熱への改修」です。

開口部も断熱改修 開口部も断熱改修。既存サッシの外側にできる"新しい"外壁に、サッシを取り付けて二重サッシ化 この規模の大きさのマンションにおける外断熱改修は日本でも例がないため、建築や不動産の業界紙では幾度か取り上げられているマンションです。

外壁の仕上げは、塗り壁、樹脂サイディング、ガルバニウム鋼板の3パターン。
道路から塗り壁部分を軽く叩いてみると、コンコンと断熱材が入っている軽い音がしました。

樹脂サイディングは聞いたことがない方も多いでしょう。樹脂サイディングは、コーキング部分がないことからメンテナンスが少なくて済み、凍害に強く、軽く、施工しやすいというメリットがあります。
その利点から改修工事に向いており、個人的には、興味の高い外壁材です。

両側にあるのが樹脂サッシ 業界紙の記事によると、この大規模修繕は、外断熱改修をしない場合と比べて、3割弱のコストアップになったそうです。
しかし、外断熱にすることによって、建物の劣化そのものが遅くなるでしょうから、将来のメンテナンスや冷暖房費用の削減、快適性の向上など、長期的にみるとメリットは大きいでしょう。

大きなスーツケースを持って、建物の周りをいろいろ見ていた私の姿は、他からみるとちょっと怪しかったかも知れません。
すぐ近くに交番がありますが、職務質問はされませんでした。

建物を見て、フムフムと一人で納得したあと空港に向かいます。
帰りはいつも最終便でチケットを押さえていますが、できるだけ早い便に変更します。
しかし、8時30分発は満員。
平日なのになぜ?と思っていると、その次の便が機材の関係で欠航したからでした。仕方なく最終便の1本前の便に乗りこみます

雨の影響で東京の近くで多少揺れましたが何事もなく無事到着。
おつかれさまでした。

外断熱のマンションと内断熱のマンションを外からサーモグラフィカメラで見る

2005年06月13日

建物調査(インスペクション)で使う機材の中に、サーモグラフィカメラがあります。サーモグラフィカメラは、熱を可視化する装置です。

私がサーモグラフィカメラを初めて使ったのは、中学生の頃。
父親が仕事で使うために家にあったので、いろいろ遊んでいました。
しかし、装置は重たく、部品が外国製のために、操作画面は全て英語。起動するまでに時間がかかり、反応速度がとても遅くて残像がずっと残っていました。

さくら事務所にあるサーモグラフィは、導入時に最も新しいものでしたが、昔のものと比べるととてもコンパクト。反応速度がとても速くて、最初はビックリしました。
部品も国産のため、操作画面が日本語で分かりやすいのもいいですね。

内断熱マンションと外断熱マンション 事務所内では、
「イソップのおもちゃ」
と呼ばれるこのサーモグラフィカメラ。
おもちゃぶりを発揮すべく、冬の寒い季節にいろいろ撮っていました。

これは、いくつか撮った熱画像のうちの1枚。
ほぼ同時期に建てられた、普通の(内断熱)マンションと、外断熱マンションの外観です。撮ったのは、太陽の影響がない深夜です。

写真左側が、普通の内断熱マンション。右側が外断熱のマンションです。
右側の方が全体的に温度が低く、熱があまり逃げていないことがわかります。

今度は、真夏の暑~い時期に、いろいろ撮ってみようと思っています。

断熱のキホン。熱的に弱い部分を作らない

2005年08月29日

建物を断熱するときのキホンとは何でしょうか。

私は、「(熱的に)弱い部分を作らない」 ということだと思います。

家のカタログや広告を見ると、壁に断熱材を○○mm入れていますなどと書かれているときがあります。確かに、絶対的な性能として断熱材の厚みは必要です。

しかし、家の寿命を短くしてしまう 「 結露 」は、断熱材が最も厚い部分では起きません。

結露は断熱材が薄いところ、断熱材が入っていないところのような、熱的に弱い部分に起きます。断熱材の最大厚みは関係ないのです。

住まいの断熱性能というのは、図面の上で決まります。
実際の建物が、図面通りの断熱性能を持っているかどうかの簡単な計測方法は現在のところありません。

断熱性能というのは、図面の性能が最大で、実際の建物でそれ以上になることはありません。
逆に、施工がいいかげんだと、簡単に断熱性能は落ちてしまいます。

新築や既存(中古)の建物調査(インスペクション)に行ったとき、断熱材がしっかりと入っていない現場というのは、実はよくあります。

長持ちする住まいを作るためには、しっかりとした施工が欠かせませんが、残念ながら、現在の日本では、建物をつくる業界側が断熱に関して詳しいとは言えない状況にあります。

その一方、一部の先進的な業者さんは、世界の基準を超えるような住まいを作っています。

本当の技術を持った施工業者さんを探すためには、一般の方々がそれらを見抜く「目」を養う必要があるのです。

断熱工法の名称。内断熱と外断熱。中国で外断熱の高層タワーも

2005年09月02日

今回は、断熱の工法の名称をご紹介します。

▼鉄筋コンクリート造▼
 鉄筋コンクリート造(RC造)の建物には、2種類の断熱方法があります。

 1.内断熱(うちだんねつ)工法
 2.外断熱(そとだんねつ)工法

日本の鉄筋コンクリート造の建物は99%以上が内断熱工法で作られています。
イラストで示すと、次のようになります。

blog20050902-01
内断熱工法
   blog20050902-02
外断熱工法

だだし最近は、壁部分は内断熱工法であっても、屋根部分だけは外断熱工法とする場合がほとんどです。

建物全てを外断熱工法で建てられたマンションが最近日本で増えつつありますが、数としてはまだまだ少数です。

逆に海外(特にヨーロッパ)では、外断熱工法が主流です。

お隣の中国でも外断熱工法が採用されている建物が増えており、日本より進んでいるとさえ言われています。
(外断熱を採用した、33階建ての高層タワーもあるようです)

断熱工法の名称 その2 充填断熱、外張り断熱

2005年09月05日

▼木造・鉄骨造▼
 木造および鉄骨造の建物には、2種類の断熱方法があります。

 1.充填断熱工法 (じゅうてんだんねつ こうほう)
 2.外張り断熱工法(そとばりだんねつ  こうほう)

イラストや実例で示すと、以下のようになります。

充填断熱外張り断熱


充填断熱

充填断熱
外張り断熱

外張り断熱







充填断熱 外張り断熱







充填断熱 外張り断熱

木造や鉄骨造の場合には、柱と柱の間が空洞になるので、その間に断熱材を入れる、充填断熱工法が一般的です。

木造や鉄骨造で、断熱材を外に貼る方法は、一般的に外断熱工法と呼ばれていますが、厳密には外断熱ではなく外張り断熱工法と言います。

断熱性能を高めるため、充填断熱工法と外張り断熱工法を組み合わせる方法もあります。これを、付加断熱工法といいます。

ただし、単に組み合わせれば良いものではなく、何も考えずに付加断熱を行うと、壁の中で結露が生じる恐れが出てきます。

断熱工法の名称 その3 屋根断熱、天井断熱、桁上断熱、床断熱、基礎断熱

2005年09月09日

前回の充填断熱工法、外張り断熱工法は、主に壁部分の断熱材の取り付け位置を示した言い方です。

これとは別に、屋根や天井、床や基礎などの断熱材の位置によっても、言い方が変わります。

 屋根・天井部分では、

 ・屋根断熱 (やね だんねつ)
 ・天井断熱 (てんじょう だんねつ)
 ・桁上断熱 (けたうえ だんねつ)

 基礎・床下部分では、

 ・床断熱  (ゆか だんねつ)
 ・基礎断熱 (きそ だんねつ)

があります。
それぞれをイラストで示すと、以下のようになります。

天井断熱桁上断熱屋根断熱
天井断熱 桁上断熱 屋根断熱
 
床断熱基礎断熱
床断熱 基礎 外断熱
基礎 外断熱
基礎 内断熱
基礎 内断熱

現在、最も多い組み合わせは、天井断熱+床断熱です。

ある建物において、有効に使える空間(暑すぎたり寒すぎたりしない空間)が最も広いのは、屋根断熱+基礎断熱の組み合わせです。

天井断熱の場合には、小屋裏は屋外と同じ扱いとなり、冬は寒く、夏は暑くなります。
しかし、屋根断熱の場合の小屋裏は、屋外よりも室内に近い状態になります。

それぞれの工法には、メリット・デメリットがあります。
一つ一つご紹介していきたいと思っていますが、長くなってしまいますので、徐々に解説していきます。

今回は、これまでにご紹介したそれぞれの工法の名前と、断熱材の位置を覚えましょう。

外断熱のメリット

2005年09月12日

▼なぜ、欧米諸国は外断熱に進んだのか▼

ドイツやスウェーデンでは、新築の建物は、ほぼ100%外断熱工法です。
他の先進国でも鉄筋コンクリート造の建物は外断熱が主流です。

それではなぜこのように欧米諸国は外断熱に進んだのでしょう。

答えは、1973年のオイルショックにより、建物も省エネルギーが求められるようになったからです。

このように、外断熱にする目的は、省エネルギーが最初の目的です。
建物を省エネにするためには、断熱材を厚くする必要があります。

内断熱の場合、断熱材を厚くするとその分だけ室内が狭くなるので、断熱性能を高くするには限界があります。

外断熱は構造体の外側に断熱材が来るため、極端に言えば、1mの断熱材を使っても、室内は狭くなりません。
他にも多くの利点があるため、欧米は外断熱が主流です。

▼外断熱のメリット▼

一般的に言われる外断熱のメリットは次のようなものです。

 ◇1. 結露が起きない
 ◇2. 省エネルギー性能が高い
 ◇3. 温度変化が小さい
 ◇4. 建物が長持ちする

1.結露が起きない

外断熱では、外側のコンクリートの温度が室温に近くなるので、日本の多くの地域では結露はまずおきません。
よって、結露を原因としたカビの発生は起こりにくくなります。
アレルギーの原因は7割前後がカビやダニだとされているので、アレルギー症状の低減にも有効です。

2. 省エネルギー性能が高い

現在のマンションの多くは内断熱工法で、断熱材の厚みは2cm前後です。
これに対し、外断熱工法では10cm前後の厚みの断熱材を使います。

このため、壁面から逃げる熱や、壁面から入る熱は内断熱工法の建物よりもずっと小さくなり、省エネルギー性が高くなります。

外断熱工法を採用する建物では、窓に樹脂サッシ+ペアガラス+特殊膜コーティング(Low-E)を使うことが多いため、アルミサッシ+シングルガラスと比べて、窓から逃げる熱も3分の1位になります。

全体で見て、外断熱工法の建物は、内断熱工法の建物と比べ、大きな省エネルギー性能が得られます。
省エネルギーになるということは、地球環境にも優しいということです。また、住まわれる方の快適性も大幅に向上します。

3. 温度変化が小さい

コンクリートはたくさんの熱を蓄えることができます。

1m角のコンクリートの塊があるとします。
このコンクリートの塊が1℃冷えるとき、1戸75平方メートルのマンションであれば、8戸分の空気を1℃暖めることができます。

内断熱工法の場合は、この熱を蓄えやすい性質が悪い方に働きます。

冬の場合には、暖房を入れたとしても、外壁のコンクリートが冷えたままです。コンクリートを暖めるまでには、多くのエネルギーを
必要です。もし、暖めたとしても外側に断熱材がありませんので、熱は外側から逃げていく一方です。
また、夏の場合には、昼間に温められたコンクリートは、夜にまでその熱を蓄えています。

外断熱工法の場合、コンクリートが熱を蓄えやすい性質が良い方に働きます。
一度温められたコンクリートは、なかなか温度が下がりません。
そのため、外気の温度が急激に変わっても、室内の温度変化は小さくて済みます。

4. 建物が長持ちする

コンクリートは鉄とほぼ同じ程度、熱で伸び縮みします。

例えば鉄で出来ている電車のレール。夏にはレールが伸びるためレールとレールの継ぎ目にあらかじめすき間をあけています。
この継ぎ目を通るときに、「ガタンゴトン」という音がするのです。

一般的な建物では、夏の時期に屋根面の温度が70~80℃になります。
冬には外気温と同じくらいの温度に下がります。

日本の多くの地域は年間で70℃前後の温度差が建物の外側にかかるのが普通です。

1m幅のコンクリートがあるとします。
このコンクリートは、温度が10℃上がると、0.1mm伸びます。

長さ40mのマンションがあり、年間の温度差が70℃だとすると、単純計算で28mmも伸び縮みすることになります。

実際には鉄筋が入っているので、この数字通りには伸びませんが、伸びようとする力は、コンクリートの中に働く力(内部応力)となって、ひび割れやひびの幅が広がる原因となります。

外断熱工法の場合、構造体の年間温度差が70℃になるということはありません。せいぜい、10℃前後です。

このため、伸び縮みによる力は、ずっと小さくなります。
また、外断熱工法の場合、雨や雪、直射日光、酸性雨が構造体に直に接することがありません。

これらのメリットにより、建物の長寿命化が図れます。

外断熱のデメリット 1

2005年09月16日

★外断熱工法のデメリット

今回からは、鉄筋コンクリート造の建物に使われる、外断熱工法のデメリットをご紹介します。

ネット上や書籍に、メリット・デメリットはいろいろと書かれていますが、私なりの考えを重点的に書きたいと思います。

一般的に言われる外断熱のデメリットは次のようなものです。

 ◆1. 価格が高い
 ◆2. 施工が難しく、デザインが制限される
 ◆3. 地震のときに外壁が揺られて心配

◆1. 価格が高い ◆
確かに、今販売されている外断熱のマンションは、一般的な内断熱のマンションよりも価格が1~2割高くなっています。
価格だけ見ると確かに高いといえます。

▲私なりの考え▲
全体価格だけを見ても、その建物が高いかどうかは分かりません。中身を見る必要があります。
車でも、軽自動車と高級車を値段だけで比較はできませんよね。

【断熱材の厚みの比較】
断熱性能を見てみると、一般的な内断熱マンションの断熱材は現場発泡ウレタン20mm程度です。
それに対して外断熱マンションではグラスウール125mm、あるいは発泡断熱材70mm程度です。断熱性能で比較すると、2倍弱~4倍弱の性能差があります。
断熱材が厚くなる分だけ、壁から逃げる熱も少なくなります。

あまり言われていませんが、現場発泡ウレタンは経年劣化が大きい種類の断熱材ですので、10年後の性能を比較すると、性能差はさらに大きくなります。

ポイント:外断熱の壁の断熱性能は、内断熱の2倍~4倍ある。

【断熱材の施工範囲の比較】
寒いときには、服を厚めに着ます。
でも、どれだけ温かい服を着ていても、足が裸足だったり、半そでだったりすると寒いですよね。寝るときも、どれだけ温かい布団だったとしても、足が出ていると寒いです。

実は、現在の内断熱マンションでは、場所や方角によって断熱材を薄くしたり、施工を省くケースが多々あります。これは、方角によっては、「結露しない」と考えられているからです。
これは、断熱に対する意識・目的・視点が、「結露防止」でしかないからです。

外断熱工法の場合、方角に関わらず建物をぐるりと覆ってしまうのが普通です。断熱の目的が「結露防止」よりずっと高いところにあるため、方角によって断熱を省くということはありません。

ポイント:現在の内断熱では、方位によって断熱を省く時もある
     外断熱では、建物を断熱材でぐるりと囲っている

【開口部の性能の比較】
一般的なマンションでは、窓の枠はアルミ枠です。ガラスがペアになっているところもありますが、シングルのマンションもまだたくさんあります。

しかし、窓枠がアルミだと、そこで結露が生じる可能性があります。
また、窓全体でみたとき、ガラスがペアであっても、枠がアルミの場合には、大きく断熱性能が向上するわけではありません。

ペアガラスであった場合でも、中の空気層の厚みによって性能が変わります。
空気層12mmのものが理想です。12mm未満のものは、12mmのものと比べ、1割弱断熱性能が低下します。

ペアガラスを採用しているマンションでも、多くはアルミサッシ+空気層6mmのものがほとんどです。

外断熱工法をよく理解している業者さんであれば、窓には樹脂枠+ペアガラスを使います。空気層は12mmのものが普通です。
また、ガラスにも熱が入ったり出たりしにくい特殊なコーティング(Low-Eコーティング)を施してあることもよくあります。

断熱性能では、

 ・ペアガラス(空気層 6mm)+アルミサッシ と、
 ・ペアガラス(空気層12mm)+樹脂サッシ+ Low-E

では、2倍程度の性能差があります。シングルガラスのアルミサッシと比べると約3倍の性能差です。

ちなみに現在のところ、価格はアルミと比べて樹脂の方が高くなります。

ポイント:開口部の性能は、シングルガラスのアルミサッシと比べると約3倍。
     樹脂サッシはアルミサッシと比べて価格が高い。

【耐用年数の比較】
構造体を断熱材でぐるりと囲む外断熱工法では、コンクリートの寿命が伸びるとされています。

内断熱マンションが3500万円、耐用年数50年、
外断熱マンションが2割高で4200万円、耐用年数が1.5倍に伸びて、75年だと仮定します。

単純計算ですが、耐用年数が20年延びただけで1年当たりの費用は、外断熱工法の方が15万円近く安くなります。

50年後に建て替えになった場合、当初の差額700万円程度では到底立て替えることはできません。

各所でもっと具体的で細かいな計算がされていますが、長期的に見て外断熱工法の方が安上がりになるのは間違いないでしょう。

先に述べたように、外断熱工法のマンション価格を一般的なマンションと比べてみると、現在は1~2割高くなっています。
しかし、各部の性能を取り上げてみると、性能の差は数倍になっているのです。

外断熱工法が採用しているマンションの価格が高いのは、内部の表面的な仕様にお金をかけているためではありません。

建物の本質的な、「構造体を含む外周り」にお金をかけて、高い性能を持たせているからです。

外断熱のデメリット 2 デザインが制限されると言われるが・・・?

2005年09月19日

◆2. 施工が難しく、デザインが制限される◆
 外断熱工法は施工が難しいので、デザインが制限されてしまう。

▲私なりの考え▲
日本の場合、断熱の施工によってデザインが制限されるというより法律によってデザインが制限されるケースの方がずっと多いといえます。

今お住まいの地域や、会社近くの建物の上部を見てください。
建物の上部が斜めになっている建物がありませんか?それらは、大抵、斜線制限というものに抵触しないようにするため、そのような形になっています。

そもそも、日本に外断熱では施工できないデザインのマンションがどれだけあるでしょう。
そのほとんど全ては、外断熱で十分施工可能です。

ヨーロッパは外断熱が主流ですが、ヨーロッパの建物のデザインは日本に比べて劣っているのでしょうか?私はそうは思いません。
建物の集合体である街並みを見た場合、日本の多くの地域の街並みは貧弱に感じてしまいます。また、日本の場合、どの都市に行っても大きな違いを感じることができません。

オーストリアの建築家、フンデルト・ヴァッサーをご存知でしょうか。
フンデルト・ヴァッサーの信念は、「自然に直線はない」で、本人が設計した建物は曲線が多く使われています。
しかし断熱には、当然のように外断熱工法が使われています。

ウィーンにある、フンデルト・ヴァッサー設計の集合住宅
blog20050919

このように、外断熱でも曲線のデザインは可能ですし、素敵な街並みをつくることも十分可能です。
問題は、「作り手の意識・やる気」です。

個々の施工者の技術をみると、ヨーロッパの施工者と比べて劣っているとは思いません。
むしろ、日本の多くの施工者の方が細かい気配りをしていると思います。

 現在建てられているマンションで、内断熱でないと施工できないデザインというのは、ほとんど無いと言ってもよいでしょう。

外断熱のデメリット 3 地震の時に心配?

2005年09月23日

◆3. 地震のときに外壁が揺られて心配 ◆
確かに、外断熱では外壁の持ち出しの長さが長くなります。
その為、地震の時に心配という懸念です。

▲私なりの考え▲
この問題に対しては、昔から取り付け金物を作っているところなどは既に対応していると言っていいでしょう。
今日では、全国各地のゼネコンや研究所に振動実験台があり、実際に振動実験を行ってデータを取っているところもあります。

地震対策に対しては、建築の「エンジニア」が対応する課題です。
しかし、この課題はそれほど難しいものではありません。

他の業界のエンジニアを見てください。

 ・宇宙にロケットを飛ばす
 ・時速 500kmで走るリニアモーターカーを作る
 ・ハイブリッドカーを作る
 ・カメラ付き携帯電話を作る
 ・デジタルカメラを作る
 ・カラープリンタを作る

パッと考えただけで、難しそうな課題です。
いずれも、「地震で外壁が落ちないようにする」という課題と比べて、高い精度、高い技術、理論を必要とします。

他の産業のエンジニアは、外壁支持の課題よりも、ずっと難しい課題に取り組んでいます。ひょっとしたら、このブログをご覧になっている方の中にも、エンジニアの方がみえるかも知れません。

私は建設業界のエンジニアが劣っているとは考えていません。
私が知っている、免震装置、制震装置、超高層ビルを研究・設計する大手ゼネコンの研究者は、凄い人ばかりでした。

大手ゼネコンの研究所であれば、この程度の問題はすぐに解決してしまうでしょう。
外壁支持の問題は、それほど大きな課題ではありません。

外断熱のデメリット 4 ~高い視点で見ると、外断熱しか選択肢は無い~

2005年09月26日

▼外断熱のメリット・デメリットは、作り手の視点で変わる▼
長くに渡って書いてきましたが、外断熱のメリット・デメリットは、作り手の意識・視点で変わります。

「結露防止」という視点で比べるなら、内断熱+折返しでも良いのです。
"結露が起きない範囲だから"といって、方角によって折返しを省くのも手段の1つだと思います。
ただし、今日建てられている建物において、日常生活をしていて建物に結露が出ないというのは、世界的に見て当然のこと。
外気温がマイナス30℃になる地域ならまだしも、日本の大多数が住む地域では、氷点下になる日さえ少ないのです。

外断熱と内断熱には、断熱材の物理的な位置によって超えられない壁があり、利用できる点、メリットが異なります。

blog20050926-01

 ・大きな省エネ  (内断熱で断熱厚みを増やすと部屋が狭くなり、現実的に高断熱は難しい)
 ・蓄熱容量の利用 (内断熱では躯体外側の熱容量を利用出来ない)
 ・建物の長寿命化 (内断熱では熱による躯体の伸縮みは防げない)
 ・地球環境の保護 (建物の長寿命化による、ライフサイクルコストの減少)

などという、より高い視点で見た場合には、外断熱しか選択肢がなくなります。

外断熱に本気で取り組んでいる人にとっては、「結露防止」というのは目的ではなく、当然のことであり、単なる通過点です。

モデルルームなどに行った場合、外断熱のメリット・デメリットを聞いてみてください。
その答えによって、どの程度の視点で「断熱」を考えているか、分かるかも知れません。

外断熱のこれから。外断熱の特許を申請しているゼネコン

2005年09月30日

▲外断熱のこれから ▲

内断熱工法と比べて、5%前後しか施工費がアップしていない外断熱マンションの話も耳にするようになりました。

私はたまに、特許庁のページで「外断熱」を検索し、各社の動向を調べています。

 独立行政法人 工業所有権情報・研修館:特許電子図書館サービス一覧
 http://www.inpit.go.jp/info/ipdl/service/
   「特許・実用新案の検索」から調べられます

今、外断熱のキーワードで検索すると、ここ数年のうちに大手ゼネコン・ハウスメーカーが、外断熱に関する特許を複数出していることがわかります。

その中には、要約だけを見ていても、魅力的なものがいくつもあります。
対外的には現在外断熱を行っていないところでも、内部的には着々と準備を進めているようです。

上記のサイトから見れるものの中には、

「断熱性能に優れ、グレードの高い石貼り仕上げを超高層建物にも支障なく適用可能な外断熱構造の外壁を容易に施工でき、外観やデザイン上の制約を受けることもない有効な外装パネルを提供する」

としているものもあります。

多くの購入予定者が外断熱工法の建物を求め、大手ゼネコンが採用に踏み切ると、他のゼネコンも一気に続くのではないでしょうか。

断熱方法 充填断熱工法

2005年10月31日

▼充填断熱工法 (じゅうてんだんねつ こうほう)▼

長かった断熱材のお話も終わり、今回からは断熱の工法についてです。

日本の木造および鉄骨造の建物で最もよく使われる断熱工法が

 充填断熱工法(じゅうてんだんねつ こうほう)です。
 柱間断熱工法(はしらかんだんねつ こうほう)とも呼ばれます。

日本の一戸建てのほとんど全ては、この断熱工法になります。

▼充填断熱工法とは?▼
鉄筋コンクリート造の場合、柱と柱の間には、コンクリートの壁があるのが普通ですが、木造や鉄骨造の場合には、柱と柱の間は一般的に空洞になります。

その空洞の中に、断熱材を詰め込む(充填する)のが、充填断熱工法です。

断熱材には、グラスウールやロックウールのような繊維系断熱材がよく使われます。

▼充填断熱工法のメリット▼
一般的に言われている、充填断熱工法のメリットは以下のようなものです。

 ◇1. 費用が安い
 ◇2. 変わった形状にも対応しやすい
 ◇3. 断熱材の厚みを厚くしやすい

◇1. 費用が安い
これは、工法というよりも使われる断熱材の種類によるものと言えますが、安価な繊維系断熱材がよく使われることにより、断熱に要する費用は安く済みます。

◇2. 変わった形状にも対応しやすい
充填断熱工法で最も使われる繊維系断熱材は曲げることが可能ですので、変わった形状にも対応しやすいとされています。

◇3. 断熱材の厚みを厚くしやすい
一般的な木造住宅の柱の太さは10.5cm~12cmです。
木造住宅での外張り断熱では、その支持方法から厚みに限界があるとされています。
充填断熱工法では、柱などの太さを変えることで、断熱材の厚みを容易に変えることができます。ツーバイフォー工法の場合、幅の広い規格材があるため、在来工法と比べて、より容易に断熱厚みを変更できます。

次回は充填断熱工法のデメリットについてです。
特に、実際の現場での問題点を指摘したいと思います。

断熱の方法 充填断熱工法 デメリット(問題点)

2005年11月04日

▼充填断熱工法のデメリット▼
充填断熱工法のデメリットと題しましたが、デメリットというよりも、実際の現場での問題点をお伝えしたいと思います。

▼充填断熱工法でよく使われるグラスウールには2種類ある▼

 充填断熱工法でよく使われるグラスウール・ロックウールには、大きく2種類あります。

 ・(ビニール)袋入りグラスウール
 ・裸のグラスウール

実際の写真はこちら

blog20051105-1 blog20051105-2
袋入りグラスウール 裸のグラスウール

▽袋入りグラスウール▽
袋入りグラスウールは、グラスウールがビニール袋に入っているものです。
日本の多くの地域で、グラスウールといえば、この、袋に入っているものが多く使われています。

ちなみに、このビニールの表側は壁の内で結露が起きないようにするためにあります。
裏面のビニールは施工がしやすいようにあるもので、小さな穴が開いています。
実は、裏面のビニールは無くてもかまいません。

▽裸のグラスウール▽
裸のグラスウールはその字の通り、袋などに入っていないグラスウールです。
海外では、袋に入っていない裸のものが主流です。

この裸のグラスウールを壁の中に押し込んだだけでは、壁の中で結露してしまうので、ビニールシートのように水蒸気の通りにくいものを、室内側に取り付ける必要があります。

ちなみに、一戸建てにおいて、高断熱を売り物にしている業者さんは、裸のグラスウールを好んで使います。
柱などにすき間なく入れることが出来るからです。

断熱の方法 充填断熱工法 デメリット(グラスウール、ロックウールの幅)

2005年11月07日

▼袋入りグラスウールのサイズ▼
木造軸組工法において使われるグラスウールで、一般的なサイズには以下のものがあります。

 幅 : 395mm、 430mm
 高さ:1370mm、2740mm

注目すべきは幅が2種類あることです。これはなぜでしょうか?

答えは、間柱~間柱、柱~間柱の大きく2つの寸法があるからです。

しかし、木造在来工法では、柱の大きさが 3.5寸(105mm)と、4.0寸(120mm)があるので、厳密に言うと、寸法パターンは以下のイラストのものがあります。

柱間の距離

上の例では、間柱(まばしら)を、30mmのもので書いていますが、間柱に、他の寸法を使う業者さんも多くみえます。その場合、柱と間柱の寸法も変わってきます。また、135mmや150mmの柱を使う業者さんがみえますが、その場合にも柱の間の寸法は変わります。

イラストを見ると、袋入りグラスウールの一般的な寸法、395mm、430mmでは過不足が出ることが分かります。

柱~柱が、455mm間隔で立つという、比較的少ないケースの場合には、グラスウールを少し切らないと、上手く納まりません。

▼工事現場でチェックしてみよう▼
袋入りグラスウールを壁の断熱材に使っている物件を見る機会があったら、430mmのものと、395mmのものの2種類が現場に置いてあるかご確認ください。

実は、430mmの寸法しか置いていない(仕入れていない)ケースが少なくないのです。この場合、柱と間柱の部分においては、グラスウールが若干余ってしまいます。

この場合、しっかりと寸法を合わせて切ってあれば良いのですが、押し込まれているケースがよくあります。
これでは、パンフレットに書かれている断熱性能は得られません。

断熱の方法 充填断熱工法 伸び縮みするグラスウール

2005年11月11日

▼伸び縮みするグラスウール▼
前回、断熱材の幅には2種類あるとお伝えしました。
一般的なグラスウールは、厚み方向には伸び縮みしますが、幅方向には伸び縮みしません。そのため、切り揃えたり、断熱材を使い分ける必要があるのです。

だったら、断熱材そのものが伸び縮みすれば良いのではないか?と思いませんか。
ここ最近、そのようなグラスウールが商品化され、販売されています。

私の知る限りでは、現在日本で一般販売されており、幅方向に伸び縮みするグラスウールは、以下の2つだけです。

 1.パラマウント硝子工業(株) Sun-e
 2.(株)マグ マグルージュフレックス

1.のメリットは、ビニール袋に入っていることで、防湿層が省略できるため、施工が簡単ということです。グラスウールの性能は、16k相当です。

2.のメリットは、1.の物と違い、グラスウールが、高性能16kであることで、断熱性能的にはワンランク上の24k相当となります。ただし、ビニール袋に入っていない、裸のグラスウールなので、別途防湿層が必要となります。
しかし、普段から防湿層を別に施工している、厳寒地の工務店であればデメリットではないでしょう。

いずれも、一般にはあまり知られていないグラスウールですが、施工性は良いと思います。

断熱の方法 充填断熱工法 断熱材の高さ

2005年11月14日

▼高さのサイズも、2種類ある▼

前々回、「袋入りグラスウール」には、一般的な幅のサイズに、2種類あると書きました。

それぞれ、

 ・柱 ~間柱用 (395mm)
 ・間柱~間柱用 (430mm)

 の2つです。(メーカーにより若干のサイズの違いがあります)

幅のサイズに対し、上下(高さ)のサイズには、次の2種類があります。

 ・1370mm
 ・2740mm

1370mmの倍は2740mmですから、小さい方のサイズを2つ重ねると、大きい方のサイズになることが分かります。

▼梁の高さによって、床からの高さが異なる▼
一般的な建物では、1階の床から2階の床までの高さ(階高といいます)は、同じです。

木造に限らず、梁の高さはその上部の荷重(重さ)によって、異なります。
荷重の大きいところ(重さの負担が大きいところ)は、梁の高さが高くなります。
逆に、荷重の小さいところは、梁の高さが低くて済みます。

1階床から、2階床の高さ(階高)は、梁の高さに関係なく、全て同じです。
しかし、梁の高さがそれぞれ異なるため、床から梁下までの高さは、当然ながら場所によって違います。

床面から梁下までの高さの違い

上の写真では、赤色の矢印の部分が最も低く、次に緑色、そして青色の矢印の部分が最も高くなっています。

木造在来工法では、一般的な梁の高さは、
150mm、180mm、210mm、240mmのように、30mm(3cm)ごとになっています。

断熱材のサイズは2種類しかありませんが、梁の高さは30mmごとに様々なサイズがありますから、断熱材をピッタリ入れるためには、切ったり繋げたりする必要があることがお分かりいただけると思います。

断熱の方法 充填断熱工法 施工の問題点(グラスウール、ロックウール)

2005年11月18日

▼実際の現場で見た、施工の問題点▼

実際の現場では、梁と断熱材の間に、1cmくらいのすき間があることは、珍しいことではありません。
以下に、実際の現場で見た施工の様子を示します。

断熱材を押し込んである例

断熱材の高さが長いにも関わらず、そのまま押し込んでいる例です。断熱材の取り付け方法も間違っています。

; よく見ると隙間がある例

しっかり入っているように見えますが、よく見ると木材と断熱材の間に1cmくらいのすき間があることが分かります。

断熱材の長さが全然足りない例

あらら。
目で見るだけでも、5cm以上断熱材と梁の部分にすき間があることが分かります。これでは、断熱性能はありません。断熱材の留め付け方も間違っています。

 ・10kg/m3くらいの軽い断熱材を使っている場合
 ・断熱材の厚みが、柱の幅よりも薄いものを使っている場合

には、しっかりと入れにくいことが多いようです。

グラスウールでも、16kg/m3以上の、しっかりした重さ(密度)のものを使い、柱の太さと同じくらいの厚みを持った断熱材を使うと、すき間が出来にくくなります。わたあめのよう物より、ある程度しっかりした材料の方が作業性が高いということです。
また、前回ご紹介した、幅方向に伸び縮みする断熱材を使うのも良いですね。

断熱の方法 充填断熱工法 現場での施工確認方法

2005年11月21日

▼工事現場でチェックしてみよう▼
前回は、現場に入っている断熱材の幅の確認方法を書きましたが、今回は上下方向(高さ)の確認です。

現場に入ることが出来るのなら、確認方法はカンタン。
断熱材の上下にすき間が出来ていないかを確認して下さい。

断熱材を上下で繋げているときは、その間にもすき間が出来ていないかを確認して下さい。
また、そのつなぎ目に、防湿層(袋付きグラスウールの時は、表側の袋)が重なっていることをご確認ください。
防湿層が途切れているときは、補修テープで補修する必要があります。

断熱の方法 充填断熱工法 ホールダウン金物など、金物への影響

2006年01月09日

今日は、学術的になりますが、日本建築学会の全国大会で発表された論文から、金物の影響に関するものを。

「木は断熱性能がある」といって、見過ごされることが多い、金物部分の熱橋に関するものです。

日本建築学会大会学術講演梗概集(北陸) 2002年 8月 pp325-326
木造軸組の断熱工法における構造用金物等の影響
(財)建材試験センター 中央試験所 藤本哲夫、黒木勝一

この研究では、袋入りおよび裸のグラスウールを使ったとき、ホールダウン金物や羽子板ボルトと呼ばれる金物に結露などが生じないかを調べたものです。

問題点の検討として挙げられているのは以下の通り(原文のまま)


(1)
仕口金物でも、羽子板ボルトのようなあまりかさばらないものは問題とならないが、ホールダウン金物のようにかさばるものは、その部分にきちんと断熱材を充填することが難しく、熱的弱点となりやすい。
今回の実験では、床下空間の温度は実際の床断熱の場合よりも高くなっている。これを考慮すると、壁内への湿気の侵入があれば、金物部分やその周囲部分での結露が懸念される。

(2)
北海道以外では、施工性から袋入り断熱材が使われることが多いが、外気側の穴あきフィルムは穴以外の部分での透湿抵抗が大きく、GW内部に湿気が侵入した場合、その部分で結露を起こしやすいと考えられる。
実験でも裸品では結露の発生は見られず、袋入りの断熱材だけに結露が発生している。これは、防湿層を別張りしても同様の結果となっており、何らかの原因でグラスウール内に湿気が侵入した場合結露の危険性が高い。製品JIS規格でも外気側フィルムの透湿度の規定はなく、検討が必要であろう。

(3)
通常、柱-間柱間隔は390mm程度であるが、GW製品としては430mm幅のものが多い。このため、施工要領等では幅を柱間隔に合わせて40mm程度の幅詰めをするように指導しているが、実際の現場で幅詰めを行っている所はさほど多くはないと予想される。
このため、図2で示したような空隙ができる可能性がある。これにより断熱性能が大きく低下するとは思われないが、場合によっては不具合となることも考えられる。


(3)に書かれているように、確かに実際の現場でグラスウールをしっかり幅詰めしている現場は多くありません。
最近は、幅方向に伸び縮みするグラスウールがありますので、そのようなグラスウールを使うことで、簡単にしっかり施工することができるでしょう。

結露に関して、一般的な金物は錆び止め処理といっても簡単なものしか行われていないのがほとんどです。安全側の対策としては、問題点の検討としても書かれているように、丁寧に裸のグラスウールを詰めて、防湿層をその上に取り付けるか、外張り断熱併用で壁内の温度を上げることが考えられるでしょう。

断熱の方法 充填断熱工法 施工の問題点 天井断熱

2006年01月13日

▼天井部分の断熱▼
今回は、天井部分の断熱に関してです。

日本で建てられている一戸建ての多くは、天井部分に断熱材があります。
また、その断熱材は、壁に使われているものと同じ物が使われる場合がほとんどです。

さくら事務所では、建物調査(インスペクション)で日々建物に接しており、一戸建てで小屋裏の点検口があるときは、そこから小屋裏を確認します。

この時、小屋裏の断熱材がキチンと入っていないケースがよくあります。
以下は、現場で見た良くない施工例です。いずれも、カタログ通りの断熱性能を発揮するのは難しいでしょう。

断熱材が配線の上になっている例

断熱材が、配線の上になっています。このすき間から熱が伝わってしまいます。


長さが調整されていない例

長さを切りそろえないと、すき間が出来てしまいます。入れれば良いという訳ではありません。


ぎゅうぎゅう詰め

そんなに無理して押し込まなくても・・・。切ったらしっかりと納まります。


押し込みすぎ

かなり無茶してますね。断熱材が踊っているようです。

▼天井部分の断熱は、なかなか大変▼
天井に使われている断熱材は、壁と同じ物が使われていることがほとんどだと、先ほど書きました。

一般的な断熱材(袋入りグラスウール)は、柱と柱の間隔で長さが決められています。

そのため、天井部分に使う場合には、長さや幅の調整が必要となり、切ったり繋いだりする必要があります。

一戸建ての天井は、2階の梁から天井を「吊るして」あります。

吊るしている部材はそれほど太い材料ではないので、大人が乗ると、ミシミシ!と音を立てて壊れてしまうでしょう。(実際、私もあやうく落ちかけたことが・・・)

そのため、断熱材を敷きこむ作業は、梁の上から行うことなります。断熱材を敷きこむときには、天井を吊っている木を避けながらの作業です。
小屋裏の高さが高い場合は動きやすいですが、小屋裏が低いときの作業はとても大変です。現場では、なかなか図面通りにはいかないものです。屋根から釘が飛び出していることもあり、頭上にも気をつける必要があります。

夏の時期には、小屋裏はサウナのように暑くなることもありますから、天井の断熱材の工事はなかなか大変な作業ですよ。

断熱の方法 充填断熱工法 天井のブローイング

2006年01月16日

▼ブローイングなら、天井断熱はカンタン▼
北海道の天井断熱としてよく使われる方法に、ブローイングがあります。

これは、クルミ状やサイコロ状にした断熱材(一般的にはグラスウールやセルロースファイバー)を、専用の機械で吹き込む方法です。

ブローイングのメリットは、以下の点があります。

 ・断熱材のすき間ができない
 ・施工がカンタン、確実
 ・厚みの変更が容易
 ・既存住宅の断熱改修にも使える

ブローイングによる施工例
ブローイングによる施工例
ブローイングによって、天井断熱している例です。ブローイングを行うと、すき間なく断熱材を詰めることができます。

厚みの確認 防湿層の確認
ブローイングの厚み確認用の定規です。この物件では、200mmの厚みがあります。 結露防止のための、防湿層(ビニール)は、断熱材の下(天井の上)に敷いてあります。

鉄骨のプレハブメーカーでも、セルロースファイバーの天井ブローイングを標準仕様としているところがあります。

断熱の方法 充填断熱工法 桁上断熱

2006年01月20日

▼桁上断熱にすれば、施工が簡単▼
天井面に断熱する方法の1つに、桁上断熱があります。
これは、断熱改修で使われることもあります。

天井断熱 桁上断熱
blog20060120-01 blog20060120-02

桁上断熱では、桁の上に合板などを敷いて、その上に断熱材を敷きこみます。
桁の上は、天井を吊る木やダウンライトなどがありませんので、断熱工事が少しラクになります。

ただし、桁の上を渡す合板の費用がかかったり、断熱材の最大厚みが減るなどのデメリットもあります。

桁上断熱にもう少し費用を加えると、屋根面に断熱をする、屋根断熱も採用できます。
屋根断熱の場合、小屋裏も室内の温度に近くなるため、有効に使える家の広さが広くなります。

海外のドラマや映画を見ていると、屋根裏部屋で過ごすシーンが出る場合がありますが、それらは全て屋根断熱です。
天井断熱では、屋根裏は外部と同じ扱いになるので、冬は寒く、夏は暑くなり、部屋として使うのは難しいですからね。

断熱の方法 床断熱

2006年01月23日

▼床部分の断熱▼

今回からは、床部分の断熱に関してです。

日本で建てられている一戸建ての多くは、床の部分に断熱材があります。これを、床断熱工法といいます。
基礎に断熱する方法(基礎断熱)もありますが、まだ少数派です。

しかし、基礎に断熱する方法は、数々のメリットがあるので、勉強されている業者さんは好んで採用しています。

私が自分の住まいを建てるなら基礎断熱にするでしょう。
基礎断熱のお話は今後のブログで。

 

▼床断熱に使われる断熱材▼

床断熱に使われる断熱材は、発泡系の断熱材か、グラスウールの密度が高く重たいタイプもので、板状になっているものがよく使われています。

入れ方は、床を支える根太(ねた 又は ねだ)の間に入れていく方法が多く使われています。

一般的な根太の大きさは、5cm程度なので、この間に断熱材を入れる方法では、根太のサイズ=断熱材の最大厚み となります。

ちなみに、次世代省エネ基準では、比較的断熱性能の高い押出し法ポリスチレンを用いても、関東地域で50mm以上必要です。

床断熱の厚みを、5cmより、もっと厚くするためには、根太の高さを高くするか他の納まり方に変更する必要があります。

断熱の方法 床断熱 注意するポイント

2006年01月27日

▼床断熱で注意するポイント▼

床断熱で注意するポイントは、まず根太と断熱材の間にすき間を作らないことです。基本ですね。
また、床材と断熱材の間にもすき間があってはいけません。あたたかい布団でも、体から離れて宙に浮いていてはあたたかくありませんよね。断熱材と床材にすき間があるのは、それと同じことです。

グラスウールのように、繊維系断熱材の場合には、断熱材の中に空気の流れがあると、断熱性能が悪くなってしまいます。
そのため、空気の流れを止める措置も場所によっては必要になります。(気流止めといいます。)

発泡系の断熱材でも、すき間を開けないのは当然なのですが、実際の現場では時々すき間があることがあります。

弾力性のある、ポリエチレン系の発泡断熱材(例:旭化成のサニーライト)は比較的すき間が出来にくいのですが、硬いポリスチレンの断熱材(例:押出し発泡ポリスチレン。XPSとも言う)はすき間が生じやすくなります。
現場の作業では、ポリスチレンの断熱材を、根太の間ピッタリのサイズに切るのは容易ではありません。

断熱の方法 床断熱 施工の問題が起きやすい箇所1

2006年01月30日

▼床断熱で、施工の問題が起きやすい箇所▼

床断熱で施工の問題が起きやすい(断熱性能が落ちやすい)箇所があります。それは以下のような箇所です。

 1.部屋の境目
 2.ユニットバス周辺
 3.階段下
 4.床下点検口
 5.配管の貫通部分

1.部屋の境目
部屋の境目の下は、土台がある場合がほとんどです。
この位置で、断熱材が足りなくてすき間が出来ていることがよくあり、土台と床下地のすき間から冷気が入って、床が冷える原因となります。
当然ながら、設計時の断熱性能よりも、実際の建物の性能が大きく劣る原因となります。

これは、軸組工法(在来工法)でよく見られることで、床を最初に作るツーバイフォー(枠組壁構法)では問題となりません。
建築の専門誌で、ある設計者は「断熱構造としては、軸組工法は欠陥工法」と書かれていましたが、何も対策をしない軸組工法では、その通りだと私も思います。
何も考えずに、これまでの方法で作ると、現実的に断熱材が効かないからです。
この部分の対策については、設計時からの配慮が欠かせません。しかし、この配慮の方法・手段を知っている設計者は、日本全体としては少数派なのが現実です。

床断熱でも、ユニットバス周りは基礎断熱に

2006年02月03日

▼床断熱で、施工の問題が起きやすい箇所▼

2.ユニットバス周辺
床断熱では、ユニットバスの下には断熱材を入れられません。
排水管があるからです。
そのためユニットバスは、断熱の観点から、外扱い(屋外扱い)とすることが多くなっています。
つまり、お風呂が家の中にあるにも関わらず、熱的には屋外にあることになっているのです。

基礎パッキンによる床下換気方法を採用していると、ユニットバス周辺に冷たい外気が入ってきてユニットバスを冷やします。
この場合には、外気が入ってこない対策をとることも必要です。
正しい施工方法では、床断熱を採用したとしても、ユニットバス周辺だけは基礎断熱になります。

ちなみに、全てを基礎断熱とした場合には、ユニットバスも室内扱いになりますので、このような問題は起きません

在来工法では、階段下の床断熱が省かれることがあるので要注意

2006年02月06日

▼床断熱で、施工の問題が起きやすい箇所▼

3.階段下
1階の階段下が収納になっていて、床が張ってあるときは問題ないのですが、壁になっているときが問題です。
ツーバイフォー(枠組壁工法)は、階段下にも床があるので、この問題は起きないのですが、在来工法(軸組工法)の時が要注意です

このようなケースのとき、階段下の壁に断熱材を入れ忘れているケースがあります。

断熱の工法に関わらず、しっかりと断熱がされているかどうかは、家の断面図を書いて、断熱材が入っているラインを一筆書きできるかどうかでわかります。

一筆書きできない場合は、断熱材が途切れていることになります。
服でいうと、袖や太ももの間が途切れているようなイメージです。

床断熱の場合、床下点検口周りの断熱対策は?

2006年02月10日

▼床断熱で、施工の問題が起きやすい箇所▼

4.床下点検口
床下点検口の裏面は、断熱材が入れられないことが多い箇所です。
点検口の裏に発泡系の断熱材を貼り付ける方法もありますが、しっかりと貼り付けないと、簡単に落ちてしまいます。
床下収納になっている場合、床下収納専用の断熱枠がありますので、これを採用することで、解決できます。
それらの商品は、気密性能が確保されていることが多いのですが、気密性能が確保されていないものは、床下点検口のすき間が、24時間換気の給気口の役目を果たしてしまうことがあります。

基礎断熱の場合には、床の下は室内と同じ扱いになるので、どのような床下点検口を使っても問題ありません。

配管が床断熱を貫通する部分の処置は?

2006年02月13日

5.配管の貫通部分
配管が通る穴にすき間があることがよくあります。
すき間があると、寒い季節にここから冷気が入ってきます。24時間換気の給気口の役目を果たしてしまうためです。
この問題は、前回に示した床下点検口と同じです。

コーキングなどでふさぐと冷気止めになりますが、実際にはほとんど行われていません。

充填断熱の施工のポイントは、「几帳面さ」

2006年02月17日

▼細かい箇所まで気を配ろう▼
床断熱工法に限らず、柱の間など、部材の間に断熱材を入れていく充填断熱工法は、断熱材の厚みを増やしやすく、コストも安い方法です。しかし、細かい部分まで気を配らないと、設計図通りの性能は発揮できません。

断熱材の種類に関係無く、断熱材はすき間を作らずに適切に入れることが大切です。
また、余分な空気の流れは必要ありません。
壁の中を通気するなどということは、断熱効果を悪くすることを意味します。これは、今後のブログで紹介していく、「気流止め(通気止め)」が必要だということです。

ノンフィクション作家である、山岡淳一郎さんのウェブサイトのコラムに、断熱に関してその通りだ!と思う箇所がありましたので、ご紹介します。


脱スクラップ&ビルドへの提言 ■住宅省エネは可能性の宝庫より

たとえば、木造戸建の分野では、省エネの大切な鍵を握る「断熱施工」が、「雑工事」として処理されている。
現場の職人さんたちにとって、断熱工事は、左官工事や外装工事、設備工事などの「オマケ」あつかいなのだ。
断熱材をきちんと張る工事は、難度はさほど高くはないが、愚直なまでのキチョウメンさが要求される。


このコラムにあるように、断熱材の施工には、

「愚直なまでのキチョウメンさが要求される」

のです。

残念ながら、北海道や東北地方を除くと、断熱材の施工というのはあまり丁寧に行われていないのが現状なのではないでしょうか。
夏に涼しく、冬にあたたかい住まいが欲しいのであれば、そのような住宅の施工ができる業者さんを探す必要があります。

そのような業者さんを探すためには、あなた自身が住宅に関する知識を持たなくてはなりません。
見た目や仕上げ材の豪華さではなく、建物の性能に関わる、「本質的」な部分に目を向ける必要があるのです。

断熱の方法 外張り断熱工法(外断熱工法)

2006年02月20日

▼外張り断熱工法▼

木造および鉄骨造の建物には、大きく2種類の断熱方法があります。

 1.充填断熱工法 (じゅうてんだんねつ こうほう)
 2.外張り断熱工法(そとばりだんねつ  こうほう)

前回までのメルマガでは、1の充填断熱工法についてお伝えしてきました。

それぞれの工法における断熱材の位置をイラストや実例で示すと、以下のようになります。

断熱方法カテゴリー

木造や鉄骨造の場合には、柱と柱の間が空洞になるので、その間に断熱材を入れる、充填断熱工法が一般的です。

木造や鉄骨造で、断熱材を外に貼る方法は、一般的に外断熱工法と呼ばれていますが、厳密には外断熱ではなく外張り断熱工法と言います。
(しかし、10年くらい前は、日本建築学会に投稿されている論文でも外断熱と書かれていました。外張り断熱と区別しはじめたのは、ここ数年の話です。)

ちなみに、鉄骨造は構造体に熱を伝えやすい鉄を使っていることから、次世代省エネルギー基準をクリアするためには、外張り断熱工法が前提となります。

外張り断熱の施工方法(フェノールフォームの酸性に注意)

2006年02月24日

▼外張り断熱工法の施工方法▼
 http://t-ohshita.com/2005/09/20050905-2332.html

外張り断熱工法は、上記リンクのイラストにあるように、柱や間柱(まばしら)の外側に断熱材を取り付けていきます。

取り付けは、専用のビスを使うのがほとんどです。
外張り断熱の経験が少ない業者さんでは、クギを使っているケースもあるようですが、引き抜きに耐えるための力がビスよりもずっと弱いので、専用のビスがベターです。

また、地震の時に大きく揺れたり、経年的な劣化でたわんだりしないように、ビスの太さや間隔を力学的に検証する必要があるでしょう。しっかりとした設計であれば、そのような検討がされているはずですので、計算を行なった書類をもらって確認しましょう。

また、フェノールフォーム断熱材を使用する場合、フェノールフォーム断熱材は濡れると酸性となるため、十分な注意が必要です。具体的には、使用するビスが十分な防錆性を持っているかどうかの確認が必要となります。また、錆びやすいものは、フェノールフォーム断熱材と直接接しないような配慮があると良いでしょう。

断熱材を外に張る場合、サッシ周りの納め方が充填断熱工法と異なりますので、設計段階からの対策が必要です。
サッシによっては、標準で外張り断熱に対応しているものもあります。

外張り断熱工法のメリット。施工が簡単、結露が起きにくい、熱橋が少ない

2006年02月27日

▼外張り断熱工法のメリット▼

外張り断熱工法のメリットは、以下のような点が挙げられます。

 ◇1. 施工が簡単
 ◇2. 結露が起きにくい
 ◇3. 熱橋(ねっきょう)が少ない

◇1. 施工が簡単
外張り断熱工法の1番のメリットはやはり、施工が簡単だということでしょう。

施工は、充填断熱工法よりもずっと簡単で、コンセント周りや配管などを気にする必要がありません。
また、気密性能をカンタンに高くすることができます。

施工がカンタンなことから、結果として施工のバラツキが小さく、設計値に近い性能をだすことができます。
設計がいくら凄くても、実際の施工がダメであれば、意味がありませんからね。

外張り断熱工法のメリット。結露が起きにくい

2006年03月03日

◇2. 結露が起きにくい
 断熱材が外にあることから、柱や間柱、梁なども全て室内と同じ環境になるため、結露の恐れがぐっと低くなります。

これは、実際に計算してみると、その効果がすぐ分かります。
値段が高く、耐久性も高い木材を使ったとしても、結露によって木材の含水率が高くなってしまうと、耐久性や強度が低下してしまいます。

耐久性を高めるために、結露が生じないというのは、外張り断熱でも、充填断熱でも、内断熱であっても、絶対条件でしょう。

外張り断熱工法のメリット。熱橋が少ない。木造住宅でも熱橋が。

2006年03月06日

◇3. 熱橋(ねっきょう)が少ない
木による断熱性から、「熱橋がない」と言われることがある木造の建物ですが、今日の建物では金物が多く使われ、室内外を貫通する金物も多くあります。

羽子板ボルトの例 羽子板ボルトの例
羽子板ボルトたくさん

厳密には、この部分が熱橋になるといえます。

羽子板ボルトは、室内外を貫通するため、熱を伝えてしまいます。

まだ計算したケースを見たことがありませんが、建物全体で考えると、羽子板ボルト・アンカーボルトなどの金物による熱損失は、小さくないのではないでしょうか。

室内外を貫通する金物は、木造在来工法に多く使われます。
ツーバイフォー(枠組壁工法)では、室内外を貫通する金物は基本的にありませんので、木造軸組工法より熱橋部位は少ないといえます。

充填断熱工法において、この熱橋部分を断熱補強するケースはまれです。
外張り断熱工法では、これらの金物は全て部屋の中なので、熱橋にはなりません。
従って、熱的には安全側となります。

 

熱橋(ねっきょう)】用語解説
「熱橋」とは、断熱材の内と外において、熱を伝える橋のような部位を指します。
先の例では、羽子板ボルトが熱橋になります。断熱材の厚みを厚くすると、断熱性があるとされている「木」でさえも、熱橋となります。
熱橋が多いと、断熱材を多く入れたとしても、全体として建物の断熱性能が低くなります。また、条件によっては、結露の問題も出てきます。

熱橋をヒートブリッジと呼ばれるときがありますが、これは「温かい」熱という意味を含んでいますので、結露の問題となるような「冷たい」熱を意味するときには不適切です。

温かい熱と冷たい熱の両方を示すときには、「サーマルブリッジ」が正解です。

外断熱 VS 内断熱? RC造の省エネ化では外断熱が絶対的に有利

2006年03月10日

外断熱 VS 内断熱? その1

最近では、本や雑誌、ウェブ上などで一戸建ての外断熱(外張り断熱)と充填断熱の比較を見ることが多くなりました。

○鉄筋コンクリート(RC)では
鉄筋コンクリート造の場合、外断熱と内断熱で、断熱性能をより高くできる(省エネできる)のは、外断熱工法です。
内断熱工法では、断熱材を厚くするほど、部屋の中が狭くなってしまうので、実用的ではありません。
つまり、鉄筋コンクリート(RC)の場合、高断熱=外断熱工法であるということが言いやすいといえます。(中には、断熱材の厚みが薄く、高断熱になっていない外断熱工法もありますが・・・。)

これについては、過去のブログのバックナンバーをご覧ください。

外断熱 VS 内断熱? 熱を伝えやすい鉄骨造でも、外断熱が絶対的に有利

2006年03月13日

○鉄骨造では
鉄骨造の場合、鉄は熱を伝えやすいので、本来は外断熱(外張り断熱)でないと問題があります。つまり、原則は外断熱(外張り断熱)となり、充填断熱が変則的な工法です。
鉄骨の柱同士の間に断熱材を入れる方法(充填断熱)では、鉄の部分から熱が自由に出入りできてしまうからです。

ある鉄骨造のハウスメーカーが、外断熱と内断熱を組み合わせた工法で、次世代省エネルギー基準を大きく上回る商品を発表しました(ただし、北海道限定です)

鉄骨でこの性能を出すのはなかなか大変です。
内断熱(充填断熱)だけではかなり難しく、外断熱(外張り断熱)との併用が必要です。

外断熱 VS 内断熱? 木造は充填でも外張りでもOK。ただし、外張りには限界が。最終的には、充填+外張り併用

2006年03月17日

○木造では
木造では、「丁寧に」施工すれば充填断熱でも外張り断熱(外断熱)でもかまいません。
ただし、過去のブログに載せたように、木造の建物で充填断熱を採用するときには、耐震金物が熱橋になりますので、その部分の対策は必要でしょう。また、充填断熱の場合、施工者に丁寧さが強く求められます。

コストパフォーマンスでいうと、価格が安い種類の断熱材を使える、充填断熱が有利です。

断熱性能についてですが、関東周辺でパワービルダーと呼ばれる建売業者が建てている建物(壁・天井:グラスウール10kg、100mm厚)より、外側に発泡プラスチック系断熱材(厚み 50mm)を張ったほうが、施工上の問題や空気の流れの問題から、実質的な性能は上です。

そもそも、壁・天井:グラスウール10kg、100mm厚では次世代省エネルギー基準には足りません。特に天井の厚みが不足しています。これからの時代には、根本的に性能不足な仕様だといえます。

木造の外断熱(外張り断熱)では、35mm ~ 50mmの断熱材を張っていることが多いと思います。
次世代省エネレベルであれば、これでも大丈夫ですが、さらにその上の国際的な省エネ基準や、今後厳しくなる一方の省エネ基準を満たそうと思うと、この厚みでは実力不足です。

建物の省エネをどんどん進めていくと、外断熱(外張り断熱)だけでは性能不足、充填断熱でも性能不足になり、最終的にたどり着くところは、充填断熱+外断熱(外張り断熱)の併用になるのは間違いないでしょう。

外断熱 VS 内断熱? 図面を超える断熱性能が、実際の建物で出ることはない

2006年03月20日

▼図面を超える断熱性能が、実際の建物で出ることはない▼
当然のお話ですが、図面以上の性能が実際の建物で出ることはありません。
断熱については、図面の性能が最大で、現場の施工状態で簡単に低下します。

特に、10kg程度の安く、軽いグラスウールでは施工によるバラツキが大きいため、図面通りの性能を出すのは簡単ではありません。
私は、建築中の建物を見る機会が多いのですが、10kの袋入りグラスウールを使った充填断熱の物件で、断熱材の性能を100%を出せるような施工は"かなり"まれです。

やはり、充填断熱でしっかりと施工しようと思ったら、最低でもグラスウールの密度は16kg以上で、袋に入っていない、裸のグラスウールで施工するのが原則でしょう。

外断熱 VS 内断熱? 外張り断熱(外断熱)は施工が簡単

2006年03月24日

▼外張り断熱(外断熱)は施工がカンタン▼
外張り断熱では、一般的に板状の断熱材をつかうため、施工が簡単で、図面に近い性能を出すことができます。

また、外から張ってあるため、中に入ることなく断熱材のすき間簡単に見つけることもできます。
すき間の確認なら、一般の人でもできます。

木造の外張り断熱の断熱材は、一般的に柱の上につなぎ目がきます。
そのため、もし断熱材同士にすき間があった場合にも、柱に使われる木の断熱性能があります。

このように、施工が簡単で、図面通りの性能が出しやすいメリットが強いのが木造における外張り断熱(外断熱)です。
施工のミスによる断熱性能の低下も低いといえます。

外断熱 VS 内断熱? 外張り断熱では性能が出ない?

2006年03月27日

▼外張り断熱では性能が出ない?▼

外張り断熱は、充填断熱に比べて性能が出ないといわれることがあります。

外張り断熱に使われる断熱材の価格は、充填断熱で使われるグラスウールのような繊維系断熱材と比べると高価です。
そのため、同じ費用で比べるとコスト的には充填断熱が有利です。

しかし、性能が出ないわけではありません。

以前、さくら事務所にご依頼いただいたある方は、ご自宅を外張り断熱工法で建てられていました。
非常に勉強されていた方で、私が知っている一般の方では1~2番目位に詳しかったと思います。
ちなみに、外壁にはフェノールフォーム断熱材の66mm厚のものを使っていました。

その物件の断熱性能は、数値で表すと Q値という1.4W/m2Kという数字になります。
この数値は、小さいほど省エネルギー性能に優れます。

これは、次世代省エネ基準を十分クリアする数値で、関東地域の基準の約2倍の性能です。

このように、外張り断熱では性能が出ないわけではありません。

充填断熱に比べて性能が出ないといわれるのは、厚み3cm前後の断熱材で外張り断熱を行っている業者さんのように、絶対的な厚みが薄い場合です。
ポリスチレンフォームの3cm程度では、やはり高断熱と呼ぶには弱すぎます。
フェノールフォーム断熱材であれば、3.5cmの厚みでも、ポリスチレンフォーム50mm相当になるので、ボチボチといったところでしょうか。

要は、施工業者の設計力と施工力です。

外断熱 VS 内断熱? 断熱材の厚みだけを単純に比べるのは、ナンセンス

2006年03月31日

▼断熱材の厚みだけを単純に比べるのは、ナンセンス▼
ときどき、断熱材の厚みだけを単純に比較して、充填断熱工法が良い、外張り断熱が悪いといわれていることがあります。

しかし、断熱材の厚みだけを単純に比較するのはナンセンスです。

なぜなら充填断熱では、断熱材以外の部分に断熱性能を期待している部分があるからです。
断熱性能は、トータルとして考えなければなりません。

充填断熱外張り断熱
充填断熱工法
グラスウール 16kg・100mm厚
外張り断熱工法
フェノールフォーム 35mm厚
厚みだけなら充填断熱が厚いが、
全体の断熱性能(熱抵抗値)で見てみると・・・
矢印
充填断熱の熱抵抗値
場所によって、
断熱性能がバラバラ
外張り断熱工法の熱抵抗値
断熱性能は一定。
柱部分はプラス効果
一定厚みに換算してみると・・・
矢印
充填断熱 外張り断熱

断熱材の厚みは、100mmと35mmで約3倍違いますが、全体としての断熱性能はどちらもほぼ同じです。
今回の例では、外張り断熱の方が若干断熱性能が高くなりました。

このように、断熱性能は単純に断熱材の厚みだけでは決まらず、全体としての評価が重要です。

ちなみに、断熱材にすき間があった場合、外張り断熱は柱の断熱性能がありますが、充填断熱の場合には何もなく、無断熱の状態になってしまいます。そのため、充填断熱では丁寧な施工が求められます。

充填断熱工法では、柱の部分に断熱性能を期待しています。
外張り断熱では、柱の部分はあくまでもオマケの部分です。
柱があれば、より安全側の施工になります。

次世代省エネルギー基準に基づく、建物の熱損失の計算では、上のイラストで示したように、柱の部分(熱橋部)と断熱材の部分を分けて計算しなくてはなりません。
「構造を強くするために、柱や梁を太くする」場合、充填断熱では、木部が増えるので、建物の断熱性能は低くなります。

外張り断熱の場合は逆に、断熱性能が高くなります。

このように、同じ構造でも断熱材の位置によって、構造部の熱的な扱いが変わります。
断熱材の厚みだけを単純に比べることが、いかにナンセンスなことか、お分かりいただけたでしょうか。

今回の計算の仮定条件
部材 太さ(mm) 厚み(mm) 熱伝導率(W/mk)
120mm 120mm 0.150
間柱 30mm 120mm 0.150
グラスウール 16k 100mm 0.045
フェノールフォーム 35mm 0.020

 

外断熱 VS 内断熱? 木の断熱性能を、他の材料で換算すると

2006年04月03日

▼木の断熱性能を、他の材料で換算すると・・・▼
「木は断熱性能がある」と言われるものの、木の断熱性能は断熱材と比べるとかなり劣ります。
12cmの柱(4寸柱)の断熱性能を、ビーズ法ポリスチレン(いわゆる発泡スチロール)に換算すると、たったの3cm程度にしかなりません。フェノールフォーム断熱材に換算すると、1.6cmとなり、1円玉の直径よりも小さくなります。

木は断熱性能が高いといわれますが、一般的な断熱材と比べるとかなり劣るのです。
そのため、壁の断熱性能を高くしていくと、木部から逃げていく熱の量が無視できなくなります。

ちなみに、12cmの木の柱と同じ断熱性能を「コンクリート」で得るためには約1.3メートルの厚みが必要です。
かなり厚いですね。

また、「鉄」の場合には実に約 67mの厚みが必要です。
ジャンボジェット機の翼の長さが65mくらいですから、それよりも長いことになります。現実的ではありませんね。

そのため鉄骨造は、外張り断熱(外断熱)が本来の姿なのです。
鉄骨の柱と柱の間に断熱材を入れたとしても、柱そのものから熱が出入りしてしまいますからね。

断熱性能は、熱抵抗値(R値)で比較する

2006年04月07日

▼断熱材の性能を示すのは、「R」▼

断熱材の性能を示すのは、R値(あーるち)です。
難しい言いかたでいうと、熱抵抗値(ねつていこうち)です。

中学校の理科のとき、オームの法則を習ったと思います。
(オームの法則が何だったかは、思い出さなくてもかまいません)

このとき、抵抗の記号をRで示しましたよね。
断熱材でもこれは同じで、熱に関する抵抗をRで示します。

R値は、熱が逃げにくい程度を示すので、数字が大きいほど断熱性能に優れます。

断熱材の厚みが2倍になると、R値は2倍になります。
断熱材の厚みが半分になると、R値も半分になります。

断熱材の性能を比べるときは、グラスウール100mmや、ポリスチレン50mmではなく、R値の大きさで比べましょう。
断熱材の性能は、材料によって全然ちがうため、同じ基準で比べる必要があるからです。

★まとめ
 ・断熱材の性能を示すのは、R値(あーるち)
 ・R値は、数字が大きいほど断熱性能が高い

窓の断熱性能は、熱貫流率(K値)で比較する

2006年04月10日

▼窓の断熱性能を示すのは、「K」▼

 断熱材の性能を示すのは、K値(けーち)です。
 難しい言いかたでいうと、熱貫流率(ねつかんりゅうりつ)です。

(厳密にいうと、K値は窓だけの性能を示すものではありませんが今回は簡単のため、このように説明します。)

K値は、熱が通りやすい程度を示すので、数字が大きいほど断熱性能に劣ります。

高断熱サッシや、樹脂ペアガラスのパンフレットを見ると、K値が載っています。
(ただし、性能の悪いサッシは、製造元があまり載せたがらないので、載ってないことが多い)

例えば、(次世代省エネルギー基準によると) シングルガラス+アルミサッシのK値は、6.51です。
樹脂ペアガラスのK値は2.91です。

これをみると、シングルガラス+アルミサッシは、樹脂サッシ+ペアガラスの 2倍以上の熱を通すことがわかります。
それだけ断熱性能が悪いということです。最初は安くても、長い年月で考えると、光熱費がかかりそうですね。
ちなみに北海道では現在、仕入れ値はアルミサッシも樹脂サッシも変わらないようです。(もちろん、いずれもペアガラス)

★まとめ
 ・窓の断熱性能を示すのは、K値(けーち)
 ・K値は、数字が大きいほど断熱性能が低い

建物の断熱性能は、熱損失係数(Q値)で比較する

2006年04月17日

▼建物全体の断熱性能を示すのは、「Q値」▼

建物全体の性能を示すのは、Q値(きゅーち)です。
難しい言いかたでいうと、熱損失係数(ねつそんしつけいすう) です。

Q値は、熱が通りやすい程度を示すので、数字が大きいほど断熱性能に劣ります。

Q値が半分になると、逃げていく熱の量も半分になるので、暖房費も半分になります。

ちなみに、関東における次世代省エネルギー基準のQ値は、2.7です。
北海道は、1.6ですから、地域によって基準そのものが40%位省エネになっているということです。

現在東京近郊で売られている建売物件や、建築条件付建物のQ値は、3~4の間ではないでしょうか。

これからは次世代省エネ基準が普通になりますが、将来的にはさらに省エネ化が進むでしょう。

これからの建物は東京近郊でも、Q値 2.0以下の性能が必要だと私は思っています。

★まとめ
 ・建物全体の断熱性能を示すのは、Q値(きゅーち)
 ・Q値は、数字が大きいほど断熱性能が低い

熱損失係数・Q値の単位に注意

2006年04月21日

▼Q値の単位に注意!▼

実は、熱損失係数・Q値の単位には、2つあります。

 それは、

 ・W/m2・K
 ・kcal/m2・h・℃

 の2つです。つまり、W(ワット)と、cal(カロリー)です。

一般的には、ワットを使いますが、ときどきQ値の表示にカロリーを使っているのを目にします。

同じ性能でも、カロリーにすると、数字が 14%小さくなるので、Q値が良く見えてしまいます。

そのため、チラシなどでQ値が載っている場合には、その単位がワットであるかを必ず確認して下さい。
基本は、ワット表示だからです。

温暖化防止省エネ住宅セミナー + パッシブハウス東京第1号住宅

2007年08月01日

林さんと、ロックウール工業会主催の、『温暖化防止省エネ住宅セミナー』及び、『パッシブハウス東京第1号住宅の現場見学会』に行って来ました。

最初の1時間半は、東京駅近くで講師によるセミナー。
現場見学会の様子 その後はバスで移動して、パッシブハウス東京第1号の見学会。 東京という建築地では、無暖房住宅に相当します。インターネットでその工事の経過を見ていたものの、やはり現場は勉強になります。

その施工状態だけでなく、細かな納まりも勉強になりました。噂には聞いていた施工業者さんですが、やはり良かったです。

工法の基本はツーバイフォー。
ただし、断熱性能を上げるために、外周部はツーバイシックスです。

外側の付加断熱(ロックウールボード) 外壁の断熱材は、ツーバイシックスの140mm+外壁 外張り断熱 60mmのトータル 200mm厚断熱。
屋根部分は当初、ロックウールの200mmの予定でしたが、高さ制限により施工が困難なため、フェノールフォーム66mm+ウレタン120mmに。
これは、分譲物件で採用されているグラスウール10kに換算すると、280mm以上の厚みに相当します。

下部の断熱は、床断熱ではなく、基礎断熱。外側と内側併用で、厚みは150mm。

サッシは、真空ガラスを使った樹脂サッシ。
サッシ内部には断熱材も入っています。(普通は中空)
使われているサッシの性能は、1.24W/(m2・K)という性能で、これは、
Low-E樹脂ペアガラスの約2倍の性能。

最終的なQ値は、0.904W/m2・K
これは、東京の次世代省エネ基準 2.7W/m2・Kの、約3倍の省エネ性であることを示しています。
凄い省エネ性です。大手ハウスメーカーの、かなり良い仕様の2倍以上の省エネ性です。
30年後の省エネ基準でも、十分クリアするでしょう。

気密性能を示すC値は未計測の状態ですが、この施工業者さんの過去の実測値は、去年のデータで 0.16cm2/m2ということでしたので、これに近い値になり、十分な性能です。
これも、大手ハウスメーカーの仕様の、10倍以上の高性能。
ここまでの性能を得られれば、大手ハウスメーカーでも追従出来ません。

現場の施工は丁寧で、参考になる納まり方がいくつもありました。

一般の方はこのような物件を見ても、「単に断熱材を厚くしただけ」と思われるかも知れませんが、そうではありません。
そこにたどり着く為には、しっかりとしたバックデータを持ち、難しい納まりをいくつもクリアする必要があります。

今日の前半のセミナーで、東京大学の坂本先生のスライドに、納得できるものがありました。それは、以下のようなものです。


住宅・建築の省エネ対策の基本

1. 建物の断熱化・日射遮蔽(暖冷房負荷の削減)
2. 設備機器の効率向上と、そのためのメンテナンス
3. 自然エネルギーの活用
 アクティブ:太陽熱利用と太陽光発電の推奨
 パッシブ:自然通風と自然採光の活用・推奨

このうち、重要なものは、だということです。


私もこれが、住宅・建築の省エネの王道だと思います。

建築のエンジニア が省エネに大きく影響できるのは、と、のパッシブの項目。
その他は一見、建築であっても、頑張っているのは他業種のエンジニアです。

例えば、太陽光発電。
大手ハウスメーカーでも積極的に売り出しており、省エネになるとしていますが、太陽光発電の効率を上げるのを頑張っているのは、電機メーカーのエンジニア。
建築側としては、簡単に言えば、それを設置するだけ。
大した努力はありません。エアコンの効率向上も同じ。
だから、これらの設置は建築関係者が威張れるものではないと思っています。

それに対し、1. 建物の断熱化・日射遮蔽は、建築のエンジニアの頑張りそのもの。太陽光発電は、新築の住宅に取り付けても、築30年の住宅に取り付けても、築1000年以上の建物に取り付けたとしても、効率は同じ。しかし、建物そのものの省エネ性は、建物の作り方で全く違ってきます。
まさにノウハウの部分で、今回のように次世代省エネの3倍の性能を得られたのは、電機メーカーのエンジニアではなく、建築のエンジニアの頑張りです。

建物の省エネの王道は、上記のの順番だと思いますが、その1番目の理解が浅い、あるいは分からずに、中途半端な建物性能しか出せない建築関係者ほど、壁の中の通気とか、なんとかソーラーとか、地熱やなどに走っている印象があります

太陽光発電や、エアコンの寿命は建物の寿命よりも短いもの。
それで省エネを図るより、未来永劫続く、建物そのものの省エネ性を上げる方が、ずっと価値があると思います。

全ての住宅が今回の性能まで到達することはまず考えられませんが、このような物件が存在するということは、覚えておいて損は無いと思います。


パッシブハウス東京第1号の施工を示したブログはこちら

パッシブハウスS邸の挑戦
 http://x-unoblog.seesaa.net/

木造在来工法における、外張り断熱の施工注意点。間柱のサイズ。

2008年03月27日
朝1からつくばで構造の確認。

物件は在来工法の外張り断熱仕様。 打ち合わせ段階で、物件の仕様を変更して頂いた点があります。

それは「間柱の幅」。

外張り断熱のビス固定の模式図 ツーバイフォーの場合、間柱に相当するスタッドの幅は38mm。
これに対して在来工法では明確な規定がなく、各社バラバラ。
多くは30mm以下。24mmや27mmも多く使われます。

外張り断熱では、断熱材と胴縁を長さ100mm前後のビスで留めていくのが一般的。

しかし、そのビスは断熱材や胴縁の上から留めるので当然ながら、ビスを打ち込む先の間柱は見えません。

間柱の位置を正確に出して、ビスを打ち込めば精度は上がりますが、それでも、間柱が細い場合には、ビスを打ち外しやすくなります。

間柱のサイズ 現場の施工精度を考慮し、この物件は間柱のサイズを45mmにしてあります。

この幅があればまず大丈夫!

ちなみに間柱を太くしたとしても、外周りだけですので、コストアップは大きくありません。室内の間仕切り壁は、断熱材の範囲外ですので、関係ないのです。
間柱サイズの拡大は、ビスを打ち外して外壁が垂れ下がるリスクを考えれば、コストパフォーマンスは高いと言えます。

間柱以外に欲を言えば、窓台・窓まぐさも45mmあるいは柱幅までサイズアップしておくと断熱材の施工がラクです。ツーバイフォーの場合、窓まぐさが大きいので、心配はありません。

たまたま現場にみえた、断熱材を取り付ける職人さんに間柱のサイズアップのことを伝えると、

「通りでこの現場は間柱が太いのですね。仕事しやすくて助かります。」

とおっしゃっていました。

施工のミスが起きやすい箇所は、設計段階で対処しておくのが無難です。机の上だけでなく、現場の施工誤差、施工のしやすさも考えなければいけないということです。

つくばの後は、習志野、その後に世田谷。間に合うのか!?、自分。

星野リゾートはエコで偉い!星のや 軽井沢の地中熱ヒートポンプと、トマム ツインタワーの外断熱改修

2009年03月04日

先月軽井沢に行ったとき、星のやに寄る機会がありました。(泊まった訳ではありません)
星のやは、企業再生のカリスマとして知られる、星野佳路さんが代表を務める星野リゾートの宿泊施設の1つで、以前にNHKのプロフェッショナルの流儀でも取り上げられました。

 

以前から、この施設は見てみたいと思っていました。
なぜなら、星のや 軽井沢は、環境への取り組みに積極的であることを知っていたからです。
星野リゾートの社内か、あるいはサポートする会社に、建物や設備の省エネルギーに詳しい人が居るのは間違いないと思っています。

 


まず、星のやでは、送迎などの車に使うガソリン以外、灯油や石油などを一切燃やしていません。
厨房用のLPGは使っているものの、暖房や温泉温度の管理には、地中熱のヒートポンプを使っています。
一般的なホテルや宿泊施設は、暖房に重油や灯油を燃やしていますので、大きな違いです。


ヒートポンプはエアコンで一般的です。
エアコンで暖房する場合、外気の温度利用していますが、外気温が下がるほど効率が下がってしまいます。

 


しかし、地中であれば、真冬の時期でも氷点下になることはありませんので、効率が保てます。
星のやでは、地中から熱を取り出すための井戸が深さ400mあり、取り出す温度は25度のようです。
外気温度と比べると、かなり有利です。

 

400mもの井戸を掘るとかなりのコストがかかるので、初期費用の面から地中熱ヒートポンプは一般的には使われません。
しかし星のやは、宿泊施設+温泉という熱需要がとても多い建物ですので、投資回収費用は、わずか約 2年。
初期費用がかかっても、すぐに回収できてしまうということです。
2年を経過した後は、一般的な灯油や重油でのボイラーで運転した場合との差額が、そのままコストダウンになります。

 


ヒートポンプは、地中熱だけでなく、温泉の排湯でも使われています。
これは、流し終わったお湯を、そのまま捨てるのではなく、排湯槽にお湯を溜めてヒートポンプで熱を奪った後、捨てるというもの。
放流温度が下がりますので、河川の環境保護にも役立ちます。

排湯は40℃近くありますので、外気を利用するヒートポンプよりもさらに有利です。

 


星のやのトリプルガラス木製サッシ 星のやの建物を実際に見たのは、少しだけなのですが、建物そのものの省エネに配慮していると分かるのが、右の写真。

枠は木製。そして、サッシはトリプルガラスです。
風除室でさえ、Low-E ペアガラスが使われていました。

 

全部を見たわけではありませんが、南側は日射取得を増やすためにトリプルガラスにしているのかも知れません。

余談ですが、このサッシ部分、木製の枠部分と、水切りの板金の位置関係が間違っているような・・・。

 

もう1件、星野リゾートで凄いと思ったのが、北海道 トマムにあるツインタワーの外断熱改修。

 

2004年に星野リゾートが、このツインタワーを含む、アルファリゾート・トマムの経営を引き継いだ後、外断熱に改修してしまいました。

 

その理由は、築後15年以上を経過し、外壁のプレキャストコンクリートの凍害被害が大きくなり、タイルの剥落などが起き、年間の補修費が700~1,000万円かかるからだとされています。

 

そもそも、氷点下 -30℃になる地域に、内断熱の仕様を採用した当初の設計もどうかと思いますが、全て外断熱に改修してしまった星野リゾートは立派だと思います。

 

ちなみにこの改修で、暖房負荷は30%減、修繕コストは30年間で 4億5,000万円の減になるそうです。

 


星野リゾートの他の施設において、どのような取り組みが行なわれているのか分かりませんが、他のリゾート会社でも、同様の取り組みを行なっていただきたいものです。

 

参考リンク

温泉排湯熱・地中熱ヒートポンプ利用 星のや軽井沢
 http://www.zeneral.co.jp/pdf/hoshinoya.pdf

 

ゼネラルヒートポンプ工業(株) 温泉排湯利用ヒートポンプシステム
(星のやのケースは19ページ目)
 http://www.geohpaj.org/information/doc/shiba.pdf

 

エネルギーは足下にある 地中熱という膨大な資源を活用せよ
 http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/report/rpt_26.html

 

星のや エネルギー設計 松沢隆志さん
 http://www.hoshinoya.com/concept/energy.html

 

「トマム」の象徴、超高層ツインタワーが鮮やかに変身
 http://www.nikkeibp.co.jp/news/const08q2/575932/

 

三菱地所、外断熱マンションを投入

NIKKEI NETより。
不動産各社が環境配慮を売り物にしたマンションの販売に力を入れ始めた。東急不動産は首都圏のマンションの二酸化炭素(CO2)排出量を20%以上削減、三菱地所も大手で初めて保温性の高い外断熱マンションを本格投入する。

http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20090304AT1D0305L03032009.html

 

詳しい情報は、現時点で三菱地所のサイトにも載っていないものの、大手では初。
続報に期待します。

セルロースファイバー吹き込み中

2009年03月17日

セルロースファイバー 港区の一戸建て品質チェックの現場でコンクリートの打設立会いに立ち会った後、目黒区の一戸建て品質チェックの現場で、断熱材となるセルロースファイバーの吹き込み。

 

写真は断熱材の投入口。

 

音が結構うるさいです。

 

セルロースファイバー吹き込み中 その2

セルロースファイバー 休憩を挟んで再び、セルロースファイバーの吹き込み。

 

壁の中いっぱいに断熱材を入れていきます。

 

室内側に張ってあるシートは強く、大人が引っ張った程度では破れません。

 

繊維の方向があるので、引っ張りに強い方向と垂直方向にカッターを入れると、破れますけどね。

セルロースファイバー吹き込み中 その3

セルロースファイバー セルロースファイバー断熱材を入れるため、室内側に張ってあるシートの固定の様子。

 

かなり細かく固定してあるので、丈夫です。

 

電動のタッカーで留めていましたが、手動のものだと、かなり大変でしょうね。
タッカーは、かなりの量を消費していました。 

グラスウールによる充填断熱

2009年05月30日

八王子市で、木造在来軸組工法の建物調査(ホームインスペクション)。

 

今回は、建築中の物件で、防水と断熱の確認。

 

もともとのご依頼の理由が構造に関わるトラブルだったため、断熱の施工が心配でしたが、特に問題ありませんでした。

 

グラスウールによる充填断熱 断熱材の幅の使い分けはOK。
防湿シートが破れたところの、補修もOK。

 

天井下地を組まない段階での、壁の断熱材施工もOK。

 

古い大工さんだと、壁の断熱材を入れる前に、天井の下地を組みます。
天井の下地を先に組む施工順序だと、壁と天井がぶつかる部分の断熱・防湿施工が上手くできません。

 

そのため、グラスウールやロックウールのような繊維系断熱材を使った充填断熱工法では、天井の下地を組む前に断熱材の施工をするのが理想です。

 

ツーバイフォー(枠組壁工法)の場合、これは気にする必要がありませんが、木造在来軸組工法では注意が必要です。

 

その他、グラスウール、ロックウールで充填断熱を採用する場合、1階の床の作り方が重要になります。

昔から使われてきた、「転ばし根太」を使う工法では、土台と転ばし根太の間にすき間が生じてしまいます。
そのため、冬季にはここから冷気が上がり、快適性を大きく損ないます。また、グラスウールやロックウールの中を冷気が通る形になるため、断熱材が効きません。

 

この問題は、転ばし根太+繊維系断熱材を使った充填断熱を採用した場合に生じます。

壁面を外張り断熱にしたり、1階の床の組み方が、厚い合板を使った剛床仕様、あるいは落とし込み根太という仕様にすることで回避できます。

 

転ばし根太は、下部から冷気が入る

 

この物件は、1階が剛床仕様のため大丈夫です。
ツーバイフォーは落とし込み根太という仕様が基本なので、問題は生じません。

実際の施工では、1階を剛床にするのがラクで効果的だと思います。

アイシネン(icynene)断熱材

2009年06月01日

アイシネン 一戸建て品質チェックの現場で、アイシネン(icynene)と呼ばれる断熱材の吹き付け中。

 

ウレタンの断熱材ですが、マンションに使っているような硬質のものではなく、固まってもスポンジのように柔らかです。

同種の後発には、
 ・フォームライトSL
 ・アクアフォーム
 ・モコフォーム
があります。

 

アイシネンは、後発のものより値段は高めですが、空気の透過量や吸湿性の低さなどはアイシネンの方が安全側。

 

次世代省エネ基準を満たしていない施工業者さんの標準仕様から見ると、大幅なスペックアップ。

性能差に納得して採用して頂いたご依頼者、工事を受け入れてくれた施工業者さんに感謝、感謝です。

給気口、エアコンスリーブ周りの断熱施工

アイシネン断熱材 アイシネンを吹き付けた、給気口とエアコンスリーブ周り。

 

グラスウールやロックウールでは難しい小さな隙間の施工も簡単。

 

モコモコしている部分は、後から柱の厚みで切り取って、平らにします。

 

本当は、このような吹き付け断熱材ではなく、グラスウールで省エネ住宅を作るのが安上がりです。

 

しかし、首都圏近郊では、袋入りのグラスウールばかりで、高性能住宅で一般的な裸のグラスウールを使うのがまれ。

別張りの防湿シート施工や防湿コンセントカバーを使うのもまれ。

 

職人さんを1から指導する訳にもいかないので、専門職である吹き付け断熱材や、セルロースファイバーなどの吹き込みの方が確実に思います。

木部は熱橋か否か。階間部の断熱補強

2009年06月04日

建物の断熱のことを調べていくと、木材の部分が熱橋(サーマルブリッジ、ヒートブリッジ)なのか、そうでないのか判断が分かれている場合があると思います。

 

木材は、コンクリートや鉄と比べると熱を伝えません。
しかし、断熱材と比べると、3~4倍の熱を通してしまいます。

 

建物のQ値(熱損失係数)が次世代省エネ基準ギリギリをウロウロしているレベルでは、木部の熱橋というのは大したものではありません。

 

しかし、建物全体の省エネ性を高めていくほど、木部の熱橋というのは無視できなくなります。

 

例えばダイエットのとき、おなかの贅肉がたくさんある時には、二の腕などの贅肉は気にならないでしょう。
しかし、おなかの贅肉が無くなったときには、他の部分が気になってくると思います。

建物の省エネもダイエットと同じ。
いかに、無駄なものを減らせるかということですので、性能を上げるほど細かな部分まで気になってきます。

 

先日の断熱材吹き付けの現場では、1階と2階の間に、断熱材が吹きつけられていました。

階間部の断熱補強

 

1階と2階の間、2階と3階の間などの空間を、「階間部」といいます。

この作業者の方は、階間部の断熱補強のため、写真の位置に断熱材を吹きつけています。階間部は一般的に木部だけとなり、断熱上の弱点になるためです。

 

考えてみると、一般的なグラスウール、ロックウール、セルロースファイバーなどの繊維系断熱材による充填断熱では、階間部の断熱補強はできません。

このような場合には、板状の断熱材を内側から貼り付けるか、木部の間に挟みこむ施工になります。(現実的にほとんど行なわれません)

 

断熱施工の依頼の際、階間部の断熱補強は特にお願いしていません。
しかし、こちらの断熱施工業者さんは良く分かっていますので、何も言わなくても施工して頂きました。さすが、断熱の専門業者さんです。

 

以前このブログで取り上げた、熱損失係数(Q値)・暖房エネルギー計算プログラムのQPEXでも、階間部の検討項目があります。

熱損失係数(Q値)・暖房エネルギー計算プログラムのQPEX

 

建物の熱損失係数Q値が1.0を切るような建物は、ほとんどが充填断熱と外張り断熱(付加断熱)の併用です。

 

これは、建物の性能を高めていくと、木部の熱橋を防ぐための施工が必要になるためで、その方法の1つとして外張り断熱が採用されます。

 

長くなりましたが、
「建物の性能が低いレベルでは木部は熱橋というほどでもないが、建物の性能が高くなるほど、木部の熱橋は無視できなくなる」
と言えると思います。

RC外断熱マンション、始まります。

2009年06月05日

RC外断熱の地鎮祭 地鎮祭。

 

今日から、賃貸用のRC外断熱マンションの建設が始まります。

 

ご依頼者が、快適性と耐久性を求めて辿り着いた、RC外断熱工法
完成すると、快適で長持ちする建物になることでしょう。

 

さくら事務所では、見積りから設計図書を初めとして、工事中も第三者としてしっかりと見る予定になっています。
物件が大きくなるほど、早い段階からチェックに入った方が、サービスの費用対効果は高くなります。
(仕様や図面の変更により、コストが大きく変化するため)

 

この物件でも、既にいくつものコストダウン例が・・・。
仕様の変更でコストを下げられた部分は、性能アップのための原資にしたいところです。

 

 

オマケ
地鎮祭の前、今回の物件近くで、2年前に工事中チェック+引渡しが終わったご依頼者とバッタリ。
工事中はご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。

断熱スクリーン(ハニカムサーモスクリーン)

2009年06月10日

断熱スクリーン(ハニカムサーモスクリーン) 午後から軽井沢で、施主検査の立ち会い。

 

写真はロールスクリーンのような目隠しと、窓の断熱強化を目的とした、断熱スクリーンハニカムサーモスクリーン

 

これをカーテンやロールスクリーンの代わりに取り付けると、熱的に弱いサッシ周りの断熱性を大幅に強化できます。

 

スクリーンの断面が中空になっていて、断熱性が高まる仕組み。
断熱性は厚手のカーテンよりずっと上。

 

設備屋さんが、この物件で採用した床下暖房の自然な暖かさに感動してみえましたが、この断熱スクリーンにより、快適性がより高まっていると思います。

「こんな光熱費はありえない」RC外断熱の居住者から

2009年07月30日

約1年前にお引渡しが終わった、過去のご依頼者からメールを頂きました。

 

外断熱の施工風景 物件は、都内に建つ鉄筋コンクリート(RC)外断熱。
断熱材の厚みは80mm前後(外壁仕上げにより異なる)、サッシはオール樹脂のLow-Eペアガラス。
右の写真は、当時の施工の様子です。

 

こちらの物件は当初、普通の内断熱の建物でしたが、弊社にご相談いただいたことで、(ごり押しで?)外断熱に変更となりました。 

 

メールによると、1年点検を行なった際、設計者にガス・電気代をお伝えすると、ビックリされたとのこと。
「この光熱費はありえない(ほど安い)」
とおっしゃっていたそうです。

 

物件の床面積が普通の一戸建ての4棟分くらいありますので、絶対的な金額だけで見ると普通の一戸建てより高いものの、1平方メートル当たりの光熱費で考えると安め。

100m2の一戸建てに換算すると、電気とガスの光熱費が、8月で10,000円未満、冬の1月で 12,000円未満に収まることになります。
ちなみに現在、暖房はガスの床暖房がメインになっています。設備の更新の際、暖房の熱源をガスからヒートポンプ温水器にすることでもっと安くなるでしょう。

 

外断熱を採用したことで、建築費のアップにはなりましたが、光熱費の削減、建物の耐久性の向上、快適性の向上という面で、大きなメリットになったのではないでしょうか。

 

RC外断熱を採用して頂いたご依頼者、設計者、施工者に感謝します。

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