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2008年度までに次世代省エネ住宅の比率を5割に高める

2004年07月11日

住宅産業向けの新聞を発行している、新建新聞社のホームページに、
国土交通省と経済産業省が2008年度までに次世代省エネ住宅の比率を5割に高める、という目標を両省で推し進める
という記事が載っていました。

次世代省エネルギー基準というのは、住宅の省エネルギーを促進させるために、住宅の断熱・気密・日射遮蔽の性能などを定めたもので、1999年3月30日に告示されました。

次世代省エネルギー基準では、冷暖房の負荷によって、日本を6つの地域に分類しています。
北海道のような寒い地域が(いち)地域、沖縄のように温かい地域は、VI(ろく)地域に分類されています。

東京、千葉、埼玉、神奈川、大阪、福岡など、日本の人口の 約8割(約1億人)が住む地域は、IV(よん)地域です。

新建新聞社の記事中には、
「国交省では、住宅性能表示制度を利用した住宅のうち21.5%が次世代省エネレベルの等級4を取得しており(2002年度)、その率が上昇傾向にある」
とありますが、そもそも、住宅性能表示制度を取得するのは比較的性能の良い住宅です。

詳しい統計を見た事はありませんが、日本全体では、次世代省エネ基準をクリアしているのは、新築の3割以下ではないかと思います。次世代省エネルギー基準の住宅を作る経験・知識を持った人は業界では比較的少数派と言えます。

次世代省エネルギー基準において、I地域や、II地域など寒い地域は諸外国の基準と比べるとほぼ同等あるいはそれ以上であり、少し厳し目の基準になっています。


しかし、IV地域以南の基準は、次世代省エネルギー基準を満たす住宅を常日ごろ建てている業者にとっては結構甘めです。つまり、慣れている業者にとっては、「余裕でクリアできる基準」という事です。

次世代省エネルギー基準になると、住まいの何が変わるか?
熱が逃げる割合が一番大きいのは窓などの開口部なので、サッシは複層ガラス(ペアガラス)が、今より一般的になるでしょう。アルミサッシよりずっと断熱性の高い、樹脂サッシの割合も増えます。また、断熱材の厚みも厚くなります

現在、関東近辺のマンションの断熱は、現場発泡の物が多く、壁面部分の断熱材の厚みは 25mmが一般的ですが、次世代省エネルギー基準を満たすためには、35mm以上必要です。

鉄骨造の場合、次世代省エネルギー基準を満たすためには、基本的に外断熱工法を採用することになります。この時の断熱材の厚みは、最も性能の高い種類の物を使っても、壁面で 50mm以上、屋根面で 115mm以上は必要です。(IV地域の場合)

戸建ての一般的な木造住宅の場合、断熱材にグラスウールの16kという種類を使うと、次世代省エネルギー基準を満たすためには、壁面には 100mmの厚みが必要です。(IV地域の場合) 北海道の場合には、150mm必要です。

「国が急に住宅の省エネルギーに本腰を入れはじめたのはなぜか?」と言うと、次世代省エネルギー基準を満たせない住宅が一般的であると、京都議定書で定めた温室効果ガスの排出量目標を達成出来ないからです。

新建新聞社の記事の中では、"状況次第では「次世代基準の義務化も選択肢としてはある」(国交省)"とあります。
次世代省エネ基準をクリアする性能の住宅であれば、結露に悩む事はほぼ無くなるでしょうし、冷暖房費用も大幅に削減出来ます。

私は、欧米のように省エネルギーの基準を法律で義務化した方が良いと思います。現在、高いからと敬遠される場合がある複層ガラスも、省エネ基準の義務化が進めば出荷量が増え、価格も安くなるでしょう。
今から10年後には、日本では複層ガラスが常識になっているかも知れません。

外断熱への流れ

2004年10月13日

先日、青森県が環境調和建築の指針を作り、その中に外断熱が入っていることを知りました。
建物のライフサイクルを通じて地球環境と共に人の環境に配慮した建物を作ろうという狙いです。

今後、断熱改修は各地で増えるでしょうし、このような指針を定めるのはいいですね。

長寿命化の項では、

  1. 階高・床面積・床荷重等にゆとりを持たせることにより、内部機能の変化に柔軟に対応可能で、維持管理が容易になるよう検討する。
  2. 耐久性・耐震性等に優れた建築材料・工法の活用により、建築物の長寿命化を図る。
  3. 維持管理・更新が容易である等の合理的耐久性を有する設備機器・システムの採用を図る。

というのがありますが、いいですね~。
まだ詳しい解説は読んでいませんが、読むのを楽しみにしてます。

他の都道府県でも、同じような指針を作ってくれるといいのですが。

奥が深い断熱。屋根断熱、天井断熱、桁上断熱、床断熱、基礎断熱

2004年10月17日

最近、高気密高断熱や、外断熱など断熱に関する言葉を耳にすることが多いかと思います。高気密高断熱と謳っていても、性能を見るとそうでないのもありますし、外断熱と言っていても怪しいものもあります。

残念ながら、現在の建築業界ではこの断熱に関する知識が浅い人の方が多いのではないでしょうか。実際の現場でも、断熱材が全て適正に入っているのはかなりまれでしょう。

断熱材はその取り付け位置によって、工法の呼び方が変わります。
よく聞くのは、外断熱と内断熱。

これが木造だと、外張り断熱、充填断熱(柱間断熱)になります。

細かい部位で言うと、

 ・屋根断熱
 ・天井 〃
 ・桁上 〃
 ・床  〃
 ・基礎 〃
など多種多様です。

屋根断熱 天井断熱
屋根断熱 天井断熱

床断熱 基礎断熱
床断熱 基礎断熱

住まいの温熱環境を向上させるには、単に断熱材を厚くしただけではダメで、断熱、防湿(気密)、換気、冷房、暖房などをトータルとして考えなくてはいけません。

また、結露やカビを生じさせない為の知識として、水蒸気の理論や微生物の理論が必要になります。
温度に関しては熱理論(熱工学)、換気に関しては換気工学や流体工学が、そして外気条件としての気象学、冷温の熱源としてエネルギー論など、幅広い知識が必要となります。

このように考えると、断熱というのは非常に奥の深いものです。

私は、断熱を学んでいくと、最終的には住む人の健康と地球環境としてのエコロジーにたどり着くと思います。

断熱性能や気密性能など、建物の性能を上げれば上げるほど、エネルギー密度の低い自然エネルギー(太陽熱・光や、地熱など)を利用しやすくなります。この辺りをシュミレーションするのはなかなか面白いのではないでしょうか。

現実的には、日本の建物の性能はあまり上がっているとは言えません。
建物の性能を上げるのは、小さい頃からエコロジーや地球環境について学び、コンピューターも比較的得意(各種シュミレーションに有利)な、今の20~30代の世代が頑張らなくてはいけないと密かに思っています。

音更町で見かけた断熱改修現場 オーストリア・ウィーンで見かけた断熱改修現場
北海道 音更町で見かけた断熱改修現場 オーストリア・ウィーンで見かけた断熱改修現場
(木造軸組工法。室内のリフォームと併せて、押出発泡ポリスチレン3種 50mm厚を外貼断熱工法で断熱改修。サッシも樹脂サッシへ) (かなり古いレンガ造の建物。レンガをモルタルで平らにした後、発泡スチロール 75mm厚を、湿式外断熱工法で断熱改修。固定はビス。赤いのは塗り壁の下地となる樹脂のメッシュ)

屋根だけ外断熱で、その他は内断熱のマンションは有効か?

2004年11月23日

最近、
「検討中のマンションは、(壁は内断熱で)屋根だけ外断熱なのですが、これってどうなんでしょうか?」
というご質問を何度かいただきましたので、お答えしたいと思います。

現在作られているマンションは、外壁部分は内断熱であっても、屋根は外断熱にしてあるのがほとんどです。

結論を言うと、現在一般的なマンションで、屋根だけが外断熱工法であっても、建物全体としては、あまり意味はありません。
理由は以下の3点です。

1.屋根の断熱材の有無・厚みが関係あるのは最上階の住戸だけ
2.屋根よりも、外壁の面積の方がずっと広い
3.根本的に、断熱材の厚みが薄い

それぞれの理由を、以下に書き出します。

1.屋上の断熱材の有無・厚みが関係あるのは最上階の住戸だけ

屋根の断熱が意味あるのは、最上階だけ マンションの屋上は、仕上げやその色にもよりますが、夏の時期には表面温度が60℃以上になります。80℃近くになることも珍しくありません。
この高い温度から建物を守るために断熱材を施工するのですが、屋根部分の断熱材の効果があるのは、最上階だけです。
最上階より下の住戸においては、屋根の断熱材が1メートルであろうと全く無かろうと、大きな差はありません。

例えば、5階建てのマンションにおいて、1~4階にお住まいの方にとっては、屋根の断熱が何であったとしても、住まいの温熱環境に大きな影響は与えないということです。


2.屋根よりも、外壁の面積の方がずっと広い

普通のマンションでは、屋根の面積よりも、外壁の面積の方が広くなります。これは、階数が増えれば増えるほど顕著になります。

幅20m、奥行き10m、階高3mのマンションがあるとします。それぞれ、階数が増えると外壁面積と屋根面積は以下のようになります。

部位 平屋建て 3階建て 10階建て 20階建て 30階建て
屋根の面積 200m2
外壁の総面積 180m2 540m2 1800m2 3600m2 5400m2
屋根:外壁 1:0.9 1:2.7 1:9.0 1:18 1:27

非常に簡単な計算ですが、10階建てでも外壁の面積は、屋根の10倍近くになります。
面積が狭い屋根だけ断熱材を厚くしても、面積が広い壁部分が低断熱では、意味がありません。


3.根本的に、断熱材の厚みが薄い

現在のマンションでは、屋根の断熱には35mmの厚みのポリスチレンフォームという断熱材を使うのが一般的です。この厚みだと断熱材の材料費は1平方メートル当たり1,000円程度で、建物全体からしたら、ほんのわずかな費用です。(ちなみに、一般的な床のフローリングは、1m2当たり数千円です。)

しかし、35mm程度の厚みでは断熱性能が足りません。
次世代省エネ基準をクリアするためには、最低でも80mm。理想としては、100mm以上が必要です。

断熱について分かっている設計者であれば、屋根の断熱厚みを35mmにするというのは到底考えにくいのです。
外断熱を採用する本来の目的は、高断熱化、つまり省エネルギーのためなのですから。(つまり、高断熱でなければ外断熱の必要は無いのです)

長くなりましたが、このような理由で、屋根だけ外断熱というのは建物全体としては効果は薄いと言えます。

大阪で外断熱マンションの打ち合わせ

2005年01月17日

大阪に行ってきました。

今回大阪に行ったのは、外断熱のマンションに関する打ち合わせのため。

その中で、あることを私が提案。その提案実現するかどうかは分かりませんが、実際に出来て、期待通りの性能が出たらかなり面白い物件になりそうです。

私の中では、特別不可能なことでは無いと考えているのですが、どうなることやら。いずれにせよ、外断熱でなければ実現不可能な方法です。

内断熱だ、外断熱だ といろいろ言われていますが、私が見ているのは外断熱を前提条件としたもっと先の話。
今回のケースが上手くいき、外断熱の普及に少しでも貢献できれば良いと思っています。

一戸建てで、断熱材の入れ忘れが多い個所とは?

2005年01月28日

一戸建てで、断熱材の入れ忘れが多い個所があります。

それは、床下点検口と小屋裏点検口の裏

この部分は、平面詳細図などを見ても、断熱の詳しい仕様が書かれていないことがよくあります。

布団に入っていても、足を出していると寒いのと同じで、家も部分的に断熱材が無いところがあると、全体として温かくはなりません。
点検口裏側の断熱材入れ忘れ
小屋裏の点検口を開いたところです。手で開いている点検口の裏側にも断熱材が必要です。

断熱がしっかりしているかどうかは、頭の中で家をいろいろな方向から切ってみて、断熱材を結んだ線が一筆書きできているかどうかで、判断できます。

一戸建ての内覧会の時には、ぜひチェックしてみてください。

京都で、外断熱の建物の冷暖房について打合せ

2005年02月03日

印南さんから連絡があり、急遽決まった京都での打ち合わせ。


のぞみに乗って約2時間半(雪のため到着は約10分遅れ)
地下鉄に乗り換えて、打ち合わせ場所の大学へ。

学生時代に、この大学の学生や先生と一緒に研究を行ったこともありますが、来たのは初めて。

打ち合わせの内容は、外断熱の建物の冷暖房について。


東京や大阪の暖房負荷というのは、スウェーデン(ストックホルム)と比べると4分の1程度しかない。しかし、暖房負荷が少ないといっても、東京や大阪でも暖房は必要で、必ず考えておかなければいけない。

日本には夏があり、30℃を優に超えるほど暑く、湿度も高い。エアコンは必須だ。賃貸のアパートでも、エアコンが無ければ借り手が遠のいてしまう。

スウェーデンやドイツ、ヨーロッパの多くの地域では、夏は湿気が少なく日本ほど暑くもないため、冷房はあまり深く考える必要がなく、冬をいかに快適に過ごせるかが重要になる。

夏の冷房(除湿)と冬の暖房。ここに、日本の建物の難しさがあると思う。
でも、その難しさを考えるのが面白い。

建物の外側の性能と、性能に投じるコスト。
建物の性能を上げたことによって、どれだけ冷暖房設備を小さくできるか?その設備の寿命は?メンテナンス費用は?交換費用は?実現可能なのか?
考えることはたくさんある。

最終的にどのような形になるか分からないが、現時点でも建物の性能は、一般的に建てられているものと比べ2倍以上の性能。
20年や30年ではなく、もっとずっとずっと先を見た建物です。

この建物がきっかけとなって、日本の住まいの品質がずっと高いものになったいいなと思っています。


袋入りグラスウール断熱材の施工方法

2005年02月19日

今日は品質チェックで、断熱材の確認。
前回伺ったとき、建物の精度を確認しましたが、良い精度に仕上がっていました。

ご依頼者と待ち合わせた後、どんな感じに仕上がってるかな~ と期待して行ってみると、あらら!断熱材の留め付け方法が全部間違っています。

誤った施工例 誤った施工例
柱の内側に断熱材が留め付けられています。 取り付け部分を拡大して見たところ。

日本で売られている一般的なグラスウールは、袋に入っており、両側に「耳」と呼ばれるビニールシートが2cmくらい出ています。正しい施工方法は、この「耳」を柱や間柱(まばしら)の上で重ね、ビニールシートを連続させなくてはいけません。
(ちなみに、このビニールシートは壁の中の結露を防ぐためにあり、防湿層(ぼうしつそう)といいます)

今回の物件では、グラスウールの「耳」が柱の中に入っており、ビニールシートが連続していませんでした。また、柱と柱の間隔に合わせて、グラスウールを切っていないため、室内側に膨らんでいました。

大工さんに、「これはマズいですよ。なぜこうしたのですか?」 と尋ねると、耳を重ねることも、その理由もご存知ない様子。しかし、このような事はたまにあること(本当はいけないのですが)なので、大工さんに正しい施工方法を伝えて全てやり直しです。

施工してあったグラスウールを全て取り外し、寸法を合わせながら再度取り付けていきます。
正しい施工にするため、私も服を着替えて工事に参加。

途中からは私だけでなく、ご依頼者も工事に参加。作業が終わる頃には、慣れた手つきで奇麗な仕上がりになっていました。
断熱材を取り付けるご依頼者
断熱材を取り付け直しているご依頼者(お施主さん)

 

断熱材修正前 断熱材修正後
before after
断熱材修正後 断熱材修正後
修正後の断熱材の様子1 修正後の断熱材の様子2

グラスウールのような繊維系断熱材の工事自体はそれほど難しいものではありませんが、本当に正しくやろうとすると、結構面倒です。現実的には、正しく施工されていない方が多いのではないでしょうか。

どんなにいい材料を使っていても、施工が間違っていては性能が100%発揮されません。
その材料にもいくつもの種類、メーカーがあり、工法も多数あります。家を作るというのは大変ですね。

長時間の工事、Sさん、お疲れ様でした!

北海道・札幌。大規模修繕で外断熱リフォームしたマンション。樹脂サイディング採用も。

2005年05月23日

今日は札幌で内覧会。これで、4ヶ月連続の北海道です。

始発の地下鉄に乗って、羽田空港へ。
いつもの朝は座れない電車も、始発ならラクラク座れます。

飛行機は予定通りに新千歳空港に到着。空港から現地まではあまり時間的に余裕がありませんでしたが、時間前に現地到着。
雨が降る中、早速チェックです。

お昼には、北海道らしいものを・・・と考えていましたが、時間があまりないことと、近くのお店がどこにあるか分からなかったことから、結局はコンビニ弁当。食べたらすぐに再開です。

小さな問題はいくつかありましたが、大きな問題はなく、5時頃にチェックは終了。地下鉄に乗って、札幌駅に向かいます。

電車に乗っている途中、ある物件のことを思い出して、札幌駅の1つ前で下車。(行こうと思っていたのですが、この時はすっかり忘れていました)

携帯で場所を調べ、警察署に寄って道を聞き、調査機材の入った重たいスーツケースを引きずりながら歩くこと、約30分。思ったより距離があり、途中で通り過ぎたのかと思っていたころ、ようやく現地に到着です。

外断熱改修マンション 到着したのが、右の建物。
明るい色と窓の感じから、一見ホテルのようにも見えます。
しかし、この建物は築31年、11階建て、約120戸の既存マンションです。
外壁に古さを感じないのは、昨年の末に大規模修繕が終わっているからです。
しかもその大規模改修は普通の外壁改修ではなく、「外断熱への改修」です。

開口部も断熱改修 開口部も断熱改修。既存サッシの外側にできる"新しい"外壁に、サッシを取り付けて二重サッシ化 この規模の大きさのマンションにおける外断熱改修は日本でも例がないため、建築や不動産の業界紙では幾度か取り上げられているマンションです。

外壁の仕上げは、塗り壁、樹脂サイディング、ガルバニウム鋼板の3パターン。
道路から塗り壁部分を軽く叩いてみると、コンコンと断熱材が入っている軽い音がしました。

樹脂サイディングは聞いたことがない方も多いでしょう。樹脂サイディングは、コーキング部分がないことからメンテナンスが少なくて済み、凍害に強く、軽く、施工しやすいというメリットがあります。
その利点から改修工事に向いており、個人的には、興味の高い外壁材です。

両側にあるのが樹脂サッシ 業界紙の記事によると、この大規模修繕は、外断熱改修をしない場合と比べて、3割弱のコストアップになったそうです。
しかし、外断熱にすることによって、建物の劣化そのものが遅くなるでしょうから、将来のメンテナンスや冷暖房費用の削減、快適性の向上など、長期的にみるとメリットは大きいでしょう。

大きなスーツケースを持って、建物の周りをいろいろ見ていた私の姿は、他からみるとちょっと怪しかったかも知れません。
すぐ近くに交番がありますが、職務質問はされませんでした。

建物を見て、フムフムと一人で納得したあと空港に向かいます。
帰りはいつも最終便でチケットを押さえていますが、できるだけ早い便に変更します。
しかし、8時30分発は満員。
平日なのになぜ?と思っていると、その次の便が機材の関係で欠航したからでした。仕方なく最終便の1本前の便に乗りこみます

雨の影響で東京の近くで多少揺れましたが何事もなく無事到着。
おつかれさまでした。

外断熱のマンションと内断熱のマンションを外からサーモグラフィカメラで見る

2005年06月13日

建物調査(インスペクション)で使う機材の中に、サーモグラフィカメラがあります。サーモグラフィカメラは、熱を可視化する装置です。

私がサーモグラフィカメラを初めて使ったのは、中学生の頃。
父親が仕事で使うために家にあったので、いろいろ遊んでいました。
しかし、装置は重たく、部品が外国製のために、操作画面は全て英語。起動するまでに時間がかかり、反応速度がとても遅くて残像がずっと残っていました。

さくら事務所にあるサーモグラフィは、導入時に最も新しいものでしたが、昔のものと比べるととてもコンパクト。反応速度がとても速くて、最初はビックリしました。
部品も国産のため、操作画面が日本語で分かりやすいのもいいですね。

内断熱マンションと外断熱マンション 事務所内では、
「イソップのおもちゃ」
と呼ばれるこのサーモグラフィカメラ。
おもちゃぶりを発揮すべく、冬の寒い季節にいろいろ撮っていました。

これは、いくつか撮った熱画像のうちの1枚。
ほぼ同時期に建てられた、普通の(内断熱)マンションと、外断熱マンションの外観です。撮ったのは、太陽の影響がない深夜です。

写真左側が、普通の内断熱マンション。右側が外断熱のマンションです。
右側の方が全体的に温度が低く、熱があまり逃げていないことがわかります。

今度は、真夏の暑~い時期に、いろいろ撮ってみようと思っています。

断熱のキホン。熱的に弱い部分を作らない

2005年08月29日

建物を断熱するときのキホンとは何でしょうか。

私は、「(熱的に)弱い部分を作らない」 ということだと思います。

家のカタログや広告を見ると、壁に断熱材を○○mm入れていますなどと書かれているときがあります。確かに、絶対的な性能として断熱材の厚みは必要です。

しかし、家の寿命を短くしてしまう 「 結露 」は、断熱材が最も厚い部分では起きません。

結露は断熱材が薄いところ、断熱材が入っていないところのような、熱的に弱い部分に起きます。断熱材の最大厚みは関係ないのです。

住まいの断熱性能というのは、図面の上で決まります。
実際の建物が、図面通りの断熱性能を持っているかどうかの簡単な計測方法は現在のところありません。

断熱性能というのは、図面の性能が最大で、実際の建物でそれ以上になることはありません。
逆に、施工がいいかげんだと、簡単に断熱性能は落ちてしまいます。

新築や既存(中古)の建物調査(インスペクション)に行ったとき、断熱材がしっかりと入っていない現場というのは、実はよくあります。

長持ちする住まいを作るためには、しっかりとした施工が欠かせませんが、残念ながら、現在の日本では、建物をつくる業界側が断熱に関して詳しいとは言えない状況にあります。

その一方、一部の先進的な業者さんは、世界の基準を超えるような住まいを作っています。

本当の技術を持った施工業者さんを探すためには、一般の方々がそれらを見抜く「目」を養う必要があるのです。

断熱工法の名称。内断熱と外断熱。中国で外断熱の高層タワーも

2005年09月02日

今回は、断熱の工法の名称をご紹介します。

▼鉄筋コンクリート造▼
 鉄筋コンクリート造(RC造)の建物には、2種類の断熱方法があります。

 1.内断熱(うちだんねつ)工法
 2.外断熱(そとだんねつ)工法

日本の鉄筋コンクリート造の建物は99%以上が内断熱工法で作られています。
イラストで示すと、次のようになります。

blog20050902-01
内断熱工法
   blog20050902-02
外断熱工法

だだし最近は、壁部分は内断熱工法であっても、屋根部分だけは外断熱工法とする場合がほとんどです。

建物全てを外断熱工法で建てられたマンションが最近日本で増えつつありますが、数としてはまだまだ少数です。

逆に海外(特にヨーロッパ)では、外断熱工法が主流です。

お隣の中国でも外断熱工法が採用されている建物が増えており、日本より進んでいるとさえ言われています。
(外断熱を採用した、33階建ての高層タワーもあるようです)

断熱工法の名称 その2 充填断熱、外張り断熱

2005年09月05日

▼木造・鉄骨造▼
 木造および鉄骨造の建物には、2種類の断熱方法があります。

 1.充填断熱工法 (じゅうてんだんねつ こうほう)
 2.外張り断熱工法(そとばりだんねつ  こうほう)

イラストや実例で示すと、以下のようになります。

充填断熱外張り断熱


充填断熱

充填断熱
外張り断熱

外張り断熱







充填断熱 外張り断熱







充填断熱 外張り断熱

木造や鉄骨造の場合には、柱と柱の間が空洞になるので、その間に断熱材を入れる、充填断熱工法が一般的です。

木造や鉄骨造で、断熱材を外に貼る方法は、一般的に外断熱工法と呼ばれていますが、厳密には外断熱ではなく外張り断熱工法と言います。

断熱性能を高めるため、充填断熱工法と外張り断熱工法を組み合わせる方法もあります。これを、付加断熱工法といいます。

ただし、単に組み合わせれば良いものではなく、何も考えずに付加断熱を行うと、壁の中で結露が生じる恐れが出てきます。

断熱工法の名称 その3 屋根断熱、天井断熱、桁上断熱、床断熱、基礎断熱

2005年09月09日

前回の充填断熱工法、外張り断熱工法は、主に壁部分の断熱材の取り付け位置を示した言い方です。

これとは別に、屋根や天井、床や基礎などの断熱材の位置によっても、言い方が変わります。

 屋根・天井部分では、

 ・屋根断熱 (やね だんねつ)
 ・天井断熱 (てんじょう だんねつ)
 ・桁上断熱 (けたうえ だんねつ)

 基礎・床下部分では、

 ・床断熱  (ゆか だんねつ)
 ・基礎断熱 (きそ だんねつ)

があります。
それぞれをイラストで示すと、以下のようになります。

天井断熱桁上断熱屋根断熱
天井断熱 桁上断熱 屋根断熱
 
床断熱基礎断熱
床断熱 基礎 外断熱
基礎 外断熱
基礎 内断熱
基礎 内断熱

現在、最も多い組み合わせは、天井断熱+床断熱です。

ある建物において、有効に使える空間(暑すぎたり寒すぎたりしない空間)が最も広いのは、屋根断熱+基礎断熱の組み合わせです。

天井断熱の場合には、小屋裏は屋外と同じ扱いとなり、冬は寒く、夏は暑くなります。
しかし、屋根断熱の場合の小屋裏は、屋外よりも室内に近い状態になります。

それぞれの工法には、メリット・デメリットがあります。
一つ一つご紹介していきたいと思っていますが、長くなってしまいますので、徐々に解説していきます。

今回は、これまでにご紹介したそれぞれの工法の名前と、断熱材の位置を覚えましょう。

外断熱のメリット

2005年09月12日

▼なぜ、欧米諸国は外断熱に進んだのか▼

ドイツやスウェーデンでは、新築の建物は、ほぼ100%外断熱工法です。
他の先進国でも鉄筋コンクリート造の建物は外断熱が主流です。

それではなぜこのように欧米諸国は外断熱に進んだのでしょう。

答えは、1973年のオイルショックにより、建物も省エネルギーが求められるようになったからです。

このように、外断熱にする目的は、省エネルギーが最初の目的です。
建物を省エネにするためには、断熱材を厚くする必要があります。

内断熱の場合、断熱材を厚くするとその分だけ室内が狭くなるので、断熱性能を高くするには限界があります。

外断熱は構造体の外側に断熱材が来るため、極端に言えば、1mの断熱材を使っても、室内は狭くなりません。
他にも多くの利点があるため、欧米は外断熱が主流です。

▼外断熱のメリット▼

一般的に言われる外断熱のメリットは次のようなものです。

 ◇1. 結露が起きない
 ◇2. 省エネルギー性能が高い
 ◇3. 温度変化が小さい
 ◇4. 建物が長持ちする

1.結露が起きない

外断熱では、外側のコンクリートの温度が室温に近くなるので、日本の多くの地域では結露はまずおきません。
よって、結露を原因としたカビの発生は起こりにくくなります。
アレルギーの原因は7割前後がカビやダニだとされているので、アレルギー症状の低減にも有効です。

2. 省エネルギー性能が高い

現在のマンションの多くは内断熱工法で、断熱材の厚みは2cm前後です。
これに対し、外断熱工法では10cm前後の厚みの断熱材を使います。

このため、壁面から逃げる熱や、壁面から入る熱は内断熱工法の建物よりもずっと小さくなり、省エネルギー性が高くなります。

外断熱工法を採用する建物では、窓に樹脂サッシ+ペアガラス+特殊膜コーティング(Low-E)を使うことが多いため、アルミサッシ+シングルガラスと比べて、窓から逃げる熱も3分の1位になります。

全体で見て、外断熱工法の建物は、内断熱工法の建物と比べ、大きな省エネルギー性能が得られます。
省エネルギーになるということは、地球環境にも優しいということです。また、住まわれる方の快適性も大幅に向上します。

3. 温度変化が小さい

コンクリートはたくさんの熱を蓄えることができます。

1m角のコンクリートの塊があるとします。
このコンクリートの塊が1℃冷えるとき、1戸75平方メートルのマンションであれば、8戸分の空気を1℃暖めることができます。

内断熱工法の場合は、この熱を蓄えやすい性質が悪い方に働きます。

冬の場合には、暖房を入れたとしても、外壁のコンクリートが冷えたままです。コンクリートを暖めるまでには、多くのエネルギーを
必要です。もし、暖めたとしても外側に断熱材がありませんので、熱は外側から逃げていく一方です。
また、夏の場合には、昼間に温められたコンクリートは、夜にまでその熱を蓄えています。

外断熱工法の場合、コンクリートが熱を蓄えやすい性質が良い方に働きます。
一度温められたコンクリートは、なかなか温度が下がりません。
そのため、外気の温度が急激に変わっても、室内の温度変化は小さくて済みます。

4. 建物が長持ちする

コンクリートは鉄とほぼ同じ程度、熱で伸び縮みします。

例えば鉄で出来ている電車のレール。夏にはレールが伸びるためレールとレールの継ぎ目にあらかじめすき間をあけています。
この継ぎ目を通るときに、「ガタンゴトン」という音がするのです。

一般的な建物では、夏の時期に屋根面の温度が70~80℃になります。
冬には外気温と同じくらいの温度に下がります。

日本の多くの地域は年間で70℃前後の温度差が建物の外側にかかるのが普通です。

1m幅のコンクリートがあるとします。
このコンクリートは、温度が10℃上がると、0.1mm伸びます。

長さ40mのマンションがあり、年間の温度差が70℃だとすると、単純計算で28mmも伸び縮みすることになります。

実際には鉄筋が入っているので、この数字通りには伸びませんが、伸びようとする力は、コンクリートの中に働く力(内部応力)となって、ひび割れやひびの幅が広がる原因となります。

外断熱工法の場合、構造体の年間温度差が70℃になるということはありません。せいぜい、10℃前後です。

このため、伸び縮みによる力は、ずっと小さくなります。
また、外断熱工法の場合、雨や雪、直射日光、酸性雨が構造体に直に接することがありません。

これらのメリットにより、建物の長寿命化が図れます。

外断熱のデメリット 1

2005年09月16日

★外断熱工法のデメリット

今回からは、鉄筋コンクリート造の建物に使われる、外断熱工法のデメリットをご紹介します。

ネット上や書籍に、メリット・デメリットはいろいろと書かれていますが、私なりの考えを重点的に書きたいと思います。

一般的に言われる外断熱のデメリットは次のようなものです。

 ◆1. 価格が高い
 ◆2. 施工が難しく、デザインが制限される
 ◆3. 地震のときに外壁が揺られて心配

◆1. 価格が高い ◆
確かに、今販売されている外断熱のマンションは、一般的な内断熱のマンションよりも価格が1~2割高くなっています。
価格だけ見ると確かに高いといえます。

▲私なりの考え▲
全体価格だけを見ても、その建物が高いかどうかは分かりません。中身を見る必要があります。
車でも、軽自動車と高級車を値段だけで比較はできませんよね。

【断熱材の厚みの比較】
断熱性能を見てみると、一般的な内断熱マンションの断熱材は現場発泡ウレタン20mm程度です。
それに対して外断熱マンションではグラスウール125mm、あるいは発泡断熱材70mm程度です。断熱性能で比較すると、2倍弱~4倍弱の性能差があります。
断熱材が厚くなる分だけ、壁から逃げる熱も少なくなります。

あまり言われていませんが、現場発泡ウレタンは経年劣化が大きい種類の断熱材ですので、10年後の性能を比較すると、性能差はさらに大きくなります。

ポイント:外断熱の壁の断熱性能は、内断熱の2倍~4倍ある。

【断熱材の施工範囲の比較】
寒いときには、服を厚めに着ます。
でも、どれだけ温かい服を着ていても、足が裸足だったり、半そでだったりすると寒いですよね。寝るときも、どれだけ温かい布団だったとしても、足が出ていると寒いです。

実は、現在の内断熱マンションでは、場所や方角によって断熱材を薄くしたり、施工を省くケースが多々あります。これは、方角によっては、「結露しない」と考えられているからです。
これは、断熱に対する意識・目的・視点が、「結露防止」でしかないからです。

外断熱工法の場合、方角に関わらず建物をぐるりと覆ってしまうのが普通です。断熱の目的が「結露防止」よりずっと高いところにあるため、方角によって断熱を省くということはありません。

ポイント:現在の内断熱では、方位によって断熱を省く時もある
     外断熱では、建物を断熱材でぐるりと囲っている

【開口部の性能の比較】
一般的なマンションでは、窓の枠はアルミ枠です。ガラスがペアになっているところもありますが、シングルのマンションもまだたくさんあります。

しかし、窓枠がアルミだと、そこで結露が生じる可能性があります。
また、窓全体でみたとき、ガラスがペアであっても、枠がアルミの場合には、大きく断熱性能が向上するわけではありません。

ペアガラスであった場合でも、中の空気層の厚みによって性能が変わります。
空気層12mmのものが理想です。12mm未満のものは、12mmのものと比べ、1割弱断熱性能が低下します。

ペアガラスを採用しているマンションでも、多くはアルミサッシ+空気層6mmのものがほとんどです。

外断熱工法をよく理解している業者さんであれば、窓には樹脂枠+ペアガラスを使います。空気層は12mmのものが普通です。
また、ガラスにも熱が入ったり出たりしにくい特殊なコーティング(Low-Eコーティング)を施してあることもよくあります。

断熱性能では、

 ・ペアガラス(空気層 6mm)+アルミサッシ と、
 ・ペアガラス(空気層12mm)+樹脂サッシ+ Low-E

では、2倍程度の性能差があります。シングルガラスのアルミサッシと比べると約3倍の性能差です。

ちなみに現在のところ、価格はアルミと比べて樹脂の方が高くなります。

ポイント:開口部の性能は、シングルガラスのアルミサッシと比べると約3倍。
     樹脂サッシはアルミサッシと比べて価格が高い。

【耐用年数の比較】
構造体を断熱材でぐるりと囲む外断熱工法では、コンクリートの寿命が伸びるとされています。

内断熱マンションが3500万円、耐用年数50年、
外断熱マンションが2割高で4200万円、耐用年数が1.5倍に伸びて、75年だと仮定します。

単純計算ですが、耐用年数が20年延びただけで1年当たりの費用は、外断熱工法の方が15万円近く安くなります。

50年後に建て替えになった場合、当初の差額700万円程度では到底立て替えることはできません。

各所でもっと具体的で細かいな計算がされていますが、長期的に見て外断熱工法の方が安上がりになるのは間違いないでしょう。

先に述べたように、外断熱工法のマンション価格を一般的なマンションと比べてみると、現在は1~2割高くなっています。
しかし、各部の性能を取り上げてみると、性能の差は数倍になっているのです。

外断熱工法が採用しているマンションの価格が高いのは、内部の表面的な仕様にお金をかけているためではありません。

建物の本質的な、「構造体を含む外周り」にお金をかけて、高い性能を持たせているからです。

外断熱のデメリット 2 デザインが制限されると言われるが・・・?

2005年09月19日

◆2. 施工が難しく、デザインが制限される◆
 外断熱工法は施工が難しいので、デザインが制限されてしまう。

▲私なりの考え▲
日本の場合、断熱の施工によってデザインが制限されるというより法律によってデザインが制限されるケースの方がずっと多いといえます。

今お住まいの地域や、会社近くの建物の上部を見てください。
建物の上部が斜めになっている建物がありませんか?それらは、大抵、斜線制限というものに抵触しないようにするため、そのような形になっています。

そもそも、日本に外断熱では施工できないデザインのマンションがどれだけあるでしょう。
そのほとんど全ては、外断熱で十分施工可能です。

ヨーロッパは外断熱が主流ですが、ヨーロッパの建物のデザインは日本に比べて劣っているのでしょうか?私はそうは思いません。
建物の集合体である街並みを見た場合、日本の多くの地域の街並みは貧弱に感じてしまいます。また、日本の場合、どの都市に行っても大きな違いを感じることができません。

オーストリアの建築家、フンデルト・ヴァッサーをご存知でしょうか。
フンデルト・ヴァッサーの信念は、「自然に直線はない」で、本人が設計した建物は曲線が多く使われています。
しかし断熱には、当然のように外断熱工法が使われています。

ウィーンにある、フンデルト・ヴァッサー設計の集合住宅
blog20050919

このように、外断熱でも曲線のデザインは可能ですし、素敵な街並みをつくることも十分可能です。
問題は、「作り手の意識・やる気」です。

個々の施工者の技術をみると、ヨーロッパの施工者と比べて劣っているとは思いません。
むしろ、日本の多くの施工者の方が細かい気配りをしていると思います。

 現在建てられているマンションで、内断熱でないと施工できないデザインというのは、ほとんど無いと言ってもよいでしょう。

外断熱のデメリット 3 地震の時に心配?

2005年09月23日

◆3. 地震のときに外壁が揺られて心配 ◆
確かに、外断熱では外壁の持ち出しの長さが長くなります。
その為、地震の時に心配という懸念です。

▲私なりの考え▲
この問題に対しては、昔から取り付け金物を作っているところなどは既に対応していると言っていいでしょう。
今日では、全国各地のゼネコンや研究所に振動実験台があり、実際に振動実験を行ってデータを取っているところもあります。

地震対策に対しては、建築の「エンジニア」が対応する課題です。
しかし、この課題はそれほど難しいものではありません。

他の業界のエンジニアを見てください。

 ・宇宙にロケットを飛ばす
 ・時速 500kmで走るリニアモーターカーを作る
 ・ハイブリッドカーを作る
 ・カメラ付き携帯電話を作る
 ・デジタルカメラを作る
 ・カラープリンタを作る

パッと考えただけで、難しそうな課題です。
いずれも、「地震で外壁が落ちないようにする」という課題と比べて、高い精度、高い技術、理論を必要とします。

他の産業のエンジニアは、外壁支持の課題よりも、ずっと難しい課題に取り組んでいます。ひょっとしたら、このブログをご覧になっている方の中にも、エンジニアの方がみえるかも知れません。

私は建設業界のエンジニアが劣っているとは考えていません。
私が知っている、免震装置、制震装置、超高層ビルを研究・設計する大手ゼネコンの研究者は、凄い人ばかりでした。

大手ゼネコンの研究所であれば、この程度の問題はすぐに解決してしまうでしょう。
外壁支持の問題は、それほど大きな課題ではありません。

外断熱のデメリット 4 ~高い視点で見ると、外断熱しか選択肢は無い~

2005年09月26日

▼外断熱のメリット・デメリットは、作り手の視点で変わる▼
長くに渡って書いてきましたが、外断熱のメリット・デメリットは、作り手の意識・視点で変わります。

「結露防止」という視点で比べるなら、内断熱+折返しでも良いのです。
"結露が起きない範囲だから"といって、方角によって折返しを省くのも手段の1つだと思います。
ただし、今日建てられている建物において、日常生活をしていて建物に結露が出ないというのは、世界的に見て当然のこと。
外気温がマイナス30℃になる地域ならまだしも、日本の大多数が住む地域では、氷点下になる日さえ少ないのです。

外断熱と内断熱には、断熱材の物理的な位置によって超えられない壁があり、利用できる点、メリットが異なります。

blog20050926-01

 ・大きな省エネ  (内断熱で断熱厚みを増やすと部屋が狭くなり、現実的に高断熱は難しい)
 ・蓄熱容量の利用 (内断熱では躯体外側の熱容量を利用出来ない)
 ・建物の長寿命化 (内断熱では熱による躯体の伸縮みは防げない)
 ・地球環境の保護 (建物の長寿命化による、ライフサイクルコストの減少)

などという、より高い視点で見た場合には、外断熱しか選択肢がなくなります。

外断熱に本気で取り組んでいる人にとっては、「結露防止」というのは目的ではなく、当然のことであり、単なる通過点です。

モデルルームなどに行った場合、外断熱のメリット・デメリットを聞いてみてください。
その答えによって、どの程度の視点で「断熱」を考えているか、分かるかも知れません。

外断熱のこれから。外断熱の特許を申請しているゼネコン

2005年09月30日

▲外断熱のこれから ▲

内断熱工法と比べて、5%前後しか施工費がアップしていない外断熱マンションの話も耳にするようになりました。

私はたまに、特許庁のページで「外断熱」を検索し、各社の動向を調べています。

 独立行政法人 工業所有権情報・研修館:特許電子図書館サービス一覧
 http://www.inpit.go.jp/info/ipdl/service/
   「特許・実用新案の検索」から調べられます

今、外断熱のキーワードで検索すると、ここ数年のうちに大手ゼネコン・ハウスメーカーが、外断熱に関する特許を複数出していることがわかります。

その中には、要約だけを見ていても、魅力的なものがいくつもあります。
対外的には現在外断熱を行っていないところでも、内部的には着々と準備を進めているようです。

上記のサイトから見れるものの中には、

「断熱性能に優れ、グレードの高い石貼り仕上げを超高層建物にも支障なく適用可能な外断熱構造の外壁を容易に施工でき、外観やデザイン上の制約を受けることもない有効な外装パネルを提供する」

としているものもあります。

多くの購入予定者が外断熱工法の建物を求め、大手ゼネコンが採用に踏み切ると、他のゼネコンも一気に続くのではないでしょうか。

断熱方法 充填断熱工法

2005年10月31日

▼充填断熱工法 (じゅうてんだんねつ こうほう)▼

長かった断熱材のお話も終わり、今回からは断熱の工法についてです。

日本の木造および鉄骨造の建物で最もよく使われる断熱工法が

 充填断熱工法(じゅうてんだんねつ こうほう)です。
 柱間断熱工法(はしらかんだんねつ こうほう)とも呼ばれます。

日本の一戸建てのほとんど全ては、この断熱工法になります。

▼充填断熱工法とは?▼
鉄筋コンクリート造の場合、柱と柱の間には、コンクリートの壁があるのが普通ですが、木造や鉄骨造の場合には、柱と柱の間は一般的に空洞になります。

その空洞の中に、断熱材を詰め込む(充填する)のが、充填断熱工法です。

断熱材には、グラスウールやロックウールのような繊維系断熱材がよく使われます。

▼充填断熱工法のメリット▼
一般的に言われている、充填断熱工法のメリットは以下のようなものです。

 ◇1. 費用が安い
 ◇2. 変わった形状にも対応しやすい
 ◇3. 断熱材の厚みを厚くしやすい

◇1. 費用が安い
これは、工法というよりも使われる断熱材の種類によるものと言えますが、安価な繊維系断熱材がよく使われることにより、断熱に要する費用は安く済みます。

◇2. 変わった形状にも対応しやすい
充填断熱工法で最も使われる繊維系断熱材は曲げることが可能ですので、変わった形状にも対応しやすいとされています。

◇3. 断熱材の厚みを厚くしやすい
一般的な木造住宅の柱の太さは10.5cm~12cmです。
木造住宅での外張り断熱では、その支持方法から厚みに限界があるとされています。
充填断熱工法では、柱などの太さを変えることで、断熱材の厚みを容易に変えることができます。ツーバイフォー工法の場合、幅の広い規格材があるため、在来工法と比べて、より容易に断熱厚みを変更できます。

次回は充填断熱工法のデメリットについてです。
特に、実際の現場での問題点を指摘したいと思います。

断熱の方法 充填断熱工法 デメリット(問題点)

2005年11月04日

▼充填断熱工法のデメリット▼
充填断熱工法のデメリットと題しましたが、デメリットというよりも、実際の現場での問題点をお伝えしたいと思います。

▼充填断熱工法でよく使われるグラスウールには2種類ある▼

 充填断熱工法でよく使われるグラスウール・ロックウールには、大きく2種類あります。

 ・(ビニール)袋入りグラスウール
 ・裸のグラスウール

実際の写真はこちら

blog20051105-1 blog20051105-2
袋入りグラスウール 裸のグラスウール

▽袋入りグラスウール▽
袋入りグラスウールは、グラスウールがビニール袋に入っているものです。
日本の多くの地域で、グラスウールといえば、この、袋に入っているものが多く使われています。

ちなみに、このビニールの表側は壁の内で結露が起きないようにするためにあります。
裏面のビニールは施工がしやすいようにあるもので、小さな穴が開いています。
実は、裏面のビニールは無くてもかまいません。

▽裸のグラスウール▽
裸のグラスウールはその字の通り、袋などに入っていないグラスウールです。
海外では、袋に入っていない裸のものが主流です。

この裸のグラスウールを壁の中に押し込んだだけでは、壁の中で結露してしまうので、ビニールシートのように水蒸気の通りにくいものを、室内側に取り付ける必要があります。

ちなみに、一戸建てにおいて、高断熱を売り物にしている業者さんは、裸のグラスウールを好んで使います。
柱などにすき間なく入れることが出来るからです。

断熱の方法 充填断熱工法 デメリット(グラスウール、ロックウールの幅)

2005年11月07日

▼袋入りグラスウールのサイズ▼
木造軸組工法において使われるグラスウールで、一般的なサイズには以下のものがあります。

 幅 : 395mm、 430mm
 高さ:1370mm、2740mm

注目すべきは幅が2種類あることです。これはなぜでしょうか?

答えは、間柱~間柱、柱~間柱の大きく2つの寸法があるからです。

しかし、木造在来工法では、柱の大きさが 3.5寸(105mm)と、4.0寸(120mm)があるので、厳密に言うと、寸法パターンは以下のイラストのものがあります。

柱間の距離

上の例では、間柱(まばしら)を、30mmのもので書いていますが、間柱に、他の寸法を使う業者さんも多くみえます。その場合、柱と間柱の寸法も変わってきます。また、135mmや150mmの柱を使う業者さんがみえますが、その場合にも柱の間の寸法は変わります。

イラストを見ると、袋入りグラスウールの一般的な寸法、395mm、430mmでは過不足が出ることが分かります。

柱~柱が、455mm間隔で立つという、比較的少ないケースの場合には、グラスウールを少し切らないと、上手く納まりません。

▼工事現場でチェックしてみよう▼
袋入りグラスウールを壁の断熱材に使っている物件を見る機会があったら、430mmのものと、395mmのものの2種類が現場に置いてあるかご確認ください。

実は、430mmの寸法しか置いていない(仕入れていない)ケースが少なくないのです。この場合、柱と間柱の部分においては、グラスウールが若干余ってしまいます。

この場合、しっかりと寸法を合わせて切ってあれば良いのですが、押し込まれているケースがよくあります。
これでは、パンフレットに書かれている断熱性能は得られません。