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吸気口?それとも給気口?

2004年07月05日

昨年の 2003年 7月より建築基準法が改正され、24時間機械換気が実質的に義務化されました。一昨日に書いたのは、その給気口部分での問題でした。

時々、この気口を気口と書いてあるテキストなどがあるのですが、それは誤りです。


第1種と第3種方式24時間換気の種類には、その方式により 第1種から、第4種まであり、主に用いられるのは、第1種と第3種です。
第1種方式は、空気が入る部分と出て行く部分をそれぞれ機械で行うもの。第3種は空気が出て行く部分だけを機械で行い、入る部分は穴が開いているだけの方式です。

それでは、なぜ吸気口の表記が誤りであるのかというと、

・第3種方式では、空気の入口と出口はそれぞれ吸込みとなる為、"吸気"口では区別がつかない

・第1種方式では、空気の入口は押出し式となる

からです。



「吸気口」の言い方は、単に換気の方式・圧力等による区別でしかなく、計画換気の目的である「常時、空気の出入り口を明確にして、必要な量の新鮮空気を取り入れ、汚れた空気を排出する」ことを明確に表せません。
「きゅうきこう」という読み方は同じなのですが、漢字によって意味が違うので、日本語って難しいですね。

上記の理由により、換気の方式によらず、空気が入っている所は「給気口」、空気が出て行く所は「排気口」と言います。
水道でも、水が出てくる事を「給水」、出て行く事を「排水」と言いますね。それと同じです。

給気口と排気口給気口と排気口の取付け場所ですが、人が時間を過ごす時間が長い部屋(リビング)に給気口を、臭いや湿気の出やすい部分に排気口を付けるのが大原則です。

これを、ダクト(空気が流れるパイプのようなもの)の繋ぎ間違いなどで逆にしてしまうと、トイレの臭いなどがリビングなどに流れてしまい、リビングに居る子供から、
「お父さんのおなら、くさーい」と言われてしまいますので、注意しましょう。

給気口と排気口の位置給気口と排気口の具体的な取付け位置ですが、平面上でお互いを出来る限り離して取り付けるのが原則です。これは、換気経路を、出来るだけ長くするという目的です。
左の平面の例では、給気口は入り口の対角線上にある、の位置が理想です。の位置だと、部屋の奥部分(着色部分)の換気がされにくい為、湿気が溜まった場合、窓部分で結露が生じやすくなります。

排気口の位置は、トイレの場合、のように、出来るだけ奥に近い部分が理想です。トイレのドアに近いの位置だと、トイレの中で生じた臭いがこもる原因となります。

立面上の位置では、給気口は出来るだけ高い位置が理想です。あまり床面に近いと、天井部分の換気が出来なくなります。

機械換気システムが原則義務化されてようやく1年です。換気設計の経験が少ない業界関係者も少なくありません。換気装置をただ単に取り付けただけでは効果が薄いので、給気口と排気口の取付け位置には注意しましょう。

スウェーデンの給気口右の写真は、スウェーデン ストックホルムで泊まった、af Chapmanの部屋にあった24時間換気の給気口。換気方式は第3種方式で、取付け位置は先の原則通りでした。給気口の右側に見えるパイプは、暖房用(セントラルヒーティング)のものです

ちなみに、スウェーデンの空気質の基準は世界で最も厳しいとされています。難しい話になりますが、スウェーデンをはじめヨーロッパでは、第1種の全熱交換式は、衛生上の理由から用いられていません。日本ではまだ機械換気の歴史が浅く、全熱交換式を用いている物件も多々ありますが、私は今後の全熱交換式換気装置でのトラブルを懸念しています。

24時間換気(24時間計画換気)の換気経路

2004年07月06日

昨日日記の中で、トイレのニオイなどがリビングなどに流れてしまう例というのは、普通はあまりないと思って書いたのですが、今日そのような現場を見る事になってしまいました。

好ましくない換気設計の例平面図は、右のような感じになっていました。
は給気口を、は排気口を示します。オレンジの矢印は、空気の流れです。
そもそも、給気口の数が1つと、極端に少なくなっています。換気経路は、居室が最優先になっておらず、排気口が居室の入り口側となっているため、居室の奥側は換気されません。

最も問題なのは、トイレに排気口も、局所換気扇も設けられていない事です。このままでは、トイレで用をたした後、ニオイ抜きの為トイレの窓(黄色い四角の部分)を開けると、そこが給気口の役目を果たし、トイレのニオイが居室に引き込まれてしまいます。これはいただけません。

一般的な換気設計の例次に示すのが、一般的な換気のルールに従った換気経路の設計例です。
居室には常に新鮮な空気が流れ、汚れた空気は常にトイレなどのニオイが出る部屋(汚染室といいます)から排出されます。
トイレの窓を開けたとしても、居室に空気が逆流するような事はありません。

今回の失敗は、換気計画を立てた方に、換気の知識がほとんど無かったからだと思います。ダクト配管後に換気経路の修正を行う為には、大変な労力を必要とするので、設計段階での十分な検討が必要です。

熱交換式の24時間換気装置と、樹脂サッシLow-E ペアガラス、どっちがお得?

2005年01月11日

窓がシングルガラス・アルミサッシのマンションに、熱交換式の換気装置がついていて、「省エネ」とうたっている時があります。

熱交換式の換気装置とは、24時間換気の排気から熱(又は熱と水蒸気(潜熱))を奪い、給気される空気を温める装置です。

熱交換は、建物全体の断熱性能が高い物件では有効ですが、断熱性能が低い建物では費用対効果が薄いとされています。

ここで、一般的な断熱厚みをもつ内断熱のマンションにおいて、
熱交換装置を取り付けた場合
換気装置は変えず、サッシだけをLow-E樹脂ペアガラスに変更した場合
について概算してみます。
(計算条件は、2004年9月28日の日記に準じます。熱交換機は全熱式ではなく、安全な顕熱式、効率は70%と仮定。)


熱交換機の取り付けと、樹脂サッシLow-Eペアガラスの変更、どっちがトクか

上のグラフで、バーが短いほど、省エネです。

今回の仮定条件では、熱交換装置を入れるよりも、サッシを全て樹脂サッシのLow-Eペアガラスに変えた方が省エネになることがわかります。

ちなみに、
 ・窓の数が多い場合
 ・ハイサッシが使われている場合
には、この差はもっと顕著になります。

熱交換機を使う場合のデメリットは以下のようなものがあります。

フィルタ交換費用がかかる
定期的な清掃を行わないと、効率が低下する
 ちなみに、効率の良い物ほど目詰まりしやすい
運転費用がかかる
汚染空気の5%程度は新鮮空気と混じってしまう
 (その為、換気量を多めにする必要がある。[参考サイト])

熱交換機は、15年前後で寿命が来て交換費用が必要ですが、樹脂サッシのLow-Eペアガラスはもっと長寿命です。運転費用はゼロですし、メンテナンス費用もほとんどかかりません。
また、樹脂サッシ+Low-Eペアガラスなら窓面に結露はまず生じないでしょうが、サッシの性能が低いまま熱交換機を導入しても窓の結露は防げません。

順番を重要度から考えると、熱交換装置を入れる前に、壁や窓の高性能化のほうがずっと先だと思いますが、いかがでしょうか?

「換気」と「通風」と「漏気」

2007年04月02日

今回からは、24時間計画換気についてお伝えしようと思います。
まずは、言葉の意味から明確にしていきましょう。

●「換気」と「通風」と「漏気」

 最初に覚える必要があるのが、下の3つです。

 ・換気(かんき)
 ・通風(つうふう)
 ・漏気(ろうき)

 この3つは、建築の温熱環境の分野では『明確に』区別されています。
建築関係者でも、換気と通風がゴチャゴチャになっていることが多い(というか、ほとんど)ので、このブログを読んだ後からはしっかりと区別しましょう。

「換気」とは

2007年04月06日

換気」は、室内の空気をきれいに保つことが目的です。

居住者の意思や必要に応じて、風量を自由にコントロールすることができ、「ventilation」と訳されます。
通風と明確に区別するため、「計画換気」 とも呼ばれます。

気流の向きは、居室から汚染室への一方通行で、この向きは建物の設計段階に決めます。
設計時には、給気口と排気口の位置と数、空気が流れる経路などを考えます。

気流の速さは、1秒間に20cm以下で、気流を感じない速さです。
換気回数は、1時間に 0.5回が、法律で定められている基準です。

海外の基準においても、換気回数は0.5回/h前後に決められており、日本の基準が特別に甘かったり、厳しかったりする訳ではありません。

「通風」とは

2007年04月09日

通風」は、窓を開け、外気の風を利用して体感温度を下げたり、涼感を与えたりするのが目的です。
通風は、「draft」や「cross ventilation」と訳されます。

通風の目的は、体に風を当てて体感温度を下げたり、涼感を与えることですから、気流の向きはあまり考えていません。
また、屋外の風の向きによって、状況が左右されます。

Blog2007040901 そのため、通風で計画的に空気を入れ替えるといったことは、非常に難しいといえます。
雨が雪が降っているとき、台風が来ているときなどには、窓を開けて空気を入れ替えるというのは出来ません。
また、風が強いと空気の入れ替わる量も多くなりますが、必要以上に空気を入れ替えることは、エネルギーを多く使うことになります。

通風では、居室から汚染室 のような空気の流れが作れないため、トイレの窓を開けたら、においが外に出て行くのではなく、リビング側に流れてしまうといったことも考えられます。

気流の速さは、1秒間に1.0m前後。気流を感じる速さです。
換気回数は、風の強さによって変わり、1時間に5回や、10回といった量になります。
換気と比べるとずっと多いといえます。

「漏気」とは

2007年04月13日

漏気は、最もなじみがない言葉ですね。
分かりやすい言葉でいえば、「すき間風」とも言えます。

漏気には目的はありません。本来は必要のないものです。
漏気は、「air leakage」と訳され、空気漏れと言う意味です。

漏気は、居住者が意図した空気の出入りではありませんので、調整はできません。
また、向きもわかりません。すきま風を思い浮かべると、それがわかるでしょう。

冬の漏気は不快なものであるために、それを防ぐために、「隙間テープ」などというテープもあります。
冬のホームセンターで、それらの商品が売ってあるのを見た方もいるでしょう。

換気と通風がゴチャゴチャになっていることは多いですが、換気に加え、通風と漏気も、混ざっていることがあります。

古い日本の家は、隙間風の換気によって空気が入れ替わる」といった類のものです。
確かに古いお寺などは隙間だらけで、空気がたくさん入れ替わるのですが、それは竣工当初から意図しているものではありません。
経年劣化によってすき間が広がっているケースがほとんどです。

省エネ住宅に興味がない建築関係者は、古い建物に関してこの辺りを美化しすぎる傾向があります。
例えば土塗り壁1つ取っても、建てた当初には柱と壁はすき間なく施工しているはずです。当初からすきま風によって空気が入れ替わることを意図しているのであれば、そのような施工は行わないでしょう。

従ってこのようなケースの場合、言葉の意味を考えると換気ではなく、漏気です。
窓や障子を閉めた状態なら、通風でもありません。

いずれにせよ、住まいの省エネのためにも、快適性を上げるためにも、漏気はできるだけ無い方が理想です。

「換気」と「通風」と「漏気」 一覧

2007年04月16日

これまで、換気と通風と漏気について書いてきました。
文章だけだと分かりにくいと思いますので、一覧表にしたのが、下の表です。

-項目-換気通風漏気
英訳ventilationdraft ,
cross ventilation
air leakage
目的 室内の空気を、
清浄に保つ
体感温度を下げる
涼感を与える
なし(すき間風)
換気回数 0.5回/h 5回/h 前後 わからない
居住者による
調整
自由に細かく調整できる ほぼ調整できる 全く調整できない
(不快)
気流の速さ 20cm/s 以下
気流を感じない程度
1.0m/s 以上
気流を感じる
わからない
気流の向き 居室 → 汚染室の向き。
一定方向。
設計時に計画できる。
人体に風が当たればよいので、気流の向きは気にしない。 わからない

「給気口」と「排気口」

2007年04月20日

24時間計画換気の設計をするときには、空気の入口と出口の位置がとても重要です。

このとき、

 新鮮な空気の入口を「給気口(きゅうきこう)」
 汚れた空気の出口を「排気口(はいきこう)」

といいます。

これは、水道において、

 綺麗な水が出てくることを、給水
 汚れた水を排出することを、排水

と言うことと似ています。

時々、「給気口」を「吸気口」としていることがありますがこれは誤りです。
今後ご説明する換気方式によっては、空気を吸うのではなく、押し出すこともあるからです。

先ほどの水道の例でも、綺麗な水が出てくることを「吸水」とはしませんね。
これは、水の出てくる方法(押し出しているのか、吸い込んでいるのか)はどうでもよくて、綺麗な水かどうかだけを気にしているからです。
また、汚れた水を送ることを、給水ともいいませんね。

24時間計画換気の「給気口」も、綺麗な空気が入って来る場所なのかどうかを気にしているのであって、空気を移動させる方法は、はっきり言ってどうでも良いのです。

従って、「給気口」を「吸気口」と設計図に書いてくる設計者には注意が必要です。
省エネや換気の知識が乏しい可能性が高いからです。言葉の使い方1つを見ても、設計の能力や知識というのが分かるときがあります。

綺麗な空気が必要な場所はどこ?

2007年04月23日

それでは、住まいで新鮮な空気が必要な場所はどこでしょうか?
トイレ?それとも、階段?

そんなことはありませんね。
住まいは人が住むためのものですから、新鮮な空気が必要なのは人が集まるリビングや、居室になります。

マンションでは、この原則がほとんど全ての物件で守られています。

しかし、一戸建てでは時々この原則が守られていない物件を目にします。
階段に給気口を取り付けていることを標準仕様としている物件もあります。
しかし、いつも階段に居る人は少ないでしょうから、新鮮な空気を誰のために入れているのか分かりません。

海外では、給気口の位置と排気口の位置を明確にしている決まりがある国もあります。しかし日本の法律はそこまで厳しくないので、換気設計は物件の設計者の知識によって、出来上がりが左右されてしまいます。

汚れた空気を出す場所はどこ?

2007年04月27日

リビングや居室で人が吸った空気は、円滑に排出しなくてはいけません。
汚れた空気を排出するために都合の良い部屋はどこでしょうか。

それは、トイレや浴室ですね。

トイレはニオイの出る場所ですから、リビングや廊下にニオイが出ていっては困ります。
空気の流れを一方通行にして、トイレからは空気が出て行くだけにしなくてはなりません。

浴室も空気が出て行くだけの方が都合がいいですね。
換気の量が増えれば、浴室も乾きやすくなります。

暖房を使うリビングなどの居室に給気口を設け、浴室に排気口を設けると、リビングなどであたためられた空気が浴室に流れ込むことになるため、浴室の温度が上がるという利点もあります。

給気口と排気口の具体的な取り付け位置 ~平面~

2007年04月30日

給気口と排気口の具体的な取付け位置ですが、

給気口と排気口は、出来る限り離して取り付ける

ことが原則です。

これは、空気が入れ替わる部分を多くして、空気の「よどみ」をできるだけ少なくするためです。

実際には、お部屋に入ったとき、対角線上に位置する壁に給気口を取り付けると良いでしょう。

建物の建築地によっては、近くに騒音源があるときがあります。
そのような場合には、騒音源がある壁面を避けると、給気口から入ってくる音の量を少なくできます。

排気口は、トイレなどの空気が汚れやすい場所に取り付けるということを前回お伝えしました。

このとき、排気口をドアのすぐ上に取り付けると、トイレで生じたにおいがこもる原因となりますので、トイレの便器上など、ドアからできるだけ離れた場所に取り付けましょう。

なお、この場合、トイレに気密性の低いサッシ(ジャロジー窓や引き違い窓)を使うと、サッシ部分から空気が入ってしまい、換気経路が短絡してしまいますので、これらのサッシの使用は控えるのが無難です。


~設計例~

換気設計

上の例では、給気口は入り口の対角線上にある、の位置が理想です。
の位置だと、部屋の奥部分(着色部分)の換気がされにくい為、湿気が溜まった場合、窓部分で結露が生じやすくなります。

排気口の位置は、トイレの場合、のように、出来るだけ奥に近い部分が理想です。トイレのドアに近いの位置だと、トイレの中で生じた臭いがこもる原因となります。

給気口と排気口の具体的な取り付け位置 ~立面~

2007年05月04日

給気口と排気口の具体的な取り付け位置の原則は、平面と同じです。

給気口と排気口は、出来る限り離して取り付ける」ことを意識して下さい。

建物調査(インスペクション)や、内覧会に行くと、ときどき給気口が床面近くに取り付けられていることがありますが、あまり床面に近いと、天井部分の空気が入れ替わりにくくなります。

そのため、家具などの位置を考慮しながら、給気口は高めにしておくと良いでしょう。

~設計例~

24時間換気

立面上の位置は、給気口は出来るだけ高い位置が理想です。
あまり床面に近いと、天井部分の換気が出来なくなります。

部屋を間仕切るドアには、アンダーカットという、ドアの下側にすき間のあるものを使い、空気が通り抜けるようにします。

このように、立面上においても平面の時と同様に、給気口と排気口をできる限り離して取り付けることを意識すると良いでしょう。

温度ではなく、湿度を下げるためのエアコン。顕熱、潜熱、全熱(エンタルピ)

2007年08月19日

幾分か涼しくなったと思いましたが、夜に降った雨で少し蒸し暑くなりました。

暑い季節には、エアコンを使う方が多いでしょう。寝苦しいため、寝ているときもエアコンをつけっぱなしの方もいるでしょう。

 

さて、そのエアコンですが、エアコンには温度を下げる役割と、湿度を下げる役割の2つがあります。これは、空気の中には水蒸気の形で水分があり、それが熱を持っているためです。

単純な、乾燥した空気だけが持っている熱を顕熱(けんねつ)

空気の中にある水蒸気が持っている熱を、潜熱(せんねつ)といいます。

そして、顕熱潜熱の合計が、全熱(ぜんねつ)で、エンタルピとも呼ばれます。

 

さて、エアコンの仕事は、どちらの役割が大きいのでしょうか。

 

今から3日前、8月16日の正午の東京は、気温36.5℃、湿度51%でした。これは、不快指数という指数で示すと87となり9割以上の人が暑さを感じる状態です。
また、この空気1m3に含まれる水分の量(絶対湿度)は、21.8gで、エンタルピは20.4kcal/kg(86.9kJ/kg)という値になります。

この空気を、そのまま部屋や会社の事務所に取り入れたら、暑くて暑くて仕事がはかどりませんので、エアコンで28℃に冷やします。

 

事務所で働く人が不快に感じないよう、不快指数を76以下にすることを目標にし、湿度の設定は50%にします。
このとき、気温28℃・湿度50%の1m3に含まれる水分の量(絶対湿度)は、13.6gで、エンタルピは13.9kcal/kg(58.0kJ/kg)という値になります。

 

顕熱比 前置きが長くなりましたが、8月16日正午の東京の外気を、仕事がしやすい環境にするためにエアコンを動かすと、電気代の内訳(エアコンの仕事の内訳)は右のグラフのようになります。


グラフから分かるように、エアコンの仕事は、熱を下げるよりも除湿の方が割合が大きくなっています。
高温多湿と言われる日本の夏では、空気中の水分を取り除くためのエネルギーが、かなり大きくなります。
エアコンの室外機のホースから出てくる水は、エネルギーの塊と言っても良いでしょう。

 

ちなみに24時間換気は、1時間に0.5回、部屋の空気が変わるように計算します。つまり、1時間で部屋の半分の空気が新鮮な空気と入れ替わる訳です。

 


ここから、エアコンのドレイン水から出てくる水の量がわかります。試算してみましょう。

8畳間の部屋の体積は約32m3。1時間に0.5回ということは、1時間に約16m3の空気が入ってくることになります。

 

先の例で、気温36.5℃、湿度51%の空気1m3には、21.8gの水分が含まれていると書きました。この空気を28℃、50%にするためには、13.6gまで水分を減らす必要があります。
従って、(21.8g - 13.6g) × 16m3≒130gとなり、ドレイン管からは1時間に、約130ccの水が出てくることがわかります。これは、ヤクルト2本分に相当します。24時間では3リットルを超えます。

8畳の部屋でこの量です。
延べ床100m2の家を同様に計算すると、1時間に約1リットル。24時間では24リットル程度になります。かなりの水分量ではないでしょうか。

 

世の中に、「夏涼しい」と謳う建物の工法はいくつもあります。
壁の中を空気が通るとか、床下の冷たい空気だとか、そのような工法です。

 

それらの資料を良く見るとわかると思いますが、言及しているのは「温度」つまり、顕熱だけ。冬の暖房の場合、顕熱だけ考えれば省エネは問題ありません。
しかし、高温多湿といわれる日本の夏では、エネルギーの消費を抑えるためには、これまでの例でも分かるように、湿度潜熱)への対策の方が重要です。
それらの工法に関わっている建築関係者の中には、顕熱潜熱の区別さえ分かっていない人も多い(というか、そちらの方が多い)ので要注意です。

 

では、建物側で湿度のエネルギー(潜熱)をどのように削減できるのか?
これが難しい。

 

日射を遮るための庇やすだれ、太陽の熱を反射させるLow-Eガラスなど、建物そのもので対処できるものは、顕熱のみ。
湿度を取り除くためには、エアコンのような機械設備を使わないと困難です。

 

除湿のため、地面に穴を掘り、そこに外気を送り込んで地熱で冷却するクールチューブという方法もありますが、結露水が底に溜まってカビが生じる問題や、人口が多い地域ではその穴を掘る敷地の問題から現実的に難しいといえます。

 

イギリスの建築批評家、レイナー・バンハムは、1965年に書いた、「環境としての建築―建築デザインと環境技術」という本の中で湿度について以下のように書いています。


 環境管理に包含される全ての要因のうちで、湿度はほとんど建築の歴史にとって最も有害で、微妙で、制御しようにもとらえどころのないものであった。


このように、エアコンが出来る前までは、湿度をコントロールすることがいかに難しかったのかが分かります。

 

エアコンや全熱交換機などの設備ではなく、建物そのもので除湿にかかるエネルギーを減らす方法として、余分な水蒸気を入ってこなくするために、気密性能を上げるという方法があります。
(厳密には、気密性能ではなく防湿性能ですが、防湿性能を測る方法はありませんので、気密性能で代用します。)

 

省エネ住宅を本当に作っている人が、気密性能試験を行い、建物の気密性能を高めるのは、防湿性能を上げて、冷房にかかる費用を下げるためでもあるのです。

 

逆に言うと、「気密性能は高くなくても、すき間風があった方がいいんですよ~」などといっている建築関係者は、
「エアコン入れても、すき間からたくさんの湿気を持った空気が入ってきてしまうけど、ごめんなさいね~」と言っているのと同じです。

 

普段、意識することのない「空気」ですが、その特性というものはなかなか奥深いものです。

引渡し済み物件の現場監督さんからの電話。「この家、凄いです!」

2007年08月27日

午前中に私用を終えた後、午後から千葉の現場へ。
予定より早めに指摘箇所の是正が終わったという連絡を元に、現場の確認です。

現場はしっかりと是正が終わっていました。
帰りはいつもと違うルートで事務所に。JR八丁堀駅って、ちょっとさくら事務所からは距離ありますね。でも、運動不足の私にはちょうどいいかも。

夕方からは、さくら事務所のメンバーで、一戸建て関係の会議。

会議の途中、既に引渡しが終わった品質チェック物件の現場監督さんから電話がかかってきました。
さくら事務所の設計コンペ第一号の物件です。

「もう終わった現場なのに何だろう?」と思い電話に出ると、いつも元気な現場監督さんが、いつも以上に元気な様子。

あの現場で、24時間換気の配置や基礎断熱を提案されたのは、大下さんだそうですね。あの物件、凄いです!

「え?どういうことですか?」と聞き返すと、要点は以下のようなものでした。

  • 工事前、いつもやっていない設備等が入っていたので、その効果は疑問視していた。
  • 今日、定期メンテナンスの為に建物の中に入った。
  • 室内の温度差が、これまで引き渡した物件のどれよりも小さい。
  • 玄関から入って涼しいが、リビングが寒すぎることも無い。
  • これまで引き渡した物件のどれよりも、空気がサラッとしている。
  • これまでの建物とは、別のよう。
  • なのに、エアコンはドライの微弱設定で運転

この物件には、全館空調は入れていません。
ちなみにエアコンの設定については、私が先週ご依頼者宅にお伺いしたとき、エアコンの設定温度や、風向きについてアドバイスをしています。

夏は、暑いといっても室内外の温度差は10℃未満。冬のように20℃近くの温度差はありません。
この物件の断熱性は高いので、冷房で重要なのは温度(顕熱)を冷やすエネルギーではなく、除湿となる潜熱。
この物件では基礎断熱を採用したことや、面材を張っていることで気密性能が高くなっているため、防湿性能も上がっていると思います。
結果として、冷房運転ではなくドライ運転でも建物は快適に。
ちなみに2階はリビングの2.2kWのエアコン(6~9畳用)で、その3倍以上の面積を冷やしています。
省エネ住宅に詳しくない設計者であれば、200V仕様の、4.0kW以上のものを入れていたことでしょう。建物にお金がかかっている分、設備でその費用を回収しようという狙いです。
 

さくら事務所の設計コンペでは、ご依頼者からコンペの料金をもらっているので、施工業者さんなどから、バックマージンなどは一切受け取っていません。(多くの設計コンペでは、ご依頼者が無料に近く、業者さんからバックマージンを受けることが多い)

そのため、設計コンペでは、「ダメなものはダメ!」などということを、本音トークで話しています。
また、設計段階からチェックを行なうことができるため、着工前に「こうした方が良い」という点は、実際の設計に生かして頂いています。

この物件でも、この施工業者さんが普段は行なっていない設備を、私の意見でいくつか採用して頂いています。
一見、無茶にみえたかも知れませんが、私にはバックデータと理論的な裏づけあったので、心配していませんでした。
その結果、出来上がった物件が、現場監督さんが体感されたように、いつもの建物とは違っていたのでしょう。

現場監督さんであれば、いつもその会社の建物をよく分かっていますので、建物に入ってその違いがすぐに分かったのでしょう。
次からの物件でも、この経験を生かして欲しいです。

しかし、監督さん!
私はこの物件、夏よりも冬に自信があります。

なぜなら、この物件には、床下暖房があるから。

床下放熱器

床下放熱器。室内に出ないのでスッキリ!
しかも、室内に出るタイプの放熱器よりもずっと安価です。
ちなみに、風は出ません。自然対流です。

熱源は温水。
なので、ガスでも電気でもヒートポンプでも、エコキュートでも、ガスコージェネでも、太陽熱でも何の熱源でもOKです。
熱源の交換時期には、その時に最も安い熱源を選べます。

上から見るとこんな感じ

上から見るとこんな感じ。
冬には暖かい空気がここから上がってきます。
夏季には、ここから室内の空気が床下に流れます。なぜなら床下には、空気を引っ張るための24時間換気ダクトが3本入っているから。
ちなみにこの物件の場合、1日に10回程度、床下の空気が入れ替わります。

結果として、床下のジメジメ感はなく、カラッと乾燥。床下も室内と同じ環境になります。

年間を通じて、温度・湿度共に安定。

タオル掛け兼放熱器

洗面室には、タオル掛けを兼ねた放熱器を配置。

洗面室が寒くなることはなく、タオルもすぐに乾きます。ヨーロッパでは一般的。
浴室に暖房機が無くても、問題なし。

放熱量の設定は、廊下に設けられた集中コントローラーでもできますし、写真の放熱器右下にあるバルブでもできます。

床暖房と違い、床下全面をあたためることが出来る床下暖房は、床暖房のようにリビングと廊下の温度差がありません。
また、面積が広いこと(1階全面を暖める)ことで、温水の設定温度を低くすることが出来ます。
また、輻射暖房なので、エアコン暖房よりも快適性が上です。


ご依頼者のT様。
寒い時期、現場監督さんや大工さんを交えて、体感会みたいなものを開いて頂けると嬉しいです。

ドレーキップ(drehkipp)窓。内開きと内倒し

2007年12月05日

ドレーキップ窓 左の写真は、設計コンペの物件でたくさん使ってある、ドレーキップ窓(Drehkipp Fenster)
一見普通の窓に見えます。
ちなみに、オール樹脂枠のLow-Eペアガラス(エコガラス)です。
これからの時代、どんどん一般的になっていくサッシの仕様でしょう。

ドイツ語はよく分かりませんが、drehenは回る、回転するという意味。
そして、kippenは「傾く、傾いて倒れる」という意味。
ドレーキップ(drehkipp)窓は、まさしくその2つの機能を持ったサッシです。

内開き レバーを90度傾けて手前に引くと、このように全開します。
新鮮な空気を取り入れたいときや、ガラスを掃除するときに楽です。

日本の外開きのサッシは、手元のレバーをクルクルと回転させて開くのが多いですが、あれって、個人的には面倒だと思ってしまいます。
このように、ガバッ!と開ける方が簡単です。
機構もシンプル。

この開き方だけでは、単なる内倒しサッシです。ドレーキップ(drehkipp)窓が便利なのは、もう1つの開き方が出来るから。

内倒し  レバーを、締まっている状態から180度回して手前に引くと、写真のように内倒し状態になり、上側に隙間ができます。

この状態で、窓開けによる通風が得られます。
土砂降りのような大雨でなければ、このままの状態でも雨は入ってきませんので、開けた状態でも大丈夫です。

ドレーキップ窓は、内開き・内倒しといずれも内側にサッシが出てくる開き方なので、網戸は外側に取り付けます。
そのため、外開きのように、サッシを開いてから、網戸を閉めるといった、面倒な手続きは不要です。

ドレーキップの防犯性 内倒しのもう1つのメリットは防犯性。
内倒しの状態を屋外から見ると、写真のようになります。

引き違いサッシや、外開きサッシでは、サッシを開いた状態の場合、防犯性が問題となります。

しかし、ドレーキップ窓の場合、屋外から窓を全開しようにも、レバーは手が届きにくいサッシの下側で、かつ回すためには、1度閉める必要があります。
このことから、(内倒しで)開いた状態であっても防犯性が得られるサッシです。
自宅に防犯目的としてサッシにマグネットセンサーを取り付ける場合、普通のサッシでは、窓を開ける場合には、防犯モードをオフにする必要があります。
つまり、夏に窓を開けた状態で寝ようとすると、せっかくの防犯機能が働きません。

しかし、ドレーキップでは、マグネットセンサーを下部に取り付けることにより、「内倒し状態で開きつつ、防犯モードはそのまま」という裏技ができます。(恥ずかしながらこれは最近知りました)
これにより、サッシを開いた状態でも、防犯性が保たれます。

日本の住宅というと、まず基本が引き違い。
そして、トイレや洗面室、階段室は、ジャロジーか外開き、あるいは上げ下げ窓といったパターンが多いと思います。
ひょっとしたら、ドレーキップ窓を知らない建築関係者もいるかも知れません。

省エネ住宅に詳しい建築関係者は、ドレーキップ窓を使いたがります。それは、気密性を高くすることができるから。気密性が高いということは、外部からの防音性も高まります。
日本で多く使われている引き違い窓は、構造上、気密性を高くできないため、省エネに詳しい設計者であればあるほど、性能面から敬遠する傾向があります。

長くなりましたが、ドレーキップ窓はオススメです。

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