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建築基準法改正の歴史

2004年11月09日

先日、古い建物の耐震基準について質問されたことがありましたので、耐震基準などの改正の歴史の一部をまとめてみました。

建築基準法改正の歴史
改正内容説明
1980年(昭和55年) 省エネルギー基準 制定 ・省エネルギー基準の制定
1981年(昭和56年) 新耐震設計基準制定 ・地震に対する基準の向上
1992年(平成 4年) 新省エネルギー基準 制定 ・熱損失係数の基準値の見直し
1999年(平成11年) 次世代省エネルギー基準 制定 ・熱損失係数の基準値の見直し
・気密性能の基準見直し
2000年(平成12年) 住宅の品質確保の促進等に関する法律 ・瑕疵担保保証期間を10年と定める
・住宅性能表示制度が定められる
建築基準法改正 ・性能規定化
・地盤調査が事実上義務化
・継ぎ手・仕口の仕様を特定(木造住宅)
2003年(平成15年) シックハウス対策 施行 ・使用建材の制限
・24時間機械換気の原則義務化

近年の、耐震基準の大きな変化は、構造種別を問わなければ 1981年(昭和56年)の新耐震設計基準です。この時、耐震基準が大幅に上がりました。
阪神淡路大震災でも、この基準に従った建物は、被害が少なかったとされています。

木造では、2000年(平成12年)にも、大きな改正が行われています。
この改正により、金物の仕様が明確になり、金物の使用する量も増え、筋かいなどの「耐力壁」の配置にも検討が必要になりました。
また、地耐力(地面の耐えられる力)に応じて基礎を選定しなくてはならなくなったため、地盤調査が事実上義務化されました。

全ての構造種別(鉄筋コンクリート、鉄骨造、木造など)では、1981年が耐震性能の分かれ目です。
木造では、2000年(平成12年)も、大きな分かれ目です。

既存建物(中古物件)の購入をご検討されている方は、物件の選定などにご参考ください。

地盤調査は義務です。地盤調査をしていない建物は注意を

2004年11月25日

建物を建てる時、その地盤がどのくらいの強さを持っているかを調べることを、「地盤調査」と言います。数年前まで、地盤調査は行われないことも多々ありました(特に木造の建物)

しかし、平成12年(2000年)の法改正により、事実上、地盤調査は義務化されました。

建築基準法施行令 第38条の3 [地盤の状況による、基礎の選定]
建築物の基礎の構造は、建築物の構造、形態及び地盤の状況を考慮して国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとしなければならない。

告示第1347号(平成12年5月23日) [基礎の構造方法の定め方]
建築基準法施行令第38条第3項に規定する建築物の基礎の構造は、地盤の長期に生ずる力に対する許容応力度が20kN/m2未満の場合にあっては基礎ぐいを用いた構造と、20kN/m2以上30kN/m2未満の場合にあっては基礎ぐいを用いた構造又はべた基礎と、30kN/m2以上の場合にあっては基礎ぐいを用いた構造、べた基礎又は布基礎としなければならない。 (一部省略)
許容応力度によって、基礎を選ばなくてはいけない
 → 地盤調査を行わないと、許容応力度はわからない
 = 許容応力度を知るために、、地盤調査を行わなければならない

告示第1113号(平成13年7月2日) [地盤調査の方法]
地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を求めるための地整調査の方法並びにその結果に基づき地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を定める方法等を定める件。

このように、、地盤調査が事実上義務化されたのは4年前ですが、現在売られているあるいは建てられている建物において、、地盤調査が行われていない時があります。(特に木造の一戸建て)

その多くは、
 ・業者さんが法改正を知らない
 ・地盤調査のコストを省いている
というような理由だと思います。

地盤調査を行わない限り、地盤の強さは分かりません。
地盤調査を行わない、あるいは行っていない建物には十分ご注意下さい。

建築基準法は、「最低」を示した基準

2004年12月11日

日本建築学会(建築関係で最も影響力を持つ団体、会員数 約 38,000人)に入っていると、毎月「建築雑誌」という学会誌が送られてきます。

建築雑誌の12月号の特集は、「建築基準法 -最低基準の意味」でした。
学会誌らしく、いろいろ細かく掘り下げて書いてあります。

建築基準法、第1章総則、第1条には、以下のような記述があります。

この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。

たまに、マンションや家のカタログなどに、「建築基準法に基づき・・」とある場合がありますが、建築基準法はあくまで最低の基準であり、「推奨基準」ではありません。守って当然の基準です。

しかしながら、現実的には違法建築は数多くあり、建築後に「確認申請通り建てました」という証(検査済証)を取らない物件も少なくありません。また、確認済証を取った後に、違法改造をするパターンも良く見られます。

建築雑誌の特集の中に、以下のような記述がありました。

「良い建物をいかに実現するか」という、いわば建築の入り口の研究は多いが、今後は、世に出ていく建築のなかの「『良くない』建物をいかに減らすか」の研究-出口の研究 も必要ではないか
日本建築学会 建築雑誌2004年12月号 P32-33、「最低基準」その論点と考える意義 稲垣道子

その通りだと思います。建築基準法は、「ザル法」などと言われますが、やはり、真面目に法律を守って建てる建築主が馬鹿を見るようではいけません。

今後は、設計の自由度を阻害しない範囲で、違反建築に対する罰則規定などは強化しても良いと思います。

日本における、木造建築の研究の歴史

2004年12月19日

昔は、金物なんて取り付けてなかった。
品質チェックで木造の現場に行ったとき、たまに耳にする言葉です。

確かに、昔は木造住宅に金物を使う数も位置も少なかった。このようなことを言う建築関係者は、
「(昔は入れなくても良かったのだから)別にちゃんと入れなくてもいい」
と、心の底で思っているのではないでしょうか。

しかし、昔の木造住宅に金物が少なかった理由は別のところにあります。答えは、「これまで、木造の研究が行われてこなかったから」です。

一般の人は、「日本は木造住宅も多いし、日本中の大学に建築学科があるのにナゼ!?」と思うかも知れません。
しかし、実際には日本の大学の建築学科で、木造を専門とする研究室は非常に少ないのです。(鉄骨や、鉄筋コンクリート造は多い)


昭和34年、日本の木造の研究が止まった

昭和34年(1959年)の日本建築学会で、「防火・台風水害のための木造禁止」が決議されました。
当時、都市の防火対策、相次いだ台風の被害、鉄筋コンクリート建物の増加などの社会背景により、建築の総本山である日本建築学会が、木造の研究を行わないとしたのです。
このため、日本において木造の研究に空白期ができてしまいました。

建築学会で木造が不要とされてしまったら、木造の研究を行ったとしても、発表する場がありません。そのため、大学や公共の研究機関では、木造建物の研究は行われなくなってしまいました。

木造を研究する人がいないのですから、木造の耐震性能も上がりません。研究が行われないので、金物をどこにいくつ入れたら良いのかということは、分からなかったのです。


1980年頃から、ツーバイフォー(枠組壁工法)の研究が始まる

1980年頃、ツーバイフォー(枠組壁工法)の研究が始まっています。
この研究の中には、構造に関するものも含まれていたので、当然のように、ツーバイフォー(枠組壁工法)の耐震性能は高まりました。今日でも、ツーバイフォーは地震に強いと言われますが、これは「今から30年程度前から研究が行われていたため」とも言えます。


木造の研究が転機をむかえた、阪神淡路大震災

1995年 1月17日に起きた阪神淡路大震災では、死者6,432人、家屋倒壊 約25万棟という甚大な被害を受けました。
木造の家屋は他の構造よりも被害が多く、倒壊によって多数の死者が出ました。
しかしこの時、関西以西に大学の研究室などで、木造を専門としている研究者は居なかったとされています。

下に、木質構造分野に投稿された、日本建築学会の論文数の推移を示します。

木質構造分野における、建築学会投稿件数の推移
木質構造分野における、建築学会投稿件数の推移
日本建築学会 大会学術講演梗概集(1968-2002)木質構造分野より作成。

阪神淡路大震災の翌年から、木造の分野において、研究が急激に増えていることが分かります。建築の世界で構造を研究している人であれば、あれだけの大きな被害を受けたのは何故なのか、研究しようと思うのが普通でしょう。

その為、阪神淡路大震災を転機として、各分野の研究者が木造の研究を行うようになりました。これは、ほんの数年前の出来事です。

研究者が急激に増えたため、阪神淡路大震災までは年間80件に満たなかった研究数は、2000年には、200件を超えました。(ただし、2000年の日本建築学会への全投稿数は、約5700件ですから、それでも全体の3.5%にしか過ぎません。)

ちなみに、私は学生時代に木造の伝統構法の構造について研究していましたが、最も参考になった研究は昭和16年のものでした。(そのくらい、研究が少なかったのです)


ここ10年で、木造の研究は急激に進んでいる

阪神淡路大震災以後の約10年、木造の研究はこれまでの遅れを取り戻すかのように、急激に進みました。

実大振動実験のように、費用、手間、研究能力、人員が必要、で大掛かりな研究も数多く行われました。
その結果、建物にねばり強さを持たせるため、金物が必要であることがわかりました。その為、今から4年前に木造の金物の規定が厳しくなり、金物の数が増えました。
これは、増えたというより、「必要だったけど、研究されていなかったため、必要なことが分からなかった」というのが正しいのかも知れません。

伝統構法を生かす木造耐震設計マニュアル 研究が進んだ結果今日では、構造計算が難しいお寺や社寺建築などの伝統構法の解析まで出来るようになりました。
これは、10年前には想像も出来なかったことです。

その解析のレベルも高く、一般的な木造住宅で行われる「壁倍率」の計算よりずっと高度な、「限界耐力計算」というものとなっています。


今後は、木造の大規模建築物が増えていく

これからは、海外ではたくさん建てられている、木造の大規模建築物が日本でも増えるでしょう。(国内の大規模木造建築の例:樹海ドーム、オーストリアでの大規模木造建築の例:2004年6月27日の日記

木造で、4階建て以上の建物が建てられることは、将来的に何も不思議ではありません。
最近は木造の研究者や、木造を専攻する学生も増えつつあるので、10年後に木造の技術がどのくらい進化しているのか、楽しみです。

景観を守る動き ~景観法~

2005年01月31日

景観法に基づく景観行政団体に相次いで名乗り(日経BP KEN Platzより)

↑(閲覧には無料会員登録が必要です)

昨年12月に、景観法という法律が施行されました。
地方自治体が、景観法に基づく「景観行政団体」になると、景観計画区域を指定でき、街並み形成にデザインや色などの制限をかけらます。
また、勧告や命令、罰金なども科すことができます。

これまでに景観行政団体になったのは、以下の市町です。
(都道府県と政令指定都市中核市は全て景観行政団体です。)


  • 栃木県日光市

  • 神奈川県真鶴町

  • 神奈川県小田原市

  • 神奈川県大磯町

  • 神奈川県平塚市

  • 千葉県市川市

  • 岐阜県各務原市

  • 岐阜県多治見市

  • 大分県別府市

建築の雑誌を見ていると、取り上げられやすかったり、人気のあるものは、奇抜なデザインの建物。
日本では、建築家≒デザイナーというような風潮もあるような気がします。

しかし、魅力のある街に必要なものは、個別のデザインの奇抜さではなく、周りとの調和、デザインや色調の統一性、街並み。


景観法が転機となり、全国各地で街並み保存や、街並み形成の動きが広がるといいですね。


マンションも省エネ義務化へ。国交省が省エネ法改正案。

2005年02月08日


国土交通省は今国会に提出する省エネ法改正案で、マンションなどの集合住宅の新築・増改築時に省エネ対策の実施と報告を義務づける方針を決めた。
建築主や管理組合は、外壁や窓の断熱化、空調設備の効率的な運用策などを3年ごとに国に報告しなければならなくなる。総延べ床面積が2000m2以上の建物が対象なので、大規模マンションだけでなく中規模のマンションでも報告が必要になる。

既存のマンションについては、外壁工事など大がかりな修繕をする時に省エネ対策の届け出を義務づける。新旧マンションともに対策が不十分な場合は、国が勧告する。

朝日新聞 2月6日の記事より抜粋

この件については、国全体の建物性能が上がるきっかけになるので、良いことだと思います。断熱化された部材の需要が増えれば、部材の価格も下がります。

文面を見ると、「外壁や窓の断熱化」とあります。
サッシは簡単に高断熱化できますが、今一般的な内断熱の場合、断熱材の厚みを増やすほど、室内が狭くなります。しかし外断熱の場合、断熱材の厚みがどれだけ増えても室内の広さは変わりません。

外断熱が採用されるのは良いことだと思います。しかし、「単に外側に断熱材を貼っただけ」というのも出てくるでしょう。

重要なのは、断熱だけでなく、換気、暖房、冷房、気密などをトータルで考えること。この辺りに詳しい技術者は本当に少ないと思います。

この分野の話は、一般の方が少し勉強するだけでも、建築関係者より詳しくなれることが多々ありますので、いろいろ調べてみてはいかがでしょうか。

アンカーボルトを入れる位置 (在来工法・軸組工法編)

2005年05月18日

基礎と、建物の土台を緊結する金物のことを、アンカーボルトといいます。

アンカーボルトは、地震の揺れのときに建物が浮いたり、移動したりしないために、とても大切なものです。
しかし、設計段階でアンカーボルトを入れる位置をしっかり検討していないと、入れ忘れや、位置の間違いというミスが起きてしまいます。

アンカーボルトを入れる位置は、建築基準法にはしっかりと明記されていません。そのため一般的には、住宅金融公庫の仕様に基づいて、アンカーボルトが入れられます。

在来工法の場合、主に以下の位置にアンカーボルトを入れる必要があります。

筋かいが取り付く柱の両端 構造用合板等が取り付く柱の両端
筋交いが取り付く柱の両端 構造用合板等が取り付く柱の両端
 
継手の上木 継手の間隔
継手の上木部分 2階建ては、2.7m以内
3階建ては、2.0m以内の間隔

その他に、土台が切れている部分にも入れる必要があります。
アンカーボルトが足りないのは困りますが、数が多いのは問題になりません。

よくアンカーボルトが抜けているのが、「継手の上木部分」です。
基礎の図面と、上部の建物の図面を照らし合わせていないと、入れ忘れがおきます。

ご自宅の近くに、建築中の建物があったら、遠くからアンカーボルトの位置を見てみるのも良いかも知れません。

アンカーボルトを入れる位置 (ツーバイフォー・枠組壁工法編)

2005年05月21日

前回、軸組・在来工法における、アンカーボルトを入れる位置を示しましたので、今回は枠組壁工法(ツーバイフォー工法)における、位置をご説明します。

隅角部付近 継手付近
隅角部(ぐうかくぶ)付近 継手付近
 
それぞれの間隔は、2m以内  
それぞれの間隔は、2m以内  

(建物が3階建てで、1階に掃き出し窓がある場合は、その付近にも必要になります。)

工法に関わらず、アンカーボルトの位置で気をつけるのは、基礎の上に載る、「土台の継手位置をあらかじめ照合しておく」ことです。

アンカーボルトの位置と、土台の継手位置を照らし合わせていないと、アンカーボルトの不足がよくありますので、十分にご注意してください。

狙ったかのように、柱の真下にアンカーボルトが位置している

2005年07月17日

柱の真下にアンカーボルト 品質チェックにお伺いしたとき、隣の物件で見かけた土台敷きの様子。
増築工事をしているようで、土台を敷いている段階でした。
土台と、基礎を繋ぐためのアンカーボルトが、(狙ったかのように)柱のど真ん中に来ています。
基礎の図面と、1階の平面図・床伏図を照らし合わせていないから起きてしまったのですね。

ボルトを締めようにも、ほぞの下側までネジはありませんので、途中で止まってしまいます。

このような場合には、このアンカーボルトは無かったことにして、新たに取り付けることになります。

ちなみに、アンカーボルトを入れる位置は私の過去の日記をご覧ください。
 ・アンカーボルトを入れる位置 (在来工法・軸組工法編) 2005年5月18日分
 ・アンカーボルトを入れる位置 (ツーバイフォー・枠組壁工法編) 2005年5月21日分

建物を作る時に重要な「仕様書」は、契約前までに確認を

2005年08月11日

建物を作るときに必要な書類の1つに、「仕様書」があります。
基礎の鉄筋の太さや、断熱材の種類や厚みが書いてある書類です。

最近、建築条件付の物件における、品質チェックのご相談がよくありますが、仕様書の書き方があいまいだったり、詳細が分からないことがよくあります。

例えば基礎コンクリート。
仕様書に、基礎:鉄筋入り基礎コンクリート とだけ書かれてあることがありますが、これではどのような基礎なのかわかりません。
また、断熱も、壁の断熱:グラスウール とだけ書かれてあっても、それだけでは、現場のチェックが出来ません。

仕様書は、建物を作る上でとても大切なものです。契約前までに、建物の仕様についてあいまいな部分を無くしておくと、後から色々と悩むことが少なくなります。
仕様書は、具体的なものを準備してもらいましょう。

木造関係者にお奨めの1冊。杉山英男著「地震と木造住宅」

2006年04月18日

地震と木造住宅 最近、昔読んだある本を読み返しています。
その本とは、

地震と木造住宅  杉山英男著
という本です。

著者の杉山英男先生(元 東京大学名誉教授)は昨年2月に亡くなられました。
日本の木質構造研究の第一人者です。

専門色が強い本ですので、一般の方にはなかなか読みにくいと思いますが、建築の関係者(特に木造関係)にはぜひ読んで欲しいです。
序章を読むだけでも価値があると思います。

この本の中で杉山先生は、欠陥を防ぎ、耐震性能を上げる方法として、

片筋かいはやめてタスキ筋かいだけにするか、いっそのこと筋かいをやめボード張り壁を考えなくてはならないのではあるまいか。(P316)

と書かれています。

確かに、現場を知る立場からすると、筋かいというのは、取り付ける時のバラツキや方向が気になる時があります。
また、2006年 4月10日のエントリー(筋交い(筋かい)の方向が分からない図面を書く設計者は、構造に疎い)に示したように、方向性のある材料であるにも関わらず、取り付けの方向が書かれていないケースというのも、まだまだあります。

その章の結論では、今後の方向性として
 「大壁造では下地板と筋かいに頼らない構法を大幅に採用すること」
とも書かれています。

また、別の章では、通し柱を設けることの懸念や、ホゾ差しの仕口の問題点についても触れられています。

話すと長くなるのですが、アメリカでツーバイフォー工法が出来る前の工法では、筋かいが使われたり、通し柱があったりしました。
しかし、研究の結果、筋かいが無くなり、通し柱も無くなりました。

本当に、木質構造が分かっている専門家(大工一筋○○年という人ではなく、在来にも、ツーバイにも、日本の木造の歴史にも詳しく、地震や構造力学に精通している人)であれば、妥当な判断だと思われるのではないでしょうか。

ちなみに、

  1.(社寺建築のような)伝統構法
  2.在来工法(いわゆる軸組構法)
  3.ツーバイフォー工法(枠組壁工法)

の3つをグループ分けにすると、どれとどれが同じグループになるでしょうか?

ほとんどの方は、1と2が同じグループで、3だけが別物だと思われるでしょう。

しかし構造的に見ると、1の(社寺建築のような)伝統構法だけが単独で、
  2.在来工法(いわゆる軸組構法)
  3.ツーバイフォー工法(枠組壁構法)
は、「耐力壁構造」で同じグループになるのです。

在来工法(軸組構法)とツーバイフォー工法は、同じ耐力壁の計算方法で耐震性を把握できます。耐震診断の方法でも、この2つの計算方法は基本的に同じです。

(社寺建築のような)伝統構法の構造計算は全くの別物で、計算方法も非常に難しくなります。
木造に精通していてこの計算ができる専門家というのは、1都道府県に1人いるかいないかくらいかも知れません。

最近は、在来工法(軸組構法)でも建物の外側に構造用合板を張ることが増えました。
軸組構法最大手のハウスメーカーでは、標準で通し柱を設けていません。
これらは構法の進化だと思います。
通し柱があると可変性の妨げになり、軸組の組み方や仕口の加工方法によっては部材の断面欠損が大きな問題になるからです。

この後の進化としては、部材規格のさらなる共通化と、施工の簡易化だと思いますが、結局行き着くところは、ツーバイフォーのような規格なのでは?と思っています。

ちなみに、ご存知でない方がほとんどだと思いますが、枠組壁工法(ツーバイフォー工法)は、防火地域に建てることができます。
また、4階建ての住宅も建てることができます。
(ただし、いずれも材料や仕様上の制限があります。)

大規模な実験や研究が出来るのは、構法の統一団体がある強みですね。
(在来工法には、研究や実験を専門的に行っている大きな統一団体が無いので・・・。)

一戸建てで多いのは、木造の在来工法とツーバイフォー。【構法の種類】

2006年05月12日

今回からは、建物の構造・構法に関して書きたいと思います。
長持ちさせる建物には、長持ちするための、しっかりとした構造体が不可欠です。

※余談ですが、構造に関する工法は、正確には「工法」ではなく、「構法」という字を使います。このブログでは、SEO的な面もあり、「工法」としています。

▼一戸建てで多いのは、2つの構法▼

一戸建てで多く使われる構法は、

 ・在来工法(軸組工法)
 ・ツーバイフォー工法(枠組壁工法・わくぐみかべこうほう)

の2つです。

そのほかにも、
 
 ・プレハブ工法
 ・鉄骨造(S造・えすぞう)
 ・鉄筋コンクリート造(RC造・あーるしーぞう)

があります。

プレハブ構法には、鉄骨プレハブや木質プレハブがあります。

ちなみに、日本建築学会に提出される論文や標準仕様書など、建築の専門分野では、

 ・伝統建築
 ・在来工法(軸組工法)
 ・ツーバイフォー工法(枠組壁工法・わくぐみかべこうほう)
 ・木質プレハブ(ミサワホームやS×Lで採用している工法)

のように、主構造が「木」に関するものは、「木質構造」として同一に分類されています。

軸組工法は範囲が広い。軸組工法と、在来工法の違い

2006年05月15日

▼軸組工法は範囲が広い▼
昔のお寺さんや神社に見られる建物も軸組工法の1つですが、使われる材料が大きく、「貫」が多く使われています。

今の一般住宅の軸組工法と、昔のお寺さんや神社は、材料も構造も大きく違いますが、ひとくくりにすると、軸組工法です。

構造的には、現在の一般住宅と、昔のお寺さんや神社は、普通自動車とトラックくらいの違いがあります。
構造計算の方法も、一般住宅で行われている「壁量計算」という簡易な方法と異なり、お寺さんや神社のような伝統建築は、非常に専門的になります。木造に詳しく、実際に実務で伝統建築を構造計算出来る人は、日本で数えるほどしかいないでしょう。

しかし、普通自動車もトラックも「車」という分類では同じ
ですよね。軸組工法の分類もこれに似ています。

このように、軸組工法は、細かい部分でいろいろな違いがあるため、言い方としてはかなり幅があります。
柱や梁がある構法という、広い意味でとらえるのがよいでしょう。

ちなみに、一般的な木造住宅を、「在来工法」と呼ぶことがありますが、これは戦後に付けられた言い方で、それほど古い言葉ではありません。
そもそも、当時は木造と言えば今で言う在来工法しかありませんから、「在来」という言葉自体使わなかったのです。

日本で主流の軸組工法(在来工法)。しかし海外では少数派

2006年05月19日

▼日本で主流の軸組工法。しかし海外では少数派▼
日本では、軸組工法(在来工法)が主流です。
全国各地、いろいろなところでつかわれている工法です。

日本では主流の軸組工法(在来工法)も、世界的にみると少数派です。
部材寸法の統一性の無さ、高断熱化に向かない作り、構造的に見て合理的で無い作り方や強度の低い継手、工業化の難しさなどから、それらのハードルを越えない限り、世界進出は無理でしょう。

木造住宅を建てている国の多くは、日本でいうツーバイフォー工法(枠組壁工法)で作られることの方がずっと多いのです。

このツーバイフォー工法というのは、日本での言い方で、アメリカやカナダではプラットフォーム工法と呼ばれます。

ちなみに、日本でツーバイフォーという名称を広めたのは、鵜野日出男さんという方です。
ツーバイフォーや高気密高断熱の分野では有名な方です。

現在では、軸組工法(在来工法)も、どんどんツーバイフォーのような工法になってきています。
最終的に、構造の設計思想や基本的な考え方は、軸組工法(在来工法)も、ツーバイフォー工法も、木質パネル工法も同一のところにたどり着くでしょう。

(たどり着くというか、ツーバイフォー工法も、木質パネル工法が1歩、2歩先に進んでいて、軸組構法(在来工法)が追いつくという言い方の方が正しいかも知れませんが・・・・。)

増えつづけているツーバイフォー

2006年05月22日

 前回、一戸建てで多い構法は、

 ・軸組工法(在来工法)
 ・ツーバイフォー工法(枠組壁工法・わくぐみかべこうほう)

 の2つが多いと書きました。

その具体的なデータが、住宅金融公庫にありましたので、概要を引用します。

データ元
調査結果でみる公庫融資住宅の仕様について(住宅金融公庫)
 http://www.jyukou.go.jp/chisiki/chosa/shuyoudata_h14.html(2007年9月時点でリンク切れ)

工法別の割合:平成14年度

 在来木造(軸組) :61.7%
 プレハブ工法  :20.7%
 枠組壁工法(2×4):13.4%
 その他の工法  : 4.2%

 プレハブ工法というのは、

 ・木質系
 ・鉄骨系
 ・コンクリート系
 ・ユニット系

など、いろいろな種類があり、それぞれを採用しているのは棟数の多い大手ハウスメーカーばかりなので、工法として分類すると、割合が多くなっているのでしょう。

ちなみに、この調査から9年前(平成5年)の結果は、以下の通りです。

 在来木造(軸組) :66.1%
 プレハブ工法  :22.7%
 枠組壁工法(2×4): 5.4%
 その他の工法  : 5.8%

プレハブ工法はあまり変わっていませんが、在来木造(軸組)が減って、ツーバイフォー工法(枠組壁構法)が大きく増えています。
工法の割合は地域によって違いがあり、北海道、北陸、九州では在来木造(軸組)の割合が高くなっています。

北海道では、プレハブ住宅が全国平均の6分の1と少ないため、在来木造(軸組)の割合が増えていると思われます。
また、北海道はツーバイフォー工法(枠組壁工法)の割合が首都圏とほぼ同じくらい高い地域です。

九州は、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)の割合が全国で最も低くなっています。
首都圏と近畿では在来木造(軸組)の割合が低くなっています。

全国平均でみると、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)は、9年前の約2.5倍ですから、かなり増えていますね。

ツーバイフォー工法(枠組壁工法)は今日では十分認知されており、構造そのものがシステム化され、耐震性が高いことや、高断熱にしやすいことからも、今後も着工数が伸びていくのではないでしょうか。

戦後、放置され続けてきた、日本の木造建築

2006年05月26日

今回は、構法からちょっと話を脱線して、日本の木造の研究の歴史について。

「木造の建物がこれほど多い日本だから、木造の研究も進んでいるのではないか?」

と思う人がほとんどだと思いますが、実は全然違うのです。

日本建築学会という団体があります。
会員数は、約3万6千人。建設業に従事している人は、日本全国で約600万人ですから、全体の1%にもなりません。

しかし、歴史があり研究色が強い団体あることから、様々な基準や仕様がこの建築学会によって決められています。
日本における建築界の頭脳といってもいいかも知れません。
会員の多くは教育機関の研究者やゼネコンの研究者、設計事務所、官公庁の人たちです。

その日本建築学会が、今から46年前の昭和34年(1959年)に、「木造の研究をしない」としました。

建築学会が研究をしないと言ったら、研究者は発表する場がないため、当然ながら研究も行われません。

研究がされなかった結果、日本の木造建物は、あいまいな部分が多いまま歩んできました。
つまり、勘と経験だけが頼りの期間がずっと続いてきて、理論的な裏づけがなかったのです。

今から、10年前の阪神淡路大震災では、木造の建物がたくさん壊れました。
しかし、阪神淡路大震災が起きたとき、関西以西に木造を専門としている研究者は居なかったとされています。

建築の世界で構造を研究している人であれば、あれだけの大きな被害を受けたのは何故なのか、研究しようと思うのは、特別なことではありません。

その為、阪神淡路大震災を転機として、各分野の研究者が木造の研究を行うようになりました。
これは、ほんの数年前の出来事です。

最近では、急速に研究が進み、構造計算に関わる分野でも飛躍的な進歩を遂げています。
法律面でも、2000年に建築基準法が変わり、在来工法(軸組構法)の金物の基準は大幅に厳しくなりました。
しかし、実際の現場を見ていると研究の世界と現場では、まだまだ格差があるように思います。2000年の法改正を知らない業界関係者もまだまだいるというお寒い状況です。

日本における、木造建築の研究の歴史について、もう少し詳しく知りたい方は、私の過去の日記をどうぞ。

日本における、木造建築の研究の歴史
http://t-ohshita.com/2004/12/20041219-1200.html

在来工法は、日本の風土に合っているのか?

2006年06月02日

家選びをするとき、それぞれの工法の短所・長所を比較している雑誌やホームページを見ることがあるかもしれません。

検索サイトで検索すると、そのようなページも簡単に見つかるでしょう。

在来工法(軸組工法)での長所において、以下のようなことが書かれていることを目にすることがあります。

 「日本の風土に合っている」

しかし、これに関して私は疑問です

最初に気をつけなければいけないのは、現在一戸建てで使われている在来工法(軸組工法)と、昔からのお寺や神社に使われている軸組工法(伝統工法)は、似てはいるものの、構造のメカニズムとしては別物だということです。

例えてみるなら、車という分類は一緒だけど、大衆車と、特殊用途に使う特殊車両のように、その種類が構造的に全く異なるということです。

昔からのお寺や神社に使われている軸組工法(伝統工法)は、柱と梁がとても大きく、すき間だらけです。

私が学生のとき、京都のあるとても大きなお寺(現在、大規模改修中)に、耐震診断のための調査に行きました。
常時微動(じょうじびどう)計測という、目には見えない非常に小さな揺れを計測するため、調査は夜です。

ちなみに、常時微動計測では、遠くで雷が鳴ったり、地下鉄が走ったり、大きなクラクションが鳴ったりする振動でも、建物が揺れていることがわかります。
計測の画面を見ているとなかなか面白いものでした。

調査の時期は12月。何もしなくても寒いのですが、建物の小屋裏に入ると、なぜかもっと寒いのです。

小屋裏からは、隙間間から月明かりが見えました。ここから、冷たい風がビュンビュンと吹き込んできました。
このとき、「本当に昔の建物はすき間だらけなのだな」 と実感したものです。

これに対して、最近の住宅では、在来工法(軸組工法)を採用していても、和室のない家が全く珍しくありません。
そのため、柱が家の中から見えないこともよくあります。
外側も、サイディングなどに囲われ、柱が見えないのがほとんどです。
結果として、「意図せず」気密性が上がっています。(高性能住宅・省エネ住宅にするためには、「意図して」気密性を高める必要がありますが。)

「風土に合っている」という定義は何か分かりませんが、その建物の寿命が長いということなら、昔のお寺や神社のような伝統建築は風土に合っていると思います。

しかし、在来工法(軸組工法)が半数以上を占める日本の一戸建ての寿命は約26年。

日本の風土といっても、日本の地域によって気候は大きく違います。
北海道と沖縄、日本海側と太平洋側でも全然違います。

気候のバリエーションで言えば、国土が日本の25倍あるアメリカの方が変化に富んでいます。
温度と湿度の関係を示す、クリモグラフというグラフを書くと、日本各地のグラフはアメリカのグラフの中にすっぽりと入ってしまうのではないでしょうか。

Blog2006060201そのアメリカでは、木造建物の工法はほとんど全て、ツーバイフォー工法。
住まいの平均寿命も、日本より長い44年。

風土に、「地震が多い」という特徴が含まれるとしたら、大きな地震ごとにバタバタと倒れてしまう在来工法は、本当に風土に合っているのでしょうか。

気候風土に合っているはずの工法の方が、寿命が短いという現実を疑問に思ってしまうのは私だけでしょうか。
「日本の風土に合っている」と簡単に言われても、言っている根拠がないと思ってしまうのです。

住まいの寿命を決めるポイントは、工法だけでないと思います。

長寿命のためには、温度・湿度の管理が重要

2006年06月05日

6月になりました。
6月といえば、そろそろ梅雨の時期。
梅雨といえば、食中毒やカビを想像される方も多いでしょう。

なぜ、梅雨になると食中毒やカビが出やすくなるのかというと、外気の温度と湿度(特に湿度)が、食中毒の菌やカビが増えやすい条件になるからです。

建物の中でカビが生えないようにするためには、食中毒の菌やカビが生えやすい環境を無くす必要があります。

つまり、家の中で温度・湿度をコントロールできる範囲を広げ、温度または、湿度がどのくらいのレベルになるのか分からないような箇所を無くす必要があります。

物を長持ちさせるためには、温度・湿度の管理が重要
東京の上野には、博物館がいくつもあります。
その中で、重要な文化財が置いてある部屋には、それぞれ温湿度計が置いてあります。
これは、しっかりと温度と湿度を管理して、文化財が痛まないようにするためです。
温度と湿度を一定の範囲に保つということは、何かを長持ちさせるために、絶対必要な条件です。

博物館の中には、温湿度計の計測データを、LANを通じて一箇所に集め、規定の範囲内に入っているか確認しているところもあります。
このように、常に確認しておけば、梅雨の時期の外気のような温度・湿度にはなりません。

Design News Japanという、機械エンジニア向けの専門誌があります。
(ちなみに無料ですが、所定の条件を満たさないと読めません)

Design News Japanの2006年6月号には、アメリカの合衆国憲法、独立宣言、権利章典のオリジナル公文書を守る、専用ケースの技術が紹介されています。
映画、ナショナルトレジャーでニコラス・ケイジがこの独立宣言書を盗んでいくシーンがありますね。
このケースでも、温度・湿度の管理は当然のように行われています。しかも、100年以上ケースを開けることなく、中の書類が守られるという厳しい条件で。

湿度計の誤差
博物館に用いられるような湿度計の誤差は小さいのですが、一般に売られている湿度計は、誤差が±5%程度あるのが普通です。

温度の誤差は、±0.1℃程度のものが多いのですが、湿度計の誤差というのは、それと比べると大きめです。
ですから、一般に売られている湿度計で、1~2%の数値を読み取って比べたとしても、深い意味はありません。
湿度というのは、なかなか測りにくいものなのです。

湿度はとらえにくいものだ
イギリスの建築批評家、レイナー・バンハムは、1965年に書いた、「環境としての建築―建築デザインと環境技術」という本の中で湿度について以下のように書いています。


 環境管理に包含される全ての要因のうちで、湿度はほとんど建築の歴史にとって最も有害で、微妙で、制御しようにもとらえどころのないものであった。


湿度を上げるのは簡単ですが、下げるためには、エアコンなどの設備を使わないと一般的には困難です。

エアコンのような設備が無かったころ、高い湿度という条件は、確かにとらえどころのないものだったことでしょう。

在来工法(軸組工法)での継手。木の継手の強度がゼロ?

2006年06月09日

●在来工法(軸組工法)での継手 その1
在来工法(軸組工法)では、木の端部に複雑な加工をして、はめ込み式のほぞを作ります。

継手にはいろいろな形がありますが、現在の一戸建てにおいて現場において継手を手作業で加工するのはまれです。
ほとんどが、プレカット工場でであらかじめ機械加工されたものです。

現在、手作業で継手をつくるのは、伝統建築やそれに近い建物だけなのではないでしょうか。

木の継手は、
 ・継手の形状
 ・施工者の技量
 ・継手同士のすき間の大きさ
 ・材種
などによって、強度のばらつきが出ます。

そのため、継手は羽子板ボルトのような金物で補強します。

一戸建てで構造計算をするとき、継手の強さは建物の強度に含めず、金物だけで継手の強度を確保しています。つまり、木でどれだけ丁寧な継手を作ろうとも、構造計算ではその継手の強度はゼロです。
金物ならば、施工者の技量などによる強度のばらつきが小さく、信頼できるからです。

また、複雑な種類の継手(一般住宅には使わない)で、完璧な施工であったとしても、その継手の引っ張り強度は継手の無い材料の50%程度。
一般的な住宅で使われている継手の場合、継手のない材料と比較すると、完璧に施工したとしてもたったの10~20%程度しか出ないのです。

逆にいうと、一般的な一戸建ての在来工法(軸組工法)において、継手の強度を得るためには金物に頼らざるを得ないということです。

金物を最小限にした伝統建築では、過去の実験・研究から得られたデータを元にして、継手の強度も構造計算に入れますが、構造計算がとても難しくなる(限界耐力設計)ので、特殊な建物でない限り、一般的には行われません。

在来工法(軸組工法)での継手 大工の手からノミを奪え!

2006年06月12日

●軸組構法(在来工法)での継手 大工の手からノミを奪え!
木材の複雑な継手は、日本独自の物だと思っている方が多いのではないでしょうか?

実はそんなことはありません。アメリカにも、ドイツにも、イギリスにも昔の工法では継手があったのです。
しかし、このような継手は手間がかかる割に得られる強度が弱く、施工のばらつきが大きいことから、ずっと昔にやめています。そして、ツーバイフォーに見られるような、金物を使った継手を使うのが一般的です。

日本でも、デメリットの多い、木の継手にこだわることは止めたほうがいいというのは、昔から言われています。

例えば、日本の木造の研究者であった田辺平学は、北丹後地震(1927年)の直後、神戸新聞に「大工の手からノミを奪え」と題して、警告しています。
その中身は、「ノミを使って継手仕口を精巧に作ることに精力を費やしているが、観点を変えて継手仕口に金物を使い、壁に筋かいを入れ、家屋を耐震的にすることを考えるべきだ」というものです。

また、田辺平学は、次のようにも書いています(杉山英男著、地震と木造建築、p181より)

「古来地震や風で、多くの人を殺したのは、極言すればこの”ほぞ差し”のためである」
「大工職の人達に対してお願いしたいことは、一刻も早く、”殺人的構造たるホゾ差し”の仕口に憂き身をやつすこと止めて、これに代わるべき、より安全にして、より進歩した仕口を用いるようにすることであります」

この、「代わるべき」仕口というのは、ツーバイフォーや金物工法のような金物を使ったもののことを指しています。

在来工法の継手。賢者は歴史から学び、愚者は経験から学ぶ

2006年06月16日

地震で在来工法(軸組工法)の建物が壊れるとき、ほとんど全ては継手(仕口)から壊れます。
柱や梁がその中間で、ボキッ!と折れて壊れるようなことは少数です。

壊れ方が多いのは、通し柱の梁が繋がる部分で、柱が折れるケース。
神社やお寺のように柱が太ければ、このような被害は起きにくくなりますが、一般住宅の柱は4寸(12cm)ほど。
安全のためには、6寸(18cm)は欲しいところですが、現実的には無理でしょう。せいぜい、4.5寸(13.5cm)程度です。

在来工法(軸組工法)がこれから進化していくためには、最初に通し柱が無くなるでしょう。法律上も、通し柱というのは要りません。

在来工法(軸組工法)の最大手のハウスメーカーでは、現在通し柱を設けていません。通し柱を無くすことは過去の地震の被害や研究結果から考えると何も疑問はないことだと思います。

逆に、通し柱にこだわっているのは、過去の研究や地震の被害を学んでいないと思ってしまいます。

賢者は歴史から学び、愚者は経験から学ぶ
オットー・フォン・ビスマルク

木造の建物に関わっている人に言いたいのは、まずは過去の地震の被害や最近の研究結果を、学んで欲しいということです。余裕がある場合には、日本の木造の歴史や海外の木造の事例を学ぶと良いでしょう。

過去の地震の被害や、最近急激に進んでいる木造の研究結果から考えると、在来工法(軸組工法)は、

 ・筋交い(筋かい)から構造用合板などの面材へ
 ・継手(仕口)の単純化
 ・通し柱の撤廃

のいう手順を踏み、どんどんツーバイフォーに近づいていくという流れになると信じています。
在来工法(軸組工法)も、ツーバイフォー工法も、木質パネル工法も、根底にある流れ・構造的考え方というのは、1つだからです。

在来工法(軸組工法)と、ツーバイフォー(枠組壁工法)の継手の比較

2006年06月19日

在来工法(軸組工法)の継手

継手の外観 羽子板ボルト

在来工法(軸組工法)では、木材の端部に複雑な加工をしてホゾを作ってはめ込んだあと、金物で補強します。
一般的に補強と言われていますが、構造計算上、ホゾなど木の加工によって得られる継手の強度はゼロとしています。
これは、施工者の腕によって強度や品質にばらつきが出ることや、奇麗に加工できていたとしても、何も加工しない木材と比べると、10~20%程度の強度しか得られないためです。
現在は、ホゾは工場で加工されるので強度や品質のばらつきは小さいのですが、ホゾや継手などの強度を構造計算に入れないのは、後者の理由によるものです。
在来工法(軸組工法)に使われる金物は、ボルト締めがあるため、ゆるみ止めのある金物を使わないと、経年によってゆるみが生じる可能性が高くなります。

ちなみに、上の右の写真において、羽子板ボルトと間柱の欠き込みが干渉しています。間柱は構造部材ではありませんが、好ましいことではありません。


ツーバイフォー(枠組壁工法)の継手

梁を入れる前 梁を入れた後

ツーバイフォー(枠組壁工法)では、複雑な継手は作らず、木材の断面は垂直に切られます。
継手は、金物を使って固定します。金物はクギで留めるつけるだけですので、施工者によるばらつきも最小限です。

継手に金物をつかうことは悪いこと?

2006年06月23日

継手に金物を使うことに対して、悪いイメージを持ってみえる方が多いのではないでしょうか。
私は、そのようには全く思っていません。

金物を使うのは、建物を地震や強風から守るためのものです。
住まいは、厳しい自然環境から人を守る、「シェルター」の役割を果たす必要があるからです。

地震では多くの人が亡くなることも少なくありません。
阪神淡路大震災でも、6,000人を超える人が亡くなりました。
しかし、多くの人は地震そのものによって亡くなったのではなく、人が作った建物が壊れたことによって亡くなったのです。

阪神淡路大震災において、倒壊した家もあれば、ほとんど無傷の家もあります。いずれも人が作った建物ですが、設計者の違いにより大きな差が出てしまいます。
木造の建物で、壊れるパターンというのは大体決まっており、その多くは壁量不足、継手・仕口の破壊による倒壊です。

被害の原因がわかっているのですから、それを解決し、誰でも簡単・確実に強度が得られる方法を採用するのが、エンジニア(技術者)の務めであると思うのです。
継手・仕口は、金物で補強するのが確実です。建築基準法も、阪神淡路大震災の後、金物の仕様が大幅に厳しくなりましたが、当然の流れでしょう。

このような理由から、継手に金物を使うことに対して、私は全く悪いイメージを持っていません。

金物について、とても共感できる内容の物がありましたので、ご紹介致します。


◆林 知行 著
 ウッドエンジニアリング入門(学芸出版社)より

「法隆寺は世界最古の木造建築物であって、しかも釘を1本も使って」いないという「日本の常識」は、相当根強い形で日本人の脳裏にインプットされているようである。
事実は釘が使われているのだが、小学校の授業でそういう風に教えられるのであろうか。
誰かが意図したわけではないだろうが、「法隆寺 → 素晴らしい国宝建築物 → 釘を使っていない → 釘を使わないのは素晴らしい → 釘を使うことは悪だ」という風に連想が進み、いつしか日本人を「金物悪者論者」にしてしまうようである。

このマインドコントロールはかなり強烈で、本当に日本人は金物悪者論議が大好きである。
業界関係者までもが、金物を用いることに後ろめたさを感じており、何か免罪符のようなものをもらいたがっているようにも感じられる。
筆者は仕事柄、金物に関するコメントや執筆を依頼されることが多いが、「木材と金物の相性をどのように考えるか」とか「金物の寿命と木材の寿命の関係」についての意見を求められることが多い。
いつも感じることではあるが、21世紀を迎えたいま、このような議論を続けているのは、世界広しといえでもわが国だけであろう。

軸組構法であれ壁構造であれ、接合部と接合金物を用いて構造を構成することが、省資源的で、経済的で、合理的で、その他もろもろの利点があるから、世界中の木造文化国において今日のような木質構造の技術が発達してきたのである。
細い枠材とボード類を釘や金物で固定して住宅の中で、それなりに快適な生活を送っている人類が世界中に何億人といるのである。
完全無欠なものではないことは確かであるが、接合部と接合金物を用いた木質構造はまさに人類の偉大な文化である。
もちろん、木と金属はまったく別の物質であるから、両者の物性が違うのは当然である。
だからこそ、それを共存させて使えるようにしてきたのが人類の知恵なのである。


著者は、木材の第一線の研究者で、私も学生時代に何本か論文を参考にさせていただきました。

こちらの本は、「木」についてとてもわかりやすく書かれた本です。
合板や集成材の基本や理論についても分かりやすく書かれており、建築の関係者には、ぜひ読んでいただきたい1冊です。

耐力壁とは?

2006年06月26日

●耐力壁とは?
筋違いや、合板は、みなさんお聞きになったことがあると思います。

筋かいや合板を張る壁は、普通の間仕切り壁ではなく、地震に耐えるための耐力を得るための壁なので、「耐力壁(たいりょくかべ)」といいます。

耐力壁は、木造の建物だけでなく、鉄骨造、鉄筋コンクリート造でも使われます。(ただし、S造・RC造の場合、耐力壁よりも耐震壁という名称が一般的です。)

木造の在来工法(軸組工法)は、柱と梁で建物を支えると言われていますが、地震のときに建物を守っているのは、実際にはこの耐力壁です。
一般的な住宅の柱と梁の骨組みの部材の大きさでは、地震に耐えることはできません。これは、柱を全て4寸(12cm)、5寸(15cm)にしたとしても同じです。

ツーバイフォー(枠組壁工法)では、外側の壁には全て合板を張り、耐力壁とします。
今日