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建築基準法改正の歴史

2004年11月09日

先日、古い建物の耐震基準について質問されたことがありましたので、耐震基準などの改正の歴史の一部をまとめてみました。

建築基準法改正の歴史
改正内容説明
1980年(昭和55年) 省エネルギー基準 制定 ・省エネルギー基準の制定
1981年(昭和56年) 新耐震設計基準制定 ・地震に対する基準の向上
1992年(平成 4年) 新省エネルギー基準 制定 ・熱損失係数の基準値の見直し
1999年(平成11年) 次世代省エネルギー基準 制定 ・熱損失係数の基準値の見直し
・気密性能の基準見直し
2000年(平成12年) 住宅の品質確保の促進等に関する法律 ・瑕疵担保保証期間を10年と定める
・住宅性能表示制度が定められる
建築基準法改正 ・性能規定化
・地盤調査が事実上義務化
・継ぎ手・仕口の仕様を特定(木造住宅)
2003年(平成15年) シックハウス対策 施行 ・使用建材の制限
・24時間機械換気の原則義務化

近年の、耐震基準の大きな変化は、構造種別を問わなければ 1981年(昭和56年)の新耐震設計基準です。この時、耐震基準が大幅に上がりました。
阪神淡路大震災でも、この基準に従った建物は、被害が少なかったとされています。

木造では、2000年(平成12年)にも、大きな改正が行われています。
この改正により、金物の仕様が明確になり、金物の使用する量も増え、筋かいなどの「耐力壁」の配置にも検討が必要になりました。
また、地耐力(地面の耐えられる力)に応じて基礎を選定しなくてはならなくなったため、地盤調査が事実上義務化されました。

全ての構造種別(鉄筋コンクリート、鉄骨造、木造など)では、1981年が耐震性能の分かれ目です。
木造では、2000年(平成12年)も、大きな分かれ目です。

既存建物(中古物件)の購入をご検討されている方は、物件の選定などにご参考ください。

地盤調査は義務です。地盤調査をしていない建物は注意を

2004年11月25日

建物を建てる時、その地盤がどのくらいの強さを持っているかを調べることを、「地盤調査」と言います。数年前まで、地盤調査は行われないことも多々ありました(特に木造の建物)

しかし、平成12年(2000年)の法改正により、事実上、地盤調査は義務化されました。

建築基準法施行令 第38条の3 [地盤の状況による、基礎の選定]
建築物の基礎の構造は、建築物の構造、形態及び地盤の状況を考慮して国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとしなければならない。

告示第1347号(平成12年5月23日) [基礎の構造方法の定め方]
建築基準法施行令第38条第3項に規定する建築物の基礎の構造は、地盤の長期に生ずる力に対する許容応力度が20kN/m2未満の場合にあっては基礎ぐいを用いた構造と、20kN/m2以上30kN/m2未満の場合にあっては基礎ぐいを用いた構造又はべた基礎と、30kN/m2以上の場合にあっては基礎ぐいを用いた構造、べた基礎又は布基礎としなければならない。 (一部省略)
許容応力度によって、基礎を選ばなくてはいけない
 → 地盤調査を行わないと、許容応力度はわからない
 = 許容応力度を知るために、、地盤調査を行わなければならない

告示第1113号(平成13年7月2日) [地盤調査の方法]
地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を求めるための地整調査の方法並びにその結果に基づき地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を定める方法等を定める件。

このように、、地盤調査が事実上義務化されたのは4年前ですが、現在売られているあるいは建てられている建物において、、地盤調査が行われていない時があります。(特に木造の一戸建て)

その多くは、
 ・業者さんが法改正を知らない
 ・地盤調査のコストを省いている
というような理由だと思います。

地盤調査を行わない限り、地盤の強さは分かりません。
地盤調査を行わない、あるいは行っていない建物には十分ご注意下さい。

建築基準法は、「最低」を示した基準

2004年12月11日

日本建築学会(建築関係で最も影響力を持つ団体、会員数 約 38,000人)に入っていると、毎月「建築雑誌」という学会誌が送られてきます。

建築雑誌の12月号の特集は、「建築基準法 -最低基準の意味」でした。
学会誌らしく、いろいろ細かく掘り下げて書いてあります。

建築基準法、第1章総則、第1条には、以下のような記述があります。

この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。

たまに、マンションや家のカタログなどに、「建築基準法に基づき・・」とある場合がありますが、建築基準法はあくまで最低の基準であり、「推奨基準」ではありません。守って当然の基準です。

しかしながら、現実的には違法建築は数多くあり、建築後に「確認申請通り建てました」という証(検査済証)を取らない物件も少なくありません。また、確認済証を取った後に、違法改造をするパターンも良く見られます。

建築雑誌の特集の中に、以下のような記述がありました。

「良い建物をいかに実現するか」という、いわば建築の入り口の研究は多いが、今後は、世に出ていく建築のなかの「『良くない』建物をいかに減らすか」の研究-出口の研究 も必要ではないか
日本建築学会 建築雑誌2004年12月号 P32-33、「最低基準」その論点と考える意義 稲垣道子

その通りだと思います。建築基準法は、「ザル法」などと言われますが、やはり、真面目に法律を守って建てる建築主が馬鹿を見るようではいけません。

今後は、設計の自由度を阻害しない範囲で、違反建築に対する罰則規定などは強化しても良いと思います。

日本における、木造建築の研究の歴史

2004年12月19日

昔は、金物なんて取り付けてなかった。
品質チェックで木造の現場に行ったとき、たまに耳にする言葉です。

確かに、昔は木造住宅に金物を使う数も位置も少なかった。このようなことを言う建築関係者は、
「(昔は入れなくても良かったのだから)別にちゃんと入れなくてもいい」
と、心の底で思っているのではないでしょうか。

しかし、昔の木造住宅に金物が少なかった理由は別のところにあります。答えは、「これまで、木造の研究が行われてこなかったから」です。

一般の人は、「日本は木造住宅も多いし、日本中の大学に建築学科があるのにナゼ!?」と思うかも知れません。
しかし、実際には日本の大学の建築学科で、木造を専門とする研究室は非常に少ないのです。(鉄骨や、鉄筋コンクリート造は多い)


昭和34年、日本の木造の研究が止まった

昭和34年(1959年)の日本建築学会で、「防火・台風水害のための木造禁止」が決議されました。
当時、都市の防火対策、相次いだ台風の被害、鉄筋コンクリート建物の増加などの社会背景により、建築の総本山である日本建築学会が、木造の研究を行わないとしたのです。
このため、日本において木造の研究に空白期ができてしまいました。

建築学会で木造が不要とされてしまったら、木造の研究を行ったとしても、発表する場がありません。そのため、大学や公共の研究機関では、木造建物の研究は行われなくなってしまいました。

木造を研究する人がいないのですから、木造の耐震性能も上がりません。研究が行われないので、金物をどこにいくつ入れたら良いのかということは、分からなかったのです。


1980年頃から、ツーバイフォー(枠組壁工法)の研究が始まる

1980年頃、ツーバイフォー(枠組壁工法)の研究が始まっています。
この研究の中には、構造に関するものも含まれていたので、当然のように、ツーバイフォー(枠組壁工法)の耐震性能は高まりました。今日でも、ツーバイフォーは地震に強いと言われますが、これは「今から30年程度前から研究が行われていたため」とも言えます。


木造の研究が転機をむかえた、阪神淡路大震災

1995年 1月17日に起きた阪神淡路大震災では、死者6,432人、家屋倒壊 約25万棟という甚大な被害を受けました。
木造の家屋は他の構造よりも被害が多く、倒壊によって多数の死者が出ました。
しかしこの時、関西以西に大学の研究室などで、木造を専門としている研究者は居なかったとされています。

下に、木質構造分野に投稿された、日本建築学会の論文数の推移を示します。

木質構造分野における、建築学会投稿件数の推移
木質構造分野における、建築学会投稿件数の推移
日本建築学会 大会学術講演梗概集(1968-2002)木質構造分野より作成。

阪神淡路大震災の翌年から、木造の分野において、研究が急激に増えていることが分かります。建築の世界で構造を研究している人であれば、あれだけの大きな被害を受けたのは何故なのか、研究しようと思うのが普通でしょう。

その為、阪神淡路大震災を転機として、各分野の研究者が木造の研究を行うようになりました。これは、ほんの数年前の出来事です。

研究者が急激に増えたため、阪神淡路大震災までは年間80件に満たなかった研究数は、2000年には、200件を超えました。(ただし、2000年の日本建築学会への全投稿数は、約5700件ですから、それでも全体の3.5%にしか過ぎません。)

ちなみに、私は学生時代に木造の伝統構法の構造について研究していましたが、最も参考になった研究は昭和16年のものでした。(そのくらい、研究が少なかったのです)


ここ10年で、木造の研究は急激に進んでいる

阪神淡路大震災以後の約10年、木造の研究はこれまでの遅れを取り戻すかのように、急激に進みました。

実大振動実験のように、費用、手間、研究能力、人員が必要、で大掛かりな研究も数多く行われました。
その結果、建物にねばり強さを持たせるため、金物が必要であることがわかりました。その為、今から4年前に木造の金物の規定が厳しくなり、金物の数が増えました。
これは、増えたというより、「必要だったけど、研究されていなかったため、必要なことが分からなかった」というのが正しいのかも知れません。

伝統構法を生かす木造耐震設計マニュアル 研究が進んだ結果今日では、構造計算が難しいお寺や社寺建築などの伝統構法の解析まで出来るようになりました。
これは、10年前には想像も出来なかったことです。

その解析のレベルも高く、一般的な木造住宅で行われる「壁倍率」の計算よりずっと高度な、「限界耐力計算」というものとなっています。


今後は、木造の大規模建築物が増えていく

これからは、海外ではたくさん建てられている、木造の大規模建築物が日本でも増えるでしょう。(国内の大規模木造建築の例:樹海ドーム、オーストリアでの大規模木造建築の例:2004年6月27日の日記

木造で、4階建て以上の建物が建てられることは、将来的に何も不思議ではありません。
最近は木造の研究者や、木造を専攻する学生も増えつつあるので、10年後に木造の技術がどのくらい進化しているのか、楽しみです。

景観を守る動き ~景観法~

2005年01月31日

景観法に基づく景観行政団体に相次いで名乗り(日経BP KEN Platzより)

↑(閲覧には無料会員登録が必要です)

昨年12月に、景観法という法律が施行されました。
地方自治体が、景観法に基づく「景観行政団体」になると、景観計画区域を指定でき、街並み形成にデザインや色などの制限をかけらます。
また、勧告や命令、罰金なども科すことができます。

これまでに景観行政団体になったのは、以下の市町です。
(都道府県と政令指定都市中核市は全て景観行政団体です。)


  • 栃木県日光市

  • 神奈川県真鶴町

  • 神奈川県小田原市

  • 神奈川県大磯町

  • 神奈川県平塚市

  • 千葉県市川市

  • 岐阜県各務原市

  • 岐阜県多治見市

  • 大分県別府市

建築の雑誌を見ていると、取り上げられやすかったり、人気のあるものは、奇抜なデザインの建物。
日本では、建築家≒デザイナーというような風潮もあるような気がします。

しかし、魅力のある街に必要なものは、個別のデザインの奇抜さではなく、周りとの調和、デザインや色調の統一性、街並み。


景観法が転機となり、全国各地で街並み保存や、街並み形成の動きが広がるといいですね。


マンションも省エネ義務化へ。国交省が省エネ法改正案。

2005年02月08日


国土交通省は今国会に提出する省エネ法改正案で、マンションなどの集合住宅の新築・増改築時に省エネ対策の実施と報告を義務づける方針を決めた。
建築主や管理組合は、外壁や窓の断熱化、空調設備の効率的な運用策などを3年ごとに国に報告しなければならなくなる。総延べ床面積が2000m2以上の建物が対象なので、大規模マンションだけでなく中規模のマンションでも報告が必要になる。

既存のマンションについては、外壁工事など大がかりな修繕をする時に省エネ対策の届け出を義務づける。新旧マンションともに対策が不十分な場合は、国が勧告する。

朝日新聞 2月6日の記事より抜粋

この件については、国全体の建物性能が上がるきっかけになるので、良いことだと思います。断熱化された部材の需要が増えれば、部材の価格も下がります。

文面を見ると、「外壁や窓の断熱化」とあります。
サッシは簡単に高断熱化できますが、今一般的な内断熱の場合、断熱材の厚みを増やすほど、室内が狭くなります。しかし外断熱の場合、断熱材の厚みがどれだけ増えても室内の広さは変わりません。

外断熱が採用されるのは良いことだと思います。しかし、「単に外側に断熱材を貼っただけ」というのも出てくるでしょう。

重要なのは、断熱だけでなく、換気、暖房、冷房、気密などをトータルで考えること。この辺りに詳しい技術者は本当に少ないと思います。

この分野の話は、一般の方が少し勉強するだけでも、建築関係者より詳しくなれることが多々ありますので、いろいろ調べてみてはいかがでしょうか。

アンカーボルトを入れる位置 (在来工法・軸組工法編)

2005年05月18日

基礎と、建物の土台を緊結する金物のことを、アンカーボルトといいます。

アンカーボルトは、地震の揺れのときに建物が浮いたり、移動したりしないために、とても大切なものです。
しかし、設計段階でアンカーボルトを入れる位置をしっかり検討していないと、入れ忘れや、位置の間違いというミスが起きてしまいます。

アンカーボルトを入れる位置は、建築基準法にはしっかりと明記されていません。そのため一般的には、住宅金融公庫の仕様に基づいて、アンカーボルトが入れられます。

在来工法の場合、主に以下の位置にアンカーボルトを入れる必要があります。

筋かいが取り付く柱の両端 構造用合板等が取り付く柱の両端
筋交いが取り付く柱の両端 構造用合板等が取り付く柱の両端
 
継手の上木 継手の間隔
継手の上木部分 2階建ては、2.7m以内
3階建ては、2.0m以内の間隔

その他に、土台が切れている部分にも入れる必要があります。
アンカーボルトが足りないのは困りますが、数が多いのは問題になりません。

よくアンカーボルトが抜けているのが、「継手の上木部分」です。
基礎の図面と、上部の建物の図面を照らし合わせていないと、入れ忘れがおきます。

ご自宅の近くに、建築中の建物があったら、遠くからアンカーボルトの位置を見てみるのも良いかも知れません。

アンカーボルトを入れる位置 (ツーバイフォー・枠組壁工法編)

2005年05月21日

前回、軸組・在来工法における、アンカーボルトを入れる位置を示しましたので、今回は枠組壁工法(ツーバイフォー工法)における、位置をご説明します。

隅角部付近 継手付近
隅角部(ぐうかくぶ)付近 継手付近
 
それぞれの間隔は、2m以内  
それぞれの間隔は、2m以内  

(建物が3階建てで、1階に掃き出し窓がある場合は、その付近にも必要になります。)

工法に関わらず、アンカーボルトの位置で気をつけるのは、基礎の上に載る、「土台の継手位置をあらかじめ照合しておく」ことです。

アンカーボルトの位置と、土台の継手位置を照らし合わせていないと、アンカーボルトの不足がよくありますので、十分にご注意してください。

狙ったかのように、柱の真下にアンカーボルトが位置している

2005年07月17日

柱の真下にアンカーボルト 品質チェックにお伺いしたとき、隣の物件で見かけた土台敷きの様子。
増築工事をしているようで、土台を敷いている段階でした。
土台と、基礎を繋ぐためのアンカーボルトが、(狙ったかのように)柱のど真ん中に来ています。
基礎の図面と、1階の平面図・床伏図を照らし合わせていないから起きてしまったのですね。

ボルトを締めようにも、ほぞの下側までネジはありませんので、途中で止まってしまいます。

このような場合には、このアンカーボルトは無かったことにして、新たに取り付けることになります。

ちなみに、アンカーボルトを入れる位置は私の過去の日記をご覧ください。
 ・アンカーボルトを入れる位置 (在来工法・軸組工法編) 2005年5月18日分
 ・アンカーボルトを入れる位置 (ツーバイフォー・枠組壁工法編) 2005年5月21日分

建物を作る時に重要な「仕様書」は、契約前までに確認を

2005年08月11日

建物を作るときに必要な書類の1つに、「仕様書」があります。
基礎の鉄筋の太さや、断熱材の種類や厚みが書いてある書類です。

最近、建築条件付の物件における、品質チェックのご相談がよくありますが、仕様書の書き方があいまいだったり、詳細が分からないことがよくあります。

例えば基礎コンクリート。
仕様書に、基礎:鉄筋入り基礎コンクリート とだけ書かれてあることがありますが、これではどのような基礎なのかわかりません。
また、断熱も、壁の断熱:グラスウール とだけ書かれてあっても、それだけでは、現場のチェックが出来ません。

仕様書は、建物を作る上でとても大切なものです。契約前までに、建物の仕様についてあいまいな部分を無くしておくと、後から色々と悩むことが少なくなります。
仕様書は、具体的なものを準備してもらいましょう。

木造関係者にお奨めの1冊。杉山英男著「地震と木造住宅」

2006年04月18日

地震と木造住宅 最近、昔読んだある本を読み返しています。
その本とは、

地震と木造住宅  杉山英男著
という本です。

著者の杉山英男先生(元 東京大学名誉教授)は昨年2月に亡くなられました。
日本の木質構造研究の第一人者です。

専門色が強い本ですので、一般の方にはなかなか読みにくいと思いますが、建築の関係者(特に木造関係)にはぜひ読んで欲しいです。
序章を読むだけでも価値があると思います。

この本の中で杉山先生は、欠陥を防ぎ、耐震性能を上げる方法として、

片筋かいはやめてタスキ筋かいだけにするか、いっそのこと筋かいをやめボード張り壁を考えなくてはならないのではあるまいか。(P316)

と書かれています。

確かに、現場を知る立場からすると、筋かいというのは、取り付ける時のバラツキや方向が気になる時があります。
また、2006年 4月10日のエントリー(筋交い(筋かい)の方向が分からない図面を書く設計者は、構造に疎い)に示したように、方向性のある材料であるにも関わらず、取り付けの方向が書かれていないケースというのも、まだまだあります。

その章の結論では、今後の方向性として
 「大壁造では下地板と筋かいに頼らない構法を大幅に採用すること」
とも書かれています。

また、別の章では、通し柱を設けることの懸念や、ホゾ差しの仕口の問題点についても触れられています。

話すと長くなるのですが、アメリカでツーバイフォー工法が出来る前の工法では、筋かいが使われたり、通し柱があったりしました。
しかし、研究の結果、筋かいが無くなり、通し柱も無くなりました。

本当に、木質構造が分かっている専門家(大工一筋○○年という人ではなく、在来にも、ツーバイにも、日本の木造の歴史にも詳しく、地震や構造力学に精通している人)であれば、妥当な判断だと思われるのではないでしょうか。

ちなみに、

  1.(社寺建築のような)伝統構法
  2.在来工法(いわゆる軸組構法)
  3.ツーバイフォー工法(枠組壁工法)

の3つをグループ分けにすると、どれとどれが同じグループになるでしょうか?

ほとんどの方は、1と2が同じグループで、3だけが別物だと思われるでしょう。

しかし構造的に見ると、1の(社寺建築のような)伝統構法だけが単独で、
  2.在来工法(いわゆる軸組構法)
  3.ツーバイフォー工法(枠組壁構法)
は、「耐力壁構造」で同じグループになるのです。

在来工法(軸組構法)とツーバイフォー工法は、同じ耐力壁の計算方法で耐震性を把握できます。耐震診断の方法でも、この2つの計算方法は基本的に同じです。

(社寺建築のような)伝統構法の構造計算は全くの別物で、計算方法も非常に難しくなります。
木造に精通していてこの計算ができる専門家というのは、1都道府県に1人いるかいないかくらいかも知れません。

最近は、在来工法(軸組構法)でも建物の外側に構造用合板を張ることが増えました。
軸組構法最大手のハウスメーカーでは、標準で通し柱を設けていません。
これらは構法の進化だと思います。
通し柱があると可変性の妨げになり、軸組の組み方や仕口の加工方法によっては部材の断面欠損が大きな問題になるからです。

この後の進化としては、部材規格のさらなる共通化と、施工の簡易化だと思いますが、結局行き着くところは、ツーバイフォーのような規格なのでは?と思っています。

ちなみに、ご存知でない方がほとんどだと思いますが、枠組壁工法(ツーバイフォー工法)は、防火地域に建てることができます。
また、4階建ての住宅も建てることができます。
(ただし、いずれも材料や仕様上の制限があります。)

大規模な実験や研究が出来るのは、構法の統一団体がある強みですね。
(在来工法には、研究や実験を専門的に行っている大きな統一団体が無いので・・・。)

一戸建てで多いのは、木造の在来工法とツーバイフォー。【構法の種類】

2006年05月12日

今回からは、建物の構造・構法に関して書きたいと思います。
長持ちさせる建物には、長持ちするための、しっかりとした構造体が不可欠です。

※余談ですが、構造に関する工法は、正確には「工法」ではなく、「構法」という字を使います。このブログでは、SEO的な面もあり、「工法」としています。

▼一戸建てで多いのは、2つの構法▼

一戸建てで多く使われる構法は、

 ・在来工法(軸組工法)
 ・ツーバイフォー工法(枠組壁工法・わくぐみかべこうほう)

の2つです。

そのほかにも、
 
 ・プレハブ工法
 ・鉄骨造(S造・えすぞう)
 ・鉄筋コンクリート造(RC造・あーるしーぞう)

があります。

プレハブ構法には、鉄骨プレハブや木質プレハブがあります。

ちなみに、日本建築学会に提出される論文や標準仕様書など、建築の専門分野では、

 ・伝統建築
 ・在来工法(軸組工法)
 ・ツーバイフォー工法(枠組壁工法・わくぐみかべこうほう)
 ・木質プレハブ(ミサワホームやS×Lで採用している工法)

のように、主構造が「木」に関するものは、「木質構造」として同一に分類されています。

軸組工法は範囲が広い。軸組工法と、在来工法の違い

2006年05月15日

▼軸組工法は範囲が広い▼
昔のお寺さんや神社に見られる建物も軸組工法の1つですが、使われる材料が大きく、「貫」が多く使われています。

今の一般住宅の軸組工法と、昔のお寺さんや神社は、材料も構造も大きく違いますが、ひとくくりにすると、軸組工法です。

構造的には、現在の一般住宅と、昔のお寺さんや神社は、普通自動車とトラックくらいの違いがあります。
構造計算の方法も、一般住宅で行われている「壁量計算」という簡易な方法と異なり、お寺さんや神社のような伝統建築は、非常に専門的になります。木造に詳しく、実際に実務で伝統建築を構造計算出来る人は、日本で数えるほどしかいないでしょう。

しかし、普通自動車もトラックも「車」という分類では同じ
ですよね。軸組工法の分類もこれに似ています。

このように、軸組工法は、細かい部分でいろいろな違いがあるため、言い方としてはかなり幅があります。
柱や梁がある構法という、広い意味でとらえるのがよいでしょう。

ちなみに、一般的な木造住宅を、「在来工法」と呼ぶことがありますが、これは戦後に付けられた言い方で、それほど古い言葉ではありません。
そもそも、当時は木造と言えば今で言う在来工法しかありませんから、「在来」という言葉自体使わなかったのです。

日本で主流の軸組工法(在来工法)。しかし海外では少数派

2006年05月19日

▼日本で主流の軸組工法。しかし海外では少数派▼
日本では、軸組工法(在来工法)が主流です。
全国各地、いろいろなところでつかわれている工法です。

日本では主流の軸組工法(在来工法)も、世界的にみると少数派です。
部材寸法の統一性の無さ、高断熱化に向かない作り、構造的に見て合理的で無い作り方や強度の低い継手、工業化の難しさなどから、それらのハードルを越えない限り、世界進出は無理でしょう。

木造住宅を建てている国の多くは、日本でいうツーバイフォー工法(枠組壁工法)で作られることの方がずっと多いのです。

このツーバイフォー工法というのは、日本での言い方で、アメリカやカナダではプラットフォーム工法と呼ばれます。

ちなみに、日本でツーバイフォーという名称を広めたのは、鵜野日出男さんという方です。
ツーバイフォーや高気密高断熱の分野では有名な方です。

現在では、軸組工法(在来工法)も、どんどんツーバイフォーのような工法になってきています。
最終的に、構造の設計思想や基本的な考え方は、軸組工法(在来工法)も、ツーバイフォー工法も、木質パネル工法も同一のところにたどり着くでしょう。

(たどり着くというか、ツーバイフォー工法も、木質パネル工法が1歩、2歩先に進んでいて、軸組構法(在来工法)が追いつくという言い方の方が正しいかも知れませんが・・・・。)

増えつづけているツーバイフォー

2006年05月22日

 前回、一戸建てで多い構法は、

 ・軸組工法(在来工法)
 ・ツーバイフォー工法(枠組壁工法・わくぐみかべこうほう)

 の2つが多いと書きました。

その具体的なデータが、住宅金融公庫にありましたので、概要を引用します。

データ元
調査結果でみる公庫融資住宅の仕様について(住宅金融公庫)
 http://www.jyukou.go.jp/chisiki/chosa/shuyoudata_h14.html(2007年9月時点でリンク切れ)

工法別の割合:平成14年度

 在来木造(軸組) :61.7%
 プレハブ工法  :20.7%
 枠組壁工法(2×4):13.4%
 その他の工法  : 4.2%

 プレハブ工法というのは、

 ・木質系
 ・鉄骨系
 ・コンクリート系
 ・ユニット系

など、いろいろな種類があり、それぞれを採用しているのは棟数の多い大手ハウスメーカーばかりなので、工法として分類すると、割合が多くなっているのでしょう。

ちなみに、この調査から9年前(平成5年)の結果は、以下の通りです。

 在来木造(軸組) :66.1%
 プレハブ工法  :22.7%
 枠組壁工法(2×4): 5.4%
 その他の工法  : 5.8%

プレハブ工法はあまり変わっていませんが、在来木造(軸組)が減って、ツーバイフォー工法(枠組壁構法)が大きく増えています。
工法の割合は地域によって違いがあり、北海道、北陸、九州では在来木造(軸組)の割合が高くなっています。

北海道では、プレハブ住宅が全国平均の6分の1と少ないため、在来木造(軸組)の割合が増えていると思われます。
また、北海道はツーバイフォー工法(枠組壁工法)の割合が首都圏とほぼ同じくらい高い地域です。

九州は、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)の割合が全国で最も低くなっています。
首都圏と近畿では在来木造(軸組)の割合が低くなっています。

全国平均でみると、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)は、9年前の約2.5倍ですから、かなり増えていますね。

ツーバイフォー工法(枠組壁工法)は今日では十分認知されており、構造そのものがシステム化され、耐震性が高いことや、高断熱にしやすいことからも、今後も着工数が伸びていくのではないでしょうか。

戦後、放置され続けてきた、日本の木造建築

2006年05月26日

今回は、構法からちょっと話を脱線して、日本の木造の研究の歴史について。

「木造の建物がこれほど多い日本だから、木造の研究も進んでいるのではないか?」

と思う人がほとんどだと思いますが、実は全然違うのです。

日本建築学会という団体があります。
会員数は、約3万6千人。建設業に従事している人は、日本全国で約600万人ですから、全体の1%にもなりません。

しかし、歴史があり研究色が強い団体あることから、様々な基準や仕様がこの建築学会によって決められています。
日本における建築界の頭脳といってもいいかも知れません。
会員の多くは教育機関の研究者やゼネコンの研究者、設計事務所、官公庁の人たちです。

その日本建築学会が、今から46年前の昭和34年(1959年)に、「木造の研究をしない」としました。

建築学会が研究をしないと言ったら、研究者は発表する場がないため、当然ながら研究も行われません。

研究がされなかった結果、日本の木造建物は、あいまいな部分が多いまま歩んできました。
つまり、勘と経験だけが頼りの期間がずっと続いてきて、理論的な裏づけがなかったのです。

今から、10年前の阪神淡路大震災では、木造の建物がたくさん壊れました。
しかし、阪神淡路大震災が起きたとき、関西以西に木造を専門としている研究者は居なかったとされています。

建築の世界で構造を研究している人であれば、あれだけの大きな被害を受けたのは何故なのか、研究しようと思うのは、特別なことではありません。

その為、阪神淡路大震災を転機として、各分野の研究者が木造の研究を行うようになりました。
これは、ほんの数年前の出来事です。

最近では、急速に研究が進み、構造計算に関わる分野でも飛躍的な進歩を遂げています。
法律面でも、2000年に建築基準法が変わり、在来工法(軸組構法)の金物の基準は大幅に厳しくなりました。
しかし、実際の現場を見ていると研究の世界と現場では、まだまだ格差があるように思います。2000年の法改正を知らない業界関係者もまだまだいるというお寒い状況です。

日本における、木造建築の研究の歴史について、もう少し詳しく知りたい方は、私の過去の日記をどうぞ。

日本における、木造建築の研究の歴史
http://t-ohshita.com/2004/12/20041219-1200.html

在来工法は、日本の風土に合っているのか?

2006年06月02日

家選びをするとき、それぞれの工法の短所・長所を比較している雑誌やホームページを見ることがあるかもしれません。

検索サイトで検索すると、そのようなページも簡単に見つかるでしょう。

在来工法(軸組工法)での長所において、以下のようなことが書かれていることを目にすることがあります。

 「日本の風土に合っている」

しかし、これに関して私は疑問です

最初に気をつけなければいけないのは、現在一戸建てで使われている在来工法(軸組工法)と、昔からのお寺や神社に使われている軸組工法(伝統工法)は、似てはいるものの、構造のメカニズムとしては別物だということです。

例えてみるなら、車という分類は一緒だけど、大衆車と、特殊用途に使う特殊車両のように、その種類が構造的に全く異なるということです。

昔からのお寺や神社に使われている軸組工法(伝統工法)は、柱と梁がとても大きく、すき間だらけです。

私が学生のとき、京都のあるとても大きなお寺(現在、大規模改修中)に、耐震診断のための調査に行きました。
常時微動(じょうじびどう)計測という、目には見えない非常に小さな揺れを計測するため、調査は夜です。

ちなみに、常時微動計測では、遠くで雷が鳴ったり、地下鉄が走ったり、大きなクラクションが鳴ったりする振動でも、建物が揺れていることがわかります。
計測の画面を見ているとなかなか面白いものでした。

調査の時期は12月。何もしなくても寒いのですが、建物の小屋裏に入ると、なぜかもっと寒いのです。

小屋裏からは、隙間間から月明かりが見えました。ここから、冷たい風がビュンビュンと吹き込んできました。
このとき、「本当に昔の建物はすき間だらけなのだな」 と実感したものです。

これに対して、最近の住宅では、在来工法(軸組工法)を採用していても、和室のない家が全く珍しくありません。
そのため、柱が家の中から見えないこともよくあります。
外側も、サイディングなどに囲われ、柱が見えないのがほとんどです。
結果として、「意図せず」気密性が上がっています。(高性能住宅・省エネ住宅にするためには、「意図して」気密性を高める必要がありますが。)

「風土に合っている」という定義は何か分かりませんが、その建物の寿命が長いということなら、昔のお寺や神社のような伝統建築は風土に合っていると思います。

しかし、在来工法(軸組工法)が半数以上を占める日本の一戸建ての寿命は約26年。

日本の風土といっても、日本の地域によって気候は大きく違います。
北海道と沖縄、日本海側と太平洋側でも全然違います。

気候のバリエーションで言えば、国土が日本の25倍あるアメリカの方が変化に富んでいます。
温度と湿度の関係を示す、クリモグラフというグラフを書くと、日本各地のグラフはアメリカのグラフの中にすっぽりと入ってしまうのではないでしょうか。

Blog2006060201そのアメリカでは、木造建物の工法はほとんど全て、ツーバイフォー工法。
住まいの平均寿命も、日本より長い44年。

風土に、「地震が多い」という特徴が含まれるとしたら、大きな地震ごとにバタバタと倒れてしまう在来工法は、本当に風土に合っているのでしょうか。

気候風土に合っているはずの工法の方が、寿命が短いという現実を疑問に思ってしまうのは私だけでしょうか。
「日本の風土に合っている」と簡単に言われても、言っている根拠がないと思ってしまうのです。

住まいの寿命を決めるポイントは、工法だけでないと思います。

長寿命のためには、温度・湿度の管理が重要

2006年06月05日

6月になりました。
6月といえば、そろそろ梅雨の時期。
梅雨といえば、食中毒やカビを想像される方も多いでしょう。

なぜ、梅雨になると食中毒やカビが出やすくなるのかというと、外気の温度と湿度(特に湿度)が、食中毒の菌やカビが増えやすい条件になるからです。

建物の中でカビが生えないようにするためには、食中毒の菌やカビが生えやすい環境を無くす必要があります。

つまり、家の中で温度・湿度をコントロールできる範囲を広げ、温度または、湿度がどのくらいのレベルになるのか分からないような箇所を無くす必要があります。

物を長持ちさせるためには、温度・湿度の管理が重要
東京の上野には、博物館がいくつもあります。
その中で、重要な文化財が置いてある部屋には、それぞれ温湿度計が置いてあります。
これは、しっかりと温度と湿度を管理して、文化財が痛まないようにするためです。
温度と湿度を一定の範囲に保つということは、何かを長持ちさせるために、絶対必要な条件です。

博物館の中には、温湿度計の計測データを、LANを通じて一箇所に集め、規定の範囲内に入っているか確認しているところもあります。
このように、常に確認しておけば、梅雨の時期の外気のような温度・湿度にはなりません。

Design News Japanという、機械エンジニア向けの専門誌があります。
(ちなみに無料ですが、所定の条件を満たさないと読めません)

Design News Japanの2006年6月号には、アメリカの合衆国憲法、独立宣言、権利章典のオリジナル公文書を守る、専用ケースの技術が紹介されています。
映画、ナショナルトレジャーでニコラス・ケイジがこの独立宣言書を盗んでいくシーンがありますね。
このケースでも、温度・湿度の管理は当然のように行われています。しかも、100年以上ケースを開けることなく、中の書類が守られるという厳しい条件で。

湿度計の誤差
博物館に用いられるような湿度計の誤差は小さいのですが、一般に売られている湿度計は、誤差が±5%程度あるのが普通です。

温度の誤差は、±0.1℃程度のものが多いのですが、湿度計の誤差というのは、それと比べると大きめです。
ですから、一般に売られている湿度計で、1~2%の数値を読み取って比べたとしても、深い意味はありません。
湿度というのは、なかなか測りにくいものなのです。

湿度はとらえにくいものだ
イギリスの建築批評家、レイナー・バンハムは、1965年に書いた、「環境としての建築―建築デザインと環境技術」という本の中で湿度について以下のように書いています。


 環境管理に包含される全ての要因のうちで、湿度はほとんど建築の歴史にとって最も有害で、微妙で、制御しようにもとらえどころのないものであった。


湿度を上げるのは簡単ですが、下げるためには、エアコンなどの設備を使わないと一般的には困難です。

エアコンのような設備が無かったころ、高い湿度という条件は、確かにとらえどころのないものだったことでしょう。

在来工法(軸組工法)での継手。木の継手の強度がゼロ?

2006年06月09日

●在来工法(軸組工法)での継手 その1
在来工法(軸組工法)では、木の端部に複雑な加工をして、はめ込み式のほぞを作ります。

継手にはいろいろな形がありますが、現在の一戸建てにおいて現場において継手を手作業で加工するのはまれです。
ほとんどが、プレカット工場でであらかじめ機械加工されたものです。

現在、手作業で継手をつくるのは、伝統建築やそれに近い建物だけなのではないでしょうか。

木の継手は、
 ・継手の形状
 ・施工者の技量
 ・継手同士のすき間の大きさ
 ・材種
などによって、強度のばらつきが出ます。

そのため、継手は羽子板ボルトのような金物で補強します。

一戸建てで構造計算をするとき、継手の強さは建物の強度に含めず、金物だけで継手の強度を確保しています。つまり、木でどれだけ丁寧な継手を作ろうとも、構造計算ではその継手の強度はゼロです。
金物ならば、施工者の技量などによる強度のばらつきが小さく、信頼できるからです。

また、複雑な種類の継手(一般住宅には使わない)で、完璧な施工であったとしても、その継手の引っ張り強度は継手の無い材料の50%程度。
一般的な住宅で使われている継手の場合、継手のない材料と比較すると、完璧に施工したとしてもたったの10~20%程度しか出ないのです。

逆にいうと、一般的な一戸建ての在来工法(軸組工法)において、継手の強度を得るためには金物に頼らざるを得ないということです。

金物を最小限にした伝統建築では、過去の実験・研究から得られたデータを元にして、継手の強度も構造計算に入れますが、構造計算がとても難しくなる(限界耐力設計)ので、特殊な建物でない限り、一般的には行われません。

在来工法(軸組工法)での継手 大工の手からノミを奪え!

2006年06月12日

●軸組構法(在来工法)での継手 大工の手からノミを奪え!
木材の複雑な継手は、日本独自の物だと思っている方が多いのではないでしょうか?

実はそんなことはありません。アメリカにも、ドイツにも、イギリスにも昔の工法では継手があったのです。
しかし、このような継手は手間がかかる割に得られる強度が弱く、施工のばらつきが大きいことから、ずっと昔にやめています。そして、ツーバイフォーに見られるような、金物を使った継手を使うのが一般的です。

日本でも、デメリットの多い、木の継手にこだわることは止めたほうがいいというのは、昔から言われています。

例えば、日本の木造の研究者であった田辺平学は、北丹後地震(1927年)の直後、神戸新聞に「大工の手からノミを奪え」と題して、警告しています。
その中身は、「ノミを使って継手仕口を精巧に作ることに精力を費やしているが、観点を変えて継手仕口に金物を使い、壁に筋かいを入れ、家屋を耐震的にすることを考えるべきだ」というものです。

また、田辺平学は、次のようにも書いています(杉山英男著、地震と木造建築、p181より)

「古来地震や風で、多くの人を殺したのは、極言すればこの”ほぞ差し”のためである」
「大工職の人達に対してお願いしたいことは、一刻も早く、”殺人的構造たるホゾ差し”の仕口に憂き身をやつすこと止めて、これに代わるべき、より安全にして、より進歩した仕口を用いるようにすることであります」

この、「代わるべき」仕口というのは、ツーバイフォーや金物工法のような金物を使ったもののことを指しています。

在来工法の継手。賢者は歴史から学び、愚者は経験から学ぶ

2006年06月16日

地震で在来工法(軸組工法)の建物が壊れるとき、ほとんど全ては継手(仕口)から壊れます。
柱や梁がその中間で、ボキッ!と折れて壊れるようなことは少数です。

壊れ方が多いのは、通し柱の梁が繋がる部分で、柱が折れるケース。
神社やお寺のように柱が太ければ、このような被害は起きにくくなりますが、一般住宅の柱は4寸(12cm)ほど。
安全のためには、6寸(18cm)は欲しいところですが、現実的には無理でしょう。せいぜい、4.5寸(13.5cm)程度です。

在来工法(軸組工法)がこれから進化していくためには、最初に通し柱が無くなるでしょう。法律上も、通し柱というのは要りません。

在来工法(軸組工法)の最大手のハウスメーカーでは、現在通し柱を設けていません。通し柱を無くすことは過去の地震の被害や研究結果から考えると何も疑問はないことだと思います。

逆に、通し柱にこだわっているのは、過去の研究や地震の被害を学んでいないと思ってしまいます。

賢者は歴史から学び、愚者は経験から学ぶ
オットー・フォン・ビスマルク

木造の建物に関わっている人に言いたいのは、まずは過去の地震の被害や最近の研究結果を、学んで欲しいということです。余裕がある場合には、日本の木造の歴史や海外の木造の事例を学ぶと良いでしょう。

過去の地震の被害や、最近急激に進んでいる木造の研究結果から考えると、在来工法(軸組工法)は、

 ・筋交い(筋かい)から構造用合板などの面材へ
 ・継手(仕口)の単純化
 ・通し柱の撤廃

のいう手順を踏み、どんどんツーバイフォーに近づいていくという流れになると信じています。
在来工法(軸組工法)も、ツーバイフォー工法も、木質パネル工法も、根底にある流れ・構造的考え方というのは、1つだからです。

在来工法(軸組工法)と、ツーバイフォー(枠組壁工法)の継手の比較

2006年06月19日

在来工法(軸組工法)の継手

継手の外観 羽子板ボルト

在来工法(軸組工法)では、木材の端部に複雑な加工をしてホゾを作ってはめ込んだあと、金物で補強します。
一般的に補強と言われていますが、構造計算上、ホゾなど木の加工によって得られる継手の強度はゼロとしています。
これは、施工者の腕によって強度や品質にばらつきが出ることや、奇麗に加工できていたとしても、何も加工しない木材と比べると、10~20%程度の強度しか得られないためです。
現在は、ホゾは工場で加工されるので強度や品質のばらつきは小さいのですが、ホゾや継手などの強度を構造計算に入れないのは、後者の理由によるものです。
在来工法(軸組工法)に使われる金物は、ボルト締めがあるため、ゆるみ止めのある金物を使わないと、経年によってゆるみが生じる可能性が高くなります。

ちなみに、上の右の写真において、羽子板ボルトと間柱の欠き込みが干渉しています。間柱は構造部材ではありませんが、好ましいことではありません。


ツーバイフォー(枠組壁工法)の継手

梁を入れる前 梁を入れた後

ツーバイフォー(枠組壁工法)では、複雑な継手は作らず、木材の断面は垂直に切られます。
継手は、金物を使って固定します。金物はクギで留めるつけるだけですので、施工者によるばらつきも最小限です。

継手に金物をつかうことは悪いこと?

2006年06月23日

継手に金物を使うことに対して、悪いイメージを持ってみえる方が多いのではないでしょうか。
私は、そのようには全く思っていません。

金物を使うのは、建物を地震や強風から守るためのものです。
住まいは、厳しい自然環境から人を守る、「シェルター」の役割を果たす必要があるからです。

地震では多くの人が亡くなることも少なくありません。
阪神淡路大震災でも、6,000人を超える人が亡くなりました。
しかし、多くの人は地震そのものによって亡くなったのではなく、人が作った建物が壊れたことによって亡くなったのです。

阪神淡路大震災において、倒壊した家もあれば、ほとんど無傷の家もあります。いずれも人が作った建物ですが、設計者の違いにより大きな差が出てしまいます。
木造の建物で、壊れるパターンというのは大体決まっており、その多くは壁量不足、継手・仕口の破壊による倒壊です。

被害の原因がわかっているのですから、それを解決し、誰でも簡単・確実に強度が得られる方法を採用するのが、エンジニア(技術者)の務めであると思うのです。
継手・仕口は、金物で補強するのが確実です。建築基準法も、阪神淡路大震災の後、金物の仕様が大幅に厳しくなりましたが、当然の流れでしょう。

このような理由から、継手に金物を使うことに対して、私は全く悪いイメージを持っていません。

金物について、とても共感できる内容の物がありましたので、ご紹介致します。


◆林 知行 著
 ウッドエンジニアリング入門(学芸出版社)より

「法隆寺は世界最古の木造建築物であって、しかも釘を1本も使って」いないという「日本の常識」は、相当根強い形で日本人の脳裏にインプットされているようである。
事実は釘が使われているのだが、小学校の授業でそういう風に教えられるのであろうか。
誰かが意図したわけではないだろうが、「法隆寺 → 素晴らしい国宝建築物 → 釘を使っていない → 釘を使わないのは素晴らしい → 釘を使うことは悪だ」という風に連想が進み、いつしか日本人を「金物悪者論者」にしてしまうようである。

このマインドコントロールはかなり強烈で、本当に日本人は金物悪者論議が大好きである。
業界関係者までもが、金物を用いることに後ろめたさを感じており、何か免罪符のようなものをもらいたがっているようにも感じられる。
筆者は仕事柄、金物に関するコメントや執筆を依頼されることが多いが、「木材と金物の相性をどのように考えるか」とか「金物の寿命と木材の寿命の関係」についての意見を求められることが多い。
いつも感じることではあるが、21世紀を迎えたいま、このような議論を続けているのは、世界広しといえでもわが国だけであろう。

軸組構法であれ壁構造であれ、接合部と接合金物を用いて構造を構成することが、省資源的で、経済的で、合理的で、その他もろもろの利点があるから、世界中の木造文化国において今日のような木質構造の技術が発達してきたのである。
細い枠材とボード類を釘や金物で固定して住宅の中で、それなりに快適な生活を送っている人類が世界中に何億人といるのである。
完全無欠なものではないことは確かであるが、接合部と接合金物を用いた木質構造はまさに人類の偉大な文化である。
もちろん、木と金属はまったく別の物質であるから、両者の物性が違うのは当然である。
だからこそ、それを共存させて使えるようにしてきたのが人類の知恵なのである。


著者は、木材の第一線の研究者で、私も学生時代に何本か論文を参考にさせていただきました。

こちらの本は、「木」についてとてもわかりやすく書かれた本です。
合板や集成材の基本や理論についても分かりやすく書かれており、建築の関係者には、ぜひ読んでいただきたい1冊です。

耐力壁とは?

2006年06月26日

●耐力壁とは?
筋違いや、合板は、みなさんお聞きになったことがあると思います。

筋かいや合板を張る壁は、普通の間仕切り壁ではなく、地震に耐えるための耐力を得るための壁なので、「耐力壁(たいりょくかべ)」といいます。

耐力壁は、木造の建物だけでなく、鉄骨造、鉄筋コンクリート造でも使われます。(ただし、S造・RC造の場合、耐力壁よりも耐震壁という名称が一般的です。)

木造の在来工法(軸組工法)は、柱と梁で建物を支えると言われていますが、地震のときに建物を守っているのは、実際にはこの耐力壁です。
一般的な住宅の柱と梁の骨組みの部材の大きさでは、地震に耐えることはできません。これは、柱を全て4寸(12cm)、5寸(15cm)にしたとしても同じです。

ツーバイフォー(枠組壁工法)では、外側の壁には全て合板を張り、耐力壁とします。
今日では、在来工法(軸組工法)でも、外側の壁全てに構造用合板などを張ることが一般的になってきました。これは、耐震性能を上げたり、施工のバラツキを抑える良い流れであると思います。

今後のブログで書いていきますが、本当に木造に詳しい人であれば、「筋交い(筋かい)」のメリットというのは非常に少なく、デメリットの方が多いことを知っています。

以前、木造分野では名の知れた構造事務所の方と、現在の在来工法(軸組工法)の多くは、筋かいに頼っている設計が多いということを話す機会がありました。
すると、

「まだ、筋交い(筋かい)を使ってる現場ってあるんですね」

ということをおっしゃっていました。
私もそう思っていますが、ズバリ言われたのでちょっとびっくりしました。

木造分野の最新の研究を知っている実務者・研究者と、その他ほとんど全ての木造関係者を比べると、最新の研究を知っているかどうかで、かなり構造に関する意識の隔たりがあると思います。
その意識の差は、実際に建てられる建物においても、耐震性能にも影響するでしょう

壁量とは?(建築基準法施行令 第46条・構造耐力上必要な軸組等)

2006年06月30日

●壁量とは?
建築基準法では、建物に必要な耐力壁の量を、建物の広さや屋根の重さ、建築地によって定めています。 (建築基準法施行令 第46条・構造耐力上必要な軸組等

この耐力壁の量を、壁量といいます。
壁量は、「かべりょう」 や、「へきりょう」 と読みます。

ちなみに壁量の規定は、1950年に導入されました。

壁量は、下の階に行くほど多くなります。
これは、運動会の組体操で行うピラミッドが、下の方ほど重たくて負担が大きいのと同じで、建物も下の方が重たくなり、地震のときや強風が吹いたときの負担が大きくなるからです。

壁量は、壁の強さ(壁倍率・かべばいりつ) × 壁の長さ で求められます。
つまり、壁の強さを長さで示したもので、最終的には長さで示します。

壁倍率とは?(一般的には5.0倍まで。詳細計算であれば、6倍、7倍もOK)

2006年07月03日

壁倍率とは?
壁倍率(かべ倍率)は、「ある壁の強さを基準として、その基準の何倍の強さがあるか」 で示されます。

厚み 1.5cm、幅 9.0cmの筋交い(筋かい)を入れた壁が、壁倍率 1.0倍となり、基準の強さとなります。
在来工法(軸組工法)の場合、石こうボードを規定のビスの種類・間隔で留めた壁も、壁倍率が1.0になります。

構造用合板を張った壁は、この厚み 1.5cm、幅 9.0cmの筋かいを入れた壁より 2.5倍強いので、壁倍率は 2.5倍となります。

壁倍率は足し算することができますが、最大値で 5.0倍までとなっています。

ただし、詳細な構造計算を行なう場合には、壁倍率の制限は無くなり、6倍でも7倍でも大丈夫です*1。具体的には、7.14倍以下まで可能です。

ただし、この計算方法はほとんど使われていません。設計能力によっては危険側の設計になる可能性もあるため、木造に詳しい設計者以外には、この設計法を依頼しないのが無難です。


*1
(財)日本住木・木材技術センター
木造軸組工法住宅の許容応力度設計
P43、鉛直構面の許容耐力と剛性の算定(詳細計算法による場合)

実際の壁量の計算(壁量計算は、構造計算とは呼ばない)

2006年07月07日

壁量で、5mの耐力壁が必要だとします。

この場合、壁倍率が 1.0倍の壁を5m入れればOKです。
また、壁倍率が 2.5倍の壁を、2m入れてもOKです。
壁倍率 5.0倍の壁を、1m入れてもOKです。

壁量の規定は、「現場で職人さんが計算できるように」という考えが根本にありますので、計算は簡単です。
計算が簡単なため、壁量の計算は、「構造計算」とは言わないのが普通です。一般的に、構造計算とは、もっと複雑な計算のこと(許容応力度計算以上)を指します。

ちなみに、壁を強くすれば強くするほど、部材にかかる力が大きくなるので、必然的に金物の量も増えていきます。
壁の強度ばかりに気を取られると、金物が大きくなるので注意しましょう。

在来工法もツーバイフォーも、本質部分は同じ。

2006年07月10日

日本の木質構造研究の第一人者である、故 杉山英男先生(元 東京大学名誉教授)が書かれた「地震と木造住宅」の中で、欠陥を防ぎ、耐震性能を上げる方法として、

片筋かいはやめてタスキ筋かいだけにするか、いっそのこと筋かいをやめボード張り壁を考えなくてはならないのではあるまいか。(P316)

と書かれています。
確かに、現場を知る立場からすると、筋かいを取り付ける時のバラツキや方向が気になる時があります。

そのコラムの結論では、今後の方向性として

 「大壁造では下地板と筋かいに頼らない構法を大幅に採用すること」

 とも書かれています。

話すと長くなるのですが、アメリカでツーバイフォー工法(現地では、プラットフォーム工法と言う)が出来る前には、筋交いが使われたり、通し柱があったりしました。
しかし、研究の結果、筋かいが無くなり、通し柱も無くなりました。これらは、メリットよりもデメリットの方が大きいからです。

ちなみに、
  1. (社寺建築のような)伝統工法
  2. 軸組工法(いわゆる在来工法)
  3. ツーバイフォー工法(枠組壁工法)
の3つをグループ分けにすると、どれとどれが同じグループになるでしょうか?

続きは次回。

在来工法もツーバイフォーも、本質部分は同じ。伝統工法だけが別物。在来の通し柱は不要

2006年07月14日

前回は、
  1. (社寺建築のような)伝統工法
  2. 軸組工法(いわゆる在来工法)
  3. ツーバイフォー工法(枠組壁工法)
の3つをグループ分けにすると、どれとどれが同じグループになるでしょうか?

という部分で終わりました。

一般の方は、1と2が同じグループで、3だけが別物だと思われるでしょう。

しかし構造的に見ると、1の(社寺建築のような)伝統工法だけが単独で、

  2. 軸組工法(いわゆる在来工法)
  3. ツーバイフォー工法(枠組壁工法)
は、「耐力壁構造」で同じグループになるのです。

もう少し付け加えると、大手ハウスメーカーが独自規格としている、木質パネル工法も同じグループです。

実際、耐力壁線に関する制限について、これらの構造の制限は同じです。

また、軸組工法(在来工法)とツーバイフォー工法は、同じ耐力壁の計算方法で耐震性を把握できます。
耐震診断の方法でも、軸組工法(在来工法)とツーバイフォー工法の計算方法は同じです。

壁の強さで耐震性を得ているため、基本的な耐震性は壁の量で決まります。
柱の太さはほとんど関係ありません。
壁量計算の計算にも全く関係ありません。
つまり、柱が全て4寸であったとしても、耐震性に大きな影響は与えないのです。

例えば、柱を24cm角の幅にしたとしても、その強度は構造用合板1枚以下*です。
(*建築知識2006年2月号 P.123)

「うちは、柱がオール4寸だから地震に強い」というのは、ある意味、構造を知らない業者さんが言うトークです。
柱を太くするよりも、壁を強くした方が、ずっと安くて効率的です。

最近は、軸組工法(在来工法)でも建物の外側に構造用合板を張ることが増えました。

軸組工法(在来工法)最大手のハウスメーカーでは、現在、標準で通し柱を設けていません。これらは構法の進化だと思います。

通し柱
軸組構法最大手のハウスメーカーの施工において、1階の建て方が終わり、2階部分を見た様子。
在来工法であるが、通し柱は1本も無く、フラットな床組みになっている。

通し柱があると可変性の妨げになり、軸組の組み方や仕口の加工方法によっては部材の断面欠損が大きな問題になるからです。
木造より強度が高い鉄やコンクリートを使った鉄筋コンクリート造や鉄骨造にも通し柱はありませんね。それぞれ、柱は床の部分で途切れており、そこに上の柱を接続する形です。

この後の進化としては、部材規格のさらなる共通化と、施工の簡易化だと思いますが、結局行き着くところは、ツーバイフォーのような規格なのでは?と思っています。
耐震性能が高く、省エネ住宅にするのも簡単ですしね。

私の目には、軸組工法も、ツーバイも、木質パネル工法も、中身は同じに見えています。

筋違い、筋交い、筋かい。どれが正しい?筋かいの歴史を考える

2007年05月08日

「すじかい」は、3種類の表記がされることがあります。それは、

筋違い

筋交い

筋かい

です。

筋かいは、古くは法隆寺東院絵殿舎利殿(1219年)に見られますが、主流な工法とはなりませんでした。また、現在の建物で使われているような使用法ではなく、工法的な繋がりもありません。*1

現代の筋かいの使い方は、明治以後に紹介されました。
紹介されたといっても、当時の日本の木造住宅に筋かいが無いことを指摘したのは、日本人ではなく実は外国人でした。

スコットランド生まれの灯台建設技師プラントンは1874年頃、日本の木造住宅において、「壁には柱と柱を結ぶ一本の斜材も入っていない」と指摘しています。

フランス生まれの建築技師レスカスも、1877年に同じように日本の木造住宅の耐震性の低さについて、「壁に筋かいがない」と指摘しています。


また、イギリス出身の外人教師ジョサイヤ・コンドルも1892年の講演の中で、当時の日本の建物が地震に弱かった理由として、「筋かいが皆無である」ということを指摘しています。*2

筋かいが明治時代に紹介された後も、都市部の3階建て以外では、筋かいが実際に採用されることは少なかったそうです。
その後、昭和25年(1950年)の建築基準法に盛り込まれた壁量規定で筋かいが明文化され、幾度かの改正が加わりながら、現在に続いています。

つまり、現在のような筋かいの使い方の歴史というのは、まだ60年にも満たない程度のものなのです。今、年金をもらっている人たちが生まれた頃、住まいに筋かいはほとんど使われていなかったということです。(それが「良い」という気は全くありません。)

60年に満たないものを「伝統」や「在来」というには新しすぎる気がします。
ときどき、筋かいがあたかも大昔から使われているかのように言われることがありますが、実際にはそんなことは無かったのです。

話がずれました。
筋違い筋交いの使い分けですが、どちらが正しいのでしょうか。
1925年前後の文献では、筋違いと書いてあるものが多く、筋交いはあまり見ません。

建物を作る時、一連の柱や壁を、「通り」と言います。図面ではそれぞれの通りを、X1、X2、X3などとかいたり、いろはにほへとで書いたりします。
「通り」と同じ意味で一般的な言葉に「筋」というものがあります。
例えば、大阪の道路には、御堂筋や、堺筋、谷町筋という通りの名がついています。(御堂筋通りのように、筋と通りを併記する場合もありますが。)ちなみに大阪では、「通り」は東西方向、「筋」は南北方向です。

「通り」=「筋」とすると、筋かいは「筋違い」の方が適切だと私は思います。木造建築の骨組みは、縦と横の通り(筋)の構成が基本であり、そこに斜めが入ると、「筋(通り)が違う」と感じてしまうためです。

縦と横だけの通りの構成でも、必ず交点は出てきます。つまり、筋の交わる点=筋交いです。このように、筋かいの漢字を「筋交い」とすると、斜めの部材の見た目を的確に表せません。

学生のとき、「筋違い筋交い、どちらが正しいのでしょう?」と先輩に聞いたら、

「そんなん、選挙の時の政治家みたいに、平仮名にしたらええやん。基準法もそう書いてあるやろ」

と言われました。確かに基準法には「筋かい」と書かれています。

それ以後、私は「筋かい」で通しています。木質構造の大先生、故 杉山英男先生の書籍でも、「筋かい」で統一してありますので、問題ないでしょう。
無難な逃げとも言えるかもしれませんが。

 *1 日本の木造住宅の100年 p64、日本木造住宅産業協会
 *2 地震と木造住宅、杉山英男、p153-155、丸善

ツーバイフォーの柱と梁。(ツーバイにも、柱も梁もある)

2007年10月06日

ツーバイフォー工法の土台敷き立ち会いへ。
2棟現場で、もう1棟は1階のフレーミングが終わったところ。写真はその1階の様子。

ツーバイフォーは壁で構成されると言われますが、写真部分は柱と梁です。ツーバイでも、柱や梁と同じ役目の部材が使われることは少なくありません。
ちなみに、使われている材は在来工法と同じもの。同じ材料を使うということは、その時得られる強度も同じ。ある木材の強度が、工法を変えただけで、急激に強くなるということはありませんからね。

ツーバイも在来も本質的な部分は変わらないのです。

参照エントリー
 在来工法もツーバイフォーも、本質部分は同じ。伝統工法だけが別物。

オススメ。エクスナレッジ 「建築知識」2007年10月号の木造現場入門DVD

2007年10月31日

月刊建築知識 建築の技術系専門誌に、「建築知識」という月刊誌があります。
10月31日時点ではバックナンバー扱いですが、この2007年10月号に、木造現場入門というDVDが付いていました。

買ったのはしばらく前ですが、先日ようやくそのDVDを見ました。

100分の映像ということで、長いかな?と思っていましたが、すぐに見終わりました。

木造の在来工法というと、これまでの「経験」のみに頼り、新しい技術や理論などを知らない人も業界には多いのですが、このDVDに出ている方は違います。バッチリ詳しいですね。

ちなみに、木造の在来工法で、耐震について詳しいか詳しくないかを見分けるためには、「通し柱」の意義や欠点などを聞けば分かります。
DVDの中では、その点でもバッチリです。「通し柱」に関する章だけでも見る価値があると思います。

その他、映像の中で良かったのは、屋根の作り方。あの納め方は綺麗で剛性も出ます。プレカットの時代ならではの納め方。 

断熱面では、ややあっさりした感じでした。収録された現場の性能も、外部にポリスチレンの外張りと、褒められるほど高くありません。
(テロップも、ポリスチレンフォームが、ポリスチレンホームになってました。家じゃないんですから。)
断熱と構造、両方詳しい人というのは少数ですね。

エクスナレッジ絡みとして、書籍「外断熱」が危ない!(タイトルとその中身は違いますが)の著者である、西方設計の西方里見さんの断熱講義があったら魅力的です。

長くなりましたが、全体的にはとても良いDVDだと思います。
建築関係者だけでなく、一般の方にもご覧頂きたいです。

構造計算って何だろう? 壁量計算とのちがい

2008年05月07日

2005年の構造計算書偽造問題では、「構造計算」という言葉がニュースでよく使われていました。構造計算とは、荷物や雪の重さ、地震や台風などの力に対して、建物が安全かどうかを確認するために行われるものです。

鉄筋コンクリートや鉄骨の建物では、当然のように行われている「構造計算」ですが、実は、着工棟数が圧倒的に多い木造の2階建てや平屋建てでは「構造計算」は行われていません。
それでは、どのようにして木造2階建ては安全性を確認しているのでしょうか。


●木造2階建てで一般的に行われているのは、壁量計算

建築知識2008年5月号
建築の専門書(建築知識2008年5月号)における、壁量計算の取り扱いの例。
木造2階建てでは、構造計算よりもはるかに簡単な、壁量計算(かべりょうけいさん、へきりょうけいさん)という方法が使われています。

これは、建物の床面積と外壁の面積から、地震や風の力に耐えるために必要な壁の量を求め、実際に設計する建物がその壁の量を満たしているかどうか、判断するものです。

計算そのものは本当に簡単で、私は小学生でも解ける程度の難易度だと思います。
建築の専門書の特集において、「5分でスラスラ」できるとされているほど、壁量計算は簡単です。
計算の量としては、A3用紙1~2枚程度のものです。


●構造計算とは、許容応力度計算のこと
一般的な構造計算は、専門的には「許容応力度等計算」と言います。
壁量計算は簡易的な計算ですので、建築の専門家は、壁量計算構造計算とは呼びません構造計算と呼べるのは、「許容応力度等計算」や、それ以上の細かな計算方法になります。

許容応力度計算は、壁量計算に比べて計算量が圧倒的に多くなり、内容も難しくなります。
木造2階建ての規模でも、A4用紙100枚以上になることは珍しくありません。

計算量が多くなることから、建物の状態をより詳細に知ることが出来ます。
例えば、壁量計算では、それぞれの柱が負担している重さは分かりませんが、構造計算許容応力度計算では正確に分かります。
また、構造計算許容応力度計算)では、床のたわみの量や、地震のときにどの程度柱が傾くかなども正確に求めることが出来ます。

構造計算書の例 許容応力度等計算の例
2階建て木造住宅の構造計算書の例。その枚数は多く、内容も詳細。
一見、数字の羅列で、専門性が高いものです。

●壁量計算と構造計算を、ぶどうの品質チェックに例えると
壁量計算構造計算を、果物のぶどうの品質チェックに例えると、壁量計算は、皿に載せたブドウを少し離れたところから目視でチェックする程度でしょう。ぶどうの実の奥に問題があったとしても、慣れていない人には分かりませんし、それぞれの実の品質も細かくは分かりません。

これに対して構造計算(許容応力度計算)では、ぶどうの実を1つ1つ手にとって、それぞれに問題が無いか確認していく程度の、詳細なチェックになります。
チェックに時間はかかりますが、全てを詳しく調べることが出来ますので、あいまいな部分が無くなります。

実際、構造計算(許容応力度計算)では、柱や梁、土台や金物の1つ1つまで、全て安全を確認していきます。
これに対して壁量計算は壁だけの計算です。
柱や梁は計算にさえ含まれませんので、壁量計算ではそれらの安全性の検討はできません。


●最近、2階建てでも、自主的に構造計算をする会社が増えています。
ここ最近、日々のインスペクションの現場で、変化が起きています。

法律では義務付けられていない木造2階建てにおいても、自主的に構造計算を行っている会社が増えているのです。

以前は、金物工法を使っている一部の会社のみ、構造計算を標準としていました。
しかし最近では、そうでない会社でも構造計算を標準としている所が増えてきました。
この傾向は、構造計算書偽造問題が起きた後に顕著になりました。
建物の安全性をより詳細に知るという点で、これは大変喜ばしいことだと思います。

増えたといっても、木造2階建てで構造計算が行われているのは、全着工棟数の1%にも満たない程度ではないかと思います。


●構造計算の費用は20万円前後が一般的。
 より安心のため、2階建てでも構造計算を
木造であっても、構造計算のためには専門的な知識が必要です。
建築士の資格を持っているからといって、全ての建築士が構造計算できる訳ではありません。むしろ、構造計算できない建築士の方が多いと思います。

一般的に構造計算は、構造設計事務所で行います。
木造2階建ての場合、費用は20万円前後が多いのではないでしょうか。

費用と時間はかかるものの、貴方の手元に届けられる構造計算書は、一般的な壁量計算の書類と比べて、はるかに枚数が多く、詳細なものです。
将来のメンテナンスやリフォームにも、きっと役に立つでしょう。そして、建物の安心感も、ずっと高いものとなるでしょう。


●どんなとき、木造2階建てでも構造計算を行った方がいいの?
木造2階建てでも構造計算(許容応力度計算)を行うのが良いか判断に迷うことがあると思います。

この判断のためにはまず、壁量計算が有効となるための以下の前提条件を知っておく必要があります。

 1. 平面の形に極端な凹凸がないこと
 2. 耐力壁がつりあい良く配置されていること
 3. 2階の床や小屋梁の面が水平面として十分に強いこと
 4. 大きな吹き抜けや階段が設けられていないこと
 5. 屋根の勾配が極端に急ではないこと

杉山英男著 地震と木造建築 p260より一部抜粋・編集

壁量計算は、この前提条件から成り立っています。(この前提条件を知らない建築士も多数居ます)

その前提条件から外れる場合には、構造計算(許容応力度計算)を行うのが良いでしょう。
特に、建物形状が複雑な場合や大きな吹き抜けがある場合、壁量計算を満たすだけでは安全性が確保できないことが多く、要注意です。

この他には、1階が鉄筋コンクリート造、2階以上が木造などの「混構造」においても、構造計算するのが理想です。


●私の理想は、木造においても、全棟構造計算
私としては、建物の形や吹き抜けの大小に限らず、全ての木造住宅において、構造計算を行って欲しいと思っています。

さくら事務所の設計コンペで、構造計算を義務付けているのは、この思いからです。

同じ敷地、同じ間取り、同じ階数で建物を建てる場合でも、鉄筋コンクリート造や鉄骨造で建てる場合には詳細な構造計算を行います。
しかし、木造で建てる場合だけ簡易的な計算で済んでいることは、間違った状態であると思うためです。

建物のより高い安全性を求める声や、平面図や見積りと連動した構造計算ソフトが出てきたことから、将来的に構造計算が行われる割合は、増えることはあっても減ることは無いでしょう。

今後、進んでいる業者さんが構造計算を標準としていくのは、間違いありません。

木造在来工法の金物選定の間違い。柱が持ち上がる!? ~告示平12建告第1460号 第2号 N値計算~

2009年01月19日

現在、設計打ち合わせ中の、一戸建て品質チェックの物件。
着工前・確認申請前に図面の確認をするため、ご依頼者に図面を送って頂きました。

 

金物の配置図を見て、すぐに間違っていると思ったのが、下の図面。

 

N値計算の間違い

どこが間違っているのか分かるでしょうか。
木造在来工法の設計に関わっている人であれば、分かって当然? 

分からないとマズイかも。
赤く塗った柱のどこかに間違いがあります。

 

物件の設計は、ケンチクカと呼ばれる方。
建物調査がらみの仕事をしていると、どうしても、ケンチクカは苦手になりますが、今回もそんな感じ。
先方のメールの返信では、「告示平12建告第1460号の規定に基づき、接合部の構造方法を決定しています。」とありましたが!?

 

在来軸組工法では2000年以降、告示平12建告第1460号で書かれているように、金物を選ぶ必要があります。これにより、平屋でもホールダウン金物が必要になりました。

 

しかし、2階建て木造住宅において、建築士が確認申請を提出する場合、金物選定の結果は提出の義務はありません。
(一般の方が住宅を建てられる場合、建築士に委任状を書いて、代理申請してもらうのが普通です)
金物選定の結果を提出しなさいと言われる審査機関もあるようですが、少数派です。

「告示に従って計算しなさい、書類も作りなさい。」
「でも、確認審査のとき、書類は出さなくてはいいですよ」

という、変な法律なのです。建築の世界では、4号特例と言われます。 

 

今回、ご依頼者は弊社の品質チェックをご希望のため、着工前に直すことができます。
しかし、ご依頼が無かった場合、このまま何事もなく建築確認を申請し、着工し、完成していたかもしれません。

 

さて、間違いの答えですが、1階の柱脚に取り付けられる、ホールダウン金物が間違っています。
HD10とは、約1トンの力に耐えられる金物と指示されているということです。

 

ホールダウン金物の例 今回の筋かいの配置の場合、1階の柱脚に取り付けられる金物は、告示平12建告第1460号の表から金物を選ぶ場合には、35kNのホールダウン金物。


N値計算で計算した場合でも、25KN(約 2.5トン)の金物が必要になります。

 


ちなみに、今回の物件が平屋建てだとしても、1階の筋かいの配置から金物を求めると、ホールダウン金物は15kNのものが必要になります。

 

従って、10kNの金物では、耐力が足りないのです。
10KNと25kNの金物では、10kN → 15kN → 20kN → 25kNと、3ランクも耐力が違います。

 

この金物選定では、地震の際に柱が持ち上がってしまう恐れがあります。

 

長くなりましたが、2階建ての建物の角部に筋かいがたすき掛けで入っていて、ホールダウン金物が無い、あるいは10kNという小さなものが指示されている場合には、疑う必要があります。

 

ちなみに、今回のように金物の計算が間違っている、あるいは行なっていないという物件を、過去に何度も見ています。
小さな建売業者、小さな不動産屋の建築条件付物件では、特にご注意を。

軒の出

2009年01月20日

軒の出 軽井沢で現場の立ち会い 軒の出は1m以上。

 

やはりこの位の軒の出があると美しい。

 

昔の家はみんな軒の出が大きかったんですけどね。

ツーバイシックスの土台敷き

2009年05月15日

埼玉、東京と2件の現場を見た後、ツーバイシックスで建てられる建物の、土台敷き確認へ。
この物件は、さくら事務所の設計コンペで設計・施工業者さんを決めました。

 

土台敷きでは主に基礎パッキンを確認します。
最近は、入れ忘れの無い連続型の基礎パッキンが増えており、こちらの物件も連続型。

 

応力が集中する部分 この物件は2階建てでも構造計算(許容応力度計算)してあります。

構造計算すると、力が集中する箇所が詳細に特定できるため、応力が集中する一部の土台下は、基礎パッキンを補強するよう図面指示されています。

連続型よりも、独立型の基礎パッキンの方が耐力が高いでしょうから、応力が集中する部分だけは独立型の基礎パッキンです。

これで、地震の時などで大きな力がかかったとしても大丈夫でしょう。

 

ツーバイシックス それにしても、ツーバイシックス工法の土台は大きい。

140mm(14cm)あります。

 

かなりどっしりとした感じで、在来工法で使う3.5寸(105mm)や、4寸(120mm)土台が細く見えてしまいます。

 

この幅で断熱材が入るのですから、きっと快適な住まいになることでしょう。

 

 

配筋工事の効率化を意識している職人さんが使う道具

2009年09月01日

午後からは、一戸建て の基礎の配筋検査へ。

天気は暑いほど快晴。

 

基礎工事では、バラバラの鉄筋を、「結束線」と呼ばれる細い針金を使って固定していきます。

このとき、結束線の形を見ることで、配筋工事の作業効率を考えている職人さんか、そうでないかわかる目安のようなものがあります。

 

写真は、 鉄筋結束機 今回の物件のもの。
作業の効率化を考えているであろう、現場だと思います。

なぜなら、これは電動式の鉄筋結束機を使った場合の形状であるからです。

 

電動ではなく、手作業で行う場合には、「ハッカー」と呼ばれる道具を使います。
手動の場合、結束線はこのような細長い楕円にはならず、小さな丸い形になります。

 

電動式の鉄筋結束機は、1台 15 ~ 20万円程度の価格です。
ちなみにハッカーの場合、安いものであれば1,000円未満。
結束線も電動専用のものになるため、材料費も高くなります。

 

それでも、このような機械を使っている職人さんというのは、作業の効率化を考えているからです。
「(効率が悪くても)安いのが一番」という考えであれば、電動の鉄筋結束機は使いません。

 

布基礎や、小規模な現場では作業効率の差は小さいと思いますが、ベタ基礎で面積が大きい場合、作業時間の差は歴然。

 

このような理由から、現場に配筋検査で入ったとき、結束線が写真のような形状をしていると、「オッ!」と思います。

 

チェックの結果、配筋状態は良好でした。

よく考えると、マズい話。法律で定められている壁量が実際には足りていない!?

2009年09月22日

このブログでは、一戸建ての耐震性について、いくつものエントリーを書いています。

木造一戸建ての耐震性のほとんどは、「壁量」で決まります。
その壁量について、専門家向けにはどのように言われているのか、1つ紹介します。

 

建築士定期講習テキスト 現在、建築士を持っている人は、定期的に講習を受けなくてはいけません。
これは、耐震偽装事件の後に決まった制度です。

 

右にある建築士定期講習テキストの中で、地震に対する必要壁量には、以下のように書いてありました。

 

 地震に対する壁率は、階数や屋根の種類によって、各階の必要壁率が規定されている。屋根の種類は、建築物の重さを表している。必要壁率は、一般的な建築物の重量等を仮定し、建築基準法施行令3章8節の構造計算に基づいて算出されている。

しかし、建築基準法の想定している建築物の重量が、最近の建築物の重量と比較して軽いといわれている。詳細に建築物の重量を積算する許容応力度設計では必要壁量が増える、という指摘があるのはこのためである。

建築士定期講習テキスト 平成21年2月1日発行  pp151より

つまりこれは、建築基準法が作られた時と比べて現在の建物は重たくなっているため、法律で規定されている壁量を入れたとしても、実際には足りない可能性があるということ。

 

サラッと書いてありますが、よく考えるとマズい話です。

 

昔の建物と比べ今日の建物は、耐火性能を上げて内装下地を作るための石膏ボードが多用され、遮音性を高めるための遮音マットなどの採用も増えていることから、重量が増えているのです。

 

以前から専門家の間では、許容応力度計算によって、建物の構造を詳細に検討すると、建築基準法の壁量では不足してしまうということはよく知られていました。

 

建物の構造は、余裕を持って設計・施工したいものです。

ツーバイフォーの材料のサイズは、2インチ×4インチではありません

2010年01月19日

家選びの本などを見ると、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)の説明に、「工法の名前の通り、2インチ×4インチの部材を使って・・・」などと書いてあることを目にします。

 

しかし、実際には呼び称と実際の寸法は違い、2インチ(5.1cm)×4インチ(10.2cm)もありません。実測すると、以下のようになります。

 

ツーバイフォー材の厚み
ツーバイフォー材の幅

 

このように、実際のサイズは2インチ×4インチではなく、
1.5インチ×3.5インチと、それぞれ0.5インチ小さくなります

 

 ちなみに、2インチ、4インチ、6インチの幅・厚みまでは、それぞれ0.5インチ小さくなります。

しかし、ツーバイエイト(2×8)、ツーバイテン(2×10)など、8インチを超えると、0.75インチ小さくなります

呼び

実寸

 2× 8

  1.5インチ(38mm)×

7.25インチ(184mm)

 2×10

 1.5インチ(38mm)×

9.25インチ(235mm)

 2×12

 1.5インチ(38mm)×

 11.25インチ(286mm)

 

呼び称と、実際の寸法がなぜ違うのか、歴史的な経緯はよく知らないのですが・・・。

工務店、建設会社の社長さん、品質管理の担当者さん、ホールダウン金物用アンカーボルトは、異形のものにしませんか!

2010年01月31日

ホールダウン金物の取り付け例 阪神淡路大震災の後、広く使われるようになった、ホールダウン金物。


地震で建物が揺れたとき、柱が基礎から抜けないようにするための、非常に重要な金物です。

 

このホールダウン金物を取り付けるアンカーボルトは、直径16mmのものが一般的。

形状は、アルファベットのJの形をしているものがよく使われています。

ホールダウン金物用アンカーボルト
 

このホールダウン金物用アンカーボルトが、地震による引張力を受けて基礎コンクリートから抜けないようにするため、コンクリートへの埋め込み深さは、360mm以上必要です。
(ホールダウン金物の必要耐力が35kNの場合は、500mm以上)

 

実は、この360mm以上という数字が、なかなかの曲者です。

 

一般的な基礎の立上り高さは、地面から400mm。
「400mmあれば、360mmは埋まるのではないか」
と思われるかも知れません。確かに入ります。

ベタ基礎の図
 

一般的に基礎のコンクリートは図の 1と2の、2回に分けて流します。この場合、1が終わった段階で、ホールダウン金物用アンカーボルトを入れても、規定の360mmを満たしません。

2の、基礎立上りの一番上には、水平精度確保のために「レベラー材」という水のようなコンクリートを流します。
レベラー材は強度が低いので、埋め込み深さに含めないのが安全です。

 

現場で基礎工事をする職人さんで、この「360mm埋め込む」というルールを、ご存知でない方を何度も目にしてきました。
施工業者からは、「基礎天端から上に出る長さ」は指示されるものの、埋め込み深さを指示されていないというものです。

 

ホールダウン金物用アンカーボルトを入れた例 埋め込み深さを確保するため、一般的な基礎の立上り高さの場合、ホールダウン金物用アンカーボルトは、1のコンクリート打設時に入れておく必要があります。

 

たったこれだけのことですが、ホールダウン金物用アンカーボルトの位置精度を高めたい場合、実はコンクリート打設2回目の段階で入れる方が理想です。

 

それでは、埋め込み長さの問題をどのように解決したら良いのでしょうか?基礎の高さを高くしてしまうという方法もあります。

例えば基礎の高さを、地面から450mmにすれば、2回目の打設の時でも、400mm近くありますので埋め込み深さは大丈夫です。

 

その他、基礎の高さを変えずに、アンカーボルト側で対処する方法があります。
異型のホールダウン金物用アンカーボルトを使えば良いのです。

 

異径のホールダウン金物用アンカーボルト

異形のホールダウン金物用アンカーボルトを使うことで、通常の丸棒を使ったアンカーボルトと同じ強度を、たった200mmの埋め込み深さで得ることができます。 

 

大手ハウスメーカーの基礎工事では、異形のホールダウン金物用アンカーボルトを使うのが常識のようになっています。
埋め込み深さと、基礎精度の両立です。

 

タナカ 異形Sアンカーボルト

 

異形のホールダウン金物用アンカーボルト 三井ホーム

コストアップは微々たるもの。
ほとんど変わらないと思います。

 

工務店、建設会社の社長さん、品質管理の担当者さん、ホールダウン金物用アンカーボルトは、異形のものにしませんか!

住宅版エコポイント、長期優良住宅、フラット35Sの適用基準のまとめ

2010年04月06日

2009年 6月から始まった、長期優良住宅
今年2月から、当初10年間の金利引下げが0.3%から1.0%に拡大された、フラット35S
そして、3月から始まった、住宅版エコポイント制度。

 

「何をどうすれば、これらの制度が利用できるのかわからない」 という方も多いと思いますので、それぞれの制度を利用するのに必要な条件を簡単にまとめてみました。
(いずれも、新築一戸建ての場合における条件です。マンション、中古物件などはこの条件ではありません。)

 

住宅版エコポイント、長期優良住宅、フラット35Sの制度比較一覧
住宅版エコポイント、長期優良住宅、フラット35Sの制度比較一覧

 

この表を見ると分かるように、必要条件として最も厳しいのは、長期優良住宅の制度。
長期優良住宅に適合させると、建物の性能・仕様としては、住宅版エコポイントも、フラット35Sも適合させられます。

 

住宅版エコポイントが開始されてから、建売(分譲)各社が、次世代省エネ基準に標準対応してきました。次世代省エネ基準程度は、これからの新築住宅では、最低条件だと思います。

美味しんぼの木造禁止を考える。日本の木質構造の今後

2010年09月01日

過去最長の長文です。ご注意を

 

漫画、美味しんぼの中で、
「日本の家屋で木材を、それも国産の木材を使う率は恐ろしく低い」理由は、「ひとつは、日本の建築学会が1959年に木造建築を否定した」という記載に対し、日本建築学会が「「木造禁止」を含む日本建築学会の「建築防災に関する決議」(1959年)について」というページを出したことが、話題になっています。

 

この号の美味しんぼを読んでいない(というか、普段から読んでいない)ので詳細は分かりませんが、良い機会だと思いますので、木造禁止について取り上げてみます。

 

なお、「国産の木材を使う率は恐ろしく低い」理由が、木造禁止だと私は思っていません。

国材の木材が使われないのは、海外と比べて効率の低い日本の林業が、効率が高く価格の安い外国材に押されているのが原因だと思います。
また、国産材(特に無垢材)は見た目ばかりにこだわり、強度的な裏付けが無い材料が出回っていることも、耐震性重視の今日では問題です。
現在流通している無垢材のほとんどが、JASの認定のない無等級材であることが現状です。

最近、2階建てでも許容応力度計算(構造計算)をしている会社が増えてきていますが、無等級材ではなかなか現場で使えません。

 

木造禁止が取り上げられたのは良い事ではないか

私は今から 約6年前に、「日本における、木造建築の研究の歴史」として木造禁止について取り上げています。

木造禁止については、木造の研究に関わったことがある人なら当然知っていることだと思います。
しかし、建築関係者でもこの事実を知らない方が多いのではないでしょうか。

今回、よく知られている漫画で「木造禁止」が取り上げられた事は、日本の木造の歴史を考える上で良いきっかけなのでは無いかと思います。

 

一級建築士試験で木造の問題が 3問出題されたという事に関して

美味しんぼの中で、「一級建築士の試験では木造についていっさい扱わない」という記述に対して、日本建築学会では、「たとえば2008年の一級建築士試験では3題の木造に関する問題が出されています。」と反論しています。

2008年の一級建築士試験の問題数は100問ですので、3問という問題数は全体の、3%にしかなりません。

 

建築着工における構造別床面積の割合 鉄筋コンクリート造、鉄骨造はオフィスビルや病院、学校など大規模なものが多くなっています。

着工された建物全体における構造別の割合で比較すると、昨年のデータは右のようになり、木造が全体の約42%になります。
国土交通省 建築着工統計 平成21年計分より)

実際に建てられている建物の床面積で見ても、日本の多くの建物は木造(木質構造)で、一級建築士の試験数のうち、木造が 3問というのは、やはり少なく思います。

 

一級建築士の試験を受けた方なら分かりますが、一級建築士の試験で木造の試験はあまり出ません。
二次試験の製図でも、木造の建物はまず出題されません。

木造の問題が多いのは、一級建築士ではなく二級建築士の試験です。
二級建築士の問題は木造が多く、二次試験の製図も通常は木造です。

悩ましいのは、一般の方は一級建築士を持っている = どんな構造でも知っている と思われていることです。
実際には木造をほとんど知らなくても、一級建築士になることは可能ではないでしょうか。

そして、二級建築士を持っている人の方が、一級建築士よりも木造を知っているということは十分に有りえます。

 

大学でも木造建築を教えないという事に関して

美味しんぼの中で、「大学でも木造建築を教えない」という記述に対して、日本建築学会では、「一級建築士の受験資格要件の中に、建築に関する指定科目を修めて卒業していることが必要になり、この指定科目の標準的な科目例が「木構造」があげられています」と反論しています。

周りに、大学の建築学科を卒業している方がみえたら聞いてみて下さい。
「大学に、木構造を専門としている研究室がありましたか?」と。
「無かった」と言われることが多いと思います。

 

日本の建築学科において、木構造を専門としている研究室および教授・准教授が在籍されているところは少数です。
(鉄筋コンクリート造や、鉄骨造の研究室は普通あります)

 

教えたとしても、在来軸組工法とツーバイフォーの違い程度の簡単なもので、壁量計算やN値計算まで教えることは無いかも知れません。私自身、研究室の中でそれらは学びましたが、通常の講義では学んでいません。

 

木造建築に関する日本建築学会の取り組み について

日本建築学会が、木造建築に関して、JASS11などを発行して、技術の向上をはかっていたことは事実だと思います。

しかし、建築学会における投稿数を見ると、木構造の研究において、空白期間があったことは否めません。

木質構造分野における建築学会投稿件数の推移

1955年~1985年頃までの30年間は、投稿数が50にも満たない状況です。

投稿数が増えたのは阪神淡路大震災が起きた後からです。

1995年までは、100に満たなかった投稿数は、現在、300に迫ろうとしています。

ただし、2008年の時点でも、日本建築学会全体の投稿数における、木質構造の割合は、4%ほどです。

もし、阪神淡路大震災が起きていなかったら、日本の木造研究はまだ停滞していたのかも知れません。

 

木造禁止の背景

杉山英男の語り伝え 木造禁止は、私が生まれるずっと前の話なので、木造禁止決議の背景について、手元の資料から考えてみます。

 

日本の木質構造の第一人者である、故 杉山英男先生(元東大名誉教授)が住木センターの機関紙に連載されたものをまとめた、「杉山英男の語り伝え(非売品)」では、3回目と4回目の連載で、木造禁止について触れています。

 

ちなみにこの本は私にとってとても貴重なものなので、普段は赤ペンだらけにしてしまう私も、この本だけにはペンを入れられません。

 

杉山英男の語り伝え 日本建築学会の木造禁止の決議 抜粋

  • 木造を抑止しようとする考え方が1950年代から60年代にわが国の官産学の指導者層の中に浸透していたことは公知の事実
  • 建築学会の大会開催中に緊急集会が開かれ、約500名の会員が出席し、満場一致で決議
  • 緊急集会を開いての大会決議というのは、建築学会の歴史の上でもかなり異常なもの
  • 「耐震」という言葉を決議文の表面に出さないで、「防火」と「耐風水害」を並べて「木造禁止」の理由とした真意はどこにあったのか
  • 大会決議の背景に何があったのかという疑問は、今も私の脳裏から離れない


杉山英男の語り伝え 木造禁止の決議と軽量鉄骨 抜粋

  • 建築学会の大会決議の裏に軽量鉄骨出現の影がちらついて見えてならない<
  • 建築学会の決議が行なわれて間も無くの12月に建築基準法が改正され、新たに「簡易耐火建築物」のコンセプトが導入された。
  • これにより、木造建築物は耐火建築物よりも防耐火の性能面で劣位とみなされることとなった。
  • 簡易耐火建築物は各部位ごとの仕様書規定で、耐火性能を科学的に規定するものではなかった
  • そのため、この結果は後年わが国の防火行政に困惑を招くことになったのは周知のこと
  • 建築基準法改正とほぼ同時に行なわれた公的機関の実大実験によれば、軽量鉄骨による簡易耐火建築物は出火25分にも達しないうちに完全に倒壊している
  • しかしこの事実は、「鉄は木よりも火に強い」という当時の日本社会の通念によってもみ消されてしまった
  • 簡易耐火建築物の出現により、木造の衰退が急速に進められることになったのは厳然とした歴史的事実
  • 建築学会の大会決議と建築基準法改正の時期的一致は偶然だったのだろうか
  • 軽量鉄骨が簡易耐火建築物として登場したことを利用し、建築学会の執行部有志が木造叩きに加担したということであろう。
  • そのために伊勢湾台風が利用されたのであろう。
  • そして、執行部の独走を許したのは、それを許すような雰囲気が学会内部に広く漂っていたからであろう。

 

省エネルギー、カーボンニュートラルで木造は有利

長く書いてきましたが、木造禁止があったことがや、阪神淡路大震災まで、木造・木質構造が冷遇、軽視されてきたことは事実だと思います。

しかし、阪神淡路大震災以後の木造の研究は急速に進んでおり、これまでの遅れを取り戻すかのようです。

木造は建設時の使用エネルギーが少なく、二酸化炭素の排出量は、同規模の建物を鉄筋コンクリートや鉄骨で建てたときと比べて、半分~4分の1で済むとされています。

最近、カーボンニュートラルという、例えば建物を建てたときに排出される二酸化炭素量と、その建物で吸収される二酸化炭素量が同じ量とする考え方がでています。

物でカーボンニュートラルを実現するためには、まずは建物そのものの省エネルギー性能を徹底的に上げたあと、太陽光発電などを設置するという手順になります。(大手住宅メーカーはこの順番が逆)

カーボンニュートラルという考え方を持てば、木造は他の構造よりもずっと有利です。
そもそも、建設時の使用エネルギーの点で、他の構造よりも有利な位置にいるのですから。

 

木質構造で4階建て以上をつくる

建物において、4階以上となると、これまでは鉄骨造、鉄筋コンクリート造が常識でした。
私は、5~6階までなら木造でもかまわないと思っています。

しかし、そのような動きはまだ活発ではありません。

日本には、世界最大の実大振動実験 E-ディフェンスがあります。
この装置を使い、アメリカとイタリアは、7階建ての木質構造の振動実験を行なっています。

http://www.iesu.co.jp/article/2009/08/20090825-1.html

 

日本の研究団体などでは、このような木質構造の多層階の実験は行なわれていないようです。

 

「日本は木造が多いから、技術も進んでいるのだろう」と思われるかも知れませんが、高層化の分野では大きな遅れをとっています。

 

日本でも、高層化の実大振動実験を行ないたいという動きがありますが、問題は予算。このような大規模な実大振動実験は、1億円以上の多額の費用がかかります。

国土交通省に、

「木造の多層階の振動実験をしたいので、予算を・・・」

とお願いすると、
「木造のことは林野庁で」
と言われ、

林野庁では、
「うちの管轄は木を製材して商品にするまで」
と言われ、ならば、「実験・研究」という意味から文部科学省に
お願いすると、
「建物のことは、国土交通省で」
と言われたという、ある木造研究者の話を聞いたことがあります。

 

日本の木質構造は、海外に出て行けるか

  普段から私は、

「日本の木質構造が海外に進出できるような物にするためには、何をどうすべきか」
ということを考えています。

 

別に、外貨獲得や外需のために外に出て行くという訳ではなく、海外に出て行けるような建物でないと、それは世界的に見て、性能と価格のバランスが取れていないと考えるからです。

日本の木質構造が海外に出て行く準備として、私の頭の中にある概要は、私のメールマガジンの 2010年 5月12号に少し載せています。

http://archive.mag2.com/0000144533/20100512235000000.html

 

東南アジアの地域は高温多湿で今後、所得の増加に伴って、冷房エネルギーが増えていくと思います。

 

日本は、ヨーロッパや北米と異なり、夏季に高温多湿の気候になります。

そのため、日本において高温多湿型の省エネ住宅のノウハウを作ることができれば、東南アジアのような高温多湿地域で、日本の家づくりのノウハウが生かせるでしょう。ヨーロッパ型の省エネ手法では、高温多湿地域の省エネは確立できないと思います。

また、耐震性について、3階建てまでであれば振動実験のノウハウやデータがありますので、四川大地震が起きたような地域でも、社会貢献できるのではないかと思います。

 

在来も、ツーバイも、木質パネルも最終的には1つ

よく、「在来軸組工法と、ツーバイ、どちらが良いですか?」と聞かれますが、最終的に正しく進化していけば、どちらも同じになります。

木質パネル工法は、ツーバイフォーを見本としていますので、兄弟のようなものです。

建築関係者でも、「在来とツーバイは全くの別物」と考える人がほとんどで、「どちらも最終的には同じになる」という事を言う人が少ないので勇気が要るのですが、本当にそう思っています。
私なりにロジカルに考えると、そうなるとしか思えません。

今回の木造禁止の件が広く知れ渡ったことは、日本の木造の歴史を知る良い機会かも知れません。

日本の木造住宅は省エネルギーの観点でも、多層階の観点でも、海外とは遅れているという認識を持ち、これからの木質構造の立ち位置と未来を考えるときだと思います。

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