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地震。震度と、震度階の違い

2004年08月06日

今日の未明に、地震があったみたいですね。
朝の3時半頃だったようですが、すっかり熟睡していて、全く気がつきませんでした。震度3の揺れより、私の睡眠の方が勝っていたようです。

一般的に、地震の強さは「震度」と言われますが、正確にはこれは間違いです。
正確に言うならば、震度階級あるいは、震度と言います。先の例で言うと、震度階3になります。

"震度"は、地震工学や耐震工学では違った意味を持つ言葉として使われているので、区別する必要があるのです。

ちなみに、地震や耐震の専門家は、地震の揺れの大きさを示す為に震度階級を使いません。震度階級の尺度は大雑把で、個人の主観に頼る部分があり、客観性に乏しい面があるからです。

ならば、地震の揺れの大きさにどのような尺度を使うのかというと、加速度(gal:ガル)や、速度(kine:カイン)を使います。これならば、かなり具体的に揺れの大きさを示す事が出来ます。
また、地震の特性を示すには、最大加速度、周期特性や継続時間などが使われます。

阪神淡路大震災 (C)Copyright 京都大学防災研究所 大きな地震が起きると、その被害地近くにある大学の建築学科や、日本建築学会、建物や地震の専門家などで、被害調査が行われるのが普通です。私も学生時代に2回行きました。

この時、被害をもたらした地震がどのような揺れだったかを知るために、欠かせない場所があります。それはどこでしょう?



答えは、お墓

墓石の転倒率や、倒れた方向などで、お墓があった場所の地震の揺れの大きさが推定出来るからです。この為、地震の被害調査に行くとすぐに墓地の場所を地元の人に聞いたりして調べ、墓石の転倒の割合や墓石の寸法などを計るのです。

地震が発生した時から日が経つごとに、地元の方が墓石を元に位置に戻す事が多いので、この調査はスピードが命です。
時々、お墓の間から白っぽいものが見える時があり、ひゃ~!とビビってしまうのですが。

地震に備えて。応急危険度判定士

2004年08月31日

今日は、午前中モデルルームに建物チェック。
設計図書が図面別にしっかり揃っていた事に加え、図面も比較的見やすかった事もあり、とてもスムーズに終了。

その後、応急危険度判定士の講習会の為に都庁へ。久しぶりの新宿です。

被害調査の様子 応急危険度判定士とは、地震で被害を受けた建物を調査し、その後に発生する余震などによる倒壊の危険性や外壁・窓ガラスの落下などの危険性を判定することにより、二次的災害を防止することを目的とする資格です。

判定が終わると、結果を3段階に評価し、建物に、調査済要注意危険のいずれかのステッカーを貼ります。

地震が起こった場合には、危険度判定に参加したいと思っています。しかし、危険度判定が必要な時は地震の時ですから、出来るならそのような機会は無い方がいいですね。
参加する機会があったとしても、グリーンのステッカー(大きな被害無し)ばかりの調査になって欲しいものです。

地震

2004年10月23日

新潟の方で大きな地震が起きました。
被害があまり大きくなければ良いのですが。

地震で思い出すのは、学生時代に行った地震の被害調査と、振動台を使った実大振動実験(参考写真)。

私は、実大振動実験において、小さな揺れから震度7までの大きなものを、延べ回数で800回位経験しています。この位経験すると、地震の時に建物のどこが壊れるのかは、建物の形状や壁などの配置を見ると大体分かってきます。

実験の時には、目の前50cm位で建物が揺れるのを見て、ひび割れの進行などを確認していました。実際の地震の時には絶対に出来ないことですね。

阪神淡路大震災以後、全国各地に振動台が作られ、地震に対する研究が活発になっています。

来年には、兵庫県三木市に、世界最大の振動実験施設E-ディフェンスが完成します。
これは、鉄筋コンクリート4階建ての実大の建物を揺らす事ができる、バケモノのような振動台です。この巨大な振動台で、地震に対する研究が一層進むといいですね(運転費用が凄そうですが・・・。)

マグニチュードと震度の関係

2004年10月25日

新潟の地震は、当初私が考えていたよりも大きな被害でした。
地震の規模を示すマグニチュードは6.8。マグニチュードでの分類上は、中地震になります。

震度とマグニチュードの関係 ここで、震度とマグニチュードの関係を。

震度とマグニチュードの関係は、「電球」と「電球から離れた位置での明るさ」によく例えられます。

ここで、電球の大きさ(ワット)がマグニチュードに相当します。マグニチュードは、1つの地震で基本的には1つに決まります。

震度は、電球から離れたそれぞれの位置での明るさ(ルクス)に相当します。
小さな電球(マグニチュード)であっても、その近くであれば明るく(震度が大きく)、電球が大きくても、遠くに離れていれば暗くなります。

電球の例と実際の地震との違いは、地震の場合には地盤の状況が関係するため、単純に距離には比例しないということです。

ちなみに、マグニチュードは数字が0.1大きくなると、そのエネルギは約1.4倍になります。数字が1.0大きくなるとエネルギは約32倍です。

兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)のマグニチュードは7.2でした。今回の地震では、最初に起きたのがマグニチュード6.8でしたので、兵庫県南部地震は今回の新潟県中越地震の約3.8倍のエネルギを持っていたという事になります。

よく、「小さな地震がたくさん来れば大きな地震は来ない」などと言われる時がありますが、マグニチュードの数値とそのエネルギの大きさ関係を知っていると、そうとは言えないことがお分かり頂けると思います。

早急な復興のために、余震が続かないことを祈るばかりです。

新潟県中越地震の地震波形

2004年10月27日

地震波の観測は、日本各地に設置してある計測器によって行われます。
一般的に、測定されるデータは、
 ・南北方向(NS)
 ・東西方向(EW)
 ・上下方向(UD)
の3つのデータです。

新潟県中越地震について、揺れの大きかった2地点にあった計測データを、WAVEANAというソフトを使って表示してみます。

十日町における観測加速度波形(新潟県十日町大字高山854-8)
2004年10月23日 17時56分00秒 新潟県中越地震 新潟県稲荷町大字高山854-8

小千谷における観測加速度波形(新潟県小千谷市土川1-123-3)
2004年10月23日 17時56分00秒 新潟県中越地震 新潟県小千谷市土川1-123-3

いずれの地点でも、南北方向は加速度が1000Gal(ガル)を超えています。(1995年兵庫県南部地震では、818Gal)
十日町においては、1700Galを超えるなど、非常に大きな値となっています。

小千谷では、上下方向の値も800Galを超える大きな値となっています。
地球上では重力による加速度が980Galありますので、980Gal以上の加速度がないと物体は浮き上がりません。(980Galを超えたからといって、すぐに浮かび上がるものでもありません。)1995年の兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)は上下動の最大加速度は332Galですから、今回は上下動の大きい地震だったことが分かります。

加速度データの表示には、福山大学工学部建築学科 鎌田輝男教授作成の、WAVEANAを使用致しました。
観測波形データは、防災科学技術研究所の地震観測網K-NETの地震データを使用致しました。

地震を、力ではなく、時間で考える

2004年11月08日

今日は(出来るだけ簡単に書きますが)ちょっと難しめです。いつも難しいという説もありますが・・・

今日は、地震を「力」ではなく「時間(周期)」で考えてみたいと思います。

音楽 地震の波というのは、音楽と同じです。

地震の波は、色々な波から出来ており、それが組み合わさって一つの地震となります。

これは、色々な楽器を組み合わせて1つの音楽になることと似ています。
全ての楽器の音量を、合わせて100dBだったとします。

この1つの音楽を、ある手法を使うと、それぞれの音の高さ毎に、音の大きさを分けることが出来ます。

楽器 ギター トライアングル バイオリン 太鼓
音の大きさ 80dB 60dB 70dB 90dB
音の高さ 400Hz 500Hz 300Hz 200Hz
(数字は適当な値です)

この処理は、身近にあります。
例えば、コンポ(ステレオ)のグラフィックイコライザーです。それぞれの音の高さにおける、音量をバーの長さで示しています。

今回の例では、太鼓の低い音(200Hz)が最も音量が大きくなっています。これを、卓越といいます。

このグループの音楽を聴いて、心に響いた人が多かったとします。これを、共振と呼びます。心と音楽の波長が合い、心が大きく揺れたということです。(ちょっと強引ですが)
演奏終了後、観客に感想を聞いてみると、「一番心に響いた楽器は、太鼓」と答えた人が最も多くいました。しかし、答えはバラバラで、バイオリンや、トライアングルという人もいました。

地震と建物の関係を、音楽と観客の関係と比べてみます。

新潟県中越地震 小千谷における加速度応答スペクトル 右の図は、先月の新潟県中越地震の小千谷における観測データを処理して、振動数別にしたものです。(横軸が対数軸なのでご注意を)

グラフを見ると、1.4Hzの所が最も高くなっています(卓越)
この場所に、1.4Hzで揺れやすい建物があったとします。音楽と観客の場合には、心の周波数(振動数)と楽器の周波数(振動数)が一致すると、共振を起こして、心に響いていました。

しかし、建物と地震の時には、共振を起こすと揺れが大きくなります。
結果として、建物は非常に壊れやすくなります。

地震の時の振動数は、卓越している地震波の力が最も大きくなります。
1.4Hzというのは、0.7秒に1回左右に揺れる程度で、古い建物が該当します。
現在の一般的な木造の在来工法は 4Hz前後だとされており、建物の外側を合板で覆ったり、2×4の場合には、7Hz前後とされています。

今回の地震波の卓越振動数は 1.4Hzですので、現在の一般的な建物であれば、共振は起きにくいと考えられます。
また、グラフを見ると、4Hzの部分の高さは、最も高い高さの半分くらいになっており、エネルギが小さいことが分かります。

耐震と免震と減衰 先のグラフに、耐震の考え方、免震の考え方、減衰の考え方を書くと、右のようになります。

耐震とは、細かく揺れるようにすること
免震とは、ゆっくり揺れるようにすること
減衰とは、揺れを早く止めることです。

超高層ビル・マンションは、建物が高いこと自体が免震です。
超高層ビルは、0.3Hz前後くらいで揺れますが、グラフを見ると、0.3Hzのところのエネルギの大きさは卓越部分と比べるとかなり低くなっています。

超高層建物は、ある地震が来たとしても、影響を受けるエネルギ自体が小さい(先の音楽の例だと、トライアングル)ので、地震には強いとされています。

超高層の構造は、地震を「力」だけで考えると理解は困難です。地震を「時間」で考える必要があります。
逆に言うと、地震を時間で考えないと、超高層の理解は難しいといえます。

新潟中越地震の被害。ホールダウン金物の破断も。

2004年12月03日

先日、新潟に行ってきました。震災の被害調査のためです。

当初は、震災直後に被害調査に行った学生時代の研究室に同行しようと考えていましたが、日程の関係で難しく、12月に入ってから神尾さんと2人で被害の調査に行きました。

道路の陥没 今回の震災で被害が大きかったのは、

 川口町の田麦山、武道窪、和南津地域
 旧堀之内町の新道島

の、計4地域だとされています。
このうち、田麦山、武道窪の2ヶ所を見てきました。

いずれの地域も被害が大きく、田麦山地域では大規模な修繕なしに住むことが出来るのは、2割も無いのではないでしょうか。

建物の倒壊 建物の多くは倒壊、またはかなり大きな被害を受けています。

今回は、震災後約1ヵ月経過した時点での調査です。これまでの1ヵ月の間に取り壊された建物に関しては被害の確認が出来ませんが、更地になっている所がいくつかあったことから、倒壊した建物はもっと多かったことでしょう。

取り壊される建物を見届ける家主の方 各所を見て回っている時にも、あちこちで建物が取り壊されています。被害が大きいため、取り壊しが避けられない建物です。

建物が大きく傾いて危険なものは右の写真のように重機で取り壊されます。
重機によって取り壊されていく家の様子を見届ける家主の方の気持ちを考えると心が痛みます。


広島の伝統建築 [参考写真]
芸予地震で見た広島地方の伝統建築。
柱幅が150mmある事も珍しくなく、外から見える梁に、虹梁と呼ばれる大きな梁を使うのが特徴
土壁が用いられることも多い
倒壊に至った建物の多くは古い建物ですが、築浅のものもありました。

新聞やテレビでは、豪雪地域に建てられるため、建物の被害が・・・などといわれていますが、思っていたより柱の太さや梁の太さは大きくありませんでした。
材料の大きさだけで見ると、学生時代に芸予地震の被害調査で行った(雪の降らない)広島の伝統建築の方がずっと上です。

倒壊した建物には、柱と土台を留め付けるホールダウン金物というものが取り付けられていませんでした。
最も、昔の建物にはホールダウン金物などの金物を取り付ける義務が無かったので、建築後に耐震補強をしていない限り、古い建物には金物自体がありません。

このような場合、柱のほぞ部分には、「込み栓」という引き抜き対策の棒を入れるのですが、そのようなものもありませんでした。これでは、力がかかったときに簡単に柱から外れてしまいます。
この地域の昔ながらの建物は、上からの荷重には対応しているものの、左右の揺れによる引き抜き力への対策は甘かったといえます。
込み栓無し 倒壊した建物の土台部分
込み栓がありません


込み栓模式図 [込み栓模式図]

今回の調査で一番驚いたのが、写真に示した、築1年に満たない建物での、ホールダウン金物破断
建物の平面計画で、この部分に力が加わることは予想できますが、これまでにホールダウン金物の破断は見たことが無かっただけに衝撃的でした。
このホールダウン金物の破断は、今後学会や専門誌等で議論される出来事でしょう。
ホールダウン金物の破断

最後に、被害が少なかった建物を2つ。
被害が少なかった建物 被害が少なかった建物

いずれも被害が大きかった地域に建っている建物です。周辺には倒壊した建物がいくつもあります。
サッシの落下や、室内のクロスの被害などはあったそうですが、大きな修繕なく住むことが出来そうです。

実はこの2つ、地元の同じ工務店が建てた建物。右側の家主の方いわく、この工務店は人気があり、順番待ちで建ててもらったそうです。数年前から高気密高断熱をやりはじめ、この高い基礎も工務店が直接施工するとのこと。

家主の方のお話を聞いていると、かなり勉強されている方のようでした。

・瓦は荷重が増えるので、金属屋根にした
・金属屋根の中でも、寿命が長いステンレスを採用した
・ステンレスと一般的な金属屋根の差額は30~40万だが、
 足場のコストを考えると、ステンレスの方が長期的に見て安い
・耐震のため、大きな部屋を作らないよう、あえて部屋を区切った


など、地震のことをあらかじめ考えてみえたようです。

強くて長持ちする建物を作るためには、施主側の勉強と、それに応えられる業者さん選びがとても重要という思いを強くしました。
デザインや内装、仕上げ材がどれほど良くても、その建物が直せないほど地震で壊れてしまったのでは、どうしようもありません。

中古、築年制限 緩和へ。「耐震基準」条件に。耐震診断の書籍の紹介

2004年12月06日

先日の日経新聞より。

減税は別の話として、「対象となる住宅が1981年の耐震基準を満たしていること」という条件は良いと思います。
以前の日記に書きましたように、1981年を境に耐震基準は大きく変わっています。今回のような緩和措置は、中古住宅流通の活性化になりますし、厳しい耐震性能に対応した住宅が増えることは良いことだと思います。

最近はリフォーム番組の影響のためか、住宅のリフォームが盛んなようです。

壁で地震に耐える木造住宅では、むやみに壁を取り外すことは出来ませんが、業者さんによってはそのようなことを考えないでリフォームすることもあるようです。
耐震診断 内部のリフォームの際は、耐震補強をする良い機会だと思いますので、構造に詳しい業者さんにご依頼されるのが良いのではないでしょうか。

耐震診断をご自分でやってみたいという時は、右の耐震診断(Amazonに移動します)という本がオススメ。
ちょっと専門的ですが、本のサイズがコンパクトですので、実際の建物と比較しながらチェックしてはどうでしょうか。

建物に絶対に必要な条件とは?新潟県中越地震速報

2004年12月16日

自宅に帰ると、メール便が届いていました。

中身は、先週の日曜日に金沢で行われた、新潟県中越地震速報会の冊子が、学生時代の先輩から送られてきました(ありがとうございます!)


どのような建物が被害を受けやすかったのか、じっくりと読みこみたいと思います。

普段は、住まいの快適性に関することをよく書いていますが、その前に絶対に必要なものは、「安全
住まいがどんなに快適であっても、それが「安全」でなければ意味がありません。

クロスの汚れやシワは、安全とは関係ありませんが、構造体の施工ミス、施工不良は住む人の安全に関わってきます。

建物は安全でなければならないと思うから、品質チェックのサービスでも、構造体のチェックは非常に重要視しています。

安全性が確保されたら、次はその状態をできるだけ長く保つために、耐久性を考えなければなりません。

耐久性を考えていくと、構造体の伸び縮みや結露による劣化、温度管理出来ない部分をなくすために、建物の温熱環境・快適さが重要に。

建物が快適になると、快適さに費やすエネルギをいかに減らせるかという、環境への配慮が重要に。

他にも考えることがたくさんありますが、それぞれがリンクしているのが、建物作りの難しいところであり、面白いところなのではないでしょうか。

日本における、木造建築の研究の歴史

2004年12月19日

昔は、金物なんて取り付けてなかった。
品質チェックで木造の現場に行ったとき、たまに耳にする言葉です。

確かに、昔は木造住宅に金物を使う数も位置も少なかった。このようなことを言う建築関係者は、
「(昔は入れなくても良かったのだから)別にちゃんと入れなくてもいい」
と、心の底で思っているのではないでしょうか。

しかし、昔の木造住宅に金物が少なかった理由は別のところにあります。答えは、「これまで、木造の研究が行われてこなかったから」です。

一般の人は、「日本は木造住宅も多いし、日本中の大学に建築学科があるのにナゼ!?」と思うかも知れません。
しかし、実際には日本の大学の建築学科で、木造を専門とする研究室は非常に少ないのです。(鉄骨や、鉄筋コンクリート造は多い)


昭和34年、日本の木造の研究が止まった

昭和34年(1959年)の日本建築学会で、「防火・台風水害のための木造禁止」が決議されました。
当時、都市の防火対策、相次いだ台風の被害、鉄筋コンクリート建物の増加などの社会背景により、建築の総本山である日本建築学会が、木造の研究を行わないとしたのです。
このため、日本において木造の研究に空白期ができてしまいました。

建築学会で木造が不要とされてしまったら、木造の研究を行ったとしても、発表する場がありません。そのため、大学や公共の研究機関では、木造建物の研究は行われなくなってしまいました。

木造を研究する人がいないのですから、木造の耐震性能も上がりません。研究が行われないので、金物をどこにいくつ入れたら良いのかということは、分からなかったのです。


1980年頃から、ツーバイフォー(枠組壁工法)の研究が始まる

1980年頃、ツーバイフォー(枠組壁工法)の研究が始まっています。
この研究の中には、構造に関するものも含まれていたので、当然のように、ツーバイフォー(枠組壁工法)の耐震性能は高まりました。今日でも、ツーバイフォーは地震に強いと言われますが、これは「今から30年程度前から研究が行われていたため」とも言えます。


木造の研究が転機をむかえた、阪神淡路大震災

1995年 1月17日に起きた阪神淡路大震災では、死者6,432人、家屋倒壊 約25万棟という甚大な被害を受けました。
木造の家屋は他の構造よりも被害が多く、倒壊によって多数の死者が出ました。
しかしこの時、関西以西に大学の研究室などで、木造を専門としている研究者は居なかったとされています。

下に、木質構造分野に投稿された、日本建築学会の論文数の推移を示します。

木質構造分野における、建築学会投稿件数の推移
木質構造分野における、建築学会投稿件数の推移
日本建築学会 大会学術講演梗概集(1968-2002)木質構造分野より作成。

阪神淡路大震災の翌年から、木造の分野において、研究が急激に増えていることが分かります。建築の世界で構造を研究している人であれば、あれだけの大きな被害を受けたのは何故なのか、研究しようと思うのが普通でしょう。

その為、阪神淡路大震災を転機として、各分野の研究者が木造の研究を行うようになりました。これは、ほんの数年前の出来事です。

研究者が急激に増えたため、阪神淡路大震災までは年間80件に満たなかった研究数は、2000年には、200件を超えました。(ただし、2000年の日本建築学会への全投稿数は、約5700件ですから、それでも全体の3.5%にしか過ぎません。)

ちなみに、私は学生時代に木造の伝統構法の構造について研究していましたが、最も参考になった研究は昭和16年のものでした。(そのくらい、研究が少なかったのです)


ここ10年で、木造の研究は急激に進んでいる

阪神淡路大震災以後の約10年、木造の研究はこれまでの遅れを取り戻すかのように、急激に進みました。

実大振動実験のように、費用、手間、研究能力、人員が必要、で大掛かりな研究も数多く行われました。
その結果、建物にねばり強さを持たせるため、金物が必要であることがわかりました。その為、今から4年前に木造の金物の規定が厳しくなり、金物の数が増えました。
これは、増えたというより、「必要だったけど、研究されていなかったため、必要なことが分からなかった」というのが正しいのかも知れません。

伝統構法を生かす木造耐震設計マニュアル 研究が進んだ結果今日では、構造計算が難しいお寺や社寺建築などの伝統構法の解析まで出来るようになりました。
これは、10年前には想像も出来なかったことです。

その解析のレベルも高く、一般的な木造住宅で行われる「壁倍率」の計算よりずっと高度な、「限界耐力計算」というものとなっています。


今後は、木造の大規模建築物が増えていく

これからは、海外ではたくさん建てられている、木造の大規模建築物が日本でも増えるでしょう。(国内の大規模木造建築の例:樹海ドーム、オーストリアでの大規模木造建築の例:2004年6月27日の日記

木造で、4階建て以上の建物が建てられることは、将来的に何も不思議ではありません。
最近は木造の研究者や、木造を専攻する学生も増えつつあるので、10年後に木造の技術がどのくらい進化しているのか、楽しみです。

世界最大の振動台E-ディフェンス(兵庫耐震工学研究センター)

2005年06月04日

地震について、ちょっと疑問なことがあったので、学生時代にお世話になった先輩のところに電話しました。

電話の結果、疑問に思っていたことは、すぐに解決しました。
その後、話はなぜか兵庫県三木市にできる、巨大な震動台の話へ。

800トン近い震動台を実際の地震と同じように揺らす施設ですので、電気代は凄いと思っていましたが、やはりかなり電気を使うそうで、1日にン百万とか。

施設のホームページ(2007年8月現在、閲覧出来ず)を見ると、建築途中の写真が載っていますが、全ての規模が大きい!

例えば、1998年8月~2000年6月(2007年8月現在、閲覧出来ず)のところを見ると、基礎工事の様子が載っていますが、基礎に使われている鉄筋の太さは、51mm(D51)。

木造一戸建ての基礎に使われる鉄筋の太さは、10mm~16mmくらいがほとんどです。51mmという太さの鉄筋は、土木では使いますが、建築の分野ではほとんど使われません。

直径を 5.1cmとすると、断面積は 20.4cm2(実際の鉄筋は正円ではないので面積は多少異なります)。鉄の比重を7.85g/cm3とすると、1m当たり約 42kg。2mの長さで大人1人の体重よりも重たくなります。配筋作業はさぞ大変だったでしょうね。

-余談-
円の面積を求めるときは、 半径×半径×円周率 と学校で習ったと思います。

しかし、日常生活では半径よりも直径の方が測りやすいので、
(円周率 × 直径 × 直径)÷4  の方が便利です。

怪しい耐震補強。地震の上下動で柱が抜ける?

2005年07月12日

怪しい耐震補強が多い』、と思う。

怪しい耐震補強とは、補強する部材の強度ばかり全面に出して、全体が見えてこないもの。耐震補強というと、多額の費用がかかると思われているが、そんなに多額の費用がかかるとは思えない。

例えば、築10年の物件を耐震補強するとする。
耐震性能を高くするために、まずは目標を定める。
とりあえず、現在の建築基準法を満たすようにすると良いだろう。在来工法(軸組工法)は、2000年の法改正でかなり耐震性が上がっている。ほんの5年前の話だが、築6年の建物でもこの基準を満たせないものは少なくない。

目標が決まったら、目標と現在との差を調べるため、当時の設計図面を元に壁や柱の位置をパソコンに入力していく。(図面がない場合には、実際の建物での調査が必要となる。)

パソコンにデータを入力し終わったら、現在の建築基準法を満たすように、再計算する。今のパソコンなら、計算は一瞬で終わる。
使うソフトによっては、使用する金物の位置や種類を自動的に拾ってくれる。

使用する金物は、ホームセンターでも売ってある、新築用の金物で「全く」かまわない。むしろ、「自社オリジナル」などという金物より、ずっと安くて信頼性がある。

考えてみてほしい。
現在新築で建てられている一戸建ては、ホームセンターで売ってある汎用の金物で、建築基準法を満たす、十分な耐震性が得られているのである。耐震改修のときにも、それを使わない手はない。

リフォームのときは、室内の石こうボードを取り外すことが多いだろう。石こうボードを取り外した状態であれば、市販されているほとんどの金物は取り付けられる。
石こうボードを取り外し、新しく買ってきたとしても、1枚400円ほど。

ちなみに、筋かいを1本追加した時の材料費は、ホームセンターで買った場合、
 ・筋かい金物が1つ200円以下(筋交い1本につき、2個使用)
 ・筋かいの材料が1000円以下。
合計は、2000円でお釣りがくるほどしかかからない。10万円あれば、筋かいを50本以上取り付けられる材料費になる。(普通の大きさの家では、筋かいを50本も使わない)

金物を取り付けるためのビスは、金物に付いてくるから別に買う必要はない。
あとは、ビスを留めるための電動ドライバーと、筋かいを切るためのノコギリさえあれば、一般の人でも取り付けられる。

筋かいを取り付ける代わりに、構造用合板を張ったとしても、1枚2000円以下。留め付けはクギを打つだけ。

しかし、世に出回っている耐震補強では、耐力壁を1箇所取り付けるだけで何十万というのを目にする。
説明では、その耐力壁の強さは○○倍だとか、金物の強さが最大何トンまで耐えられるとか。

中には、「直下型の地震でP波が来ると、縦揺れによって家が飛び上がり、ほぞが抜ける」などとしているものもある。
2004年の新潟県中越地震は、直下型で縦揺れが大きかった。兵庫県南部地震よりも加速度は大きい。
しかし、新潟県中越地震の波形を見たとき、どう説明すれば縦揺れだけで建物が浮かび上がるのだろう。ちょっと地震のことに詳しい人なら、縦揺れだけではそんなことが起きないというのがすぐに分かるだろう。

「縦揺れのために、家が浮き上がったり、ほぞが抜けてしまったと説明している人は、地震や振動学に詳しくない」と思っていい。

建物全体の耐震性能を上げようと思ったら、局所的に壁を強くしても大した意味はない。
車を速くするために、「エンジンを500馬力にしました」といっても、他の部品の性能を上げなければ、効果が出ないのと同じこと。

部分的なところだけ取り上げて、耐震性能が上がるという説明を見ていると、自ら「構造や力学に詳しくない」と言っているようにも感じる。

建物を作るということは、中に住む人々の命をあずかっているということ。
飛行機のパイロットも、電車の運転手も、バスの運転手も、乗客の命をあずかっている。だからこそ、プロでなければならない。

建物、特に構造に関わる部分に関わる人も、命をあずかっている以上、プロでなければならないのである。

耐震補強においても、「プロの仕事」をして欲しい。

表層地盤のゆれやすさ全国マップ

2005年10月24日

内閣府から、表層地盤のゆれやすさ全国マップが公表されました。

これは、地震のとき、地上に近い部分(表層)の揺れやすさを、色分けして地図にしたものです。
地図を見ると、人口の多い地域は、比較的揺れやすい場所が多いことが分かります。東京都だけを見ても、東と西では大きく違います。

計測震度増分  
1.0 ~ 1.65   ゆれやすい








ゆれにくい
0.8 ~ 1.0  
0.6 ~ 0.8  
0.4 ~ 0.6  
0.2 ~ 0.4  
0.0 ~ 0.2  
-0.95 ~ 0.0  


私が気になったのが、色分けの方法。

この地図では揺れやすさを元に色分けされていますが 0.0 から 1.0までは、0.2刻みになっているのに対し、1.0を超えたら1.65まで一つの区分であるということ。

ちょっとぼかしすぎのような気がします。



地図は、全都道府県のものが載っていますので、防災意識を高めるために、ご覧になってはいかがでしょうか。

オマケ1
活断層の位置や地震発生確率については、独立行政法人 防災科学技術研究所の、地震ハザードステーションJ-SHISが詳しいです。


オマケ2
兵庫県三木市にある世界最大の振動実験台、E-ディフェンスにて、来月21日に木造住宅の公開実験が行われます。定員が30名と少なめですが、ご興味のある方はどうぞ。(私も来月、こちらに勤務している先輩のご好意に甘えて(強引にお願いして)振動台を見に行く予定です)

筋交い(筋かい)の方向が分からない図面を書く設計者は、構造に疎い

2006年04月10日

建物調査(インスペクション)のオプションサービスである、耐震診断を行うため、いろいろな設計者の図面を見ています。

図面を見ていてとても気になるのが筋かいの記号。
筋かいの記号は、△、▲、 筋かい記号筋かい記号 のようなものが一般的です。
記号は、法律で定められている訳ではないので、各社バラバラ。
平面図上では、以下のように書かれています。

筋かい記号 筋かい記号 筋かい記号 筋かい記号


ここで問題なのが、 筋かい記号 のように、筋かいを取り付ける「位置」だけが書いてあるパターン。


筋かい記号 左のイラストのように、たすきがけ(交差で入れる)の場合には、問題ないのですが、▲が1つだけの場合には、筋かいが右上がりなのか右下がりなのか分かりません。

平面立面
筋かい記号

筋かいの方向はどっち?
筋交い
筋違い
筋かい記号 たすき掛け筋違い

同じ筋かいの記号でも、 筋かい記号 の場合には、筋交いを取り付ける方向が分かります。

平面立面
筋かい記号 筋交い
筋かい記号 筋違い
筋かい記号 たすき掛け筋違い

それでは、何故、筋かいの方向が分からなくてはいけないのでしょうか?
理由は以下のようなものです。

 ・施工者によって、筋かいを入れる方向が異なる可能性となる
  (= 1つ図面から、複数の解釈が出来てしまう。)
 ・筋かいの方向により、金物の種類と位置が違ってしまう

筋かいの方向性 筋かいには、方向性があります。
右のような筋かいの入れ方をしたとき、からの力に100耐えられるとすると、からの力には、50くらいしか耐えることができません。

筋かいの方向が書かれていない場合、家をつくる大工さんによって、筋かいを入れる方向が変わる可能性があり、耐震性能が設計通りとならない可能性があります。

もっと問題なのは、金物の種類と位置が違ってしまうことです。
2000年に大きく変わった建築基準法により、金物の規定が厳しくなりました。金物の位置と種類を計算するときには、筋かいの方向を考慮する必要があります。

そのため、その計算を行ったときの筋かいの方向と、実際の建物の筋かいの方向が違っていると、耐震性が低下してしまう可能性があるのです。

長くなりましたが、お奨めの筋かい記号は、▲ではなく、 筋かい記号 のように、筋かいの方向が分かるものです。
厳しい言い方をすれば、筋かいの方向で金物の種類が変わる可能性があり、方向性がある材料であるにも関わらず、▲ の記号で片筋かいを表している場合には、構造面での配慮が甘いと思います。

もっと言ってしまえば、面材を使えば筋かいなど使わなくても、建物は十分強度が出るのです。
在来工法最大手のハウスメーカーでも、鉄骨も金物工法も行う日本最大のハウスメーカーでも、既に筋かいは使っていません。
面材を使えば、筋かいなど不要です。

壁量計算。壁の量は、床面積と、外壁面積で決まる。

2006年07月17日

建築基準法では、建物に必要な壁の量を、床面積と外壁の面積の2つで決めるようになっています。(建築基準法施行令 第46条・構造耐力上必要な軸組等)

この計算を、「壁量計算(へきりょうけいさん、かべりょうけいさん)」といいます。

壁量計算はカンタンな計算なので、木造の3階建てや鉄筋コンクリート造、鉄骨造で行なわれる「構造計算(許容応力度計算)」とは区別されています。
(構造計算の方が詳細で計算も難しい)
壁量計算は小学生でもできるような計算です。

壁量計算に基づいて、建物に入れなくてはいけない壁の量を、「必要壁量」といいます。
この壁とは、普通の壁ではなく、筋交い(筋かい)や構造用合板を張った、強い壁のことです。

例えば、ある物件で、必要壁量が10m必要だとします。
つまり、筋交い(筋かい)や構造用合板を張った、強い壁の長さの合計が10m必要であるということです。

設計者は、筋交い(筋かい)や構造用合板を図面上に配置して、耐震性能を得ます。
例えば、壁の強さの基準が1.0という壁を1mずつ、10箇所に配置しても良いでしょう。

壁の強さの基準が2という壁を、5m 配置してもかまいません。
(2倍×5m=10m)

ある設計者は、在来工法(軸組工法)において、必要壁量と全く同じ量を、筋交い(筋かい)によって建物の中に入れるように設計しました。
つまり、建築基準法で必要とされている筋交い(筋かい)の量だけを入れたということです。余裕の割合でいうと、1.00です。

この建物を、より詳細な「構造計算(許容応力度計算)」で計算すると、結果がNGになってしまいました。それは、なぜでしょう。

続きは次回以降。

建築基準法ギリギリで建てられた在来工法(軸組工法)が必ずしも安全とはいえないワケ その1

2006年07月21日

建築基準法ギリギリの筋かい・構造用合板の量しか入っていない在来工法(軸組工法)は、必ずしも安全とはいえないケースがあります。

これは、建築基準法の壁量の考え方に起因するものです。

●建築基準法は、総2階を前提としている
建築基準法で定められた壁量は、建物が2階建ての場合、「総2階」を想定しています。

建物に平面上の凸凹が多かったり、1階と2階の面積が大きく異なったりする建物は、地震のとき、建物にかかる力が総2階の場合よりも大きくなる可能性があります。

そのため、総2階を前提とした壁量ギリギリでは、建物の条件によっては絶対的な壁量が不足する場合があるのです。

これを回避するためには、建物の形状によって設計時の壁量を割増するのが理想です。

実は、建築基準法で定められている壁量の規定というのは、あいまいな部分が多くなっています。
建物の形状による壁量の割増も、法律上必要ありません。

また、計算自体も鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)で行なわれているものと比較すると、ずっと簡単なものです。

壁量の計算だけだったら、私は小学生でもできると思います。
そのくらい、計算は簡単です。

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建築基準法ギリギリで建てられた在来工法(軸組工法)が必ずしも安全とはいえないワケ その2

2006年07月24日

●法律で定められている耐力壁以外が、地震の力の3分の1を負担

建物の形状だけでなく、壁量そのものにも注意しなくてはいけません。

Blog2006072401 地震の力を100とすると、法律で定められている筋かいや構造用合板の量は、地震の力の3分の2だけを負担するだけで良いとされていました。(現在の法律では、考え方が少し異なります)
つまり、筋交い(筋かい)や構造用合板は、地震の力の67%だけに耐えてくれれば良いということです。

では、残りの3分の1はどうするのでしょうか?

残りの3分の1は、雑壁が負担するとされています。

雑壁については次回

雑壁とは? 垂れ壁(垂壁)、腰壁

2006年07月28日

●雑壁とは?
今、あなたがいるお部屋にドアがあったら、その上を見てください。

ドアの上は大抵が壁になっているはずです。この壁を垂れ壁といいます。

また、窓がある場合、窓の下にも壁があると思います。
これを、腰壁(こしかべ)といいます。
(掃き出しの窓には、ありませんが・・・。)

これらの壁をまとめて、雑壁といいます。

●雑壁の扱い
鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)の場合、これらの雑壁は、構造計算では無視します。

構造計算上、無視するどころか、場合によってはこの雑壁があることによって地震時の被害が大きくなる可能性もあります。

そのため、木造以外では、「構造スリット」という溝を作って、柱と雑壁の縁を切ってしまうことも珍しくありません。

しかし在来工法(軸組構法)では、これらの雑壁も、地震に耐える壁として考慮しているのです。

これまでの研究や実験では、雑壁が地震の力の3分の1を負担するという考え方は、ほぼ妥当であるとされています。
一般的な間取りの場合、建築基準法で想定している雑壁の量を満たしているためです。

枠組壁工法(ツーバイフォー工法)のように、外側に構造用合板を張った場合、この雑壁の効果は3分の1よりもずっと大きいと言われており、建築基準法で想定している雑壁の量を上回るのが普通です。

雑壁の少ない建物は要注意

2006年07月31日

デザイナーズ住宅と言われる建物では、室内のドアに天井までの高さがあるような背の高いドアを多用したり、サッシの高さが非常に高いものが使われているケースがあり、間取りも開放的で間仕切り壁が少ないことがあります。

また、昔ながらの和風住宅では、和室の開口の上部に欄間(らんま)が設けられているケースもありますね。
欄間が入っているところは、すき間が大きいので、雑壁の効果は見込めないでしょう。

これらのケースでは、場合によっては雑壁の量が不足してしまう可能性もあります。
このような場合では、筋かいや構造用合板など、耐力壁の量を多めにしておくのが理想です。

壁量は、建築基準法の2割増以上が理想

2006年08月04日

木造に詳しい設計者であれば、壁量を建築基準法で定められた量に対して、2割増し以上にするのが暗黙のルールです。
これは、あいまいな部分が多い建築基準法の規定に対して、余裕を持つためです。

しかしながら、私が過去に耐震診断を行なった新築の建物において、壁量の余裕度が建築基準法に対して、1.04とか、1.06などのようにギリギリに設計されていることを幾度か目にしています。
あまり木造に詳しくない設計者が書いた図面だと思いますが、褒められたものではありません。

ちなみに、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)の場合には、建築基準法の1.5倍前後、壁量が確保されていることが一般的です。
2倍以上の壁量が確保されていることも珍しくありません。
逆に、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)において、壁量の余裕度が1.04や1.06というような低い物件は見たことがありません。

ツーバイフォー工法(枠組壁工法)の耐震性が高いのは、「壁工法だから」「6面体の構造だから」などと言われますが、私は、

 ・外周部の壁が強いこと
 ・石こうボードの強さをとても有効に利用していること
 ・誰が設計、施工しても安全になるよう、工法の仕様そのものが配慮されていること
 ・仕様作成時に、構造の裏付けをとっており、工学的判断があること

が挙げられると思います。

面材を張って、雑壁の効果を大幅にアップ

2006年09月01日

●簡単に耐震性を増すことが出来る方法
現在、新しい住まいを設計している段階、あるいは建売物件をご検討されている方で、耐震性が高い建物を求めている場合には、建物外周に、構造用合板やダイライトなどの面材(めんざい)が張ってあるかどうかを確認しましょう。

建物外周に構造用合板やダイライトなどの面材(めんざい)を張ると、それらは筋かいと同等(以上)の働きがあり、大幅に耐震性を高めることができます。

在来工法で建物外周に構造用合板を張った例
在来工法で建物外周に構造用合板を張った例

●面材を張って、雑壁の効果を大幅にアップ
建物外周に構造用合板などを張ることが有効なのは、これらが筋かいと同等(以上)の働きをするだけではなく、雑壁の強さと量が大きく増えることにも関係があります。

筋かいだけで耐震性を得ている建物では、窓の上や下の雑壁部分を外から見ると、空洞になっているだけです。空洞ですから、耐震性は得られません。
しかし、構造用合板などの面材を外から張ると、この部分でも耐震性を増すことができるのです。
小さな部分でもコツコツと耐震性を稼ぐことで、筋かいだけで耐震性を得ている建物と比べると、雑壁の効果を、2倍以上にすることもできます。

雑壁効果

面材を張って、屋根部分の強度もアップ

2006年09月04日

2階建ての建物を、筋かい(筋交い)だけで耐震性を得る場合、1階と2階の筋かいの量には、建築基準法上の決まりがあります。

しかし、2階から上の屋根部分には規定がありません。
そのため、屋根の強度に関しては、あいまいになっており、場合によっては強度が不足する場合もあります。

しかし、面材を張っている物件では、2階から屋根にかけても全て張ることが一般的ですから、この部分の強度も確保することができます。

2階から屋根部分
面材を張った場合には、2階~小屋裏の強度が確保できる。
しかし、筋かいのみの場合、2階~小屋裏の強度が不足することも。

断熱材の施工を考えると、筋かい(筋交い)は不利

2006年09月08日

木造の建物の場合、建物の外側には、筋かいが配置されることがありますが、筋かいがあると断熱材を入れるのが難しくなります。
とくに、Xの形で筋かいを2本入れる、たすき掛け筋かいの場合には、断熱材をしっかり入れるのはとても難しくなります。

筋交いがダブルで入っていると断熱材が入れにくい
筋かいがダブルで入っている例。
このような箇所があるとグラスウールのような断熱材はとても入れにくい。

セルロースファイバーや発泡ウレタンなど、隅々まで行き渡る断熱材を使っておらず、建物の外周部にたすき掛けの筋かいを複数配置する設計を行なっていたら、その業者さんの断熱に関する知識・技術は少ないと思っても良いでしょう。

セルロースファイバー
筋かいがダブルで入っていたとしても、
セルロースファイバーや発泡ウレタンであれば、隅々まで断熱材が行き渡る。

 

ツーバイは断熱施工が楽
ツーバイフォーの場合、もともと筋かいが無いので断熱材を入れやすい。
在来でも、外周部の筋かいを止めて、面材で強度を確保すれば同じ。

筋かいが入っている壁と全く入っていない壁。
どちらが断熱材を入れやすいかは、専門家でなくとも分かると思います。

「オマケ」の構造用合板が、必ずしも耐震性が高くならない理由

2006年09月11日

ときどき、

「筋交い(筋かい)だけで耐震性を確保して、さらに外側に構造用合板を張っているから、耐震性が高い!」

という設計者、業者さんがいますが、これは全てのケースで当てはまる訳ではありません。

これはナゼでしょうか。答えは、金物にあります。

●壁が強くなればなるほど、金物も強くなる
阪神淡路大震災以後、木造の研究が進み、その研究結果をもとに、2000年に建築基準法が変わりました。
具体的には、建設省告示第1460号(平成12年6月1日施行)がその規定です。

このときに大きく変わったのは軸組工法(在来工法)で、ホールダウン金物や各部の金物の使用が明確になり、金物の使用量も大幅に増えました。

金物の選定の時の基本的なルールとして、壁が強くなるほど、金物の強度も強くなります。

これは、自動車を改造するとき、エンジンを強いものに交換した時には、それに対応できるようにブレーキやタイヤなども、より強いものに交換する必要があるのと似ているでしょう。

これは、建物でも同じことなのです。

筋かいだけで耐震性を確保して、さらに構造用合板を張った場合には、設計の時よりも実際の壁が強くなります。
壁が強いと、金物も強くするのが基本的なルールなのですが、そこを計算に反映させないと、壁の強さに金物が負けてしまい、「もろい」壊れ方をする恐れがあります。

従って、構造用合板を張る場合には、その強度も含めないと、必ずしも安全とは言えないのです。

金物の計算(N値計算)では、壁の強さをしっかりと計算してもらおう。

2006年09月15日

金物の計算は専門的になりますので、一般的にはパソコンで行います。
この計算を「N値計算(えぬちけいさん)」といいます。

建物の外周に構造用合板を張るのであれば、N値計算のときにその強度もしっかりと計算に入れてもらいましょう。

ちなみに、N値計算はパソコンで行なうと、1秒もかかりません。本当に、あっという間に終わります。

N値計算が終わると、金物の位置を示した図面を作る事がほとんどです。これを一般的に「金物位置図」や「金物配置図」と呼ぶことが多いようです。

2000年の法改正が反映されていない新築物件もまだまだある

2006年09月18日

他の業界の方からすると、信じられないかも知れませんが、2000年の法改正を知らず、その基準を満たしていない新築物件が存在します。

ケースとして多いのは、2000年に厳しくなった金物の仕様を「知らない」ものです。
このような場合、金物の計算(N値計算)の図面を要求しても出てきません。

例えば、私が今年の4月に行った物件もこのケースでした。
 http://www.sakurajimusyo.com/diary/ohshita/ost200604.shtml#20060430

そのような建物は、関係者の意識が低く、安全性も高いとは言えないと思われますので、しっかり計算を行なってもらうか、やめておいた方が無難です。

筋かいの記号で、筋かいの方向がわからない図面には要注意

2006年09月22日

耐力壁に筋かいを使う場合、N値計算のときにはその取り付け方向によって、計算値が変わり、結果として金物の強度が変わってきます。

筋かいの方向がわからない図面
 http://www.sakurajimusyo.com/diary/ohshita/ost200604.shtml#20060410

このような図面を書く設計者には要注意です。
N値計算そのものを知らないか、行っていない可能性があります。
在来工法の図面を見て、筋かいの方向がわからない図面であった場合、少し「怪しい」と思っても問題ないでしょう。

構造用合板や石こうボードなど、面材で強度を確保する場合には、方向性はありませんので問題ありません。

N値計算を行った結果の図面をもらっておこう

2006年09月25日

2000年の法改正に基づいたN値計算を行い、金物の選定を正しく行っていれば、「金物位置図」と呼ばれるものや、平面図に金物の種類と位置を示した図面があるはずです。

新築で家を建てられる方や、建築中の物件をチェックする場合には、この図面をもらっておきましょう。
図面がない場合には、耐震面で要注意だといえます。

木造一戸建ての耐震性を上げるために重要なキーワード

2006年09月29日

木造一戸建ての耐震性を上げるために重要なキーワード
これまでのブログで、木造の一戸建ての耐震性能を上げるためには、筋かいや構造用合板、石こうボードを張った、「耐力壁」が重要であることをお伝えしました。

耐力壁に加え、木造一戸建ての耐震性を上げるために重要なキーワードがあります。

それは、
 
   耐力壁線(たいりょくへきせん)

です。

●耐力壁線とは?
耐力壁線とは、

  ・建物の外壁を結んだ線
  ・建物内部の壁のうち、筋かいや構造用合板などが一定量入った壁

 のことを指します。

例えが難しいですが、商店街をイメージして下さい。

八百屋さんが、街の中にポツンと1軒だけ立っていても集客効果は少ないでしょう。

しかし、ある通りに、八百屋さんや魚屋さん、写真屋さんや薬屋さんなどが並んでいると、集客効果が高まります。
それぞれの力が集まってより高い効果を生むわけです。

これは、一戸建ての耐震性でも同じです。
筋かいが入っている壁が、1箇所だけポツンと部屋に配置してあっても、耐震性は高くなりません。

しかし、筋かいや構造用合板が張ってある壁が連続していると、そこが耐力壁線という、地震に耐えるための1つの通りになるのです。
これは、非常に重要な考え方です。

建築士でも知らない人が多い、「耐力壁線」

2006年10月02日

耐力壁線という考え方は、ツーバイフォー工法では常識です。
なぜなら、ツーバイフォー工法では、その工法の仕様そのものにその考え方が入っているからです。

しかし、軸組構法(在来工法)だけを設計している建築士の中には、耐力壁線という考え方そのものを知らない人が少なくありません。
耐力壁線という言葉自体も聞いたことが無い人もいるでしょう。
これは、軸組構法(在来工法)の仕様には、近年までそのような考え方が無かったからです。

また、建築基準法においても軸組構法(在来工法)では、耐力壁線の考え方は取り入れられていません。
つまり、耐力壁線のことを考えなくても、確認申請は通ります。

軸組構法(在来工法)で耐力壁線を考えるのは、

 ・軸組構法(在来工法)に「詳しい人」が設計する場合
  (ツーバイフォーも手がける設計者のことが多い)

 ・住宅性能表示制度の、耐震等級2、3を得る場合

がほとんどと言って良いでしょう。

ここで言う軸組構法(在来工法)に「詳しい人」というのは、
昔から軸組構法(在来工法)を作っている人という意味ではなく、
最新の木構造の研究結果・技術などを勉強している人という意味です。

現在、物件を検討されている方は、耐力壁線について知っているか、業者さんに聞いてみるといいですね。
業者さんの、耐震性に関する知識がわかるでしょう。

それでは、耐力壁線を、どのように設計に取り入れていけば良いのでしょうか。

続きは次回のブログで。

軸組構法(在来工法)では、8m以内ごとに耐力壁線を入れる。

2006年10月06日

耐力壁に、筋かいを使った軸組構法(在来工法)では、8m以内ごとに耐力壁線を入れる必要があります。

これは、耐力壁の量が法律を満たしていても、それが離れすぎていては、建物がグラグラしてしまうために決められています。

下の間取りはサンプルのものですが、新築でもこのような間取り・設計になっている建物は存在します。
建物の周りに筋かいを配置してあり、建築基準法上の壁量計算では、これで問題なく確認申請も通ります。

外周部だけで耐力を確保している例

タテ・ヨコに入っている青い点線は、91cm(0.91m)ごとに書かれています。横方向には、10マスありますので、0.91m × 10マス = 9.1mありますね。

9.1mということは、耐力壁線 相互の距離が8mを超えています。このような設計は、軸組構法(在来工法)の設計で日常的に行なわれているのが実情です。
上の平面図を立体的に書くと、下のようになります。

立体図

耐力壁線 相互の距離が8mを越えていると、住宅性能評価の耐震等級 2 or 3は通りません。
これをクリアするためには、耐力壁線の距離が8m以下となるよう、室内のどこかに耐力壁線を配置する必要があります。
今回の間取りでは、赤い点滅部分に耐力壁線を入れるのが一般的でしょう。
室内に耐力壁線を配置し、耐震性を増した設計に変更したのが、下に示す平面図です。
洋室の間仕切り部分と、洋室と階段の境部分に筋かいを配置しました。

室内に耐力壁線を配置し、耐震性を増した設計に変更

Blog2006100604

この設計変更で、耐力壁線同士の距離が8m以下になりました。
これで、住宅性能評価の耐震等級 2 or 3をクリアするためのハードルを1つクリアしました。

私は、普段の業務において多くの図面を見ていますが、このルールが守られていないことが少なくありません。

耐力壁線の距離は、住宅性能評価で建物の耐震性を評価する時に、必ずチェックしなくてはいけない項目です。

また、フラット35の
 「優良住宅取得支援制度の対象となる住宅の技術基準」の中にも、
 耐力壁線の距離に関する規定があります。

つまり、それほど重要であるということです。
家を設計する時、耐震性が高い建物が欲しいときには、「必ず」意識しましょう。

ちなみに、ログハウス(丸太組構法)の場合には、耐力壁線の距離は、6m以内にする必要があります。
(丸太組構法の技術基準告示 第4の5)

つまり、ログハウスでは細かい間隔で壁を入れる必要があり、軸組構法(在来工法)より厳しい条件ということですね。

ツーバイフォー工法(枠組壁工法)では、12m以内ごとに耐力壁線を入れる

2006年10月09日

ツーバイフォー工法(枠組壁工法)でも、同様の基準があり、12m以内ごとに耐力壁線を入れる必要があります。

軸組構法(在来工法)と異なり、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)では、工法の仕様にこの基準が入っていますので、どんな場合でも守らなくてはいけません。

ただし、12mというのは結構長い距離です。
都内の一戸建ての場合、12mの外壁距離がある物件というのはかなり少ないですね。大体の一戸建ては、10m以内に納まるでしょうから制限らしい制限といえません。

軸組構法(在来工法)の8mの基準であれば、都内の一戸建てでも、該当するものがたくさんあるでしょう。

勉強されている方、カンのいい方は、これまでの説明で、あれっ?と思うことがあるかも知れません。
さて、それは何でしょうか?

軸組構法(在来工法)の方がツーバイより開放的に出来るというウソ

2006年10月13日

あれっ?と思った方は、インターネットのホームページや、住まい選びの書籍で、

「軸組構法(在来工法)は、ツーバイよりも開放的な間取りが出来る」

といった文章を見た方でしょう。

 8mごとに壁を入れる必要がある軸組構法(在来工法)と、
12mごとに壁を入れる必要があるツーバイフォー工法

では、どう考えても、間取りを開放的に出来るのはツーバイフォー工法(枠組壁工法)です。
壁を入れなくてもいい距離が、1.5倍も違うのですから。

耐力壁線のことを知っていれば、このようなことは言えないはずなのです。

この耐力壁線相互の距離のルールを知らずに、「軸組構法(在来工法)は、ツーバイよりも開放的な間取りが出来る」と言っている人は、耐力壁の配置ルールについて、建築基準法止まりの知識しかない人でしょう。

建築基準法の決まりではなく、より詳細に耐震性を把握できる住宅性能表示制度のルールで建物を設計するということは、安全な建物を作るためには欠かせません。ちなみに、木造の耐震診断の算定方法にも、耐力壁線相互の距離のルールが反映されています。そのくらい重要だということです。

ツーバイフォー工法(枠組壁工法)よりも、細かな間隔で壁を入れなくてはいけないというのは、軸組構法(在来工法)における設計上の大きな制限です。
しかし、ある対策を行なえば、軸組構法(在来工法)でも、耐力壁線 相互の距離を、ツーバイフォーと同様に、12mに緩和することができます。
続きは次回。

筋かいを止め、合板使えば、耐力壁線の距離は12mでもOK

2006年10月16日

軸組構法(在来工法)でも耐力壁線 相互の距離を、ツーバイと同様の12mに緩和する方法。

それは、筋かいを止めて合板など、靱性(じんせい)のある耐力壁を使うことです。

靱性は、「ねばり強さ」のことです。
耐力壁の強度実験を行うと、筋かいは端部で取れたり、筋かいそのものが折れたりして、強度が急激に低下する、「もろい」壊れ方をします。

これに対して、構造用合板などの面材を使った場合、面材そのものが壊れるということは少なく、面材を留めているクギが徐々に壊れていく、ねばり強さのある壊れ方をします。

どのような建築物、構造物であっても、一般的に構造に求められるのは、ねばりのある壊れ方です。
なぜなら、地震などで建物に被害が及んだとき、ねばりのある壊れ方の方が、倒壊や避難するまでの時間を稼げるためです。

筋かいを使わないことで、耐力壁線の距離を緩和できるのは、このような理由があるといえるでしょう。
逆にいえば、筋かいを使う旧来の設計方法では、壁を細かく入れなければならず、間取りが小さくなってしまうということです。

住宅性能表示制度の耐震等級を得ている物件は、筋かいが無いことが多い

2006年10月20日

住宅性能表示制度の耐震等級2と3を得るためには、耐力壁線の検討が欠かせません。

現在、建売物件でも、耐震等級が全棟 最高ランクの3になっているところもあります。

このような物件で、筋かいを使うと、耐力壁線 相互の距離が8mになってしまいます。
8mの場合、間取りに制限が出てしまうことがありますので、これを緩和するために、耐震等級2、3を得る場合には筋かいを使わないことが一般的になってきました。

住宅性能表示制度そのものを使っている物件がまだまだ少ないため、現在では、筋かいを使っている業者さんが多いですが、勉強している設計者・業者さんほど、筋かいを止めて合板のような面材にしていることでしょう。

年間約1万棟を作っている、在来工法最大手のハウスメーカーでも、現在は筋かいを全く使っていませんが、これは木造を勉強・研究していけば当然の進歩だと思います。

筋かいを使わないと耐力を得られないと思っている設計者もいますが、私から言わせると、そう考えているのは、木造に関して全くの勉強不足です。

筋かいを使わなければ、断熱材の工事がラクで、施工のばらつきも小さくなります。
以前、耐震性能を上げるために、建物の外側に合板など、面材を張ることをお薦めしましたが、面材を使うことは、間取りにも影響することなのです。

耐力壁線で囲まれる面積は、40平方メートル以下にする

2006年10月23日

耐力壁線で囲まれる面積は、40平方メートル以下にする必要があります。
40平方メートルというと、約24畳です。

これは、軸組構法(在来工法)でも、ツーバイフォー工法(枠組壁構法)でも同じです。
ちなみに、木質パネル工法でも同じです。

つまり、耐力壁線で囲まれる面積を考えると、この3つは構法的な制限は同じだということです。
言い方を変えると、間取りの制限のルールもほとんど同じだということ。

制限が同じなのに、なぜ軸組構法(在来工法)は開放的な間取りが出来ると言われるのか?

答えは、「設計者がこのルールを知らない」からでしょう。

耐力壁線に囲まれる面積の仕様

2006年10月27日

軸組構法(在来工法)の場合、耐力壁線で囲まれる面積に、法的な強制力はありません
検討を「しなければならない」のは、住宅性能評価の耐震等級2 または 3を取る場合だけです。

しかし、ツーバイフォー工法(枠組壁構法)や木質パネル工法では、耐力壁線に囲まれる面積というのは、工法の仕様の中に組み込まれていますので、必然的に安全な建物になるのです。

これまでの木造の研究により、耐力壁線で囲まれる面積の制限を守った方が耐震性が高くなるというのは、専門家の間では広く知られています。

悪いことは言いません。
軸組構法(在来工法)でも、このルールを守りましょう。
建物の寿命が長くなれば、地震に遭遇する確率も高くなるでしょう。
ここ数年で大きく進歩した、の木造の研究結果を元に、安全な住まいを選ぶべきです。

ツーバイフォー工法では、60平方メートルへの緩和あり

2006年10月30日

前回、軸組構法(在来工法)、ツーバイフォー工法(枠組壁構法)、木質パネル工法では、耐力壁線で囲まれる面積は40平方メートル以内にするというルールがありました。

しかし、ツーバイフォー工法(枠組壁構法)の場合、床を強くすることで、耐力壁線に囲まれる面積を、1.5倍の60平方メートルまで緩和することができるのです。
60平方メートルというと、かなり大きな空間です。
一般的な住宅であれば、間取りに制限らしい制限は出ないでしょう。

軸組構法(在来工法)の場合には、この緩和措置は現在のところありませんので、室内をより開放的な間取りに出来るのは、軸組構法(在来工法)よりもツーバイフォー工法ともいえます。

スチールハウスでは、72平方メートルまで広げられる

2006年11月03日

木造のツーバイフォーに使われている枠材(スタッド)を、スチールに置き換えた、スチールハウスという工法があります。

基本的な考え方はツーバイフォー工法と同じで、アメリカ、カナダ、日本、オーストラリア、イギリス、フランス、スウェーデンなど、広くで採用されています。

日本の製鉄メーカーは、中国でのスチールハウスの需要を見込んで、中国において積極的に事業を展開しているところもあります。

この工法の場合、耐力壁線で囲まれる面積は、72平方メートルまで可能です。

つまり、軸組構法(在来工法)の1.8倍、ツーバイフォー工法の1.2倍の広い面積でも、間仕切り壁が要らないということです。
マンションでも、72平方メートル以内の物件というのはたくさんありますが、スチールハウスで作った場合、マンションと同様に72平方メートル以内であれば柱も壁も省くことが出来てしまいます。

なんだかスゴイですね。

一戸建ての場合、耐震等級の理想は 耐震等級3

2006年11月06日

一戸建ての場合、耐震等級の理想は、耐震等級3だと、私は思います。

耐震等級3というのは、住宅性能表示制度において、最高ランクを意味しています。

最高ランクというと、「何だか凄く大変そう」と思われるかも知れませんが、そうでもありません。

大手ハウスメーカーは、ほとんど全ての商品で、耐震等級3が標準です。

フランチャイズの会社や大手建売業者(パワービルダーと呼ばれる)でも、全棟 耐震等級3になっているところがあります。
結果として、耐震等級では差別化にはならないほどです。

ある業者さんの物件で、広告に

 「耐震性が高い!」

と書かれていたため、あるご依頼者が

「耐震等級3を取りたいのですが」

といったところ、

「それはちょっと無理です・・・」

と言われたことがありました。

どうやらその業者さんは、耐震等級を取得したことが無いようでしたが、技術的な裏づけが無い広告には困ったものですね。

マンションより耐震性能を上げやすい、一戸建て

2006年11月10日

マンションと一戸建ての両方をご検討されている方は、鉄筋コンクリートのマンションでは、耐震等級3の物件がほとんどないことに気が付くかも知れません。

実際、マンションの耐震等級はほとんどの場合、等級1です。
耐震等級2は少数派で、耐震等級3になると、探すのが極めて困難になります。
なぜ、一戸建ては耐震等級3が多くて、マンションは耐震等級1が多いのか?

それは、コストの差です。

一戸建ての場合、10年前より全体として構造部分の仕様が上がっており、耐震性能も上がっています。

住宅性能表示制度の耐震性能の評価では、室内の石こうボードなど、これまであまり意識していなかった部分を構造耐力として算入できるため、それらを考慮することで比較的容易に耐震等級3を得ることができるのです。

費用としては、大抵の場合、数十万円レベルのコストアップでしょう。
耐震等級3が標準仕様の場合、コストアップは意識する必要がないほど。

枠組壁構法(ツーバイフォー工法)の場合、普通の仕様でも耐震性能が高いため、特に意図しなくても耐震等級3を得られることもあります。

耐震性能を上げるために、費用が大きく変わるマンション

2006年11月13日

一戸建てに対し、主に鉄筋コンクリートで作るマンションでは、耐震等級3を得るためには、柱や梁、壁を太くする必要があります。また、それに比例して重量も増えるため、基礎も強固なものが必要となり、全体として大きなコストアップになります。

柱や壁を太くして耐震性能を増すと、室内の空間はどんどん狭くなってしまいます。
一般的には、下の階に行くほど、柱も梁も大きくなりますので、低層階の物件ほど狭くなります。

営業サイドからすると、実際の面積が狭いことは売りにくい条件になるでしょう。
(木造一戸建ての場合、耐震等級3を得た場合でも、室内が狭くなるということは、通常ありません。)

コスト面の問題から、鉄筋コンクリート造のマンションでは、耐震等級3がほとんど無いのが現状なのです。
一般的には、マンションの方が耐震性が高いと思われているかもしれませんが、そうとも言えないのです。

 

建築基準法をクリア = 大地震でも建物が無被害 ではない

2006年11月17日

一般の人と建築関係者の間には、建築基準法の耐震性能に関して、意識の差があるかも知れません。

建築基準法では耐震性能において、

 「大きな地震が起きたときでも建物が倒壊しないで、人命を守る」

というレベルを目標にしています。

逆にいうと
、「法律を満たしていた建物に、大きなひび割れや損傷部分が出てしまっても、人命が守られればそれは許容の範囲」
ということです。

構造設計で建築基準法をクリアし、その通りに作られている建物があったとします。
その建物が大きな地震を受けたときに、人命が守られていれば、建物が大きく損傷したとしても、それは許容の範囲だと私も判断するでしょう。

この辺りのお話は、(株)構造ソフト 代表取締役 社長 星 睦廣さんのコラムで分かりやすく書いてありますので、ご紹介致します。

 「構造計算書偽装事件の社会的背景と耐震性能のほんと!」
 ~21世紀にふさわしい耐震性能のマンションとは?~
  http://www.kozosoft.co.jp/gizou/

 

構造的に重要ではない部分が壊れても、実際には生活に支障がでる事も

2006年11月20日

建物は、壁や柱において、構造的に重要な部分と、そうでない部分があります。

構造的に重要ではない部分は、壊れたとしても、それは想定の範囲でもあります。
構造的に重要ではないから、その部分が壊れたとしても、壊れなかったとしても、耐震性能に大きな影響はないからです。

しかしながら実際には、構造部分に大きな損傷がないとしても、生活に支障が出ることがあります。
去年の福岡沖地震でも、そのようなケースが取り上げられていました。

 ■参考
 西日本新聞
 どう守る都市 福岡沖地震・マンション被災<2>落差
 砕けた「耐震」の信頼
 http://www.nishinippon.co.jp/news/2005/0320jishin/dou2/02.html

 

地震に強いマンションを選ぶためには

2006年11月24日

マンションでは、ほとんど全てが耐震等級1で、耐震等級2や3の物件は少ないと、以前のブログで書きました。

しかし、耐震等級に関わらず、地震に強いマンションもあります。
それは、免震装置や、制振装置を付けたマンションです。
免震制振は、阪神淡路大震災以後、よく聞くようになりました。

免震は、建物の一番下に免震装置を付けて、地面の揺れを建物に伝えない方法です。

制振は、建物の最上部や壁などに、制振装置を取り付け、地震や風の揺れを小さくする方法です。
これらの装置を取り付けたマンションであれば、地震に対して強くなっています。

しかし、一言に免震制振といっても、その性能には差があるのも事実です。

 

制振とは?

2006年11月27日

制振とは、建物に装置や重りを取り付けたり、建物同士を繋いだりして、揺れを建物で吸収する方法です。

ちなみに制振は、制振と制震の2つの文字が使われることがあります。

は、地震と風どちらも対応した場合、
は地震のみ対応した場合

に使われます。
(実際には厳密に使い分けられていませんが・・・)

制振は、アクティブ系とパッシブ系の2つに大別されます。
一般の方はここまで知る必要はありません。

詳しく知りたい方にご説明すると、アクティブ系は建物の下の方に加速度センサーなどを取り付け、地震があった時はそのデータを元にコンピューターで重りや装置を制御する方式です。
主に商業ビルで使われます。

パッシブ系はもっと簡単で、オイルダンパーや制振壁を建物に組み込み、リアルタイムの制御は行ないません。
一戸建てに取り入れられている制振装置は、パッシブ系のものです。

免震とは?

2006年12月01日

免震とは、建物を地面から浮かせたり、ゴムを入れたりして、建物と地面を絶縁する方法です。
阪神淡路大震災以後、広く採用されるようになりました。

免震の効果は大変高く、一定以上の大きさの地震が来ても、建物そのものの揺れを大幅に低減できます。

新潟県中越地震においても、免震装置を採用した小千谷総合病院の介護老人保健施設は、構造体への被害が無かったとされています。

私は学生の時に、免震や制振装置の実大実験を行なったことがあります。

振動実験の装置を使って、地震の大きな揺れを何百回と見ていると、(実験の時、震度という基準は使いませんが)震度4~5くらいの小さな揺れには慣れてしまい、大きな揺れを入力する時の建物の壊れ方が楽しみになってきたりします。

「柱が折れた!」とか、
「大きな音がしたから、ひび割れを確認しなくては」
「結構被害を受けたけど、あと1回いけるかな?」
「レーザー距離計、壊れなくて良かった。危うくぶつかるところだった」
などととなるわけです。

ちなみに、実験で一番楽しみだったのが、最後の日に行なわれる破壊実験(壊れるまで試験体を揺らすこと)でした。

しかし、免震の実験はあまり面白くありませんでした。
新しく開発された非常によく効く免震装置だったのですが、一定以上の地震を入力しても、上の建物の揺れがあまり変わらないのです。

つまり、震度2~3レベルを入れても、震度7レベルを入れても、建物がほとんど揺れないという意味で同じだったのです。

その効果を目の当たりにして、免震の効果は凄いものだと思いました。

 

制振と免震は、どちらがいいのか?

2006年12月04日

 制振と免震は、どちらがいいのか?

敷地に余裕がある場合、私は免震の方が良いと思います。

免震は、地震の入力そのものを減らすことができますが、制振は地震による揺れを小さくするだけのものだからです。

(制振は揺れが小さくなるものの、揺れは生じる。また、効果があるのは、制振装置を入れた場所よりも上の範囲のみ)

免震は震度7を震度3~4にしてくれるが、制振は震度7を震度7にしかできない

という言い方をされる方もいます。

あるハウスメーカーは、制振を採用したことで「免震」の先へというCMを行なっていましたが、敷地条件に余裕がある場合、私はそのようには思いません。

効果的な免震を選ぶ基準  『4秒免震』

2006年12月08日

「高断熱住宅」といっても、その性能には大きなばらつきがあるように、免震装置にも性能にはばらつきがあります。
しっかりしているものもあれば、そうでないものもあるのです。

では、その免震装置の違いを、どのように見分ければ良いのでしょうか?

その免震装置が、本当に優れた性能を持っているかどうかの判断の1つに、『4秒免震』という言葉があります。
『4秒免震』であれば、免震装置としては、理想的なものが採用されているといえます。

地震を時間で考える

2006年12月11日

一般的に地震の大きさは、震度6、震度7のように表されます。
ちなみにこれらの言い方は誤りで、正確には「震度階」といい、震度階6、震度階7が正解です。

しかし、地震や免震、制振に本当に詳しい人は、震度で地震の特徴を言いません。
周期」や「加速度」など、時間的な単位でいいます。

地震というのは、細かいガタガタとした揺れや、ゆ~っくりとした揺れが複雑に組み合わさっています。

地盤の弱い場所では、ゆっくりとした揺れ方の波が大きくなり、硬い地盤の場所では細かい揺れ方の波が大きくなります。

その組み合わせの程度や中身は、地震が起きた場所などによって違います。

次のURLの一番下の画像をご覧ください。

気象庁:フーリエスペクトルと加速度応答スペクトル
http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/kyoshin/kaisetsu/outou.htm

これは、過去に起きた主な地震において、建物がどの周期(地震波の揺れ方)において大きな力を受けるかを示したものです。

図の中で、青色の線は鳥取県西部地震のものですが、最も高い部分は周期が 0.4秒くらいのところにあります。縦軸の加速度応答は、2000を超えています。

これに対し、緑色の宮城県北部の地震では、最も高い部分は周期が0.3秒くらいのところにあります。

地震だけでなく、建物にも揺れやすい周期というものがあり、これを「固有周期」といいます。

木造住宅の場合、一般的には 0.1 ~ 0.5秒の範囲です。
古い建物や社寺建築の場合には、1.0秒前後になります。

ちなみに、
 ・筋かいをたくさん入れる
 ・金物をしっかり取り付ける

など、建物を強くする作り方というのは、周期的に見ると細かく揺れるようにする作業で、周期が短くなります。

耐震補強は、建物を細かく揺れるようにするための工事」だと言っても良いでしょう。

逆に、弱い建物や耐震性が低い建物というのは、周期的にみると、ゆっくり揺れる建物だということです。

地震の周期と建物の周期が合うと、揺れが大きくなる

2006年12月15日

地震の周期と建物の周期が合うと、揺れが大きくなり、これを「共振(きょうしん)」といいます。

例えば先のグラフの例で、鳥取県西部地震の場合には、固有周期が0.4秒くらいの建物が共振を起こしやすく、被害が大きくなります。

前回のグラフをご覧下さい。

 気象庁:フーリエスペクトルと加速度応答スペクトル
 http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/kyoshin/kaisetsu/outou.htm

宮城県北部の地震の場合、0.3秒くらいの建物の被害が大きくなると予想されます。

兵庫県南部地震のグラフでは、0.5~1.0秒のところに大きな山があり、比較的古い建物が被害を受けやすかったとグラフから分かります。

フーリエスペクトルと加速度応答スペクトル ~4秒免震~

2006年12月18日

ここで、前々回のグラフにおいて、横軸の4秒のところをご覧下さい。

 気象庁:フーリエスペクトルと加速度応答スペクトル
 http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/kyoshin/kaisetsu/outou.htm

どの地震波においても、山がとても低くなっており、全ての地震波において加速度応答は 500を大きく下回っています。

地震には、様々な揺れ方の波が複雑に組み合わさっていると先にお伝えしましたが、4秒や5秒のゆっくりとした波というのは、グラフでも分かるように、一般的に影響力が小さいのです。

しかし、2秒前後においては、地震波によっては大きな力が残っています。
このグラフでは、鳥取県西部地震では、1.8秒くらいのところにも山があります。

免震装置の中には、2秒程度の周期を目標としているものがあります。
この場合、鳥取県西部地震の1.8秒に近いため、ある程度揺れることが予想されます。

2秒程度の周期となる免震装置の場合、震源から遠く、地盤が柔らかかった場合には、通常の耐震住宅(0.1~0.2秒)よりも揺れる可能性さえあります。

4秒免震』とは、建物の周期が4秒以上にすることが出来る種類のものです。
この種類であれば、大きな地震であっても、倒壊するような大きな被害は受けないといえます。

グラフに載っている地震波に遭ったとしても、ほとんど無被害だったでしょう。

長くなりましたが、免震装置を取り入れている物件を比較する場合には、『4秒免震』かどうかを判断の1つして入れると良いと思います。

構造的な裏付けの無い、一戸建ての基礎

2007年07月18日

品質チェックのご依頼を検討されている方から送られてきた、一戸建ての基礎形状を示した基礎伏図を見て、ビックリ!

一目で見て基礎の立上がりが少なく、立上がりで囲まれた面積が広すぎます。

実は、一戸建ての基礎は、構造の裏づけが無いものがほとんどです。
一戸建ての図面には、鉄筋の太さや間隔などは示されていますが、それだけの量で本当に足りているのか、足りていないのかさえ実は分かっていないことがほとんどです。これは、現在の法律では違反ではありません。

安全な基礎を作るためには、スパン表という一覧表から基礎の仕様を選ぶか、許容応力度計算という構造計算方法で、構造計算するのがベターです。
大手ハウスメーカーは、どちらかで基礎の仕様を決めていますので安全な基礎となっていますが、中小の企業、工務店はどちらも行っていないのがほとんどなのが現状です。
中小の企業、工務店でも、住宅性能表示制度の耐震等級2または3を得ている場合には、スパン表によって基礎の形状を決めていますので、安心です。

布基礎よりも、ベタ基礎が強いとか、そんな簡単は話しではなく、布基礎でもベタ基礎でも、構造の根拠があるものが強いのです。
実際、大手ハウスメーカーは、ほとんど布基礎で、ベタ基礎は少数派です。布基礎だから弱いということはありません。

基礎伏図を書いたのは、工務店と設計事務所が一緒になったところでした。
設計者は、建築士の番号を見る限り、50代後半。これまで作ってきた建物が、この図面に似たようなものだと考えるとぞっとします。大きな地震の際、少なからず基礎に被害を受けるでしょう。

今回のケースは、確認申請前のチェックですので、スパン表などによる検討を行い、安全な基礎であることを確認した後に、確認申請ですね。
(一戸建てのような小規模建築物の場合、確認申請機関ではこれらのチェックは行なっていないので、確認申請が通る=安全な建物とは必ずしも言えません。)

緊急地震速報システムを支える人

2007年10月01日

本日より、緊急地震速報システムが一般向けに提供されました。
テレビや新聞などでご存知の方がほとんどだと思います。

これは、縦揺れで伝達速度の速い初期微動のP波(Primary-Wave)の揺れから、大きな揺れとなる主振動のS波(Secondary-Wave)が来るまでの時間とその揺れの大きさを情報として提供するものです。

P波とS波の時間差を利用するシステムですので、(物理の法則でも変わらない限り)P波とS波がほぼ同時に到達する震源地近くでは、大きな揺れが来た後に、緊急地震速報が提供される場合があります。

私がこのシステムで興味を持つのは、データの解析方法。
データを解析した後のデータ配信方法については、ここ数年で大きく進化した通信技術や通信環境で対応可能であることは想像が付きますが、データ解析を瞬時に終えるというのが、想像するだけで難しい。

データの解析には、日本全国約1,000箇所に設置された地震計のデータを使うそうですが、正確な判定のためには、複数の地点のデータが必要。
しかし、データの解析を速くするためには、データの点数は少ないほど良いという、矛盾があります。

この辺りのデータ解析方法については、気象庁の緊急地震速報とはというページ最下部にある、「緊急地震速報の概要や処理手法に関する技術的参考資料」というPDFファイルに詳しく書かれていますが、内容が難しいです。

私のイメージでは、地震関係の研究者は、「UNIXに強い天才の集まり」。
防災科学技術研究所の、強震観測網(K-NET)、高感度地震観測網(Hi-net)などのサイトを見るたびに、そう思います。

そういえば、新潟中越沖地震が起きた7月、地震の被害などの情報を得るために、地震関係の研究所に居る後輩に連絡をとったところ、

今は、緊急地震速報システム、という、地震の情報を早く伝える地震警報みたいな研究をしています。
10月からは、一般にも公開されて、テレビとかで速報が流れるかもしれないので、今とても注目されています。
ほんとにマイナーな分野で、研究者は日本に10人もいないと思うので、より正確な警報を目指して研究しなければと思います。

という返事が返ってきました。
うーん、彼女がそのような研究をしていたとは と、ちょっと驚きました。
それと同時に、10人も居ないという研究者の数にも。

たくさんの人達を救うことが出来るかも知れないという研究は、誰でもできるものではありません。
学生時代から、(国家一種に受かってしまうほど)優秀な後輩でしたが、今日の緊急地震速報の一般公開を機会に、より一層研究が進むことを願っています。

緊急地震速報、始めてます。

2007年11月15日

緊急地震速報の受信機 先月の下旬から自宅に、CATV(ケーブルテレビ)会社がサービス提供している、緊急地震速報の装置(受信機)を取り付けています。

接続は簡単で、単にケーブルを繋ぐだけでした。

月額料金は315円とリーズナブル。
実際に装置が稼動するような地震が来たとき、どのような対応ができるかわかりませんが、ちょっとした安心料です。

最も、この装置が稼動しないことが、一番良いのですが。

緊急地震速報の装置、動く。

2008年02月10日

建物調査(インスペクション)に出かける前の朝の出来事。

11月に入れた、緊急地震速報の装置から、大きなブザーの音が鳴りました。
(大きなブザー音に設定したのは私ですが・・・)
ブザーの後、震度3の地震が15秒後に来るという音声。

そして、15秒からのカウントダウン。

すぐ横に居た妻に、火の元などを使っていないことを確認しました。
火は使っていなかったので、「震度3程度なら何とも無いだろう」と思い、そのままカウントダウンを聞きます。

10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、ゼロ! グラグラッ!

という感じで、ゼロと同時に揺れが来ました。

15秒という時間ですが、意外と長く感じました。火の元を使っていたとしても、それを消す時間は十分あると思います。

地震が来るということが分かる「心のゆとり」という面で、緊急地震速報は有効だな と感じました。

携帯電話で、ドコモの新しい905シリーズでは緊急地震速報の情報を受信出来ます。利用料は無料ですので、905シリーズの方は設定しておいた方が良いとおもいます。(私は905シリーズではないので使えませんが)

NTTドコモ エリアメール
 http://www.nttdocomo.co.jp/service/anshin/areamail/

震度7の地震の揺れで倒壊する確率。耐震等級1:28%、耐震等級2:7.9%、耐震等級3:3.5%(2階建て木造建物)

2008年03月11日

建物の耐震性の高さを比べる基準に、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)があります。

耐震等級には、等級1、等級2、等級3の3段階があります。

品確法では、それぞれ、以下のように説明されています。

  • 等級 1の建物は,極めて稀に発生する地震の力に対して,崩壊,倒壊等しないとされる耐力をもつ。
  • 等級 2の建物は,極めて稀に発生する地震の力の 1.25倍の力に対して,崩壊,倒壊等しないとされる耐力をもつ。
  • 等級 3の建物は,極めて稀に発生する地震の力の 1.50倍の力に対して,崩壊,倒壊等しないとされる耐力をもつ。

なかなか伝えにい内容です。
実際、耐震等級3って、どのくらいの耐震性?と聞かれても、言いづらいです。「極めて稀に」という期間もはっきりしません。
建築の関係者であれば、それぞれ層せん断力係数C0が、0.20、0.25、0.30と言えば伝わるかも知れませんが、普通の人は分かりません。

そんな中、全然別の探し物をしていたとき、良い論文を見つけました。

日本地震工学会論文集 第7巻第6号
 被害発生確率を用いた耐震等級の説明の有効性[PDFファイル]

ちなみに、日本地震工学会は、2001年発足の比較的新しい学会。(私は、過去に1回、全文査読論文があるだけで、あまり関わりは無いのですが・・・。)
この論文によると、それぞれの耐震等級の説明は以下の通り。なお、2階建て木造建物の場合です。

震度 7の地震の揺れで倒壊する確率は,
 等級 1の建物では 28%
 等級 2の建物では 7.9%
 等級 3の建物では 3.5%
です。

うーん、これは分かりやすい。
建築基準法ぎりぎりの場合、正しく作っていたとしても、3割は倒壊してしまう可能性があるということ。

ちなみに、等級1とは建築基準法をクリアする程度の耐震性です。
マンションはほとんどが、耐震等級1。良くて耐震等級2。

一戸建ては、大手ハウスメーカーであれば、標準で耐震等級3です。マンションよりも、一戸建ての方が、耐震性の高い物件が多いのが実情。
ご参考まで。


オマケリンク
 ・木造住宅実験、耐震基準内でも倒壊? 産学研究会
 ・「耐震格差」が広がるプレハブとマンション

構造計算って何だろう? 壁量計算とのちがい

2008年05月07日

2005年の構造計算書偽造問題では、「構造計算」という言葉がニュースでよく使われていました。構造計算とは、荷物や雪の重さ、地震や台風などの力に対して、建物が安全かどうかを確認するために行われるものです。

鉄筋コンクリートや鉄骨の建物では、当然のように行われている「構造計算」ですが、実は、着工棟数が圧倒的に多い木造の2階建てや平屋建てでは「構造計算」は行われていません。
それでは、どのようにして木造2階建ては安全性を確認しているのでしょうか。


●木造2階建てで一般的に行われているのは、壁量計算

建築知識2008年5月号
建築の専門書(建築知識2008年5月号)における、壁量計算の取り扱いの例。
木造2階建てでは、構造計算よりもはるかに簡単な、壁量計算(かべりょうけいさん、へきりょうけいさん)という方法が使われています。

これは、建物の床面積と外壁の面積から、地震や風の力に耐えるために必要な壁の量を求め、実際に設計する建物がその壁の量を満たしているかどうか、判断するものです。

計算そのものは本当に簡単で、私は小学生でも解ける程度の難易度だと思います。
建築の専門書の特集において、「5分でスラスラ」できるとされているほど、壁量計算は簡単です。
計算の量としては、A3用紙1~2枚程度のものです。


●構造計算とは、許容応力度計算のこと
一般的な構造計算は、専門的には「許容応力度等計算」と言います。
壁量計算は簡易的な計算ですので、建築の専門家は、壁量計算構造計算とは呼びません構造計算と呼べるのは、「許容応力度等計算」や、それ以上の細かな計算方法になります。

許容応力度計算は、壁量計算に比べて計算量が圧倒的に多くなり、内容も難しくなります。
木造2階建ての規模でも、A4用紙100枚以上になることは珍しくありません。

計算量が多くなることから、建物の状態をより詳細に知ることが出来ます。
例えば、壁量計算では、それぞれの柱が負担している重さは分かりませんが、構造計算許容応力度計算では正確に分かります。
また、構造計算許容応力度計算)では、床のたわみの量や、地震のときにどの程度柱が傾くかなども正確に求めることが出来ます。

構造計算書の例 許容応力度等計算の例
2階建て木造住宅の構造計算書の例。その枚数は多く、内容も詳細。
一見、数字の羅列で、専門性が高いものです。

●壁量計算と構造計算を、ぶどうの品質チェックに例えると
壁量計算構造計算を、果物のぶどうの品質チェックに例えると、壁量計算は、皿に載せたブドウを少し離れたところから目視でチェックする程度でしょう。ぶどうの実の奥に問題があったとしても、慣れていない人には分かりませんし、それぞれの実の品質も細かくは分かりません。

これに対して構造計算(許容応力度計算)では、ぶどうの実を1つ1つ手にとって、それぞれに問題が無いか確認していく程度の、詳細なチェックになります。
チェックに時間はかかりますが、全てを詳しく調べることが出来ますので、あいまいな部分が無くなります。

実際、構造計算(許容応力度計算)では、柱や梁、土台や金物の1つ1つまで、全て安全を確認していきます。
これに対して壁量計算は壁だけの計算です。
柱や梁は計算にさえ含まれませんので、壁量計算ではそれらの安全性の検討はできません。


●最近、2階建てでも、自主的に構造計算をする会社が増えています。
ここ最近、日々のインスペクションの現場で、変化が起きています。

法律では義務付けられていない木造2階建てにおいても、自主的に構造計算を行っている会社が増えているのです。

以前は、金物工法を使っている一部の会社のみ、構造計算を標準としていました。
しかし最近では、そうでない会社でも構造計算を標準としている所が増えてきました。
この傾向は、構造計算書偽造問題が起きた後に顕著になりました。
建物の安全性をより詳細に知るという点で、これは大変喜ばしいことだと思います。

増えたといっても、木造2階建てで構造計算が行われているのは、全着工棟数の1%にも満たない程度ではないかと思います。


●構造計算の費用は20万円前後が一般的。
 より安心のため、2階建てでも構造計算を
木造であっても、構造計算のためには専門的な知識が必要です。
建築士の資格を持っているからといって、全ての建築士が構造計算できる訳ではありません。むしろ、構造計算できない建築士の方が多いと思います。

一般的に構造計算は、構造設計事務所で行います。
木造2階建ての場合、費用は20万円前後が多いのではないでしょうか。

費用と時間はかかるものの、貴方の手元に届けられる構造計算書は、一般的な壁量計算の書類と比べて、はるかに枚数が多く、詳細なものです。
将来のメンテナンスやリフォームにも、きっと役に立つでしょう。そして、建物の安心感も、ずっと高いものとなるでしょう。


●どんなとき、木造2階建てでも構造計算を行った方がいいの?
木造2階建てでも構造計算(許容応力度計算)を行うのが良いか判断に迷うことがあると思います。

この判断のためにはまず、壁量計算が有効となるための以下の前提条件を知っておく必要があります。

 1. 平面の形に極端な凹凸がないこと
 2. 耐力壁がつりあい良く配置されていること
 3. 2階の床や小屋梁の面が水平面として十分に強いこと
 4. 大きな吹き抜けや階段が設けられていないこと
 5. 屋根の勾配が極端に急ではないこと

杉山英男著 地震と木造建築 p260より一部抜粋・編集

壁量計算は、この前提条件から成り立っています。(この前提条件を知らない建築士も多数居ます)

その前提条件から外れる場合には、構造計算(許容応力度計算)を行うのが良いでしょう。
特に、建物形状が複雑な場合や大きな吹き抜けがある場合、壁量計算を満たすだけでは安全性が確保できないことが多く、要注意です。

この他には、1階が鉄筋コンクリート造、2階以上が木造などの「混構造」においても、構造計算するのが理想です。


●私の理想は、木造においても、全棟構造計算
私としては、建物の形や吹き抜けの大小に限らず、全ての木造住宅において、構造計算を行って欲しいと思っています。

さくら事務所の設計コンペで、構造計算を義務付けているのは、この思いからです。

同じ敷地、同じ間取り、同じ階数で建物を建てる場合でも、鉄筋コンクリート造や鉄骨造で建てる場合には詳細な構造計算を行います。
しかし、木造で建てる場合だけ簡易的な計算で済んでいることは、間違った状態であると思うためです。

建物のより高い安全性を求める声や、平面図や見積りと連動した構造計算ソフトが出てきたことから、将来的に構造計算が行われる割合は、増えることはあっても減ることは無いでしょう。

今後、進んでいる業者さんが構造計算を標準としていくのは、間違いありません。

余裕のない壁量計算書。こんな物件は耐震性が低い

2008年07月22日

先日、ホームインスペクション (住宅診断・住宅検査・建物調査・建物診断)が終わった、建売の木造住宅における、壁量計算書の一部です。

余裕のない壁量計算書

地震や風に耐える壁のことを耐力壁といい、法律で耐力壁を入れる量が決められています。

 

必要な耐力壁(必要壁量・所要壁長)の量は、地震力と風圧力の2つで決まり、それぞれ異なる値になるのが普通です。

しかし、建物に入れる耐力壁の量は1つに決まります。
地震による耐力壁の計算値と、風による計算値のどちらか大きい方を上回るように設計するからです。

 

先の画像のうち、赤線を引いてあるのは、問題の箇所。
有効壁長(Ld)の部分が、風圧力と地震力によって異なっています。
地震が来たときだけ、この建物は筋かいや構造用合板が、ニョキニョキと増えるのでしょうか・・・。

そんなことはないので、基本的な写し間違いでしょう。
実際の設計が、11.74の少ない方だったらどうしようかと思いましたが、14.01の多いほうとなっていました。ホッ。

 

しかし、この設計、壁量の余裕が少ないですね。
最も少ない部分で1.01と、地震に対してたった 1%の余裕しかありません。この物件は、窓が大きくて多いプランなので、雑壁の量も期待できないでしょう。

 

たった1%の余裕しかなくても、建築基準法違反ではありませんし、確認審査機関は何も言えません。
しかし、私が設計段階でチェックしていたら、必ず指摘するでしょうね。マージンが少なすぎです。ちょっとした施工誤差や施工ミスでも、建築基準法を守れなくなってしまいます。

 

大手のハウスメーカーであれば、こんな余裕のない設計はしないでしょう。耐震等級3が標準ですし、社内ルールでもこの余裕のない設計は許さないでしょう。

 

また、今回の物件がツーバイフォーであれば、この余裕度はもっと大きくなっていたでしょう。
建築基準法のルールよりも、ツーバイフォーのルールの方が、壁量が多くなるためです。これだけ少ない壁量設計をするのは、在来工法のみを手がけている設計者に多く見られるような気がします。

木造住宅の場合、やはり少なくとも、2割の余裕は持ちたいものです。

一戸建ての免震装置

2008年09月24日

一戸建て品質チェックの現場に、免震装置の鉄骨架台の確認へ。

一戸建ての免震装置。滑り支承とオイルダンパー

物件の免震装置は滑り支承とオイルダンパーの組み合わせ。
オイルダンパ−は、自動車やバイクのダンパーを作っているKYBのもの。

滑り支承は1つで9トンまで支えられ、破壊荷重はその10倍の90トンだとか。


今回の設計では滑り支承1つ当りの荷重は4トン未満。下向きの荷重に対して、かなりの余裕です。
破壊荷重が90トンであることを考えると、まず壊れません。

この免震装置の上には、耐震等級3を取得できる位の建物が載ります。
阪神クラスの地震でも、倒壊するような姿を想像できない建物です。

木造在来工法の金物選定の間違い。柱が持ち上がる!? ~告示平12建告第1460号 第2号 N値計算~

2009年01月19日

現在、設計打ち合わせ中の、一戸建て品質チェックの物件。
着工前・確認申請前に図面の確認をするため、ご依頼者に図面を送って頂きました。

 

金物の配置図を見て、すぐに間違っていると思ったのが、下の図面。

 

N値計算の間違い

どこが間違っているのか分かるでしょうか。
木造在来工法の設計に関わっている人であれば、分かって当然? 

分からないとマズイかも。
赤く塗った柱のどこかに間違いがあります。

 

物件の設計は、ケンチクカと呼ばれる方。
建物調査がらみの仕事をしていると、どうしても、ケンチクカは苦手になりますが、今回もそんな感じ。
先方のメールの返信では、「告示平12建告第1460号の規定に基づき、接合部の構造方法を決定しています。」とありましたが!?

 

在来軸組工法では2000年以降、告示平12建告第1460号で書かれているように、金物を選ぶ必要があります。これにより、平屋でもホールダウン金物が必要になりました。

 

しかし、2階建て木造住宅において、建築士が確認申請を提出する場合、金物選定の結果は提出の義務はありません。
(一般の方が住宅を建てられる場合、建築士に委任状を書いて、代理申請してもらうのが普通です)
金物選定の結果を提出しなさいと言われる審査機関もあるようですが、少数派です。

「告示に従って計算しなさい、書類も作りなさい。」
「でも、確認審査のとき、書類は出さなくてはいいですよ」

という、変な法律なのです。建築の世界では、4号特例と言われます。 

 

今回、ご依頼者は弊社の品質チェックをご希望のため、着工前に直すことができます。
しかし、ご依頼が無かった場合、このまま何事もなく建築確認を申請し、着工し、完成していたかもしれません。

 

さて、間違いの答えですが、1階の柱脚に取り付けられる、ホールダウン金物が間違っています。
HD10とは、約1トンの力に耐えられる金物と指示されているということです。

 

ホールダウン金物の例 今回の筋かいの配置の場合、1階の柱脚に取り付けられる金物は、告示平12建告第1460号の表から金物を選ぶ場合には、35kNのホールダウン金物。


N値計算で計算した場合でも、25KN(約 2.5トン)の金物が必要になります。

 


ちなみに、今回の物件が平屋建てだとしても、1階の筋かいの配置から金物を求めると、ホールダウン金物は15kNのものが必要になります。

 

従って、10kNの金物では、耐力が足りないのです。
10KNと25kNの金物では、10kN → 15kN → 20kN → 25kNと、3ランクも耐力が違います。

 

この金物選定では、地震の際に柱が持ち上がってしまう恐れがあります。

 

長くなりましたが、2階建ての建物の角部に筋かいがたすき掛けで入っていて、ホールダウン金物が無い、あるいは10kNという小さなものが指示されている場合には、疑う必要があります。

 

ちなみに、今回のように金物の計算が間違っている、あるいは行なっていないという物件を、過去に何度も見ています。
小さな建売業者、小さな不動産屋の建築条件付物件では、特にご注意を。

「防災センターでも作るつもりですか?」耐震等級に関する意識の違い

2009年02月08日

午前中に、一戸建ての契約事前相談

 

ご依頼者は、昨年にも契約事前相談をご利用された方。
以前の施工業者さんとは別の業者さんでの、物件検討でした。

 

高い耐震性を欲しいとご希望のご依頼者。
以前検討していた業者さんに、「耐震等級 3でお願いします」と伝えたところ、

「うちは標準で、耐震等級は1です。防災センターでも作るつもりですか?

というようなことを言われ、その業者さんで建てるのはやめました。

 

マンションと違い、2階建ての一戸建てであれば耐震性を高めるのが容易。
大手ハウスメーカーでは、耐震等級 3が普通。

 

今日のご依頼者も、建築する業者さんを大手ハウスメーカーに変更。
何も言わなくても当然のように、耐震等級3になりました。

 

大手ハウスメーカーの一戸建てであれば、耐震等級 3が常識。
しかし、中小の建設会社・工務店は、住宅性能表示制度を利用すること自体が少ないので、耐震等級は1が常識。

 

同じ「常識」であっても、組織や作っている物によって「常識」の尺度は違います。

 

このまま工事請負契約に進めば、耐震等級 3になっていることにより、地震保険は30%の割引。
省令準耐火のため、火災保険は当初検討していた業者さんよりも、ずっと割安。
そして、今回のご相談の結果、換気システムやエアコン能力の見直しを行うことで、数十万円の減額になりそうです。

 

ちなみに、以前検討していた業者さんのホームページを見ると、耐震性が高いという旨が書いてありました。
耐震実験として、建物の上にたくさんの人や車を載せたとしても、そもそも地震力は水平力ですから、人や車を載せた鉛直荷重と直接関係ありませんよね?

地震の力は横から。
人や物を載せる載荷実験は上からの力で、力の向きが90度違います。 

 

普通の木材の柱は、10cm角でも、6トンくらいは普通に耐えられます。つまり、柱1本に100人近くが乗ったとしても大丈夫。
イナバの物置は、100人乗っても大丈夫と言っていますが、理論的には木の柱1本でも、100人くらいは大丈夫です。

 

普通の一戸建ての柱は、1階当たり数十本の柱で支えますから、2階の床の上に満員電車のように人が乗っても、潰れて壊れることはありません。
また、車を何台も乗せられたからといって、耐震性が高いという理由にもなりません。

 

 

 2階の床組みを強くするのは耐震性に効果がありますが、1階の床組みを細かく強固にしたとしても、耐震性に大きな効果はありません。
1階の場合、床組みの約40cm下には、木造よりもはるかに強固なコンクリートのベタ基礎があります。どれだけ1階の床組みを木造で強くしても、コンクリートには勝てっこ無いからです。
1階の床組みにこだわるよりも、アンカーボルトを細かく入れて、強度の高い基礎コンクリートに力を伝える方が効果があります。

 

耐震性について、どこか力を入れるポイントを誤っているような気がしてなりません。

 

速い車を作るために良いエンジンは欠かせませんが、良いエンジンだからといって車が速いとは限りません。
住まいも同じで、高い耐震性のために良い材料は欠かせませんが、良い材料を使っているからといって、耐震性が高いとは言えません。
全てをトータルで考える必要があります。 

 

話がずれましたが、3月31日まで、生活防衛応援キャンペーンとして、契約事前相談契約後相談マンション管理相談リフォーム相談を、大幅割引中です。

様々なことを迷っている方は、この機会にぜひ。

これからの一戸建て、耐震等級2以上、次世代省エネ基準適合は最低ライン

2009年09月21日

先々週から、雑誌の取材協力のため、ローコスト系の住宅メーカーについて、いろいろ調べていました。

 

そこで強く思ったことが1つ。

 

それは、これからの一戸建て住宅は、
「耐震等級2以上、次世代省エネ基準適合が最低ライン」
ということ。

 

今年 6月から、長期優良住宅の制度が始まりました。
長期優良住宅に適合するためには技術基準があり、その中に耐震等級 2以上、次世代省エネ基準適合というルールがあります。

 

長期優良住宅に適合するため、ローコストと呼ばれる住宅メーカーでも、これらの仕様を満たしています。

 

建物本体価格が、600万円に満たない超ローコスト住宅でも、耐震等級は3でした。(残念ながら次世代省エネ基準は満たしていませんが・・・。) 

無垢材や強い耐力壁、特殊な金物を使って部分的な耐力を上げたとしても、結果として耐震等級が低ければ、建物全体の耐震性も低いのです。
耐震等級は、施工業者の設計力や、建物全体の耐震性を比べるための良い目安です。

 

「長期優良住宅にするとコストアップになる」とも言われることがありますが、ローコスト系住宅では、実際の見積りでも 坪 40万円前半で長期優良住宅に適合した建物が完成します。
この単価で出来るのであれは、コストアップについて言い訳になりません。

 

  

一戸建て 工事現場 施工品質チェックの初回面談や打ち合わせでは、数年前から耐震等級と、次世代省エネ基準について満たすよう、ご依頼者にお願いしてきました。
大手ハウスメーカーの一戸建てであれば、耐震等級 3、次世代省エネ基準適合は普通ですので、特に高いハードルだとは思いません。

 

長期優良住宅は、建物性能の底上げのため、良い制度だと思います。

よく考えると、マズい話。法律で定められている壁量が実際には足りていない!?

2009年09月22日

このブログでは、一戸建ての耐震性について、いくつものエントリーを書いています。

木造一戸建ての耐震性のほとんどは、「壁量」で決まります。
その壁量について、専門家向けにはどのように言われているのか、1つ紹介します。

 

建築士定期講習テキスト 現在、建築士を持っている人は、定期的に講習を受けなくてはいけません。
これは、耐震偽装事件の後に決まった制度です。

 

右にある建築士定期講習テキストの中で、地震に対する必要壁量には、以下のように書いてありました。

 

 地震に対する壁率は、階数や屋根の種類によって、各階の必要壁率が規定されている。屋根の種類は、建築物の重さを表している。必要壁率は、一般的な建築物の重量等を仮定し、建築基準法施行令3章8節の構造計算に基づいて算出されている。

しかし、建築基準法の想定している建築物の重量が、最近の建築物の重量と比較して軽いといわれている。詳細に建築物の重量を積算する許容応力度設計では必要壁量が増える、という指摘があるのはこのためである。

建築士定期講習テキスト 平成21年2月1日発行  pp151より

つまりこれは、建築基準法が作られた時と比べて現在の建物は重たくなっているため、法律で規定されている壁量を入れたとしても、実際には足りない可能性があるということ。

 

サラッと書いてありますが、よく考えるとマズい話です。

 

昔の建物と比べ今日の建物は、耐火性能を上げて内装下地を作るための石膏ボードが多用され、遮音性を高めるための遮音マットなどの採用も増えていることから、重量が増えているのです。

 

以前から専門家の間では、許容応力度計算によって、建物の構造を詳細に検討すると、建築基準法の壁量では不足してしまうということはよく知られていました。

 

建物の構造は、余裕を持って設計・施工したいものです。

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