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地震。震度と、震度階の違い

2004年08月06日

今日の未明に、地震があったみたいですね。
朝の3時半頃だったようですが、すっかり熟睡していて、全く気がつきませんでした。震度3の揺れより、私の睡眠の方が勝っていたようです。

一般的に、地震の強さは「震度」と言われますが、正確にはこれは間違いです。
正確に言うならば、震度階級あるいは、震度と言います。先の例で言うと、震度階3になります。

"震度"は、地震工学や耐震工学では違った意味を持つ言葉として使われているので、区別する必要があるのです。

ちなみに、地震や耐震の専門家は、地震の揺れの大きさを示す為に震度階級を使いません。震度階級の尺度は大雑把で、個人の主観に頼る部分があり、客観性に乏しい面があるからです。

ならば、地震の揺れの大きさにどのような尺度を使うのかというと、加速度(gal:ガル)や、速度(kine:カイン)を使います。これならば、かなり具体的に揺れの大きさを示す事が出来ます。
また、地震の特性を示すには、最大加速度、周期特性や継続時間などが使われます。

阪神淡路大震災 (C)Copyright 京都大学防災研究所 大きな地震が起きると、その被害地近くにある大学の建築学科や、日本建築学会、建物や地震の専門家などで、被害調査が行われるのが普通です。私も学生時代に2回行きました。

この時、被害をもたらした地震がどのような揺れだったかを知るために、欠かせない場所があります。それはどこでしょう?



答えは、お墓

墓石の転倒率や、倒れた方向などで、お墓があった場所の地震の揺れの大きさが推定出来るからです。この為、地震の被害調査に行くとすぐに墓地の場所を地元の人に聞いたりして調べ、墓石の転倒の割合や墓石の寸法などを計るのです。

地震が発生した時から日が経つごとに、地元の方が墓石を元に位置に戻す事が多いので、この調査はスピードが命です。
時々、お墓の間から白っぽいものが見える時があり、ひゃ~!とビビってしまうのですが。

地震に備えて。応急危険度判定士

2004年08月31日

今日は、午前中モデルルームに建物チェック。
設計図書が図面別にしっかり揃っていた事に加え、図面も比較的見やすかった事もあり、とてもスムーズに終了。

その後、応急危険度判定士の講習会の為に都庁へ。久しぶりの新宿です。

被害調査の様子 応急危険度判定士とは、地震で被害を受けた建物を調査し、その後に発生する余震などによる倒壊の危険性や外壁・窓ガラスの落下などの危険性を判定することにより、二次的災害を防止することを目的とする資格です。

判定が終わると、結果を3段階に評価し、建物に、調査済要注意危険のいずれかのステッカーを貼ります。

地震が起こった場合には、危険度判定に参加したいと思っています。しかし、危険度判定が必要な時は地震の時ですから、出来るならそのような機会は無い方がいいですね。
参加する機会があったとしても、グリーンのステッカー(大きな被害無し)ばかりの調査になって欲しいものです。

地震

2004年10月23日

新潟の方で大きな地震が起きました。
被害があまり大きくなければ良いのですが。

地震で思い出すのは、学生時代に行った地震の被害調査と、振動台を使った実大振動実験(参考写真)。

私は、実大振動実験において、小さな揺れから震度7までの大きなものを、延べ回数で800回位経験しています。この位経験すると、地震の時に建物のどこが壊れるのかは、建物の形状や壁などの配置を見ると大体分かってきます。

実験の時には、目の前50cm位で建物が揺れるのを見て、ひび割れの進行などを確認していました。実際の地震の時には絶対に出来ないことですね。

阪神淡路大震災以後、全国各地に振動台が作られ、地震に対する研究が活発になっています。

来年には、兵庫県三木市に、世界最大の振動実験施設E-ディフェンスが完成します。
これは、鉄筋コンクリート4階建ての実大の建物を揺らす事ができる、バケモノのような振動台です。この巨大な振動台で、地震に対する研究が一層進むといいですね(運転費用が凄そうですが・・・。)

マグニチュードと震度の関係

2004年10月25日

新潟の地震は、当初私が考えていたよりも大きな被害でした。
地震の規模を示すマグニチュードは6.8。マグニチュードでの分類上は、中地震になります。

震度とマグニチュードの関係 ここで、震度とマグニチュードの関係を。

震度とマグニチュードの関係は、「電球」と「電球から離れた位置での明るさ」によく例えられます。

ここで、電球の大きさ(ワット)がマグニチュードに相当します。マグニチュードは、1つの地震で基本的には1つに決まります。

震度は、電球から離れたそれぞれの位置での明るさ(ルクス)に相当します。
小さな電球(マグニチュード)であっても、その近くであれば明るく(震度が大きく)、電球が大きくても、遠くに離れていれば暗くなります。

電球の例と実際の地震との違いは、地震の場合には地盤の状況が関係するため、単純に距離には比例しないということです。

ちなみに、マグニチュードは数字が0.1大きくなると、そのエネルギは約1.4倍になります。数字が1.0大きくなるとエネルギは約32倍です。

兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)のマグニチュードは7.2でした。今回の地震では、最初に起きたのがマグニチュード6.8でしたので、兵庫県南部地震は今回の新潟県中越地震の約3.8倍のエネルギを持っていたという事になります。

よく、「小さな地震がたくさん来れば大きな地震は来ない」などと言われる時がありますが、マグニチュードの数値とそのエネルギの大きさ関係を知っていると、そうとは言えないことがお分かり頂けると思います。

早急な復興のために、余震が続かないことを祈るばかりです。

新潟県中越地震の地震波形

2004年10月27日

地震波の観測は、日本各地に設置してある計測器によって行われます。
一般的に、測定されるデータは、
 ・南北方向(NS)
 ・東西方向(EW)
 ・上下方向(UD)
の3つのデータです。

新潟県中越地震について、揺れの大きかった2地点にあった計測データを、WAVEANAというソフトを使って表示してみます。

十日町における観測加速度波形(新潟県十日町大字高山854-8)
2004年10月23日 17時56分00秒 新潟県中越地震 新潟県稲荷町大字高山854-8

小千谷における観測加速度波形(新潟県小千谷市土川1-123-3)
2004年10月23日 17時56分00秒 新潟県中越地震 新潟県小千谷市土川1-123-3

いずれの地点でも、南北方向は加速度が1000Gal(ガル)を超えています。(1995年兵庫県南部地震では、818Gal)
十日町においては、1700Galを超えるなど、非常に大きな値となっています。

小千谷では、上下方向の値も800Galを超える大きな値となっています。
地球上では重力による加速度が980Galありますので、980Gal以上の加速度がないと物体は浮き上がりません。(980Galを超えたからといって、すぐに浮かび上がるものでもありません。)1995年の兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)は上下動の最大加速度は332Galですから、今回は上下動の大きい地震だったことが分かります。

加速度データの表示には、福山大学工学部建築学科 鎌田輝男教授作成の、WAVEANAを使用致しました。
観測波形データは、防災科学技術研究所の地震観測網K-NETの地震データを使用致しました。

地震を、力ではなく、時間で考える

2004年11月08日

今日は(出来るだけ簡単に書きますが)ちょっと難しめです。いつも難しいという説もありますが・・・

今日は、地震を「力」ではなく「時間(周期)」で考えてみたいと思います。

音楽 地震の波というのは、音楽と同じです。

地震の波は、色々な波から出来ており、それが組み合わさって一つの地震となります。

これは、色々な楽器を組み合わせて1つの音楽になることと似ています。
全ての楽器の音量を、合わせて100dBだったとします。

この1つの音楽を、ある手法を使うと、それぞれの音の高さ毎に、音の大きさを分けることが出来ます。

楽器 ギター トライアングル バイオリン 太鼓
音の大きさ 80dB 60dB 70dB 90dB
音の高さ 400Hz 500Hz 300Hz 200Hz
(数字は適当な値です)

この処理は、身近にあります。
例えば、コンポ(ステレオ)のグラフィックイコライザーです。それぞれの音の高さにおける、音量をバーの長さで示しています。

今回の例では、太鼓の低い音(200Hz)が最も音量が大きくなっています。これを、卓越といいます。

このグループの音楽を聴いて、心に響いた人が多かったとします。これを、共振と呼びます。心と音楽の波長が合い、心が大きく揺れたということです。(ちょっと強引ですが)
演奏終了後、観客に感想を聞いてみると、「一番心に響いた楽器は、太鼓」と答えた人が最も多くいました。しかし、答えはバラバラで、バイオリンや、トライアングルという人もいました。

地震と建物の関係を、音楽と観客の関係と比べてみます。

新潟県中越地震 小千谷における加速度応答スペクトル 右の図は、先月の新潟県中越地震の小千谷における観測データを処理して、振動数別にしたものです。(横軸が対数軸なのでご注意を)

グラフを見ると、1.4Hzの所が最も高くなっています(卓越)
この場所に、1.4Hzで揺れやすい建物があったとします。音楽と観客の場合には、心の周波数(振動数)と楽器の周波数(振動数)が一致すると、共振を起こして、心に響いていました。

しかし、建物と地震の時には、共振を起こすと揺れが大きくなります。
結果として、建物は非常に壊れやすくなります。

地震の時の振動数は、卓越している地震波の力が最も大きくなります。
1.4Hzというのは、0.7秒に1回左右に揺れる程度で、古い建物が該当します。
現在の一般的な木造の在来工法は 4Hz前後だとされており、建物の外側を合板で覆ったり、2×4の場合には、7Hz前後とされています。

今回の地震波の卓越振動数は 1.4Hzですので、現在の一般的な建物であれば、共振は起きにくいと考えられます。
また、グラフを見ると、4Hzの部分の高さは、最も高い高さの半分くらいになっており、エネルギが小さいことが分かります。

耐震と免震と減衰 先のグラフに、耐震の考え方、免震の考え方、減衰の考え方を書くと、右のようになります。

耐震とは、細かく揺れるようにすること
免震とは、ゆっくり揺れるようにすること
減衰とは、揺れを早く止めることです。

超高層ビル・マンションは、建物が高いこと自体が免震です。
超高層ビルは、0.3Hz前後くらいで揺れますが、グラフを見ると、0.3Hzのところのエネルギの大きさは卓越部分と比べるとかなり低くなっています。

超高層建物は、ある地震が来たとしても、影響を受けるエネルギ自体が小さい(先の音楽の例だと、トライアングル)ので、地震には強いとされています。

超高層の構造は、地震を「力」だけで考えると理解は困難です。地震を「時間」で考える必要があります。
逆に言うと、地震を時間で考えないと、超高層の理解は難しいといえます。

新潟中越地震の被害。ホールダウン金物の破断も。

2004年12月03日

先日、新潟に行ってきました。震災の被害調査のためです。

当初は、震災直後に被害調査に行った学生時代の研究室に同行しようと考えていましたが、日程の関係で難しく、12月に入ってから神尾さんと2人で被害の調査に行きました。

道路の陥没 今回の震災で被害が大きかったのは、

 川口町の田麦山、武道窪、和南津地域
 旧堀之内町の新道島

の、計4地域だとされています。
このうち、田麦山、武道窪の2ヶ所を見てきました。

いずれの地域も被害が大きく、田麦山地域では大規模な修繕なしに住むことが出来るのは、2割も無いのではないでしょうか。

建物の倒壊 建物の多くは倒壊、またはかなり大きな被害を受けています。

今回は、震災後約1ヵ月経過した時点での調査です。これまでの1ヵ月の間に取り壊された建物に関しては被害の確認が出来ませんが、更地になっている所がいくつかあったことから、倒壊した建物はもっと多かったことでしょう。

取り壊される建物を見届ける家主の方 各所を見て回っている時にも、あちこちで建物が取り壊されています。被害が大きいため、取り壊しが避けられない建物です。

建物が大きく傾いて危険なものは右の写真のように重機で取り壊されます。
重機によって取り壊されていく家の様子を見届ける家主の方の気持ちを考えると心が痛みます。


広島の伝統建築 [参考写真]
芸予地震で見た広島地方の伝統建築。
柱幅が150mmある事も珍しくなく、外から見える梁に、虹梁と呼ばれる大きな梁を使うのが特徴
土壁が用いられることも多い
倒壊に至った建物の多くは古い建物ですが、築浅のものもありました。

新聞やテレビでは、豪雪地域に建てられるため、建物の被害が・・・などといわれていますが、思っていたより柱の太さや梁の太さは大きくありませんでした。
材料の大きさだけで見ると、学生時代に芸予地震の被害調査で行った(雪の降らない)広島の伝統建築の方がずっと上です。

倒壊した建物には、柱と土台を留め付けるホールダウン金物というものが取り付けられていませんでした。
最も、昔の建物にはホールダウン金物などの金物を取り付ける義務が無かったので、建築後に耐震補強をしていない限り、古い建物には金物自体がありません。

このような場合、柱のほぞ部分には、「込み栓」という引き抜き対策の棒を入れるのですが、そのようなものもありませんでした。これでは、力がかかったときに簡単に柱から外れてしまいます。
この地域の昔ながらの建物は、上からの荷重には対応しているものの、左右の揺れによる引き抜き力への対策は甘かったといえます。
込み栓無し 倒壊した建物の土台部分
込み栓がありません


込み栓模式図 [込み栓模式図]

今回の調査で一番驚いたのが、写真に示した、築1年に満たない建物での、ホールダウン金物破断
建物の平面計画で、この部分に力が加わることは予想できますが、これまでにホールダウン金物の破断は見たことが無かっただけに衝撃的でした。
このホールダウン金物の破断は、今後学会や専門誌等で議論される出来事でしょう。
ホールダウン金物の破断

最後に、被害が少なかった建物を2つ。
被害が少なかった建物 被害が少なかった建物

いずれも被害が大きかった地域に建っている建物です。周辺には倒壊した建物がいくつもあります。
サッシの落下や、室内のクロスの被害などはあったそうですが、大きな修繕なく住むことが出来そうです。

実はこの2つ、地元の同じ工務店が建てた建物。右側の家主の方いわく、この工務店は人気があり、順番待ちで建ててもらったそうです。数年前から高気密高断熱をやりはじめ、この高い基礎も工務店が直接施工するとのこと。

家主の方のお話を聞いていると、かなり勉強されている方のようでした。

・瓦は荷重が増えるので、金属屋根にした
・金属屋根の中でも、寿命が長いステンレスを採用した
・ステンレスと一般的な金属屋根の差額は30~40万だが、
 足場のコストを考えると、ステンレスの方が長期的に見て安い
・耐震のため、大きな部屋を作らないよう、あえて部屋を区切った


など、地震のことをあらかじめ考えてみえたようです。

強くて長持ちする建物を作るためには、施主側の勉強と、それに応えられる業者さん選びがとても重要という思いを強くしました。
デザインや内装、仕上げ材がどれほど良くても、その建物が直せないほど地震で壊れてしまったのでは、どうしようもありません。

中古、築年制限 緩和へ。「耐震基準」条件に。耐震診断の書籍の紹介

2004年12月06日

先日の日経新聞より。

減税は別の話として、「対象となる住宅が1981年の耐震基準を満たしていること」という条件は良いと思います。
以前の日記に書きましたように、1981年を境に耐震基準は大きく変わっています。今回のような緩和措置は、中古住宅流通の活性化になりますし、厳しい耐震性能に対応した住宅が増えることは良いことだと思います。

最近はリフォーム番組の影響のためか、住宅のリフォームが盛んなようです。

壁で地震に耐える木造住宅では、むやみに壁を取り外すことは出来ませんが、業者さんによってはそのようなことを考えないでリフォームすることもあるようです。
耐震診断 内部のリフォームの際は、耐震補強をする良い機会だと思いますので、構造に詳しい業者さんにご依頼されるのが良いのではないでしょうか。

耐震診断をご自分でやってみたいという時は、右の耐震診断(Amazonに移動します)という本がオススメ。
ちょっと専門的ですが、本のサイズがコンパクトですので、実際の建物と比較しながらチェックしてはどうでしょうか。

建物に絶対に必要な条件とは?新潟県中越地震速報

2004年12月16日

自宅に帰ると、メール便が届いていました。

中身は、先週の日曜日に金沢で行われた、新潟県中越地震速報会の冊子が、学生時代の先輩から送られてきました(ありがとうございます!)


どのような建物が被害を受けやすかったのか、じっくりと読みこみたいと思います。

普段は、住まいの快適性に関することをよく書いていますが、その前に絶対に必要なものは、「安全
住まいがどんなに快適であっても、それが「安全」でなければ意味がありません。

クロスの汚れやシワは、安全とは関係ありませんが、構造体の施工ミス、施工不良は住む人の安全に関わってきます。

建物は安全でなければならないと思うから、品質チェックのサービスでも、構造体のチェックは非常に重要視しています。

安全性が確保されたら、次はその状態をできるだけ長く保つために、耐久性を考えなければなりません。

耐久性を考えていくと、構造体の伸び縮みや結露による劣化、温度管理出来ない部分をなくすために、建物の温熱環境・快適さが重要に。

建物が快適になると、快適さに費やすエネルギをいかに減らせるかという、環境への配慮が重要に。

他にも考えることがたくさんありますが、それぞれがリンクしているのが、建物作りの難しいところであり、面白いところなのではないでしょうか。

日本における、木造建築の研究の歴史

2004年12月19日

昔は、金物なんて取り付けてなかった。
品質チェックで木造の現場に行ったとき、たまに耳にする言葉です。

確かに、昔は木造住宅に金物を使う数も位置も少なかった。このようなことを言う建築関係者は、
「(昔は入れなくても良かったのだから)別にちゃんと入れなくてもいい」
と、心の底で思っているのではないでしょうか。

しかし、昔の木造住宅に金物が少なかった理由は別のところにあります。答えは、「これまで、木造の研究が行われてこなかったから」です。

一般の人は、「日本は木造住宅も多いし、日本中の大学に建築学科があるのにナゼ!?」と思うかも知れません。
しかし、実際には日本の大学の建築学科で、木造を専門とする研究室は非常に少ないのです。(鉄骨や、鉄筋コンクリート造は多い)


昭和34年、日本の木造の研究が止まった

昭和34年(1959年)の日本建築学会で、「防火・台風水害のための木造禁止」が決議されました。
当時、都市の防火対策、相次いだ台風の被害、鉄筋コンクリート建物の増加などの社会背景により、建築の総本山である日本建築学会が、木造の研究を行わないとしたのです。
このため、日本において木造の研究に空白期ができてしまいました。

建築学会で木造が不要とされてしまったら、木造の研究を行ったとしても、発表する場がありません。そのため、大学や公共の研究機関では、木造建物の研究は行われなくなってしまいました。

木造を研究する人がいないのですから、木造の耐震性能も上がりません。研究が行われないので、金物をどこにいくつ入れたら良いのかということは、分からなかったのです。


1980年頃から、ツーバイフォー(枠組壁工法)の研究が始まる

1980年頃、ツーバイフォー(枠組壁工法)の研究が始まっています。
この研究の中には、構造に関するものも含まれていたので、当然のように、ツーバイフォー(枠組壁工法)の耐震性能は高まりました。今日でも、ツーバイフォーは地震に強いと言われますが、これは「今から30年程度前から研究が行われていたため」とも言えます。


木造の研究が転機をむかえた、阪神淡路大震災

1995年 1月17日に起きた阪神淡路大震災では、死者6,432人、家屋倒壊 約25万棟という甚大な被害を受けました。
木造の家屋は他の構造よりも被害が多く、倒壊によって多数の死者が出ました。
しかしこの時、関西以西に大学の研究室などで、木造を専門としている研究者は居なかったとされています。

下に、木質構造分野に投稿された、日本建築学会の論文数の推移を示します。

木質構造分野における、建築学会投稿件数の推移
木質構造分野における、建築学会投稿件数の推移
日本建築学会 大会学術講演梗概集(1968-2002)木質構造分野より作成。

阪神淡路大震災の翌年から、木造の分野において、研究が急激に増えていることが分かります。建築の世界で構造を研究している人であれば、あれだけの大きな被害を受けたのは何故なのか、研究しようと思うのが普通でしょう。

その為、阪神淡路大震災を転機として、各分野の研究者が木造の研究を行うようになりました。これは、ほんの数年前の出来事です。

研究者が急激に増えたため、阪神淡路大震災までは年間80件に満たなかった研究数は、2000年には、200件を超えました。(ただし、2000年の日本建築学会への全投稿数は、約5700件ですから、それでも全体の3.5%にしか過ぎません。)

ちなみに、私は学生時代に木造の伝統構法の構造について研究していましたが、最も参考になった研究は昭和16年のものでした。(そのくらい、研究が少なかったのです)


ここ10年で、木造の研究は急激に進んでいる

阪神淡路大震災以後の約10年、木造の研究はこれまでの遅れを取り戻すかのように、急激に進みました。

実大振動実験のように、費用、手間、研究能力、人員が必要、で大掛かりな研究も数多く行われました。
その結果、建物にねばり強さを持たせるため、金物が必要であることがわかりました。その為、今から4年前に木造の金物の規定が厳しくなり、金物の数が増えました。
これは、増えたというより、「必要だったけど、研究されていなかったため、必要なことが分からなかった」というのが正しいのかも知れません。

伝統構法を生かす木造耐震設計マニュアル 研究が進んだ結果今日では、構造計算が難しいお寺や社寺建築などの伝統構法の解析まで出来るようになりました。
これは、10年前には想像も出来なかったことです。

その解析のレベルも高く、一般的な木造住宅で行われる「壁倍率」の計算よりずっと高度な、「限界耐力計算」というものとなっています。


今後は、木造の大規模建築物が増えていく

これからは、海外ではたくさん建てられている、木造の大規模建築物が日本でも増えるでしょう。(国内の大規模木造建築の例:樹海ドーム、オーストリアでの大規模木造建築の例:2004年6月27日の日記

木造で、4階建て以上の建物が建てられることは、将来的に何も不思議ではありません。
最近は木造の研究者や、木造を専攻する学生も増えつつあるので、10年後に木造の技術がどのくらい進化しているのか、楽しみです。

世界最大の振動台E-ディフェンス(兵庫耐震工学研究センター)

2005年06月04日

地震について、ちょっと疑問なことがあったので、学生時代にお世話になった先輩のところに電話しました。

電話の結果、疑問に思っていたことは、すぐに解決しました。
その後、話はなぜか兵庫県三木市にできる、巨大な震動台の話へ。

800トン近い震動台を実際の地震と同じように揺らす施設ですので、電気代は凄いと思っていましたが、やはりかなり電気を使うそうで、1日にン百万とか。

施設のホームページ(2007年8月現在、閲覧出来ず)を見ると、建築途中の写真が載っていますが、全ての規模が大きい!

例えば、1998年8月~2000年6月(2007年8月現在、閲覧出来ず)のところを見ると、基礎工事の様子が載っていますが、基礎に使われている鉄筋の太さは、51mm(D51)。

木造一戸建ての基礎に使われる鉄筋の太さは、10mm~16mmくらいがほとんどです。51mmという太さの鉄筋は、土木では使いますが、建築の分野ではほとんど使われません。

直径を 5.1cmとすると、断面積は 20.4cm2(実際の鉄筋は正円ではないので面積は多少異なります)。鉄の比重を7.85g/cm3とすると、1m当たり約 42kg。2mの長さで大人1人の体重よりも重たくなります。配筋作業はさぞ大変だったでしょうね。

-余談-
円の面積を求めるときは、 半径×半径×円周率 と学校で習ったと思います。

しかし、日常生活では半径よりも直径の方が測りやすいので、
(円周率 × 直径 × 直径)÷4  の方が便利です。

怪しい耐震補強。地震の上下動で柱が抜ける?

2005年07月12日

怪しい耐震補強が多い』、と思う。

怪しい耐震補強とは、補強する部材の強度ばかり全面に出して、全体が見えてこないもの。耐震補強というと、多額の費用がかかると思われているが、そんなに多額の費用がかかるとは思えない。

例えば、築10年の物件を耐震補強するとする。
耐震性能を高くするために、まずは目標を定める。
とりあえず、現在の建築基準法を満たすようにすると良いだろう。在来工法(軸組工法)は、2000年の法改正でかなり耐震性が上がっている。ほんの5年前の話だが、築6年の建物でもこの基準を満たせないものは少なくない。

目標が決まったら、目標と現在との差を調べるため、当時の設計図面を元に壁や柱の位置をパソコンに入力していく。(図面がない場合には、実際の建物での調査が必要となる。)

パソコンにデータを入力し終わったら、現在の建築基準法を満たすように、再計算する。今のパソコンなら、計算は一瞬で終わる。
使うソフトによっては、使用する金物の位置や種類を自動的に拾ってくれる。

使用する金物は、ホームセンターでも売ってある、新築用の金物で「全く」かまわない。むしろ、「自社オリジナル」などという金物より、ずっと安くて信頼性がある。

考えてみてほしい。
現在新築で建てられている一戸建ては、ホームセンターで売ってある汎用の金物で、建築基準法を満たす、十分な耐震性が得られているのである。耐震改修のときにも、それを使わない手はない。

リフォームのときは、室内の石こうボードを取り外すことが多いだろう。石こうボードを取り外した状態であれば、市販されているほとんどの金物は取り付けられる。
石こうボードを取り外し、新しく買ってきたとしても、1枚400円ほど。

ちなみに、筋かいを1本追加した時の材料費は、ホームセンターで買った場合、
 ・筋かい金物が1つ200円以下(筋交い1本につき、2個使用)
 ・筋かいの材料が1000円以下。
合計は、2000円でお釣りがくるほどしかかからない。10万円あれば、筋かいを50本以上取り付けられる材料費になる。(普通の大きさの家では、筋かいを50本も使わない)

金物を取り付けるためのビスは、金物に付いてくるから別に買う必要はない。
あとは、ビスを留めるための電動ドライバーと、筋かいを切るためのノコギリさえあれば、一般の人でも取り付けられる。

筋かいを取り付ける代わりに、構造用合板を張ったとしても、1枚2000円以下。留め付けはクギを打つだけ。

しかし、世に出回っている耐震補強では、耐力壁を1箇所取り付けるだけで何十万というのを目にする。
説明では、その耐力壁の強さは○○倍だとか、金物の強さが最大何トンまで耐えられるとか。

中には、「直下型の地震でP波が来ると、縦揺れによって家が飛び上がり、ほぞが抜ける」などとしているものもある。
2004年の新潟県中越地震は、直下型で縦揺れが大きかった。兵庫県南部地震よりも加速度は大きい。
しかし、新潟県中越地震の波形を見たとき、どう説明すれば縦揺れだけで建物が浮かび上がるのだろう。ちょっと地震のことに詳しい人なら、縦揺れだけではそんなことが起きないというのがすぐに分かるだろう。

「縦揺れのために、家が浮き上がったり、ほぞが抜けてしまったと説明している人は、地震や振動学に詳しくない」と思っていい。

建物全体の耐震性能を上げようと思ったら、局所的に壁を強くしても大した意味はない。
車を速くするために、「エンジンを500馬力にしました」といっても、他の部品の性能を上げなければ、効果が出ないのと同じこと。

部分的なところだけ取り上げて、耐震性能が上がるという説明を見ていると、自ら「構造や力学に詳しくない」と言っているようにも感じる。

建物を作るということは、中に住む人々の命をあずかっているということ。
飛行機のパイロットも、電車の運転手も、バスの運転手も、乗客の命をあずかっている。だからこそ、プロでなければならない。

建物、特に構造に関わる部分に関わる人も、命をあずかっている以上、プロでなければならないのである。

耐震補強においても、「プロの仕事」をして欲しい。

筋交い(筋かい)の方向が分からない図面を書く設計者は、構造に疎い

2006年04月10日

建物調査(インスペクション)のオプションサービスである、耐震診断を行うため、いろいろな設計者の図面を見ています。

図面を見ていてとても気になるのが筋かいの記号。
筋かいの記号は、△、▲、 筋かい記号筋かい記号 のようなものが一般的です。
記号は、法律で定められている訳ではないので、各社バラバラ。
平面図上では、以下のように書かれています。

筋かい記号 筋かい記号 筋かい記号 筋かい記号


ここで問題なのが、 筋かい記号 のように、筋かいを取り付ける「位置」だけが書いてあるパターン。


筋かい記号 左のイラストのように、たすきがけ(交差で入れる)の場合には、問題ないのですが、▲が1つだけの場合には、筋かいが右上がりなのか右下がりなのか分かりません。

平面立面
筋かい記号

筋かいの方向はどっち?
筋交い
筋違い
筋かい記号 たすき掛け筋違い

同じ筋かいの記号でも、 筋かい記号 の場合には、筋交いを取り付ける方向が分かります。

平面立面
筋かい記号 筋交い
筋かい記号 筋違い
筋かい記号 たすき掛け筋違い

それでは、何故、筋かいの方向が分からなくてはいけないのでしょうか?
理由は以下のようなものです。

 ・施工者によって、筋かいを入れる方向が異なる可能性となる
  (= 1つ図面から、複数の解釈が出来てしまう。)
 ・筋かいの方向により、金物の種類と位置が違ってしまう

筋かいの方向性 筋かいには、方向性があります。
右のような筋かいの入れ方をしたとき、からの力に100耐えられるとすると、からの力には、50くらいしか耐えることができません。

筋かいの方向が書かれていない場合、家をつくる大工さんによって、筋かいを入れる方向が変わる可能性があり、耐震性能が設計通りとならない可能性があります。

もっと問題なのは、金物の種類と位置が違ってしまうことです。
2000年に大きく変わった建築基準法により、金物の規定が厳しくなりました。金物の位置と種類を計算するときには、筋かいの方向を考慮する必要があります。

そのため、その計算を行ったときの筋かいの方向と、実際の建物の筋かいの方向が違っていると、耐震性が低下してしまう可能性があるのです。

長くなりましたが、お奨めの筋かい記号は、▲ではなく、 筋かい記号 のように、筋かいの方向が分かるものです。
厳しい言い方をすれば、筋かいの方向で金物の種類が変わる可能性があり、方向性がある材料であるにも関わらず、▲ の記号で片筋かいを表している場合には、構造面での配慮が甘いと思います。

もっと言ってしまえば、面材を使えば筋かいなど使わなくても、建物は十分強度が出るのです。
在来工法最大手のハウスメーカーでも、鉄骨も金物工法も行う日本最大のハウスメーカーでも、既に筋かいは使っていません。
面材を使えば、筋かいなど不要です。

壁量計算。壁の量は、床面積と、外壁面積で決まる。

2006年07月17日

建築基準法では、建物に必要な壁の量を、床面積と外壁の面積の2つで決めるようになっています。(建築基準法施行令 第46条・構造耐力上必要な軸組等)

この計算を、「壁量計算(へきりょうけいさん、かべりょうけいさん)」といいます。

壁量計算はカンタンな計算なので、木造の3階建てや鉄筋コンクリート造、鉄骨造で行なわれる「構造計算(許容応力度計算)」とは区別されています。
(構造計算の方が詳細で計算も難しい)
壁量計算は小学生でもできるような計算です。

壁量計算に基づいて、建物に入れなくてはいけない壁の量を、「必要壁量」といいます。
この壁とは、普通の壁ではなく、筋交い(筋かい)や構造用合板を張った、強い壁のことです。

例えば、ある物件で、必要壁量が10m必要だとします。
つまり、筋交い(筋かい)や構造用合板を張った、強い壁の長さの合計が10m必要であるということです。

設計者は、筋交い(筋かい)や構造用合板を図面上に配置して、耐震性能を得ます。
例えば、壁の強さの基準が1.0という壁を1mずつ、10箇所に配置しても良いでしょう。

壁の強さの基準が2という壁を、5m 配置してもかまいません。
(2倍×5m=10m)

ある設計者は、在来工法(軸組工法)において、必要壁量と全く同じ量を、筋交い(筋かい)によって建物の中に入れるように設計しました。
つまり、建築基準法で必要とされている筋交い(筋かい)の量だけを入れたということです。余裕の割合でいうと、1.00です。

この建物を、より詳細な「構造計算(許容応力度計算)」で計算すると、結果がNGになってしまいました。それは、なぜでしょう。

続きは次回以降。

建築基準法ギリギリで建てられた在来工法(軸組工法)が必ずしも安全とはいえないワケ その1

2006年07月21日

建築基準法ギリギリの筋かい・構造用合板の量しか入っていない在来工法(軸組工法)は、必ずしも安全とはいえないケースがあります。

これは、建築基準法の壁量の考え方に起因するものです。

●建築基準法は、総2階を前提としている
建築基準法で定められた壁量は、建物が2階建ての場合、「総2階」を想定しています。

建物に平面上の凸凹が多かったり、1階と2階の面積が大きく異なったりする建物は、地震のとき、建物にかかる力が総2階の場合よりも大きくなる可能性があります。

そのため、総2階を前提とした壁量ギリギリでは、建物の条件によっては絶対的な壁量が不足する場合があるのです。

これを回避するためには、建物の形状によって設計時の壁量を割増するのが理想です。

実は、建築基準法で定められている壁量の規定というのは、あいまいな部分が多くなっています。
建物の形状による壁量の割増も、法律上必要ありません。

また、計算自体も鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)で行なわれているものと比較すると、ずっと簡単なものです。

壁量の計算だけだったら、私は小学生でもできると思います。
そのくらい、計算は簡単です。

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建築基準法ギリギリで建てられた在来工法(軸組工法)が必ずしも安全とはいえないワケ その2

2006年07月24日

●法律で定められている耐力壁以外が、地震の力の3分の1を負担

建物の形状だけでなく、壁量そのものにも注意しなくてはいけません。

Blog2006072401 地震の力を100とすると、法律で定められている筋かいや構造用合板の量は、地震の力の3分の2だけを負担するだけで良いとされていました。(現在の法律では、考え方が少し異なります)
つまり、筋交い(筋かい)や構造用合板は、地震の力の67%だけに耐えてくれれば良いということです。

では、残りの3分の1はどうするのでしょうか?

残りの3分の1は、雑壁が負担するとされています。

雑壁については次回

雑壁とは? 垂れ壁(垂壁)、腰壁

2006年07月28日

●雑壁とは?
今、あなたがいるお部屋にドアがあったら、その上を見てください。

ドアの上は大抵が壁になっているはずです。この壁を垂れ壁といいます。

また、窓がある場合、窓の下にも壁があると思います。
これを、腰壁(こしかべ)といいます。
(掃き出しの窓には、ありませんが・・・。)

これらの壁をまとめて、雑壁といいます。

●雑壁の扱い
鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)の場合、これらの雑壁は、構造計算では無視します。

構造計算上、無視するどころか、場合によってはこの雑壁があることによって地震時の被害が大きくなる可能性もあります。

そのため、木造以外では、「構造スリット」という溝を作って、柱と雑壁の縁を切ってしまうことも珍しくありません。

しかし在来工法(軸組構法)では、これらの雑壁も、地震に耐える壁として考慮しているのです。

これまでの研究や実験では、雑壁が地震の力の3分の1を負担するという考え方は、ほぼ妥当であるとされています。
一般的な間取りの場合、建築基準法で想定している雑壁の量を満たしているためです。

枠組壁工法(ツーバイフォー工法)のように、外側に構造用合板を張った場合、この雑壁の効果は3分の1よりもずっと大きいと言われており、建築基準法で想定している雑壁の量を上回るのが普通です。

雑壁の少ない建物は要注意

2006年07月31日

デザイナーズ住宅と言われる建物では、室内のドアに天井までの高さがあるような背の高いドアを多用したり、サッシの高さが非常に高いものが使われているケースがあり、間取りも開放的で間仕切り壁が少ないことがあります。

また、昔ながらの和風住宅では、和室の開口の上部に欄間(らんま)が設けられているケースもありますね。
欄間が入っているところは、すき間が大きいので、雑壁の効果は見込めないでしょう。

これらのケースでは、場合によっては雑壁の量が不足してしまう可能性もあります。
このような場合では、筋かいや構造用合板など、耐力壁の量を多めにしておくのが理想です。

壁量は、建築基準法の2割増以上が理想

2006年08月04日

木造に詳しい設計者であれば、壁量を建築基準法で定められた量に対して、2割増し以上にするのが暗黙のルールです。
これは、あいまいな部分が多い建築基準法の規定に対して、余裕を持つためです。

しかしながら、私が過去に耐震診断を行なった新築の建物において、壁量の余裕度が建築基準法に対して、1.04とか、1.06などのようにギリギリに設計されていることを幾度か目にしています。
あまり木造に詳しくない設計者が書いた図面だと思いますが、褒められたものではありません。

ちなみに、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)の場合には、建築基準法の1.5倍前後、壁量が確保されていることが一般的です。
2倍以上の壁量が確保されていることも珍しくありません。
逆に、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)において、壁量の余裕度が1.04や1.06というような低い物件は見たことがありません。

ツーバイフォー工法(枠組壁工法)の耐震性が高いのは、「壁工法だから」「6面体の構造だから」などと言われますが、私は、

 ・外周部の壁が強いこと
 ・石こうボードの強さをとても有効に利用していること
 ・誰が設計、施工しても安全になるよう、工法の仕様そのものが配慮されていること
 ・仕様作成時に、構造の裏付けをとっており、工学的判断があること

が挙げられると思います。

面材を張って、雑壁の効果を大幅にアップ

2006年09月01日

●簡単に耐震性を増すことが出来る方法
現在、新しい住まいを設計している段階、あるいは建売物件をご検討されている方で、耐震性が高い建物を求めている場合には、建物外周に、構造用合板やダイライトなどの面材(めんざい)が張ってあるかどうかを確認しましょう。

建物外周に構造用合板やダイライトなどの面材(めんざい)を張ると、それらは筋かいと同等(以上)の働きがあり、大幅に耐震性を高めることができます。

在来工法で建物外周に構造用合板を張った例
在来工法で建物外周に構造用合板を張った例

●面材を張って、雑壁の効果を大幅にアップ
建物外周に構造用合板などを張ることが有効なのは、これらが筋かいと同等(以上)の働きをするだけではなく、雑壁の強さと量が大きく増えることにも関係があります。

筋かいだけで耐震性を得ている建物では、窓の上や下の雑壁部分を外から見ると、空洞になっているだけです。空洞ですから、耐震性は得られません。
しかし、構造用合板などの面材を外から張ると、この部分でも耐震性を増すことができるのです。
小さな部分でもコツコツと耐震性を稼ぐことで、筋かいだけで耐震性を得ている建物と比べると、雑壁の効果を、2倍以上にすることもできます。

雑壁効果

面材を張って、屋根部分の強度もアップ

2006年09月04日

2階建ての建物を、筋かい(筋交い)だけで耐震性を得る場合、1階と2階の筋かいの量には、建築基準法上の決まりがあります。

しかし、2階から上の屋根部分には規定がありません。
そのため、屋根の強度に関しては、あいまいになっており、場合によっては強度が不足する場合もあります。

しかし、面材を張っている物件では、2階から屋根にかけても全て張ることが一般的ですから、この部分の強度も確保することができます。

2階から屋根部分
面材を張った場合には、2階~小屋裏の強度が確保できる。
しかし、筋かいのみの場合、2階~小屋裏の強度が不足することも。

断熱材の施工を考えると、筋かい(筋交い)は不利

2006年09月08日

木造の建物の場合、建物の外側には、筋かいが配置されることがありますが、筋かいがあると断熱材を入れるのが難しくなります。
とくに、Xの形で筋かいを2本入れる、たすき掛け筋かいの場合には、断熱材をしっかり入れるのはとても難しくなります。

筋交いがダブルで入っていると断熱材が入れにくい
筋かいがダブルで入っている例。
このような箇所があるとグラスウールのような断熱材はとても入れにくい。

セルロースファイバーや発泡ウレタンなど、隅々まで行き渡る断熱材を使っておらず、建物の外周部にたすき掛けの筋かいを複数配置する設計を行なっていたら、その業者さんの断熱に関する知識・技術は少ないと思っても良いでしょう。

セルロースファイバー
筋かいがダブルで入っていたとしても、
セルロースファイバーや発泡ウレタンであれば、隅々まで断熱材が行き渡る。

 

ツーバイは断熱施工が楽
ツーバイフォーの場合、もともと筋かいが無いので断熱材を入れやすい。
在来でも、外周部の筋かいを止めて、面材で強度を確保すれば同じ。

筋かいが入っている壁と全く入っていない壁。
どちらが断熱材を入れやすいかは、専門家でなくとも分かると思います。

「オマケ」の構造用合板が、必ずしも耐震性が高くならない理由

2006年09月11日

ときどき、

「筋交い(筋かい)だけで耐震性を確保して、さらに外側に構造用合板を張っているから、耐震性が高い!」

という設計者、業者さんがいますが、これは全てのケースで当てはまる訳ではありません。

これはナゼでしょうか。答えは、金物にあります。

●壁が強くなればなるほど、金物も強くなる
阪神淡路大震災以後、木造の研究が進み、その研究結果をもとに、2000年に建築基準法が変わりました。
具体的には、建設省告示第1460号(平成12年6月1日施行)がその規定です。

このときに大きく変わったのは軸組工法(在来工法)で、ホールダウン金物や各部の金物の使用が明確になり、金物の使用量も大幅に増えました。

金物の選定の時の基本的なルールとして、壁が強くなるほど、金物の強度も強くなります。

これは、自動車を改造するとき、エンジンを強いものに交換した時には、それに対応できるようにブレーキやタイヤなども、より強いものに交換する必要があるのと似ているでしょう。

これは、建物でも同じことなのです。

筋かいだけで耐震性を確保して、さらに構造用合板を張った場合には、設計の時よりも実際の壁が強くなります。
壁が強いと、金物も強くするのが基本的なルールなのですが、そこを計算に反映させないと、壁の強さに金物が負けてしまい、「もろい」壊れ方をする恐れがあります。

従って、構造用合板を張る場合には、その強度も含めないと、必ずしも安全とは言えないのです。

金物の計算(N値計算)では、壁の強さをしっかりと計算してもらおう。

2006年09月15日

金物の計算は専門的になりますので、一般的にはパソコンで行います。
この計算を「N値計算(えぬちけいさん)」といいます。

建物の外周に構造用合板を張るのであれば、N値計算のときにその強度もしっかりと計算に入れてもらいましょう。

ちなみに、N値計算はパソコンで行なうと、1秒もかかりません。本当に、あっという間に終わります。

N値計算が終わると、金物の位置を示した図面を作る事がほとんどです。これを一般的に「金物位置図」や「金物配置図」と呼ぶことが多いようです。