下の写真は、完成間近の一戸建て品質チェックの物件で撮影したもの。
さて、これは何でしょうか?
左側のものは、エアコンの室外機のようです。
そもそも、ブログのエントリータイトルでバレバレのような気もしますが、これは、三菱電機のエコヌクールという商品。
空気の熱でお湯をつくり、床暖房や床下暖房、パネルヒーターの熱源として使うものです。
原理は、普通のエアコンと全く同じ。
違うのは、エアコンは温かい風を室内に送るのに対し、エコヌクールは温水を送り出すということです。
システムの簡単な説明を。
まず、室外機によって、空気中の熱を奪って熱交換器に移動させます。
専門的になりますが、この時の冷媒は普通のエアコンと同じR410Aです。CO2冷媒ではありません。(用途的にCO2冷媒は不向き)
熱交換器は、写真にあるように発泡スチロールの中。
少しでも放熱ロスを少なくするために、断熱材に包まれている訳です。
熱交換器を通った温水は、下側に設けられている配管から出てきます。
専門的に言うと、配管の取り出しはR3/4。
架橋ポリであれば、20Aで取り出し。
配管の方式は、開放型と密閉型が選べますので、パネルヒーターもOK。
エコヌクールの標準では、今回のケースのように、熱交換器のすぐ下にヘッダーと熱動弁を配置します。
放熱ロスを1ワットでも減らしたい場合には、熱交換器をヘッダーごと建物の中に入れてしまえば、放熱ロスは 室外機 ←→ 熱交換機の配管部分のみとなります。
温水温度は最高で55℃です。
(エコヌクールピコのみ、60℃という設定があります。)
床暖房としては十分な温度。パネルヒーターにはやや低めの温度ですが、建物の断熱性能が出ていれば、大丈夫。
建築に関わっている人でもあまり知らない商品ですので、専門家向けにやや難しく書いていますが、結局何が凄いのか?
それは、ランニングコストです。
温水式の床暖房というと、ガスか?灯油か?などと言われますが、本質的な部分で言えば、「お湯が流れれば、熱源は何でもいい」のです。
だったら、ランニングコストは安いほど良いと思います。
ランニングコストは、都市ガスの約3分の1。灯油よりも安い
ランニングコストは、都市ガスの3分の1程度です。
今年は去年よりも灯油が安いですが、それよりもエコヌクールの方が安価です。
何も燃やさないので安全
エコヌクールは、都市ガスや灯油のように火を使うことがありません。
そのため、火災の危険はなく、温水の温度も55℃と比較的低温のため、安全です。
立ち上がりはどうなの?
床暖房といえば、よく言われるのが立ち上がりに必要な時間。
しかし、私はあまり気にしません。
そもそも、床暖房をメインの暖房とするのであれば、頻繁にオンオフするのではなく、ずっとつけっぱなしが理想。
「それだと暖房費が」
と思われるかも知れませんが、先に述べたようにランニングコストは、一般的な都市ガスと比べて3分の1程度。
逆に言えば、「同じコストでも3倍の時間、暖房できる」のです。
つまり、都市ガスの床暖房で8時間使う予定であれば、同じ費用で24時間暖房が可能となります。
24時間暖房となれば、立ち上がりの時間は関係ありません。
寒い地域ではどうなの?
氷点下25℃まで使えますので、北海道でも使えます。
ただし、効率は低下します。
上のグラフは、エコヌクールの技術資料によるものです。
ヒートポンプの特性上、外気温度が低下するほど能力が低下してしまいます。
しかし、日本の人口の約8割が住む次世代省エネルギー地域区分IV地域以南では、氷点下になる日は少ないのです。
建築地の外気温を調べ適切な機種を選ぶ他、建物の断熱性能を高めることで十分対処できる範囲だと思います。
また、あまり言われませんが、ヒートポンプ式の暖房能力は、外気温度が7℃のときの性能です。
7℃を上回る外気温度の場合、カタログ値よりも性能が高くなり、省エネ性が増します。
最近の気温のように、最低気温が10℃~20℃程度の場合には、効率がカタログよりも良くなっているはずです。
これは、外気温と燃料の単価に関係がない、灯油・ガスとの大きな違いかも知れません。
深夜電力を使った、蓄熱式床暖房と比べてどうなの?
深夜電力を使い、コンクリートに埋め込んだ電熱ヒーターを暖め、床暖房として使う蓄熱式床暖房というものがあります。
深夜電力を使うと、昼間の3分の1の電気代で済みますから、一般的にコストが安くなるとされます。
しかし、深夜が安くなる代わりに、昼間の電気代は高くなります。
(深夜電力は、発電所で深夜に電気を作ると 安くなるのではなく、単なる商売上の安値販売です。)
ヒートポンプを使った場合、深夜電力のように時間帯に関係なく、電気代は電気ヒーターなどの暖房と比べて、3分の1 ~ 4分の1になります。
深夜電力とヒートポンプを同時に使うと、電気代は9分の1程度になります。
ヒートポンプを使った「エコキュート」のランニングコストが、1ヵ月で1,000円程度とされるのは、この理由のためです。
ヒートポンプで暖房をする場合、時間帯に関係なく実質的な電気代が安くなりますので、深夜電力はあまり考えなくても良いのではないかと思います。
ヒートポンプの特性を考えれば、気温の下がる深夜よりも、あたたかい昼間に動かした方が効率は上がります。
実は、冷房にも使えます
エコヌクールはエアコンと同じ原理なので、冷水を作ることができ、技術的には冷房にも使えます。
ただし、普通の床暖房で冷房することは無理です。
部屋が冷えるほど床面を冷やすのは可能ですが、床面が結露してビショビショになってしまうからです。
床面が結露しないほどに冷やした場合、相対的に室内の湿度が上がってしまいますので、 快適とはいえないかも知れません。
冷房の可能性としてはパネルヒーターがありますが、結露水が出ますので、水の対策が必要です。
ヒートポンプの効率は、これからまだまだ上がる
エコジョーズと呼ばれるガスの高効率給湯器の効率は、90%ほど。
既に、エコジョーズの排気温度は50℃程度と低温になっていることや、ガスの燃焼の時には、ガスの持つエネルギーが光や音に変わってしまいますので、これ以上の効率アップは難しいでしょう。
ましてや、効率が100%を超えることはあり得ません。
これに対して、エコヌクールのようなヒートポンプ温水器の効率は、300%~400%程度。外気温が下がって悪くなったとしても、100%は軽く超えます。
温水用のヒートポンプの効率は、理論値では現在の2倍以上に高められますので、600%~800%のような、さらなる省エネ化が期待できます。
少なくとも、10年後の同様の機種は、現在よりも省エネになっています。
まだまだ、効率の向上によるコストの削減が見込めるのがヒートポンプ技術なのです。
ヒートポンプ式温水暖房のデメリットは何?
ヒートポンプ式温水暖房の一番の問題点は、「商品そのものが知られていないこと」かも知れません。
そもそも、建築の関係者でも、ヒートポンプの基本的原理を理解している人が少ないように思います。
この他、商品の製造元が少ないのがデメリットです。
結果として、競争原理が働かず、価格競争が起きにくいといえます。
ちなみに、楽天市場で調べてみると、エコヌクールの熱源機は、一式で30万円ほど。
現在、暖房用のヒートポンプ熱源を製造しているのは、私が知る限り以下の通りです。
・三菱電機 エコヌクール
・ダイキン ホッとエコフロア
・長府製作所 温水床暖房付きエアコン
この他、エコキュートに床暖房が付いているのもありますが、能力的には、エコヌクールやホッとエコフロアより小さくなります。
専門的になりますが、この中で密閉型の回路(循環液が空気に触れないためパネルヒーターが使える)を組めるのは、エコヌクールのみです。
原理はエアコンと一緒なのですから、現在、エアコンを製造している会社であれば、ヒートポンプ温水器も作れるはず。
もっと多くの会社が、参入して欲しいものです。個人的には、厳寒地でも強力なヒートポンプエアコンを作っている、日立や富士通ゼネラルに期待します。
長くなりましたが、このような商品が出ることで困るのはガス会社でしょう。
ガスの床暖房のメリットのほとんどは、単なる温水床暖房のメリットですので、お湯の温度が同じであれば、結果も同じです。
それでいてランニングコストが安くてオール電化にも出来るのですから、今後、ガス会社は厳しくなりそうです。
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