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QPEXを使って、建物の省エネと、暖房費の最適解を考えてみる

2008年08月27日

設計コンペの物件で、建物の省エネと暖房費の最適解を探すための1つの方法として、QPEXを使って建物性能と暖房費を計算してみました。

QPEXの入力画面はこんな感じ。

QPEX2.0入力画面

 

ざっくりとした建物の概要。業者からの提案レベル
延べ床面積:約150m2、平屋
天井断熱材:グラスウール16k 100mm厚
基礎断熱材:ポリスチレン 1種B 30mm厚
床断熱材 :ポリスチレン 1種B 30mm厚
壁面断熱材:グラスウール16k 100mm厚
換気方式 :第三種換気
サッシ  :全て木製。南面はアルゴンガス入りペア。他はLow-E高断熱ペア
暖房熱源 :三菱電機 ヒートポンプ式温水器 エコヌクールレオ
設定COP:2.0(もっと高いと思いますが、安全を見て)
暖房方式 :床下暖房+床暖房+一部パネルヒーター(予定)
電気代単価:24円/kWhとする
建築地  :軽井沢。次世代省エネ地域区分 I地域
暖房設定温度:22℃(アメダス計測地より標高が高いため、+2℃)

暖房は当初、LPガスという案もありましたが、ランニングコストが高すぎるために却下。氷点下25℃まで使える三菱電機 ヒートポンプ式温水器 エコヌクールレオを採用。

QPEXによる結果は以下の通り。(費用関係は独自)

Q値 総熱損失係数 年間暖房エネルギ 暖房用電気使用量 年間電気代 30年間の電気代
2.42 356.18[W/K] 16,335[kWh] 8,210[kWh] ¥197,040 ¥5,911,200

Q値2.42という性能は、東京であれば次世代省エネ基準達成ですが、軽井沢では無理です。軽井沢は札幌よりも寒いのですから。

 

建物の省エネや、どこに費用を投じるべきかを考えるためには、Q値だけでは不十分で、部位別の熱損失を知る必要があります。

中学校などの中間テストで5科目あった場合、どの教科を重点的に勉強すれば、トータルの点数が良くなるかを考えるのと似ています。 


今回の場合、部位別の熱損失は以下のようになりました。

建物の、熱の逃げる割合(部位別)

今回の物件、開口率が約40%と広め。(一般住宅は20~30%程度)
そのため窓から逃げる熱の量が多いかと思いましたが、高性能な木製サッシのため、思ったほどではありませんでした。
足を引っ張っているのは、30mmと薄い床下や、天井の断熱材などです。

 

これを元に、建物の断熱・省エネの強化と、それによって削減できる費用を計算してみます。
以下はその結果ですが、いずれも削減されたエネルギー量や費用を示しています。

削減されるエネルギー量と、電気代

ちなみに、これを全て実行すると、Q値は 1.58程度になり、年間126,000円、30年間では、約400万円のランニングコスト削減になります。20年間だとしても、約250万円の暖房コスト削減です。

今回、ランニングコストの安い、ヒートポンプ式温水器の採用としていますが、リッター90円を超えた灯油や、もともと単価が高いLPガスを使っていたら、さらにコスト削減額は大きくなります。

 

上記項目の中で、最もコストパフォーマンスが高いのは、床の断熱材変更でしょう。もともとの厚みが薄かったため、暖房費削減効果が高いです。
また、断熱材の価格も高価なものではないので、採用しやすいと言えます。

採用に設計上の配慮が必要なのは、熱交換付きの換気装置でしょう。
システムの価格としては、ランニングコストを考えれば元が取れます。
東京のような温暖地では、熱交換装置を入れてもコスト回収は難しいですが、寒冷地ならではです。

 

壁の断熱材にウレタンを提案しているのは、気密性を高めるためです。気密性が低いと暖房費が余計にかかってしまいます。
別にウレタンでなくても、施工が良くて、気密性能さえ出れば、セルロースでも、グラスウールでも、ロックウールでも全くかまいません。

 

今回の場合、サッシ周りに当初から良いものが使われているため、サッシやガラスの仕様ではあまり性能を上げられません。
性能を上げられるとしたら、ハニカムサーモスクリーンが良く知られている、断熱スクリーンの採用です。これは、ロールスクリーンに、断熱性を持たせた商品です。

今回の試算でも効果は高いですが、意匠性との兼ね合いになります。

 

今回、30年でのコスト削減額が400万円となりましたが、上記項目を全て実行したとしても、そんなにかからないでしょう。お金がかかるサッシ周りには、良いものが入っていますし、建物の省エネ性が進むことで、暖房装置そのものを減らすこともできるからです。

 

長くなりましたが、建物の省エネを考えるとき、やみくもにお金を投じても、それが良い結果になるかは分かりません。
まずは現状を把握し、どこを強化すべきか、お金を投じるべきか考えることが必要でしょう。

それにしても、こういう計算をしていると、建築や省エネって面白いなぁ と思います。寒い地域だと、効果が大きいためなおさら。


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