※真夏なのに、暖房のお話です。
かなり長文ですので、気合を入れるか、飛ばしてください。
先日、福島から「一戸建て 設計図面・見積りチェック」をご利用されたご依頼者がみえました。
サービスご依頼の理由は、私のこのブログをご覧になったからだそうです。
その記事は、「床下暖房」のものでした。
ブログには床下暖房についてあまり詳しく書いておらず、恐縮ですが・・・。
サービスのご利用、ありがとうございました。
「一戸建て 設計図面・見積りチェック」をご利用された物件には、深夜電力でお湯を作り、そのお湯で床暖房やパネルヒーターを使用するエナーテック(株)の電気温水蓄熱器システムが検討されていました。
お湯を作る方法はエコキュートのようなヒートポンプではなく、ヒーターを使った(いわゆる)電気温水器。
決定的にエコキュートと違うのはその貯湯量。
2,000 ~ 2,700リットルと大きなもので、検討されていたタイプは2,700リットルのもの。
一般的なエコキュートの貯湯量が360~470リットルですから、エコキュートのタンクが 6台くらいあることになります。
「一戸建て 設計図面・見積りチェック」の中で問題になったのは、暖房に使うための温水の蓄熱量でした。
タンクの中には、90℃の温水が2,700リットル(2.7m3)入ります。
カタログの中で、床暖房などには35~40℃の温水を利用とありましたので、温水の温度差は50℃ほど。
蓄熱量の求め方
蓄熱量は、以下の式で求めることが出来ます。
蓄熱量 = 密度 × 体積 × 比熱 × 温度差
今回の場合、
| 蓄熱量 | = | 1000[kg/m3] × 2.7[m3] ×1.0[kcal/kg℃] × (90℃-40℃) |
| = | 135,000[kcal] | |
| = | 157 [kWh] |
となります。
問題がこの蓄熱量。
今回の電気温水器は、5時間通電タイプですので、残り19時間をこの蓄熱量でまかなうことになります。
すると、1時間当たりの放熱量は単純計算で、157[kWh] ÷ 19時間 = 8.2kW
一般的な広さの物件であれば、十分な放熱量です。
しかし、物件規模が大きいことと、最低気温が低いことから、ギリギリ足りない程度の蓄熱量だということが分かりました。(建物の断熱仕様は特に悪くありません。)
タンクの2,700リットルのお湯が、昼間の放熱で40℃まで下がってしまうと、夜にお風呂に入る際、温度がやや低めです。
これ以上タンクは大きく出来ないので、建物の断熱性能を上げるか、他の熱源を検討することになりました。
余談ですが、5時間通電の夜間蓄熱式タイプは、割引額が大きくなります。
今回の2,700リットルタイプの場合、月々 8,000円程度の割引となります。
この割引は年間を通じてですので、ランニングコストは有利です。
床暖房対応のエコキュートは?
ここで、ふと思ったのが、床暖房対応のエコキュート。
一部のエコキュートで採用されており、夜に作ったお湯を使って床暖房するというもの。
タンクの容量が6倍でも厳しいのですから、当然、普通のエコキュートも厳しくなります。
エコキュートのタンク容量を大きめである470リットルとすると、蓄熱量は約27[kWh](90℃保温の、40℃利用の場合)
エコキュートは8時間通電ですから、放熱時間は 16時間。
1時間当たりの放熱量はわずか1.7[kW]と、最も小型のエアコンよりも暖房能力が低く、コタツ2台分くらいにしかなりません。
実際、このような床暖房対応エコキュートの暖房部分の熱交換装置は、2kW程度しかないようです。蓄熱量を考えると適切な能力です。
そのため、昼間に床暖房を多く使うと、タンクの中の温水温度が低くなるのは明らかで、早ければ昼過ぎくらいに追い炊きになるでしょう。
追い炊きになると、深夜電力のメリットを受けられなくなります。
しかし、深夜電力のメリットを受けられないとしても、ヒートポンプ技術の恩恵は受けられますので、電気ヒーター式の床暖房と比べるとランニングコストは安価です。
北海道では、床暖房だけでなく、パネルヒーターにも対応している、暖房・給湯一体型のエコキュートが6月に発表されています。
これは、昼間にも室外機が動くことを前提にしています。
暖房給湯一体型 「湯快暖快エコキュート」
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2008/06/0611.html
蓄熱式の暖房を考える
蓄熱量は、
蓄熱量 = 密度 × 体積 × 比熱 × 温度差
で決まると先に書きました。
蓄熱暖房では、この項目のいずれかに重きをおいています。
電気温水蓄熱器はどうか
これまでに書いた、エナーテック(株)のシステムでは、水の大きな比熱を生かしています。
水は、物質の中では比熱が大きく、コンクリートの4倍程度あります。
比熱と、大きなタンクによって、蓄熱量を増やそうという考えです。
しかし、その大きなタンクのため、地価が高い都市部での設置は困難です。
最も小さい2,000リットルタイプでも、1畳ほどの面積を占めてしまいます。
幅は90cm程度ですが、都市部では隣地まで50cm程度ですので、なかなか難しいでしょう。
蓄熱式床暖房はどうか
コンクリートのスラブに蓄熱させる、蓄熱式の床暖房があります。
コンクリートの中に温水が通る配管を通したり、ヒーターを埋め込んだりするものです。
これは密度と体積にポイントを置いています。コンクリートであれば、基礎部分に10m3以上の体積があるのが普通です。
10m3も蓄熱体として確保できるのは、一般住宅では基礎コンクリートくらいでしょう。
しかし、温度差を大きくすることが出来ないのがデメリット。
せいぜい、蓄熱時の温度は40℃以下でしょう。温度差という点で足を引っ張られます。
そのため、トータルの蓄熱量としては、一戸建てではそれほど大きくできません。
例えばコンクリート床スラブの厚みを一般的なベタ基礎よりも厚い 200mm、床面積を 45m2、スラブの温度を35℃(室内は20℃)とすると、蓄熱量は76[kWh]ほど。
先の、2,700リットルタンクを持つ電気温水蓄熱器の蓄熱量は157 [kWh]ですから、半分以下です。
コンクリートが蓄熱できるといっても、比熱と温度差が小さいために、一戸建ての基礎程度では思ったより蓄熱できないものですね。
電気蓄熱式暖房機(蓄熱暖房機)はどうか
クレダ、アルディ、ユニデール、スティーベルが有名な、レンガに蓄熱させる電気蓄熱暖房機では、温度差にポイントを置いています。
レンガの温度は、700℃近くになってしまうのですから。
これは、体積が大きいと、場所を取ってしまうからという理由もあります。
小さくしたとしても、蓄熱式暖房機は、200kgを超えることは普通で、かなり重たいです。
しかし、700℃とは高温です。
火がついたタバコくらいの温度で、木材の発火温度のずっと上です。
蓄熱し終わった早朝に大きな地震が起きた場合、蓄熱式暖房機が倒れてしまうと、火災になる恐れがあるといえます。
電気蓄熱式暖房は、電気の最も「下手」な使い方。環境負荷大。
これまで、いろいろと蓄熱式暖房について書いてきました。
ここで皆さんに知っていただきたいことがあります。
実はこれまでに書いてきた、深夜電力を使った電気温水蓄熱器、蓄熱式床暖房、電気蓄熱式暖房機は、環境の面からはお奨めできません。
なぜなら、電気ヒーター式の熱源というのは、電気の最も非効率で「下手」な使い方だからです。
石油から電気を作った場合、家庭に届くエネルギーはその3割ほどです。
電気をそのまま熱に変えると、効率は石油が当初持っていたエネルギーの3割を切ってしまいます。
だったら、石油を自宅でそのまま使った方が、3倍以上効率的です。
このように、コンピューターを動かしたり、電子レンジを使ったり、洗濯機を回したりできる電気を、単純に熱に変えて使うのは、最も下手な使い方です。
深夜電力の利用 = 原子力の利用
深夜電力は昼間の3分の1の料金で済みます。
これは、夜に電気を作ると電力会社で働いている人が少ないから安い・・・という訳ではなく、原子力発電は能力調整が出来ないため、その分を安く売っているに過ぎません。
つまり、深夜電力を使っている人というのは、原子力発電の電気を使っている人です。
原子力発電に反対であれば、深夜電力は使わないべきです。
電気でしか使えない、ヒートポンプ技術を使おう
深夜電力の割引と電気蓄熱式の効率の悪さを例えるなら、燃費の悪い大排気量の自動車に、ガソリン割引券を使ってガソリンを入れているようなものです。
ガソリン割引券の割引率が悪くなってしまえば、当然ながらランニングコストは増えます。
今後のエネルギー情勢によって、深夜電力の料金割引が大きく減ってしまった場合、最も困るのは深夜電力を使った電気蓄熱式暖房を採用した人でしょう。
効率の悪い電気の使い方をしていますので、料金が高くなったときに、一番損をしてしまいます。
電気蓄熱式の暖房の場合、ヒートポンプ技術を使えば、環境負荷はずっと小さくなります。
ヒートポンプ技術を使うと、投入したエネルギーの数倍のエネルギーが得られるからです。
例えば暖房の場合、石油をそのまま燃やすよりも、石油を電気に変えてその電気でヒートポンプを動かします。
すると、発電の際に燃やした灯油が持っていたエネルギー以上の温かさが得られます。
電気温水蓄熱器は、ヒートポンプ技術に簡単に置き換えられます。
単に、エコキュートのタンクを大きくすれば良いだけですから。
業務用のエコキュートでは、3,000リットルタンクから、500リットルタンクで増やすことができ、置き場所の問題さえクリアできれば今でも使えます。
もし、深夜電力の割引が少なくなったとしても、ヒートポンプ技術によって電気代はヒーター式の3分の1以下でしょう。
コンクリートスラブを温水で暖める方式の、蓄熱式床暖房もヒートポンプに置き換えられます。
温水をヒートポンプで作れば良いだけです。ヒーター式の床暖房は置き換えられません。
レンガに蓄熱させる、電気蓄熱式暖房はヒートポンプ技術に置き換えられません。
700℃まで、ヒートポンプでは温度を上げられないからです。
一般的なヒートポンプの熱交換機部分にはアルミが使われますが、700℃はアルミの融点以上で解けてしまいますので使えません。
今後の蓄熱暖房
蓄熱は、熱容量を実際に計算すると、なかなか難しいことが分かります。
蓄熱で問題となるのは、どの方法でも蓄熱させる材料です。
潜熱が使える材料を取り入れることで、蓄熱体の体積は減らせると思います。
深夜電力による電気代3分の1が狙いたいのであれば、ヒートポンプでCOP=3の機種を使っても結果は一緒です。
今後の蓄熱暖房を、より効率的で、環境負荷を小さく考えるのであれば、ヒートポンプは欠かせないでしょう。
最近では、氷点下25℃の地域でも使えるヒートポンプなど、寒い地域でもヒートポンプが使えますので、新商品には注意していかなくてはなりませんね。
↓ランキングに参加中。このブログは今何位?
にほんブログ村


