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なかなか難しい「蓄熱暖房」。エコキュートの床暖房や、クレダ、アルディ(白山製作所)、ユニデール、スティーベルほか

2008年08月04日

※真夏なのに、暖房のお話です。
かなり長文ですので、気合を入れるか、飛ばしてください。


先日、福島から「一戸建て 設計図面・見積りチェック」をご利用されたご依頼者がみえました。
サービスご依頼の理由は、私のこのブログをご覧になったからだそうです。

 

その記事は、「床下暖房」のものでした。
ブログには床下暖房についてあまり詳しく書いておらず、恐縮ですが・・・。
サービスのご利用、ありがとうございました。


一戸建て 設計図面・見積りチェック」をご利用された物件には、深夜電力でお湯を作り、そのお湯で床暖房やパネルヒーターを使用するエナーテック(株)の電気温水蓄熱器システムが検討されていました。

お湯を作る方法はエコキュートのようなヒートポンプではなく、ヒーターを使った(いわゆる)電気温水器。
決定的にエコキュートと違うのはその貯湯量。
2,000 ~ 2,700リットルと大きなもので、検討されていたタイプは2,700リットルのもの。
一般的なエコキュートの貯湯量が360~470リットルですから、エコキュートのタンクが 6台くらいあることになります。


一戸建て 設計図面・見積りチェック」の中で問題になったのは、暖房に使うための温水の蓄熱量でした。

タンクの中には、90℃の温水が2,700リットル(2.7m3)入ります。
カタログの中で、床暖房などには35~40℃の温水を利用とありましたので、温水の温度差は50℃ほど。

 

蓄熱量の求め方

蓄熱量は、以下の式で求めることが出来ます。

蓄熱量 = 密度 × 体積 × 比熱 × 温度差

今回の場合、

蓄熱量 1000[kg/m3] × 2.7[m3] ×1.0[kcal/kg℃] × (90℃-40℃)
  135,000[kcal]
  157 [kWh]

となります。

問題がこの蓄熱量。


今回の電気温水器は、5時間通電タイプですので、残り19時間をこの蓄熱量でまかなうことになります。

すると、1時間当たりの放熱量は単純計算で、157[kWh] ÷ 19時間 = 8.2kW
一般的な広さの物件であれば、十分な放熱量です。

しかし、物件規模が大きいことと、最低気温が低いことから、ギリギリ足りない程度の蓄熱量だということが分かりました。(建物の断熱仕様は特に悪くありません。)
タンクの2,700リットルのお湯が、昼間の放熱で40℃まで下がってしまうと、夜にお風呂に入る際、温度がやや低めです。
これ以上タンクは大きく出来ないので、建物の断熱性能を上げるか、他の熱源を検討することになりました。

 

余談ですが、5時間通電の夜間蓄熱式タイプは、割引額が大きくなります。
今回の2,700リットルタイプの場合、月々 8,000円程度の割引となります。
この割引は年間を通じてですので、ランニングコストは有利です。

 

床暖房対応のエコキュートは?

ここで、ふと思ったのが、床暖房対応のエコキュート。
一部のエコキュートで採用されており、夜に作ったお湯を使って床暖房するというもの。

タンクの容量が6倍でも厳しいのですから、当然、普通のエコキュートも厳しくなります。

エコキュートのタンク容量を大きめである470リットルとすると、蓄熱量は約27[kWh](90℃保温の、40℃利用の場合)
エコキュートは8時間通電ですから、放熱時間は 16時間。
1時間当たりの放熱量はわずか1.7[kW]と、最も小型のエアコンよりも暖房能力が低く、コタツ2台分くらいにしかなりません。
実際、このような床暖房対応エコキュートの暖房部分の熱交換装置は、2kW程度しかないようです。蓄熱量を考えると適切な能力です。

そのため、昼間に床暖房を多く使うと、タンクの中の温水温度が低くなるのは明らかで、早ければ昼過ぎくらいに追い炊きになるでしょう。
追い炊きになると、深夜電力のメリットを受けられなくなります。

しかし、深夜電力のメリットを受けられないとしても、ヒートポンプ技術の恩恵は受けられますので、電気ヒーター式の床暖房と比べるとランニングコストは安価です。

北海道では、床暖房だけでなく、パネルヒーターにも対応している、暖房・給湯一体型のエコキュートが6月に発表されています。
これは、昼間にも室外機が動くことを前提にしています。

暖房給湯一体型 「湯快暖快エコキュート」
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2008/06/0611.html

 

蓄熱式の暖房を考える

蓄熱量は、
蓄熱量 = 密度 × 体積 × 比熱 × 温度差

で決まると先に書きました。

蓄熱暖房では、この項目のいずれかに重きをおいています。

 

電気温水蓄熱器はどうか

これまでに書いた、エナーテック(株)のシステムでは、水の大きな比熱を生かしています。
水は、物質の中では比熱が大きく、コンクリートの4倍程度あります。
比熱と、大きなタンクによって、蓄熱量を増やそうという考えです。

しかし、その大きなタンクのため、地価が高い都市部での設置は困難です。
最も小さい2,000リットルタイプでも、1畳ほどの面積を占めてしまいます。
幅は90cm程度ですが、都市部では隣地まで50cm程度ですので、なかなか難しいでしょう。

 

蓄熱式床暖房はどうか

コンクリートのスラブに蓄熱させる、蓄熱式の床暖房があります。
コンクリートの中に温水が通る配管を通したり、ヒーターを埋め込んだりするものです。

これは密度と体積にポイントを置いています。コンクリートであれば、基礎部分に10m3以上の体積があるのが普通です。
10m3も蓄熱体として確保できるのは、一般住宅では基礎コンクリートくらいでしょう。

しかし、温度差を大きくすることが出来ないのがデメリット。
せいぜい、蓄熱時の温度は40℃以下でしょう。温度差という点で足を引っ張られます。
そのため、トータルの蓄熱量としては、一戸建てではそれほど大きくできません。


例えばコンクリート床スラブの厚みを一般的なベタ基礎よりも厚い 200mm、床面積を 45m2、スラブの温度を35℃(室内は20℃)とすると、蓄熱量は76[kWh]ほど。
先の、2,700リットルタンクを持つ電気温水蓄熱器の蓄熱量は157 [kWh]ですから、半分以下です。
コンクリートが蓄熱できるといっても、比熱と温度差が小さいために、一戸建ての基礎程度では思ったより蓄熱できないものですね。

 

電気蓄熱式暖房機(蓄熱暖房機)はどうか

クレダ、アルディ、ユニデール、スティーベルが有名な、レンガに蓄熱させる電気蓄熱暖房機では、温度差にポイントを置いています。
レンガの温度は、700℃近くになってしまうのですから。
これは、体積が大きいと、場所を取ってしまうからという理由もあります。
小さくしたとしても、蓄熱式暖房機は、200kgを超えることは普通で、かなり重たいです。

しかし、700℃とは高温です。
火がついたタバコくらいの温度で、木材の発火温度のずっと上です。
蓄熱し終わった早朝に大きな地震が起きた場合、蓄熱式暖房機が倒れてしまうと、火災になる恐れがあるといえます。

 

電気蓄熱式暖房は、電気の最も「下手」な使い方。環境負荷大。

これまで、いろいろと蓄熱式暖房について書いてきました。

ここで皆さんに知っていただきたいことがあります。
実はこれまでに書いてきた、深夜電力を使った電気温水蓄熱器、蓄熱式床暖房、電気蓄熱式暖房機は、環境の面からはお奨めできません。
なぜなら、電気ヒーター式の熱源というのは、電気の最も非効率で「下手」な使い方だからです。

石油から電気を作った場合、家庭に届くエネルギーはその3割ほどです。
電気をそのまま熱に変えると、効率は石油が当初持っていたエネルギーの3割を切ってしまいます。
だったら、石油を自宅でそのまま使った方が、3倍以上効率的です。
このように、コンピューターを動かしたり、電子レンジを使ったり、洗濯機を回したりできる電気を、単純に熱に変えて使うのは、最も下手な使い方です。

 

深夜電力の利用 = 原子力の利用

深夜電力は昼間の3分の1の料金で済みます。
これは、夜に電気を作ると電力会社で働いている人が少ないから安い・・・という訳ではなく、原子力発電は能力調整が出来ないため、その分を安く売っているに過ぎません。

つまり、深夜電力を使っている人というのは、原子力発電の電気を使っている人です。
原子力発電に反対であれば、深夜電力は使わないべきです。

 

電気でしか使えない、ヒートポンプ技術を使おう

深夜電力の割引と電気蓄熱式の効率の悪さを例えるなら、燃費の悪い大排気量の自動車に、ガソリン割引券を使ってガソリンを入れているようなものです。
ガソリン割引券の割引率が悪くなってしまえば、当然ながらランニングコストは増えます。

今後のエネルギー情勢によって、深夜電力の料金割引が大きく減ってしまった場合、最も困るのは深夜電力を使った電気蓄熱式暖房を採用した人でしょう。
効率の悪い電気の使い方をしていますので、料金が高くなったときに、一番損をしてしまいます。


電気蓄熱式の暖房の場合、ヒートポンプ技術を使えば、環境負荷はずっと小さくなります。
ヒートポンプ技術を使うと、投入したエネルギーの数倍のエネルギーが得られるからです。
例えば暖房の場合、石油をそのまま燃やすよりも、石油を電気に変えてその電気でヒートポンプを動かします。
すると、発電の際に燃やした灯油が持っていたエネルギー以上の温かさが得られます。


電気温水蓄熱器は、ヒートポンプ技術に簡単に置き換えられます。
単に、エコキュートのタンクを大きくすれば良いだけですから。

業務用のエコキュートでは、3,000リットルタンクから、500リットルタンクで増やすことができ、置き場所の問題さえクリアできれば今でも使えます。
もし、深夜電力の割引が少なくなったとしても、ヒートポンプ技術によって電気代はヒーター式の3分の1以下でしょう。

コンクリートスラブを温水で暖める方式の、蓄熱式床暖房もヒートポンプに置き換えられます。
温水をヒートポンプで作れば良いだけです。ヒーター式の床暖房は置き換えられません。

レンガに蓄熱させる、電気蓄熱式暖房はヒートポンプ技術に置き換えられません。
700℃まで、ヒートポンプでは温度を上げられないからです。
一般的なヒートポンプの熱交換機部分にはアルミが使われますが、700℃はアルミの融点以上で解けてしまいますので使えません。

 

今後の蓄熱暖房

蓄熱は、熱容量を実際に計算すると、なかなか難しいことが分かります。
蓄熱で問題となるのは、どの方法でも蓄熱させる材料です。
潜熱が使える材料を取り入れることで、蓄熱体の体積は減らせると思います。

深夜電力による電気代3分の1が狙いたいのであれば、ヒートポンプでCOP=3の機種を使っても結果は一緒です。
今後の蓄熱暖房を、より効率的で、環境負荷を小さく考えるのであれば、ヒートポンプは欠かせないでしょう。

最近では、氷点下25℃の地域でも使えるヒートポンプなど、寒い地域でもヒートポンプが使えますので、新商品には注意していかなくてはなりませんね。

Googleのストリートビューが凄い

2008年08月06日

昨日公開された、Googleのストリートビューが凄いです。

Google Mapで目的地を検索した後、画面右上にある「ストリートビュー」を押すと、目線の高さからの風景が分かります。

さくら事務所が入っているビルを通りの向かいから見ると、こんな感じです。(さくら事務所は、黒いビルの3階と4階になります。)


上の画像は、上下・左右にドラッグできます。

過去の一戸建て品質チェックご依頼者の物件を見てみると、既に引渡し済みの物件が工事中になっていました。撮影時期は冬頃でしょうか。

賛否両論を呼びそうなサービスですが、写真撮影は大変だったでしょうね。(車で撮影したそうです)

ビデオ編集中

2008年08月16日
動画の編集

8年ぶりくらいにやってみた、ビデオの編集。

 

単に切り貼りするだけなら時間はかかりませんが、テロップを入れると編集にかなり時間がかかります。

ちょっと寒そうな、富岡八幡宮例大祭

2008年08月17日

少し肌寒いくらいの、今日の茅場町。
お昼の時点で、事務所のバルコニーに置いている温度計は24℃ほど。

そんな中、事務所の近くでは、冨岡八幡宮例大祭が、にぎやかに行なわれていました。

バケツを持った人が、神輿に水を、バシャーっと。
ホースも使って水を撒いていました。

富岡八幡宮例大祭 富岡八幡宮例大祭

これを見てると、寒そう・・・。
昨日くらいの暑さだったら、涼しくて気持ちよかったのでしょうが、見ていてそう思いました。

高校野球

2008年08月18日

北京オリンピックが行われている中、高校野球が終わりました。
決勝戦は、かなりの大差でしたね。

私の従兄弟が出ていたチームは、1回戦は勝てたものの、2回戦で敗退。
試合終了後、従兄弟が泣いているところが、テレビで写っていました。

従兄弟はまだ2年生。来年、また甲子園に行けたら、応援しに行きます!

 

野球ネタ1
小さい頃、「アウトコースの球」というのは、打者が打ったら凡打になってアウトが取れるコースのことだと思っていました。
「だったら、ずっとアウトコースに投げればいいのに」と。

 

野球ネタ2
今から7年前。私の友人の携帯電話に、当時プロ3年目だった松坂大輔選手が、横浜高校の校歌付きのメロディメールを誤って送信してきました。
どうやら、高校時代の友達に送るはずったメールのアドレスを間違えてしまったようです。
メールに書いてあった電話番号に電話すると、松坂大輔選手本人が出たそう。
電話に出た感じは、とても礼儀正しかったということです。

賃貸・店舗併用住宅、満室御礼

2008年08月24日

さくら事務所の設計コンペによって施工業者さんを決めた物件へ、一戸建て品質チェックの最終報告に行きました。
物件は住居部分に加え、店舗と、2フロア×3住戸=6つのワンルーム併用になっています。

 

物件に到着すると、引越し屋さんらしき人たちが、大きな冷蔵庫を運んでいました。

 

物件は、7月下旬に引渡し。
入居者募集の結果、お盆頃には全ての住戸が埋まってしまったそうです。
駅から徒歩5分程度という条件もありますが、1部屋が10坪程度とやや広めの設計のため、入居が決まりやすかったのだとか。

 

設計コンペの段階では、1フロア当たり1部屋多いプランを提案された業者さんも居ました。しかし、窮屈感は否めず、広々としたプランを提案された今回の業者さんに決まった経緯があります。

 

よくあるように、「賃貸だから」といって建物のグレードを落としているということは全くなく、外壁やサッシ、断熱、耐震などの仕様は注文住宅と一緒。(制震装置まで入っています)


将来、賃貸の需要が変わった場合には、2住戸を1つにしたり、あるいは3住戸を1つにまとめて、広い住戸とする可変性もあります。
工事中においても、配筋段階からチェックしていますので、欠陥住宅の心配も無いでしょう。

 

将来に渡って、競争力のある物件だと思いますので、後は建物を長く使えるよう、計画的なメンテナンスをお願いします!

熱損失係数(Q値)・暖房エネルギー計算プログラムの、QPEX Ver2.0が届きました。

2008年08月25日

少し前にバージョンアップしたのは知っていたのですが、熱損失係数(Q値)・暖房エネルギー計算プログラムの、QPEX Ver2.0をようやく買いました。


新住協 熱損失係数・暖房エネルギー計算プログラム QPEX これは、室蘭工業大学 建築システム工学科 鎌田研究室が開発したプログラムで、新住協というNPO法人が売っています。
省エネ住宅の技術開発で有名な団体です。

ただし、首都圏周辺の工務店や設計事務所は全くといっていいほど加入していません。それほど断熱に興味が無い、わかっていないことの裏づけでしょう。
(数多い断熱系のフランチャイズに加盟するより、新住協の方がずっと安価で、高い技術が得られるように思いますが)

NPO法人 新木造住宅技術研究協議会
QPEX Ver2.0ができました
 http://www.shinjukyo.gr.jp/qpex3.html

ちなみに、QPEXの開発を行った鎌田紀彦教授のことを、「断熱の神様」と呼ぶ人もいます。
私も以前、鎌田教授による講習を受けにつくばまで行ったことがありますが、 実務にあれだけ詳しい先生も珍しいと思います。


QPEXですが、これまで私はVer1.0を使っていました。
Ver2.0になって基礎断熱のバリエーションが増えたり、暖房費を求める気象地点が増えたり、外貼り断熱、付加断熱に対応したりしています。

 

熱損失係数(Q値)や暖房負荷を求めるプログラムは他に、(財)建築環境・省エネルギー機構 IBECのSMASHや、気密測定装置で知られているコーナー札幌の、省エネ判断というソフトがあります。


プログラムの価格ですが、SMASHは30万円ほど。
省エネ判断は10万円程度ではなかったかと思います。

これに対して、QPEX Ver2.0はわずか 5,000円。
QPEX Ver1.0の時は2,000円でしたが、それでもかなり安い!
専門家でなく、一般の方が自分の家の性能を知るためにも、十分に手が届く価格です。
5,000円というお金は、断熱や暖房計画を煮詰めることで、すぐに回収できてしまうでしょうからね。 

 

本日、設計コンペで決まった軽井沢の物件の打ち合わせに行きましたが、暖房計画が多めに入っていたり、断熱厚を増すことでランニングコストを下げられる箇所がたくさん見つかりました。
私の立場としては、暖房設備の計画でコストダウンして、その分だけ建物の省エネ性を高めるよう、進めなければなりません。

 

早速、QPEXで建物の断熱性能を把握し、暖房費と建築費との兼ね合いを調整することになりそうです。

(結論を言ってしまえば、軽井沢のようなとても寒い地域では、建物の省エネ性を高めるのが、暖房設備的にも、建築費+ランニングコストのトータルでも、最も安価になると思います。)

QPEXを使って、建物の省エネと、暖房費の最適解を考えてみる

2008年08月27日

設計コンペの物件で、建物の省エネと暖房費の最適解を探すための1つの方法として、QPEXを使って建物性能と暖房費を計算してみました。

QPEXの入力画面はこんな感じ。

QPEX2.0入力画面

 

ざっくりとした建物の概要。業者からの提案レベル
延べ床面積:約150m2、平屋
天井断熱材:グラスウール16k 100mm厚
基礎断熱材:ポリスチレン 1種B 30mm厚
床断熱材 :ポリスチレン 1種B 30mm厚
壁面断熱材:グラスウール16k 100mm厚
換気方式 :第三種換気
サッシ  :全て木製。南面はアルゴンガス入りペア。他はLow-E高断熱ペア
暖房熱源 :三菱電機 ヒートポンプ式温水器 エコヌクールレオ
設定COP:2.0(もっと高いと思いますが、安全を見て)
暖房方式 :床下暖房+床暖房+一部パネルヒーター(予定)
電気代単価:24円/kWhとする
建築地  :軽井沢。次世代省エネ地域区分 I地域
暖房設定温度:22℃(アメダス計測地より標高が高いため、+2℃)

暖房は当初、LPガスという案もありましたが、ランニングコストが高すぎるために却下。氷点下25℃まで使える三菱電機 ヒートポンプ式温水器 エコヌクールレオを採用。

QPEXによる結果は以下の通り。(費用関係は独自)

Q値 総熱損失係数 年間暖房エネルギ 暖房用電気使用量 年間電気代 30年間の電気代
2.42 356.18[W/K] 16,335[kWh] 8,210[kWh] ¥197,040 ¥5,911,200

Q値2.42という性能は、東京であれば次世代省エネ基準達成ですが、軽井沢では無理です。軽井沢は札幌よりも寒いのですから。

 

建物の省エネや、どこに費用を投じるべきかを考えるためには、Q値だけでは不十分で、部位別の熱損失を知る必要があります。

中学校などの中間テストで5科目あった場合、どの教科を重点的に勉強すれば、トータルの点数が良くなるかを考えるのと似ています。 


今回の場合、部位別の熱損失は以下のようになりました。

建物の、熱の逃げる割合(部位別)

今回の物件、開口率が約40%と広め。(一般住宅は20~30%程度)
そのため窓から逃げる熱の量が多いかと思いましたが、高性能な木製サッシのため、思ったほどではありませんでした。
足を引っ張っているのは、30mmと薄い床下や、天井の断熱材などです。

 

これを元に、建物の断熱・省エネの強化と、それによって削減できる費用を計算してみます。
以下はその結果ですが、いずれも削減されたエネルギー量や費用を示しています。

削減されるエネルギー量と、電気代

ちなみに、これを全て実行すると、Q値は 1.58程度になり、年間126,000円、30年間では、約400万円のランニングコスト削減になります。20年間だとしても、約250万円の暖房コスト削減です。

今回、ランニングコストの安い、ヒートポンプ式温水器の採用としていますが、リッター90円を超えた灯油や、もともと単価が高いLPガスを使っていたら、さらにコスト削減額は大きくなります。

 

上記項目の中で、最もコストパフォーマンスが高いのは、床の断熱材変更でしょう。もともとの厚みが薄かったため、暖房費削減効果が高いです。
また、断熱材の価格も高価なものではないので、採用しやすいと言えます。

採用に設計上の配慮が必要なのは、熱交換付きの換気装置でしょう。
システムの価格としては、ランニングコストを考えれば元が取れます。
東京のような温暖地では、熱交換装置を入れてもコスト回収は難しいですが、寒冷地ならではです。

 

壁の断熱材にウレタンを提案しているのは、気密性を高めるためです。気密性が低いと暖房費が余計にかかってしまいます。
別にウレタンでなくても、施工が良くて、気密性能さえ出れば、セルロースでも、グラスウールでも、ロックウールでも全くかまいません。

 

今回の場合、サッシ周りに当初から良いものが使われているため、サッシやガラスの仕様ではあまり性能を上げられません。
性能を上げられるとしたら、ハニカムサーモスクリーンが良く知られている、断熱スクリーンの採用です。これは、ロールスクリーンに、断熱性を持たせた商品です。

今回の試算でも効果は高いですが、意匠性との兼ね合いになります。

 

今回、30年でのコスト削減額が400万円となりましたが、上記項目を全て実行したとしても、そんなにかからないでしょう。お金がかかるサッシ周りには、良いものが入っていますし、建物の省エネ性が進むことで、暖房装置そのものを減らすこともできるからです。

 

長くなりましたが、建物の省エネを考えるとき、やみくもにお金を投じても、それが良い結果になるかは分かりません。
まずは現状を把握し、どこを強化すべきか、お金を投じるべきか考えることが必要でしょう。

それにしても、こういう計算をしていると、建築や省エネって面白いなぁ と思います。寒い地域だと、効果が大きいためなおさら。

南面のガラスは、Low-Eガラスでない方が省エネ?

2008年08月28日

昨日の物件に引き続き、QPEXで新たに2棟のQ値を計算。

物件のガラスは、南面をアルゴンガス入りのペアガラスにしてあります。
その他はLow-Eペアガラス。

少し知識のある人なら、「Low-Eを入れたほうがいいんじゃないの?」と思うかも知れません。


しかし、太陽の日射を期待できる地域であれば、南面にはLow-Eガラスを入れない方が、省エネになることがあります。

例えば今回、南面のガラス面積は、約27平方メートルで南面は傾斜の空き地。
物件の詳細は省きますが、南面をアルゴンガス入りのペアガラスにした場合、年間灯油消費量は、1,134リットルでした。


このガラスを、Low-Eペアガラスに変えると、年間灯油消費量は、1,254リットルへと、120リットル増えてしまいます。
1リットル90円とすると、10,800円くらいの差額。

日射取得だけを考えれば、アルゴンガスではなく、普通のペアガラスでも結果は大きく変わりません。
アルゴンガス入りにしているのは、1度あたたまった熱を、外に逃がしにくくするためです。より断熱性を高めるためには、アルゴンガスではなく、クリプトンガスという方法もありますが、まだまだ少数派です。

 

ただし、このような仕様にする前提条件として、南面の庇が十分な長さ出ていること!
庇が出ていないままだと、夏の冷房費が増えてしまいます。

理想の庇の長さは、サッシの高さの 0.3~0.4倍程度。
つまり、2.0mのサッシの場合には、60cm~80cm必要ということです。
首都圏近郊では、なかなか難しい長さですね。

今回の場合、サッシは2.4m程度ありますが、1mの庇が出ているので、長さは大丈夫。



昔の建物の庇が長いのは、夏の日差しを遮りつつ、冬の日差しを取り入れる先人の知恵ですが、今日では庇は軽視されている感じがします。
コストダウンのために、軒や庇ゼロ設計が珍しくないですから。

軒や庇の長さについては、昔の建物よりも今の建物の方が退化しているような・・・。

このままいくと、欠陥住宅、その3

2008年08月29日

中野区で、工事着工前の打ち合わせ。

当初の予定では、既に基礎工事が終わっている段階でした。
しかし、基礎工事に取り掛かると、地中から前の住宅のガラや基礎が出てきたため、2mも掘り下げて撤去し、工事は遅れ気味。

打ち合わせが終わり、駐車場に向かっている途中、建て方がほぼ終わっている木造在来工法の物件があったので、道路から見てみると、そこには問題のある施工がたくさん。

柱の下にアンカーボルトが


これが、最初に目に飛び込んできた問題点。
柱の下にアンカーボルトが位置してます。
ドリルで柱の下に穴を開けていますから、大工さん、確実に分かっていますよね?
設計者は、基礎伏図と1階床伏図の照合をしていないのでは?

 

土台継手の上にアンカーボルト無し

土台継手の上には、アンカーボルト無し。
ここだけじゃなく、道路から見た範囲でも、複数の箇所にありました。
設計者や管理者が基礎伏図と土台伏図の照合を十分に行っていないと想像できます。

 

柱の直下に基礎パッキンなし

柱の下に基礎パッキンがありません。
大工さん、他にもいくつか忘れていますよ。

アンカーボルトを締めずに建て方

一番驚いたのがこれ。
この現場、アンカーボルトが1本も締まっていませんでした。

普通は、柱や梁を載せる前に締め込むのですが、アンカーボルトが締まっていないと、木材は基礎の上に単に乗っているだけです。
建て方の最中に地震があったら、大きな事故になりそうです。

 

物件は、設計事務所による設計・監理+建設会社という組み合わせ。
事務所に戻って検索すると、建設会社の人材募集のページが出てきて、募集職種:建設現場の管理、応募資格:不問になっていました。
できれば、有資格者か経験者で募集して欲しいですが、小さな工務店には珍しくないことです。

 

設計・監理者を調べると、構造や温熱環境ではなく、意匠関連について何冊か書籍を出している方のようです。
意匠にこだわる前に、まずは安全な住まいとなる設計・監理をして欲しいものです。

このような現場を見ると、意匠重視の「ケンチクカ」と呼ばれる方は、どうも苦手意識が強くなります。
完成までに、しっかりと是正されていることを期待します。

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