ホームインスペクション (住宅診断・住宅検査・建物調査・建物診断)に関するエントリーです。
以前のエントリーで書いた、壁量に余裕の無い建売の木造住宅において、新たな問題が見つかってしまいました。
まずは物件についての簡単な説明ですが、上から見た形は、このような長細いものでした。
今回の場合、X方向が長くなっています。
余談ですが、木造で方向を表記するとき、桁行・梁間と言う場合があります。昔の建物は、桁行・梁間が明確ですが、最近の木造住宅では梁の天端がフラットであり、上下を昔ほど考えないことや、正方形に近い建物の場合、桁行と梁間がよくわかりません。
「現場での混乱を防ぐため、XとYで表記すべきだ」というのは、私の知っている木造に詳しい構造設計者の言葉ですが、その通りだと思います。
話がずれました。
建物の構造を考えるとき、風と地震に対して、耐力壁を入れるということを以前のエントリーで書きました。
この物件の壁量計算書では、風に対して必要な耐力壁の量の根拠となる、見付面積(簡単に言うと、外壁の面積)は以下のようになっていました。
この計算自体は特に問題ありません。
建物が長いX方向の見付面積が大きくなっており、短辺のY方向の面積が小さくなっています。
問題はここから。
前回のエントリーにも貼った、壁量の算定画像です。
これで分かった方は、建築の設計関係の方でしょうか。
数字が並んでいて分かりにくいかも知れませんが、中身を見てみます。
表の、1F(Y)のLdは、22.34。これは、建物に入っているY方向の耐力壁の長さが22.34mということです。
これに対し、1F(Y)のLnは、15.84。これは、Y方向において、風に耐えるために必要な壁の長さを示しています。
上の方に貼っている、「風圧力に対する所要壁量(Ln)」のうち、Y方向の1F部分を見てみると、同じ15.84という数字があります。
Y方向の耐力壁の量を検討するために、Y方向の見付面積・・・、ではマズいのです!
なぜなら、風に対しては、見付面積と直交する方向が、必要な耐力壁の量になるためです。図で示します。
このように、建物の長い方の面(X方向の見付面積)に、風が当たる場合、それに対抗するのは、Y方向の耐力壁となります。イラストでは、赤い筋かいで示しているのが、Y方向の耐力壁です。
外壁の見付面積を正しい方向に直して、壁量を計算しなおすと、このようになります。
赤字は、建築基準法を満たしていないことを示しています。
1階、2階ともに建築基準法を満たせなくなってしまいました。
このままでは、台風のような強風の際に、建物が倒れてしまうかもしれません。
物件は完成済み・・・。
建築基準法を満たすためには、耐力壁の量を1.5倍程度にしなければなりません。
室内の壁を剥がすなど、大規模な修繕が必要になると思います。耐力壁を強くすることにより、基礎コンクリートがらみの金物の追加が必要になるとやっかいです。
今回のケースは建売物件(分譲物件)ですが、ご依頼者が「壁量計算書」を入手したことで分かりました。
壁量計算書は、2階建て木造住宅で作成する必要があるものですが、現在のところ、「提出の義務がありません」
これは、4号特例と呼ばれる、特例のためです。
新築の建売物件を検討されている方は、契約・購入前に、最低限プレカット図や、壁量計算書をもらっておきましょう。ひょっとしたら、今回のように間違っていることがあるかも知れません。


