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省エネ住宅の王道とは? 桜ハウス玉川

2008年05月31日

今日は午後から設計コンペ
参加のハウスメーカーによる、1回目のご提案です。

その後、既に施工業者決定済みの、設計コンペ打ち合せ。
決定したプランは、そのコンセプトがしっかりとしていました。
また、そのプランは、建築工事が敷地環境に与える影響が最も小さなものだと思います。

打ち合せの内容は、設備に関してです。
冬季には、最低気温がマイナス10℃前後となり、年間の暖房負荷が東京の 3倍以上となる場所に建てられるこの物件。
冬季の配管類の凍結対策だけでなく、暖房方式やランニングコストも重要な課題。

熱源の候補は、プロパンガス、灯油、電気の3つ。
建物規模が大きいため、建物の断熱性能を一般的なものと仮定し、熱源にプロパンガスを選択すると、年間の暖房費が100万円を超えてしまいます。最近価格が上がっている灯油でも、同じ程度かかってしまいます。

暖房のランニングコストを減らす方法は以下の 2つ

 1. 建物の省エネルギー性を高める
 2. 燃料単価の安いエネルギーを使う

当初の設計案では、建物の省エネルギー性が弱かったので、もう少し断熱性を上げる必要があります。

燃料単価の安いエネルギー源としては、ヒートポンプを使った方法があります。(参考:熱源の単価

しかし、東京近郊で使われている一般的なエアコンは、外気が氷点下になるような地域では、効率がかなり悪くなってしまいます。そのため、今回の建築場所で、これをメイン暖房とする訳にはいきません。

寒い地域で、ヒートポンプ式の熱源を使うためには、厳寒地対応のヒートポンプを使うか、地中熱のように冬季でも氷点下にならないものを熱源とする方法があると思います。

北海道には、氷点下マイナス 18℃まで対応の外気熱利用のヒートポンプ熱源+深夜電力という、分かる人が見ればかなり魅力的な商品がありますが、本州には出回っていないようです。(参考:北海道のヒートポンプ暖房スティーベル。西方設計さん

この商品が広く普及すると、深夜電力利用の蓄熱式暖房機の魅力はさっぱり無くなってしまうかも知れません。ランニング費用が蓄熱式暖房機の3分の1から4分の1になりますから。

他の熱源の場合には年額100万以上の暖房費がかかる可能性があるのであれば、この商品の初期投資額にもよりますが、すぐに回収出来る可能性があります。

本州で手に入る同様の商品としては、ダイキンのホッとエコフロアや、三菱電気のエコヌクールでしょうか。
これなら氷点下20℃~25℃まで使えますが、深夜電力前提ではありませんので、温水のタンクがありません。6.7kWという能力は、今回の場合やや力不足。建物性能を上げるか、装置を複数台取り付けるか。


地中熱とは、その名の通り地面の中にある熱です。
建築地の凍結深度は、60cmということですので、それより深い地面であれば、冬季にも地面の温度が氷点下になることはないでしょう。ここに、配管を通して地面と熱交換するのです。
海外で採用のケースが多く、Googleで 「geo heat pump」と検索すればイメージがたくさん出てきます。

ちなみに、地中熱を利用するためにはヒートポンプは不可欠です。「地熱があったかい」といっても、せいぜい15℃程度です。
「ベタ基礎+基礎断熱にしただけで、地熱利用であったかい」などといっている業者もいますが、熱量的にそれは無理。
地下数メートル下にある15℃の熱源では、室内が20℃以上になることはありません。

地中熱を利用するためには、穴を数十メートル掘ってその中に配管を通すか、地面を水平に掘って配管を通すかの2種類があります。
地面を掘るとお金がかかるので、敷地条件や工事による掘削を利用して水平に掘りたいのですが、何メートル通せば何度の熱が得られるかなどのデータが手元に無く、検討が付きません。


長野県茅野市に、「桜ハウス玉川」という介護施設があります。
省エネに詳しい方の中では、現在とても有名な建物です。

それはなぜか?
現在、日本で最も断熱性に優れた建物だからです。

壁の断熱材は300mm、屋根は400mmで、建物のQ値は 0.6W/m2k程度だとされています。関東の次世代省エネ基準の、4倍以上の省エネ性。
この高い断熱性により、寒い茅野市においても冷暖房費が激減。
空調の費用は同規模の建物の10分の1程度である約38万円。

建物の断熱性を高めるためにかかった費用は約2700万円。
しかし、暖房設備が不要なため、実質的には 1500万円のコストアップ。

これに対して、年間の冷暖房費が300万円ほど削減出来ているそうですから、たったの5年でコストが回収出来てしまいます。
それ以後は、年間300万円ほど、見えないコストとしてプラスになります。灯油やガスなどのコストが上がれば上がるほど、プラスの金額は多くなります。この建物の建築を実行した方はエライ!

この超省エネ住宅を提案されたのは、設計者ではなく介護施設を運営する会社。
設計側からの提案だとした場合、かなりやり手だと思いました。この業界、省エネに関して頭の固い人が多いですから。

介護会社の専務さんは、建築の出身ではなく、半導体関係の出身。とても柔軟な発想ですね。

桜ハウス玉川については、鵜野さんのブログが詳しいです。興味のある方はぜひ。

  1. 日本のパッシブハウスの嚆矢「桜ハウス玉川」訪問記(上)
  2. パッシブハウスの嚆矢「桜ハウス玉川」訪問記(中)
  3. パッシブハウスの嚆矢「桜ハウス玉川」訪問記 (下)
  4. 「エコタウン信州茅野」を全部木構造でやったら?


桜ハウス玉川の例を見ると、省エネ住宅の王道は、やはり建物そのものの断熱だということがよく分かります。
快適性向上のための設備といっても、建物そのものの性能が良ければ、その設備そのものが要らないのですから。省エネのためにといって、建物性能を上げないまま、太陽光発電を載せてみたり、コストの合わないガスコージェネを入れてみたりというのは、邪道に感じてしまいます。

設計コンペの物件も、さらに断熱性を強化できれば、暖房計画もラクになるのですが、どの性能までを目指すか。
初期費用とランニングコストと回収期間の兼ね合いでしょうね。


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