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一戸建てってどうよ?

2008年05月01日

NPO法人 住宅情報ネットワークが運営する、一戸建てってどうよ?関西版で、コラムを書くことになりました。

一戸建てってどうよ?関西版
 http://www.1-douyo.jp

 現在、以下の 2本のコラムが掲載されています。

 ●構造計算って何だろう? 壁量計算とのちがい
  http://www.1-douyo.jp/script/column_view.php?id=8&c=1


 ●壁の中の断熱材やサッシは、何年ごとに取り替えますか?
  http://www.1-douyo.jp/script/column_view.php?id=7&c=1

 今後、月 2回のペースで掲載予定。

構造計算って何だろう? 壁量計算とのちがい

2008年05月07日

2005年の構造計算書偽造問題では、「構造計算」という言葉がニュースでよく使われていました。構造計算とは、荷物や雪の重さ、地震や台風などの力に対して、建物が安全かどうかを確認するために行われるものです。

鉄筋コンクリートや鉄骨の建物では、当然のように行われている「構造計算」ですが、実は、着工棟数が圧倒的に多い木造の2階建てや平屋建てでは「構造計算」は行われていません。
それでは、どのようにして木造2階建ては安全性を確認しているのでしょうか。


●木造2階建てで一般的に行われているのは、壁量計算

建築知識2008年5月号
建築の専門書(建築知識2008年5月号)における、壁量計算の取り扱いの例。
木造2階建てでは、構造計算よりもはるかに簡単な、壁量計算(かべりょうけいさん、へきりょうけいさん)という方法が使われています。

これは、建物の床面積と外壁の面積から、地震や風の力に耐えるために必要な壁の量を求め、実際に設計する建物がその壁の量を満たしているかどうか、判断するものです。

計算そのものは本当に簡単で、私は小学生でも解ける程度の難易度だと思います。
建築の専門書の特集において、「5分でスラスラ」できるとされているほど、壁量計算は簡単です。
計算の量としては、A3用紙1~2枚程度のものです。


●構造計算とは、許容応力度計算のこと
一般的な構造計算は、専門的には「許容応力度等計算」と言います。
壁量計算は簡易的な計算ですので、建築の専門家は、壁量計算構造計算とは呼びません構造計算と呼べるのは、「許容応力度等計算」や、それ以上の細かな計算方法になります。

許容応力度計算は、壁量計算に比べて計算量が圧倒的に多くなり、内容も難しくなります。
木造2階建ての規模でも、A4用紙100枚以上になることは珍しくありません。

計算量が多くなることから、建物の状態をより詳細に知ることが出来ます。
例えば、壁量計算では、それぞれの柱が負担している重さは分かりませんが、構造計算許容応力度計算では正確に分かります。
また、構造計算許容応力度計算)では、床のたわみの量や、地震のときにどの程度柱が傾くかなども正確に求めることが出来ます。

構造計算書の例 許容応力度等計算の例
2階建て木造住宅の構造計算書の例。その枚数は多く、内容も詳細。
一見、数字の羅列で、専門性が高いものです。

●壁量計算と構造計算を、ぶどうの品質チェックに例えると
壁量計算構造計算を、果物のぶどうの品質チェックに例えると、壁量計算は、皿に載せたブドウを少し離れたところから目視でチェックする程度でしょう。ぶどうの実の奥に問題があったとしても、慣れていない人には分かりませんし、それぞれの実の品質も細かくは分かりません。

これに対して構造計算(許容応力度計算)では、ぶどうの実を1つ1つ手にとって、それぞれに問題が無いか確認していく程度の、詳細なチェックになります。
チェックに時間はかかりますが、全てを詳しく調べることが出来ますので、あいまいな部分が無くなります。

実際、構造計算(許容応力度計算)では、柱や梁、土台や金物の1つ1つまで、全て安全を確認していきます。
これに対して壁量計算は壁だけの計算です。
柱や梁は計算にさえ含まれませんので、壁量計算ではそれらの安全性の検討はできません。


●最近、2階建てでも、自主的に構造計算をする会社が増えています。
ここ最近、日々のインスペクションの現場で、変化が起きています。

法律では義務付けられていない木造2階建てにおいても、自主的に構造計算を行っている会社が増えているのです。

以前は、金物工法を使っている一部の会社のみ、構造計算を標準としていました。
しかし最近では、そうでない会社でも構造計算を標準としている所が増えてきました。
この傾向は、構造計算書偽造問題が起きた後に顕著になりました。
建物の安全性をより詳細に知るという点で、これは大変喜ばしいことだと思います。

増えたといっても、木造2階建てで構造計算が行われているのは、全着工棟数の1%にも満たない程度ではないかと思います。


●構造計算の費用は20万円前後が一般的。
 より安心のため、2階建てでも構造計算を
木造であっても、構造計算のためには専門的な知識が必要です。
建築士の資格を持っているからといって、全ての建築士が構造計算できる訳ではありません。むしろ、構造計算できない建築士の方が多いと思います。

一般的に構造計算は、構造設計事務所で行います。
木造2階建ての場合、費用は20万円前後が多いのではないでしょうか。

費用と時間はかかるものの、貴方の手元に届けられる構造計算書は、一般的な壁量計算の書類と比べて、はるかに枚数が多く、詳細なものです。
将来のメンテナンスやリフォームにも、きっと役に立つでしょう。そして、建物の安心感も、ずっと高いものとなるでしょう。


●どんなとき、木造2階建てでも構造計算を行った方がいいの?
木造2階建てでも構造計算(許容応力度計算)を行うのが良いか判断に迷うことがあると思います。

この判断のためにはまず、壁量計算が有効となるための以下の前提条件を知っておく必要があります。

 1. 平面の形に極端な凹凸がないこと
 2. 耐力壁がつりあい良く配置されていること
 3. 2階の床や小屋梁の面が水平面として十分に強いこと
 4. 大きな吹き抜けや階段が設けられていないこと
 5. 屋根の勾配が極端に急ではないこと

杉山英男著 地震と木造建築 p260より一部抜粋・編集

壁量計算は、この前提条件から成り立っています。(この前提条件を知らない建築士も多数居ます)

その前提条件から外れる場合には、構造計算(許容応力度計算)を行うのが良いでしょう。
特に、建物形状が複雑な場合や大きな吹き抜けがある場合、壁量計算を満たすだけでは安全性が確保できないことが多く、要注意です。

この他には、1階が鉄筋コンクリート造、2階以上が木造などの「混構造」においても、構造計算するのが理想です。


●私の理想は、木造においても、全棟構造計算
私としては、建物の形や吹き抜けの大小に限らず、全ての木造住宅において、構造計算を行って欲しいと思っています。

さくら事務所の設計コンペで、構造計算を義務付けているのは、この思いからです。

同じ敷地、同じ間取り、同じ階数で建物を建てる場合でも、鉄筋コンクリート造や鉄骨造で建てる場合には詳細な構造計算を行います。
しかし、木造で建てる場合だけ簡易的な計算で済んでいることは、間違った状態であると思うためです。

建物のより高い安全性を求める声や、平面図や見積りと連動した構造計算ソフトが出てきたことから、将来的に構造計算が行われる割合は、増えることはあっても減ることは無いでしょう。

今後、進んでいる業者さんが構造計算を標準としていくのは、間違いありません。

恩師の退職記念祝賀会

2008年05月12日

土曜日は、午前中の打合せを終えた後、学生時代の恩師である鈴木祥之先生の退職記念祝賀会のため、京都へ。

会場である京都大学百周年時計台記念館に到着すると、最初は記念の講演会。
これまでの鈴木先生の研究の歴史や、最新の研究が分かりました。

鈴木先生は、阪神淡路大震災を契機として木造関係の研究を行われており、現在では伝統建築の研究者として有名です。
少なくとも、伝統建築を学ぶ人で知らない人はいません。
木造の世界で鈴木先生は 2人みえるため、私たちは祥之先生と呼んでいました。

私が先生の下で学ばせて頂いたのは、1999年~2001年の 3年間。
そのため、それ以前の先生の研究についてはあまり知りませんでしたが、阪神淡路大震災より前の研究は、とても難解でした。
建築というより、数学者のような分野です。私の頭では理解出来そうにありません。

記念講演会の後は祝賀会。会場は、まるで同窓会のよう。
先生方や、先輩後輩、技官さんに、実験を手伝って下さった職人さんなど、懐かしい人達にたくさん会いました。

緊急地震速報システムを支える人」で書いた後輩にも会いました。
先日の、緊急地震速報が遅れたというニュースについて聞いてみると、今、解析をしている最中だとか。
非常に優秀な彼女ですから、何とかしてくれるでしょう。

伝統建築の実大振動実験 学生時代に研究で一緒だったある先生とお話した際、
「あの頃の実験が、一番楽しかったね」
と言われました。
確かに楽しかったです。実験は大変で、私は今よりも体重が10kgほど少なかったですが。

私が関わった1999年の実験は、伝統木造の振動実験として日本初。
当時は現在と違って、伝統工法の耐震メカニズムが分かっていなかった段階。

計測の方法については、手探りの状態で、試行錯誤しながら行っていました。
実験のノウハウを身に付けるに伴い、初年度は63箇所だった計測箇所は、2年後に約 3倍になっていました。(ちなみに、当初の63箇所の計測箇所というのは、当時の計測システムの最大チャンネル数であった64チャンネルに予備を1つ持たせただけのギリギリの数です。)
それぞれの計測器からは、1秒間に100個のデータが取得されますので、トータルのデータ数は膨大になります。
鈴木先生は、実験方法や計測方法がとても巧みで、他の研究者が行っている振動実験と比べても、実験そのものが上手いと思います。

伝統建築の振動実験 計測の様子
振動実験の計測器の様子。測りたい箇所が増える度に、計測器は増えるばかり。
計測器の選び方や、測り方もノウハウの1つ。

木構造の研究者というのは全国的にとても少なく、大学の建築学科においても教える人が居ないという理由から、木構造のカリキュラムが無いということは珍しくありません。
木造の建物が多く、古い伝統建築がたくさんある日本ですが、木造の研究というのは細々と行われているのが現状で、とても狭い世界です。

京都には、伝統建築がたくさんありますが、鈴木先生の退職により、京都の大学には木構造の研究者が居なくなってしまいました。
今後は滋賀の立命館大学で研究を続けるということです。学生で、木造の勉強がしたい人は、立命館に行くのがいいかも知れません(?)

長くなりましたが、鈴木先生の下で木造を学ぶことが出来たのは、私にとって大きな財産です。
鈴木先生が伝統木造の研究を行っていなかったら、日本の伝統木造はまだまだ分からないところばかりで、伝統建築の耐震改修もすることが出来なかったことでしょう。
日々の建物のチェックでも、先生に誉められるような調査を目指すばかりです。

PS
行きも帰りも新幹線はN700系でしたが、違いはよく分かりませんでした。
普段から乗っていないからなのか、鈍感だからなのか。

一戸建てってどうよ? 更新しました。

2008年05月14日

一戸建てってどうよ? のコラムを更新しました。

 住まいの省エネ(断熱)が強制ではない唯一の先進国、日本

このコラムの掲載システム、どうも使いづらい・・・。

写真と、画像加工とオススメのブログ

2008年05月20日

新しいサービスの紹介のため、初代 Canon EOS Kiss Digitalで、電話を撮影。

撮影した写真を縮小しただけではこんな感じ。

撮影した写真

特に映えない写真。
手タレが居なかったので、左手で受話器、右手はカメラです。写真に動きを出すため、スローシャッター+左手で受話器を速取り。

ちなみにこの写真の撮影のために受話器を取ったとき、本当の電話が鳴って、通話状態になってしまいました。(電話の向こうは大久保さんでした)

画像加工ソフトを使って、明るさを調整し、サービス名を入れ、着信している感じを出すため、赤いランプの1つを緑色に変更。
完成後はこんな感じ。

完成写真

さくら事務所内の画像で私が撮ったものは、大抵、写真いじってます・・。

さて、 写真といえば私が毎日チェックしているブログがあります。
日本人ですが、スウェーデンで家具職人をされている方です。
サイトの運営者と面識は全く無く、どのようにこのブログにたどり着いたのか覚えていませんが、写真が綺麗なのが素敵です。
子供に、こんなたくさんの綺麗な写真が残せたらいいですね。

ストックホルムの空を見上げて
 http://www.ikuru.net/blog/index.html

過去のエントリーには、写真加工のノウハウも書かれています。
http://www.ikuru.net/blog/archives/2008/03/post_655.html

このような写真を見ると、「やっぱり、RAWモードだよなぁ。」と思ってはいるものの、JPEGでしか撮影していない手抜きな私。

こちらのブログの方が、スウェーデンで家具職人になるまでの本がもうすぐ出るようですので、ぜひ買いたいと思っています。

スウェーデンで家具職人になる!
 http://www.ikuru.net/blog/archives/2008/05/post_697.html

基礎パッキンの位置の管理

2008年05月24日

先日、品質チェックの、土台敷き前の現場で撮影した写真。

基礎パッキンの位置の管理 何やら、現場監督さんが基礎の天端に印を付けています。
それが、この写真。(ちょっと分かりにくいかも知れません)
赤い四角の印が何かと思ったら、これは基礎パッキンの位置を示したものでした。
アンカーボルトの下や、荷重がかかる箇所に印がしてあります。

大工さんは、この指示に従って基礎パッキンを配置していくだけで、不足が無くなるという訳です。
こちらの現場監督さん、いろいろ細かく気を使われている感じがあり、とてもいい感じです。
竣工まで、無事に終わりますように。

CASBEE すまい[戸建]

2008年05月27日

CASBEE すまい[戸建て]の講習会に行ってきました。
CASBEEの概要については、オフィシャルサイトを。

CASBEEの概要 - (財)建築環境・省エネルギー機構
 http://www.ibec.or.jp/CASBEE/about_cas.htm

CASBEE すまい[戸建] CASBEEの評価に関する項目について、次世代省エネ基準の評点が高かったり、照明の省エネ基準の項目が無かったり、立地の項目が無かったりという、疑問点などはあります。
しかし、この評価法を作るのは大変だったと思います。

複数の専門家が入っていることもあり、項目の検討や評価の方法、点数の割合など、かなり話し合われたのではないでしょうか。

以前、雑誌の取材協力で、大手ハウスメーカー向けのアンケートの内容を作成したことがありますが、その時も大変でした。
ある項目を入れるべきか入れないべきか、その際の点数の重み付けをどこにするかなど。どれだけ十分に考えたとしても、一定の性能分けをするためには、どこかで区切る必要がありますが、その区切りに関する考え方は人によって違いますので、意見が出て当然だと思います。

さて、このCASBEE すまい[戸建]の評価項目ですが、住宅性能表示制度の区分けや、自立循環型住宅への設計ガイドラインの区分けが使われている箇所があります。
ちなみに、この2つ制度の区分けの中には、次世代省エネ基準の項目があります。

つまり、CASBEE すまい[戸建]の省エネ関係の評価項目を実際に入力するための参考資料には、以下の3冊が必要になると思います。

住宅の省エネルギー基準の解説 木造住宅のための住宅性能表示制度 自立循環型住宅への設計ガイドライン
住宅の省エネルギー基準の解説 木造住宅のための住宅性能表示制度 自立循環型住宅への設計ガイドライン

講師の話では、CASBEEのテキスト内にこれら参考資料のページを入れなかったのは、本が厚くなってしまうからと話されていました。
確かに納得です。この4冊のページ数を合わせたら、1,500ページくらいになってしまいますので・・・。

講習ですが、個人的には面白かったので、眠らずに全部聞いてました。(当たり前?)

しかし、省エネ住宅の設計の実務を学ぶ目的であれば、CASBEEよりも自立循環型住宅への設計ガイドラインの方が面白いと思います。

合板の釘のめり込み、釘の種類の間違い

2008年05月30日

投資用の建売アパートで、構造検査へ。
現場は、筋かいや金物などが取り付けられ、屋根を葺いている段階でした。

建物は1.5階がある、ちょっと特殊な形状のため、金物の取り付け位置が分かりづらくなっています。そのため、金物位置図に頼らず、構造計算書を元にして金物を確認します。

確認の結果、金物の取りつけ忘れが5箇所。いずれも、1.5階の柱頭に取り付けられるはずの金物が、1階に取り付いているというもの。大工さんも、「こっち(1.5階)だったか」と言っています。
わざわざ取り付けられている金物を外すのは面倒なので、新たに金物を追加して頂きました。これはすぐに是正。

その他、1階と2階を繋ぐホールダウン金物で、ちょっと無理やり取り付けている箇所。こちらも、金物で是正することに。

釘のめり込み 建物外周で、耐力壁となっている位置の合板を見てみると、ちょっとめり込みが多すぎる。
ちょっとと言うか、かなりです。外周部の合板でここまでめり込んでいる施工は久しぶりに見ました。
9mm厚の合板は、めり込みによって実質2mmくらいになっていそうです。
釘のめりこみ量が多く、実質的な合板の厚みが薄いと、地震の時に釘の頭が合板を貫通する、「パンチングシア」という、比較的もろい壊れ方になります。
書類をファイルに綴じる時、2つ穴パンチによって穴を空けることがあると思います。その時、書類の枚数が多ければ、書類を引っ張っても穴が切れてしまうことはありません。
しかし、書類が数枚だった場合、書類を引っ張ればファイルの所が破れて取れてしまいますよね。理屈はこれと同じです。

パンチングシアを防ぐためにも、釘のめり込みは最小限にしなくてはいけません。

これらのめり込みの箇所は、この釘を無いものとして、全て打ち増しすることに。

その後で確認された、今回のチェックで最も大きな間違いが、床の合板と屋根の合板を留める釘の種類の間違い。このブログでも何度か書いている、N釘とNC釘の間違いです。

参考: 釘の間違い  N釘とNC釘。釘を知らない大工さんが多いという現状

この物件は、構造計算がされています。
構造計算の前提において、釘の種類にNC釘を使うことは、普通ありません。最低でもN釘になります。

構造検査には、設計者も立ち会われていますが、「しまったぁ~。(施工者に)言っておいたはずなのになぁ」としょんぼり。

推定で、床と屋根の合板、面積約 200m2において、8,000本弱の釘を打ち増しすることに。2名が工事中だった屋根も、ストップ。
現在、約6割が終わっている屋根は、屋根材を全て取り外して釘の打ち増しになります。

幸い、施工業者さんの対応は素早く、謙虚で助かります。
今回の物件は、現場のチェックによって構造部分の問題が是正されますが、これまで引き渡してきた物件は・・・、と考えると少し心配になりました。

オマケ
昨日、このブログが昨年8月の開始より、20万ページビューを超えました。ありがとうございます。

省エネ住宅の王道とは? 桜ハウス玉川

2008年05月31日

今日は午後から設計コンペ
参加のハウスメーカーによる、1回目のご提案です。

その後、既に施工業者決定済みの、設計コンペ打ち合せ。
決定したプランは、そのコンセプトがしっかりとしていました。
また、そのプランは、建築工事が敷地環境に与える影響が最も小さなものだと思います。

打ち合せの内容は、設備に関してです。
冬季には、最低気温がマイナス10℃前後となり、年間の暖房負荷が東京の 3倍以上となる場所に建てられるこの物件。
冬季の配管類の凍結対策だけでなく、暖房方式やランニングコストも重要な課題。

熱源の候補は、プロパンガス、灯油、電気の3つ。
建物規模が大きいため、建物の断熱性能を一般的なものと仮定し、熱源にプロパンガスを選択すると、年間の暖房費が100万円を超えてしまいます。最近価格が上がっている灯油でも、同じ程度かかってしまいます。

暖房のランニングコストを減らす方法は以下の 2つ

 1. 建物の省エネルギー性を高める
 2. 燃料単価の安いエネルギーを使う

当初の設計案では、建物の省エネルギー性が弱かったので、もう少し断熱性を上げる必要があります。

燃料単価の安いエネルギー源としては、ヒートポンプを使った方法があります。(参考:熱源の単価

しかし、東京近郊で使われている一般的なエアコンは、外気が氷点下になるような地域では、効率がかなり悪くなってしまいます。そのため、今回の建築場所で、これをメイン暖房とする訳にはいきません。

寒い地域で、ヒートポンプ式の熱源を使うためには、厳寒地対応のヒートポンプを使うか、地中熱のように冬季でも氷点下にならないものを熱源とする方法があると思います。

北海道には、氷点下マイナス 18℃まで対応の外気熱利用のヒートポンプ熱源+深夜電力という、分かる人が見ればかなり魅力的な商品がありますが、本州には出回っていないようです。(参考:北海道のヒートポンプ暖房スティーベル。西方設計さん

この商品が広く普及すると、深夜電力利用の蓄熱式暖房機の魅力はさっぱり無くなってしまうかも知れません。ランニング費用が蓄熱式暖房機の3分の1から4分の1になりますから。

他の熱源の場合には年額100万以上の暖房費がかかる可能性があるのであれば、この商品の初期投資額にもよりますが、すぐに回収出来る可能性があります。

本州で手に入る同様の商品としては、ダイキンのホッとエコフロアや、三菱電気のエコヌクールでしょうか。
これなら氷点下20℃~25℃まで使えますが、深夜電力前提ではありませんので、温水のタンクがありません。6.7kWという能力は、今回の場合やや力不足。建物性能を上げるか、装置を複数台取り付けるか。


地中熱とは、その名の通り地面の中にある熱です。
建築地の凍結深度は、60cmということですので、それより深い地面であれば、冬季にも地面の温度が氷点下になることはないでしょう。ここに、配管を通して地面と熱交換するのです。
海外で採用のケースが多く、Googleで 「geo heat pump」と検索すればイメージがたくさん出てきます。

ちなみに、地中熱を利用するためにはヒートポンプは不可欠です。「地熱があったかい」といっても、せいぜい15℃程度です。
「ベタ基礎+基礎断熱にしただけで、地熱利用であったかい」などといっている業者もいますが、熱量的にそれは無理。
地下数メートル下にある15℃の熱源では、室内が20℃以上になることはありません。

地中熱を利用するためには、穴を数十メートル掘ってその中に配管を通すか、地面を水平に掘って配管を通すかの2種類があります。
地面を掘るとお金がかかるので、敷地条件や工事による掘削を利用して水平に掘りたいのですが、何メートル通せば何度の熱が得られるかなどのデータが手元に無く、検討が付きません。


長野県茅野市に、「桜ハウス玉川」という介護施設があります。
省エネに詳しい方の中では、現在とても有名な建物です。

それはなぜか?
現在、日本で最も断熱性に優れた建物だからです。

壁の断熱材は300mm、屋根は400mmで、建物のQ値は 0.6W/m2k程度だとされています。関東の次世代省エネ基準の、4倍以上の省エネ性。
この高い断熱性により、寒い茅野市においても冷暖房費が激減。
空調の費用は同規模の建物の10分の1程度である約38万円。

建物の断熱性を高めるためにかかった費用は約2700万円。
しかし、暖房設備が不要なため、実質的には 1500万円のコストアップ。

これに対して、年間の冷暖房費が300万円ほど削減出来ているそうですから、たったの5年でコストが回収出来てしまいます。
それ以後は、年間300万円ほど、見えないコストとしてプラスになります。灯油やガスなどのコストが上がれば上がるほど、プラスの金額は多くなります。この建物の建築を実行した方はエライ!

この超省エネ住宅を提案されたのは、設計者ではなく介護施設を運営する会社。
設計側からの提案だとした場合、かなりやり手だと思いました。この業界、省エネに関して頭の固い人が多いですから。

介護会社の専務さんは、建築の出身ではなく、半導体関係の出身。とても柔軟な発想ですね。

桜ハウス玉川については、鵜野さんのブログが詳しいです。興味のある方はぜひ。

  1. 日本のパッシブハウスの嚆矢「桜ハウス玉川」訪問記(上)
  2. パッシブハウスの嚆矢「桜ハウス玉川」訪問記(中)
  3. パッシブハウスの嚆矢「桜ハウス玉川」訪問記 (下)
  4. 「エコタウン信州茅野」を全部木構造でやったら?


桜ハウス玉川の例を見ると、省エネ住宅の王道は、やはり建物そのものの断熱だということがよく分かります。
快適性向上のための設備といっても、建物そのものの性能が良ければ、その設備そのものが要らないのですから。省エネのためにといって、建物性能を上げないまま、太陽光発電を載せてみたり、コストの合わないガスコージェネを入れてみたりというのは、邪道に感じてしまいます。

設計コンペの物件も、さらに断熱性を強化できれば、暖房計画もラクになるのですが、どの性能までを目指すか。
初期費用とランニングコストと回収期間の兼ね合いでしょうね。

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