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温度ではなく、湿度を下げるためのエアコン。顕熱、潜熱、全熱(エンタルピ)

2007年08月19日

幾分か涼しくなったと思いましたが、夜に降った雨で少し蒸し暑くなりました。

暑い季節には、エアコンを使う方が多いでしょう。寝苦しいため、寝ているときもエアコンをつけっぱなしの方もいるでしょう。

 

さて、そのエアコンですが、エアコンには温度を下げる役割と、湿度を下げる役割の2つがあります。これは、空気の中には水蒸気の形で水分があり、それが熱を持っているためです。

単純な、乾燥した空気だけが持っている熱を顕熱(けんねつ)

空気の中にある水蒸気が持っている熱を、潜熱(せんねつ)といいます。

そして、顕熱潜熱の合計が、全熱(ぜんねつ)で、エンタルピとも呼ばれます。

 

さて、エアコンの仕事は、どちらの役割が大きいのでしょうか。

 

今から3日前、8月16日の正午の東京は、気温36.5℃、湿度51%でした。これは、不快指数という指数で示すと87となり9割以上の人が暑さを感じる状態です。
また、この空気1m3に含まれる水分の量(絶対湿度)は、21.8gで、エンタルピは20.4kcal/kg(86.9kJ/kg)という値になります。

この空気を、そのまま部屋や会社の事務所に取り入れたら、暑くて暑くて仕事がはかどりませんので、エアコンで28℃に冷やします。

 

事務所で働く人が不快に感じないよう、不快指数を76以下にすることを目標にし、湿度の設定は50%にします。
このとき、気温28℃・湿度50%の1m3に含まれる水分の量(絶対湿度)は、13.6gで、エンタルピは13.9kcal/kg(58.0kJ/kg)という値になります。

 

顕熱比 前置きが長くなりましたが、8月16日正午の東京の外気を、仕事がしやすい環境にするためにエアコンを動かすと、電気代の内訳(エアコンの仕事の内訳)は右のグラフのようになります。


グラフから分かるように、エアコンの仕事は、熱を下げるよりも除湿の方が割合が大きくなっています。
高温多湿と言われる日本の夏では、空気中の水分を取り除くためのエネルギーが、かなり大きくなります。
エアコンの室外機のホースから出てくる水は、エネルギーの塊と言っても良いでしょう。

 

ちなみに24時間換気は、1時間に0.5回、部屋の空気が変わるように計算します。つまり、1時間で部屋の半分の空気が新鮮な空気と入れ替わる訳です。

 


ここから、エアコンのドレイン水から出てくる水の量がわかります。試算してみましょう。

8畳間の部屋の体積は約32m3。1時間に0.5回ということは、1時間に約16m3の空気が入ってくることになります。

 

先の例で、気温36.5℃、湿度51%の空気1m3には、21.8gの水分が含まれていると書きました。この空気を28℃、50%にするためには、13.6gまで水分を減らす必要があります。
従って、(21.8g - 13.6g) × 16m3≒130gとなり、ドレイン管からは1時間に、約130ccの水が出てくることがわかります。これは、ヤクルト2本分に相当します。24時間では3リットルを超えます。

8畳の部屋でこの量です。
延べ床100m2の家を同様に計算すると、1時間に約1リットル。24時間では24リットル程度になります。かなりの水分量ではないでしょうか。

 

世の中に、「夏涼しい」と謳う建物の工法はいくつもあります。
壁の中を空気が通るとか、床下の冷たい空気だとか、そのような工法です。

 

それらの資料を良く見るとわかると思いますが、言及しているのは「温度」つまり、顕熱だけ。冬の暖房の場合、顕熱だけ考えれば省エネは問題ありません。
しかし、高温多湿といわれる日本の夏では、エネルギーの消費を抑えるためには、これまでの例でも分かるように、湿度潜熱)への対策の方が重要です。
それらの工法に関わっている建築関係者の中には、顕熱潜熱の区別さえ分かっていない人も多い(というか、そちらの方が多い)ので要注意です。

 

では、建物側で湿度のエネルギー(潜熱)をどのように削減できるのか?
これが難しい。

 

日射を遮るための庇やすだれ、太陽の熱を反射させるLow-Eガラスなど、建物そのもので対処できるものは、顕熱のみ。
湿度を取り除くためには、エアコンのような機械設備を使わないと困難です。

 

除湿のため、地面に穴を掘り、そこに外気を送り込んで地熱で冷却するクールチューブという方法もありますが、結露水が底に溜まってカビが生じる問題や、人口が多い地域ではその穴を掘る敷地の問題から現実的に難しいといえます。

 

イギリスの建築批評家、レイナー・バンハムは、1965年に書いた、「環境としての建築―建築デザインと環境技術」という本の中で湿度について以下のように書いています。


 環境管理に包含される全ての要因のうちで、湿度はほとんど建築の歴史にとって最も有害で、微妙で、制御しようにもとらえどころのないものであった。


このように、エアコンが出来る前までは、湿度をコントロールすることがいかに難しかったのかが分かります。

 

エアコンや全熱交換機などの設備ではなく、建物そのもので除湿にかかるエネルギーを減らす方法として、余分な水蒸気を入ってこなくするために、気密性能を上げるという方法があります。
(厳密には、気密性能ではなく防湿性能ですが、防湿性能を測る方法はありませんので、気密性能で代用します。)

 

省エネ住宅を本当に作っている人が、気密性能試験を行い、建物の気密性能を高めるのは、防湿性能を上げて、冷房にかかる費用を下げるためでもあるのです。

 

逆に言うと、「気密性能は高くなくても、すき間風があった方がいいんですよ~」などといっている建築関係者は、
「エアコン入れても、すき間からたくさんの湿気を持った空気が入ってきてしまうけど、ごめんなさいね~」と言っているのと同じです。

 

普段、意識することのない「空気」ですが、その特性というものはなかなか奥深いものです。


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