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筋違い、筋交い、筋かい。どれが正しい?筋かいの歴史を考える

2007年05月08日

「すじかい」は、3種類の表記がされることがあります。それは、

筋違い

筋交い

筋かい

です。

筋かいは、古くは法隆寺東院絵殿舎利殿(1219年)に見られますが、主流な工法とはなりませんでした。また、現在の建物で使われているような使用法ではなく、工法的な繋がりもありません。*1

現代の筋かいの使い方は、明治以後に紹介されました。
紹介されたといっても、当時の日本の木造住宅に筋かいが無いことを指摘したのは、日本人ではなく実は外国人でした。

スコットランド生まれの灯台建設技師プラントンは1874年頃、日本の木造住宅において、「壁には柱と柱を結ぶ一本の斜材も入っていない」と指摘しています。

フランス生まれの建築技師レスカスも、1877年に同じように日本の木造住宅の耐震性の低さについて、「壁に筋かいがない」と指摘しています。


また、イギリス出身の外人教師ジョサイヤ・コンドルも1892年の講演の中で、当時の日本の建物が地震に弱かった理由として、「筋かいが皆無である」ということを指摘しています。*2

筋かいが明治時代に紹介された後も、都市部の3階建て以外では、筋かいが実際に採用されることは少なかったそうです。
その後、昭和25年(1950年)の建築基準法に盛り込まれた壁量規定で筋かいが明文化され、幾度かの改正が加わりながら、現在に続いています。

つまり、現在のような筋かいの使い方の歴史というのは、まだ60年にも満たない程度のものなのです。今、年金をもらっている人たちが生まれた頃、住まいに筋かいはほとんど使われていなかったということです。(それが「良い」という気は全くありません。)

60年に満たないものを「伝統」や「在来」というには新しすぎる気がします。
ときどき、筋かいがあたかも大昔から使われているかのように言われることがありますが、実際にはそんなことは無かったのです。

話がずれました。
筋違い筋交いの使い分けですが、どちらが正しいのでしょうか。
1925年前後の文献では、筋違いと書いてあるものが多く、筋交いはあまり見ません。

建物を作る時、一連の柱や壁を、「通り」と言います。図面ではそれぞれの通りを、X1、X2、X3などとかいたり、いろはにほへとで書いたりします。
「通り」と同じ意味で一般的な言葉に「筋」というものがあります。
例えば、大阪の道路には、御堂筋や、堺筋、谷町筋という通りの名がついています。(御堂筋通りのように、筋と通りを併記する場合もありますが。)ちなみに大阪では、「通り」は東西方向、「筋」は南北方向です。

「通り」=「筋」とすると、筋かいは「筋違い」の方が適切だと私は思います。木造建築の骨組みは、縦と横の通り(筋)の構成が基本であり、そこに斜めが入ると、「筋(通り)が違う」と感じてしまうためです。

縦と横だけの通りの構成でも、必ず交点は出てきます。つまり、筋の交わる点=筋交いです。このように、筋かいの漢字を「筋交い」とすると、斜めの部材の見た目を的確に表せません。

学生のとき、「筋違い筋交い、どちらが正しいのでしょう?」と先輩に聞いたら、

「そんなん、選挙の時の政治家みたいに、平仮名にしたらええやん。基準法もそう書いてあるやろ」

と言われました。確かに基準法には「筋かい」と書かれています。

それ以後、私は「筋かい」で通しています。木質構造の大先生、故 杉山英男先生の書籍でも、「筋かい」で統一してありますので、問題ないでしょう。
無難な逃げとも言えるかもしれませんが。

 *1 日本の木造住宅の100年 p64、日本木造住宅産業協会
 *2 地震と木造住宅、杉山英男、p153-155、丸善


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