アメリカの省エネ基準 その1
今回からは、月刊 建築技術 2006年 2月号に掲載された、アメリカの省エネ基準のご紹介です。
●暖かい地域から、寒い地域まで、気候の範囲の広いアメリカ
国土の広いアメリカでは、日本より暖かい地域から、寒い地域まで非常に広範囲です。
アラスカでは、平均気温がマイナス20℃以下ですので、大変寒いといえます。
逆にホノルルは平均気温が18℃を下回る月がなく、温暖です。
ワシントンと宇都宮を比べると、冬は宇都宮の方が若干寒く、逆に夏はワシントンの方が暑くなります。
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今回からは、月刊 建築技術 2006年 2月号に掲載された、アメリカの省エネ基準のご紹介です。
●暖かい地域から、寒い地域まで、気候の範囲の広いアメリカ
国土の広いアメリカでは、日本より暖かい地域から、寒い地域まで非常に広範囲です。
アラスカでは、平均気温がマイナス20℃以下ですので、大変寒いといえます。
逆にホノルルは平均気温が18℃を下回る月がなく、温暖です。
ワシントンと宇都宮を比べると、冬は宇都宮の方が若干寒く、逆に夏はワシントンの方が暑くなります。
菊地さんと、朝から品質チェックの内覧会立会いへ。
内覧会立会いといっても、ご依頼者がみえるのは、午後3時頃から。
しかし、その時間からの確認では、終盤に暗くなってしまうために事前にチェックです。
指摘事項に大きなものは無し。軽微なものは、現場監督さんにその場で直して頂きました。
近くにあるラーメン屋で昼食をとった後、車で南下。
大泉までは良かったものの、環八で渋滞。
次の品質チェックの現場に着くのが予定より遅くなってしまいました。
この現場は、先月に構造チェックを行ったところ。
まだ全て直っていないとは思いますが、確認できるところだけでも済ませます。
筋かいの金物の修正、OK!外周部の釘の打ち増しも確認。
しかし、大工さんから大きな問題を教えて頂きました。
現場に入っていた図面や、私がもらっている図面と、役所に提出している図面に相違があり、筋かいがこれから数本追加となるというのです。
ありゃりゃ。しかし、このような事は、過去にも他の現場で何度かありました。次回確認するとします。
現場の大工さんは、56歳。
3人の子供が居て、長男は春から高校1年生。
真ん中が小学生、そして末っ子は6歳だということ。
つまり末っ子は、50歳の時の子供という訳です。
「子供の運動会で走るのが辛くてね。
子供じゃなくて孫みたいなもんだよ」
そう言っていた大工さんは、何だかとても嬉しそう。
今でも子供3人と一緒にお風呂に入っているのだとか。
かなり賑やかそうな入浴です。
「お風呂の湯がほんの少しだけで済んじゃうよ!」
と笑っていました。確かにそうでしょう。
大工さんの悩みの種は、今住んでいる家の増築。
子供部屋をどのように確保しようか、悩んでいるそうです。
これまで多くの大工さんに聞きましたが、自分の家を自分で作っているのは少数派。
大抵は、「いつまで経っても終わらないから」などという理由で、知り合いの大工さんに作ってもらっているようです。
仕事が大工さんなのですから、自分で作れそうなものですが、何だか不思議な感じがします。
●州で変わるアメリカの省エネ基準。多くは強制法。
アメリカでは、州によって省エネ基準が違います。
最も使われているのは、米国エネルギー省が主導となった国際省エネルギー基準(通称IECC)。
最新版は IECC 2003で、17の州がこの基準を採用しています。
ちなみに、これらの州は全て強制法なので、「必ず守らなくてはならない」省エネ基準となります。
省エネ基準を州で強制的に適用しているのは、約80%。
その他の州でも、建築規制が行なわれているので、何も規制していない州はありません。
日本で、最も新しい(といっても、既に7年前の基準ですが)省エネ基準である、次世代省エネ基準を満たすかどうかは、建築主の判断とされており、強制ではありません。
また、建築確認のときにも、断熱性や快適性については見ていません。
そのため、断熱材が一切入っていないとしても、法的には何の問題も無いのです。
ちなみに、先進国において建物の省エネ(断熱)の義務が無いのは日本だけです。日本はこの分野ではとても遅れています。
以下、アメリカの省エネ基準は、採用している州の数が最も多く、省エネ基準としても新しい IECC2003を元にしてお伝えします。
前回構造のチェックを行った、品質チェックの現場に、再び。
今回は、施工業者さんの構造担当者が立ち会って下さいました。
現場に入って、さっそくチェックを。
筋かいの追加はOK。スキップフロアの物件のため、1棟の建物でも、構造面では2棟で検討しています。その境部分の検討もOK
この物件は専用の金物を使った在来工法ですが、構造担当者はツーバイフォー工法(枠組壁工法)の技術委員の方であることから、構造には大変詳しく、質問に対する答えが明確で助かります。
今回の重要確認事項は、梁を貫通する排水管。
構造計算が行われている物件であるため、該当箇所の部材の計算書と照らし合わせながら確認します。
「ここのせん断力は、○キロニュートンで、この部材の貫通部分の断面積は、△△cm2あり、部材の耐力が上回っていますので、大丈夫です。」などという、分かりやすい解説付きです。
貫通部の位置は指定通り。梁の強度も十分で問題ありませんでした。
この物件には、表しとなるたすき掛けの筋かいがあります。
強度をあえて低く見積もってあるものの、構造的に必要な筋かいです。
その納め方について構造担当者と少し考え、大工さんにも意見を求めてみました。
すると、
「バーミヤンみたいに緑色に塗ったらいいよ!」
と、面白半分な答え。
しかし、面白い大工さん、これで止まりません。
「バ~ミヤン♪ バ~ミヤンったら、バ~ミヤン♪♪」
と、自作の歌がチェックの間続きました。
こちらの大工さん、いつもなかなか面白い。
前回は、
「この間の物件でさ、図面に「ジャパニーズルーム」ってあったんだよ。何だと思う?
そしたら、和室だよ、和室!
なんだよそれ!素直に和室って書けばいいのにさ。
ジャパニーズルームじゃ、俺たち何作ればいいのかわかんねぇよ!」
とか、
「そういや、この間の物件はあれだったな。オール家電(かでん)。」
それは、オール電化でしょ!
こうして、チェックは楽しみながらも、無事に済んだのでした。
チェック後の夜、構造担当者から頂いたメール。
PS
構造屋さんにしろお役所さんにしろ大体杓子定規
な方が多いのですが、本日は久々、真剣に意味
あるご相談のできる方にお会いできたとうれしく存
じております。
今後ともよろしくお願い申し上げます
こちらこそ、いろいろ納得の上で確認できましたし、大変助かりました。
今後ともよろしくお願い致します。
●給湯、暖冷房、照明の効率に基準がある
日本の省エネ基準では、建物そのものの省エネ基準はありますが、建物の中にある、設備の効率までは基準がありません。
これに対して、アメリカでは、給湯や暖冷房などにも効率に基準があります。
フランスとドイツでも、ボイラーの効率や、給湯配管の断熱基準があります。
イギリスでも、ボイラーの効率の基準がありました。
ドイツ、イギリス、フランス、アメリカでは、住宅における設備も含めたエネルギー消費をとらえているという意味から、日本よりも一歩進んでいるといえますね。
逆にいうと、それらの効率などに基準がない日本の次世代省エネ基準は、他の先進国よりも遅れているともいえます。
●東京と同じ寒さの地域でも、天井の断熱材は235mm必要
アメリカの省エネ基準は、比較的短期間で改定されており、 アメリカ以外の国と比べて低い基準であった部分も徐々に強化されていったようです。
東京で次世代省エネをクリアするためには、天井の断熱材の厚みはグラスウールで160mm必要です。
アメリカでこの程度の厚みを必要としていたのは、今から約30年ほど前の基準。
アメリカの現在の省エネ基準では、235mm必要です。
かなり厳しいですね。
ちなみに、現在の日本では、天井のグラスウールを100mm厚としている建物が多いのではないでしょうか。
しかも、最も性能の低い、10kのグラスウールが大半です。こんなに軽くて(密度が低くて)性能が悪いグラスウールは、アメリカやヨーロッパでは使っていません。もっと高密度のものを使うのが普通です。
日本は、建物の省エネでは、京都議定書を批准していないアメリカのことを、強く言えないのかも知れません。
●断熱基準は天井、外壁、床で日本の1.4~1.7倍の厳しさ
日本の本州に相当する寒さの地域を、アメリカの省エネ基準と比較すると、求められる断熱性能の差が大きくなっています。
アメリカの省エネ基準と日本の次世代省エネ基準を比べると、同じ種類の断熱材を使った場合、
天井:1.4倍
外壁:1.6倍
床面:1.7倍
の厚みが必要となります。
いずれの部位においても、断熱材の厚みは日本の基準よりもずっと厚くなっています。
●サッシに求められる性能は、日本の2.1倍
日本では、アルミサッシ+ペアガラスでも省エネ基準は通ります。
しかし、アメリカでは日本の2.1倍の省エネ基準となっていますので、アルミサッシ+ペアガラスでは基準は通りません。
つまり、普通では使えないサッシになります。
日本では、「居室のみペアガラス」として、トイレや廊下はアルミサッシ+単板ガラスとなっているケースが少なくありませんが、これではアメリカの基準に遠く及びません。
アルミサッシ+ペアガラスの2倍以上の性能となると、木製サッシか、樹脂サッシのLow-Eペアガラスの中でも、性能の高いものを選択する必要があります。
未だに単板ガラス(シングルガラス)が新築の建物で使われている日本とは大きな違いです。
●建物の検査時に、断熱材の性能確認も
日本では、断熱は義務化されておらず、確認申請でも断熱材を含む快適性は見ていません。
しかし、省エネ基準が強制であるアメリカでは、検査のときのために、以下のような項目があるようです。
上記のように、検査の時を考えてかなり細かく規定されており、曖昧な部分が無いことが分かります。
そういえば、海外の断熱材には、パッケージだけでなく、断熱材にもその性能値(熱抵抗値:R値)が書かれていることがあります。 断熱材を見ただけで性能が分かるので、施工の確認にはとてもいいですね。
日本の商品の場合、例えばグラスウールやロックウールでは、表面の印刷が同一であるため、表からは断熱性能は分かりません。とても不便です。
「アメリカの家」と聞くと、エネルギーをたくさん使っていそうだと思われる方が多いのではないかと思います。
しかし実際には、建物の省エネ基準は、日本はアメリカにかなり差をつけられていることが、これまでの記事でお分かりいただけたのではないでしょうか。
これまで、各国の省エネ基準を取り上げてきました。
これらをグラフにすると、以下のようになります。
| 熱損失係数による各国の断熱基準値の比較 |
|---|
|
| 建築技術 2006年 8月号 「世界の省エネルギー基準の概況」を元に作成 |
1999年時点におけるグラフは、過去のエントリーをご覧ください。
当時、他の先進国と肩を並べたとされていた日本の次世代省エネ基準ですが、今日では他の先進国よりも甘いものとなってしまいました。
欧米並みの水準といえるのは、北海道地域の基準だけ。
他の地域は、欧米の基準を上回っています。
これまで述べたように、他の国では断熱は「義務」
日本だけが任意で、無断熱の建物も建てられてしまいます。
エアコンや車、冷蔵庫やテレビなどで高い省エネ性能を誇る日本でも、建築の分野だけはかなり遅れているのが実情なのです。
これまでのブログで、海外の省エネ基準を取り上げました。
日本の最も新しい省エネ基準でも、海外と比べるとまだまだ甘いということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
その中、北海道から始まった、省エネ住宅を作る運動があります。
その名は、「Q=1.0(キューワン)プロジェクト」
Q=1.0(キューワン)プロジェクト
http://www.shinjukyo-h.jp/qone/
Q=1.0(キューワン)プロジェクトとは、住宅性能評価の断熱性能最高ランク ~ 次世代省エネ基準値 Q=1.6(北海道の基準)をはるかに上回るQ=1.0を目標値として設定した「超省エネ高性能住宅」に、可能な限り近い家を造ろうというプロジェクトです。
ちなみに、日本の過半数の人口が住んでいる、省エネ地域区分4地域は、Q値=2.7が基準ですので、それよりも6割以上の省エネ住宅ということになります。
Q=1.0の性能であれば、海外の省エネ基準でも楽々とクリア。十分な性能です。
このような高い性能を得るためには、高い設計力と理論的な裏づけ、施工技術が必要です。
簡単に言えば、その道のプロでないと実現は無理です。
そのため設計・施工技術の問題から、まだまだ着工された件数は少ないものの、北海道だけでなく、静岡や東京でも作られています。
ちなみに、Q=1.0の性能を得るためには、壁の中に断熱材を入れるだけでは足りず、大抵は外側にも断熱材を取り付けます。
一戸建ての建物で高い省エネ性を得る場合、最終的に行き着くところは充填断熱+外張り付加断熱です。
充填か?外張りか?などと言ってるのは、高いレベルで見るとナンセンスな論戦なのです。
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