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壁倍率とは?(一般的には5.0倍まで。詳細計算であれば、6倍、7倍もOK)

2006年07月03日

壁倍率とは?
壁倍率(かべ倍率)は、「ある壁の強さを基準として、その基準の何倍の強さがあるか」 で示されます。

厚み 1.5cm、幅 9.0cmの筋交い(筋かい)を入れた壁が、壁倍率 1.0倍となり、基準の強さとなります。
在来工法(軸組工法)の場合、石こうボードを規定のビスの種類・間隔で留めた壁も、壁倍率が1.0になります。

構造用合板を張った壁は、この厚み 1.5cm、幅 9.0cmの筋かいを入れた壁より 2.5倍強いので、壁倍率は 2.5倍となります。

壁倍率は足し算することができますが、最大値で 5.0倍までとなっています。

ただし、詳細な構造計算を行なう場合には、壁倍率の制限は無くなり、6倍でも7倍でも大丈夫です*1。具体的には、7.14倍以下まで可能です。

ただし、この計算方法はほとんど使われていません。設計能力によっては危険側の設計になる可能性もあるため、木造に詳しい設計者以外には、この設計法を依頼しないのが無難です。


*1
(財)日本住木・木材技術センター
木造軸組工法住宅の許容応力度設計
P43、鉛直構面の許容耐力と剛性の算定(詳細計算法による場合)

実際の壁量の計算(壁量計算は、構造計算とは呼ばない)

2006年07月07日

壁量で、5mの耐力壁が必要だとします。

この場合、壁倍率が 1.0倍の壁を5m入れればOKです。
また、壁倍率が 2.5倍の壁を、2m入れてもOKです。
壁倍率 5.0倍の壁を、1m入れてもOKです。

壁量の規定は、「現場で職人さんが計算できるように」という考えが根本にありますので、計算は簡単です。
計算が簡単なため、壁量の計算は、「構造計算」とは言わないのが普通です。一般的に、構造計算とは、もっと複雑な計算のこと(許容応力度計算以上)を指します。

ちなみに、壁を強くすれば強くするほど、部材にかかる力が大きくなるので、必然的に金物の量も増えていきます。
壁の強度ばかりに気を取られると、金物が大きくなるので注意しましょう。

在来工法もツーバイフォーも、本質部分は同じ。

2006年07月10日

日本の木質構造研究の第一人者である、故 杉山英男先生(元 東京大学名誉教授)が書かれた「地震と木造住宅」の中で、欠陥を防ぎ、耐震性能を上げる方法として、

片筋かいはやめてタスキ筋かいだけにするか、いっそのこと筋かいをやめボード張り壁を考えなくてはならないのではあるまいか。(P316)

と書かれています。
確かに、現場を知る立場からすると、筋かいを取り付ける時のバラツキや方向が気になる時があります。

そのコラムの結論では、今後の方向性として

 「大壁造では下地板と筋かいに頼らない構法を大幅に採用すること」

 とも書かれています。

話すと長くなるのですが、アメリカでツーバイフォー工法(現地では、プラットフォーム工法と言う)が出来る前には、筋交いが使われたり、通し柱があったりしました。
しかし、研究の結果、筋かいが無くなり、通し柱も無くなりました。これらは、メリットよりもデメリットの方が大きいからです。

ちなみに、
  1. (社寺建築のような)伝統工法
  2. 軸組工法(いわゆる在来工法)
  3. ツーバイフォー工法(枠組壁工法)
の3つをグループ分けにすると、どれとどれが同じグループになるでしょうか?

続きは次回。

在来工法もツーバイフォーも、本質部分は同じ。伝統工法だけが別物。在来の通し柱は不要

2006年07月14日

前回は、
  1. (社寺建築のような)伝統工法
  2. 軸組工法(いわゆる在来工法)
  3. ツーバイフォー工法(枠組壁工法)
の3つをグループ分けにすると、どれとどれが同じグループになるでしょうか?

という部分で終わりました。

一般の方は、1と2が同じグループで、3だけが別物だと思われるでしょう。

しかし構造的に見ると、1の(社寺建築のような)伝統工法だけが単独で、

  2. 軸組工法(いわゆる在来工法)
  3. ツーバイフォー工法(枠組壁工法)
は、「耐力壁構造」で同じグループになるのです。

もう少し付け加えると、大手ハウスメーカーが独自規格としている、木質パネル工法も同じグループです。

実際、耐力壁線に関する制限について、これらの構造の制限は同じです。

また、軸組工法(在来工法)とツーバイフォー工法は、同じ耐力壁の計算方法で耐震性を把握できます。
耐震診断の方法でも、軸組工法(在来工法)とツーバイフォー工法の計算方法は同じです。

壁の強さで耐震性を得ているため、基本的な耐震性は壁の量で決まります。
柱の太さはほとんど関係ありません。
壁量計算の計算にも全く関係ありません。
つまり、柱が全て4寸であったとしても、耐震性に大きな影響は与えないのです。

例えば、柱を24cm角の幅にしたとしても、その強度は構造用合板1枚以下*です。
(*建築知識2006年2月号 P.123)

「うちは、柱がオール4寸だから地震に強い」というのは、ある意味、構造を知らない業者さんが言うトークです。
柱を太くするよりも、壁を強くした方が、ずっと安くて効率的です。

最近は、軸組工法(在来工法)でも建物の外側に構造用合板を張ることが増えました。

軸組工法(在来工法)最大手のハウスメーカーでは、現在、標準で通し柱を設けていません。これらは構法の進化だと思います。

通し柱
軸組構法最大手のハウスメーカーの施工において、1階の建て方が終わり、2階部分を見た様子。
在来工法であるが、通し柱は1本も無く、フラットな床組みになっている。

通し柱があると可変性の妨げになり、軸組の組み方や仕口の加工方法によっては部材の断面欠損が大きな問題になるからです。
木造より強度が高い鉄やコンクリートを使った鉄筋コンクリート造や鉄骨造にも通し柱はありませんね。それぞれ、柱は床の部分で途切れており、そこに上の柱を接続する形です。

この後の進化としては、部材規格のさらなる共通化と、施工の簡易化だと思いますが、結局行き着くところは、ツーバイフォーのような規格なのでは?と思っています。
耐震性能が高く、省エネ住宅にするのも簡単ですしね。

私の目には、軸組工法も、ツーバイも、木質パネル工法も、中身は同じに見えています。

壁量計算。壁の量は、床面積と、外壁面積で決まる。

2006年07月17日

建築基準法では、建物に必要な壁の量を、床面積と外壁の面積の2つで決めるようになっています。(建築基準法施行令 第46条・構造耐力上必要な軸組等)

この計算を、「壁量計算(へきりょうけいさん、かべりょうけいさん)」といいます。

壁量計算はカンタンな計算なので、木造の3階建てや鉄筋コンクリート造、鉄骨造で行なわれる「構造計算(許容応力度計算)」とは区別されています。
(構造計算の方が詳細で計算も難しい)
壁量計算は小学生でもできるような計算です。

壁量計算に基づいて、建物に入れなくてはいけない壁の量を、「必要壁量」といいます。
この壁とは、普通の壁ではなく、筋交い(筋かい)や構造用合板を張った、強い壁のことです。

例えば、ある物件で、必要壁量が10m必要だとします。
つまり、筋交い(筋かい)や構造用合板を張った、強い壁の長さの合計が10m必要であるということです。

設計者は、筋交い(筋かい)や構造用合板を図面上に配置して、耐震性能を得ます。
例えば、壁の強さの基準が1.0という壁を1mずつ、10箇所に配置しても良いでしょう。

壁の強さの基準が2という壁を、5m 配置してもかまいません。
(2倍×5m=10m)

ある設計者は、在来工法(軸組工法)において、必要壁量と全く同じ量を、筋交い(筋かい)によって建物の中に入れるように設計しました。
つまり、建築基準法で必要とされている筋交い(筋かい)の量だけを入れたということです。余裕の割合でいうと、1.00です。

この建物を、より詳細な「構造計算(許容応力度計算)」で計算すると、結果がNGになってしまいました。それは、なぜでしょう。

続きは次回以降。

建築基準法ギリギリで建てられた在来工法(軸組工法)が必ずしも安全とはいえないワケ その1

2006年07月21日

建築基準法ギリギリの筋かい・構造用合板の量しか入っていない在来工法(軸組工法)は、必ずしも安全とはいえないケースがあります。

これは、建築基準法の壁量の考え方に起因するものです。

●建築基準法は、総2階を前提としている
建築基準法で定められた壁量は、建物が2階建ての場合、「総2階」を想定しています。

建物に平面上の凸凹が多かったり、1階と2階の面積が大きく異なったりする建物は、地震のとき、建物にかかる力が総2階の場合よりも大きくなる可能性があります。

そのため、総2階を前提とした壁量ギリギリでは、建物の条件によっては絶対的な壁量が不足する場合があるのです。

これを回避するためには、建物の形状によって設計時の壁量を割増するのが理想です。

実は、建築基準法で定められている壁量の規定というのは、あいまいな部分が多くなっています。
建物の形状による壁量の割増も、法律上必要ありません。

また、計算自体も鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)で行なわれているものと比較すると、ずっと簡単なものです。

壁量の計算だけだったら、私は小学生でもできると思います。
そのくらい、計算は簡単です。

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建築基準法ギリギリで建てられた在来工法(軸組工法)が必ずしも安全とはいえないワケ その2

2006年07月24日

●法律で定められている耐力壁以外が、地震の力の3分の1を負担

建物の形状だけでなく、壁量そのものにも注意しなくてはいけません。

Blog2006072401 地震の力を100とすると、法律で定められている筋かいや構造用合板の量は、地震の力の3分の2だけを負担するだけで良いとされていました。(現在の法律では、考え方が少し異なります)
つまり、筋交い(筋かい)や構造用合板は、地震の力の67%だけに耐えてくれれば良いということです。

では、残りの3分の1はどうするのでしょうか?

残りの3分の1は、雑壁が負担するとされています。

雑壁については次回

雑壁とは? 垂れ壁(垂壁)、腰壁

2006年07月28日

●雑壁とは?
今、あなたがいるお部屋にドアがあったら、その上を見てください。

ドアの上は大抵が壁になっているはずです。この壁を垂れ壁といいます。

また、窓がある場合、窓の下にも壁があると思います。
これを、腰壁(こしかべ)といいます。
(掃き出しの窓には、ありませんが・・・。)

これらの壁をまとめて、雑壁といいます。

●雑壁の扱い
鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)の場合、これらの雑壁は、構造計算では無視します。

構造計算上、無視するどころか、場合によってはこの雑壁があることによって地震時の被害が大きくなる可能性もあります。

そのため、木造以外では、「構造スリット」という溝を作って、柱と雑壁の縁を切ってしまうことも珍しくありません。

しかし在来工法(軸組構法)では、これらの雑壁も、地震に耐える壁として考慮しているのです。

これまでの研究や実験では、雑壁が地震の力の3分の1を負担するという考え方は、ほぼ妥当であるとされています。
一般的な間取りの場合、建築基準法で想定している雑壁の量を満たしているためです。

枠組壁工法(ツーバイフォー工法)のように、外側に構造用合板を張った場合、この雑壁の効果は3分の1よりもずっと大きいと言われており、建築基準法で想定している雑壁の量を上回るのが普通です。

雑壁の少ない建物は要注意

2006年07月31日

デザイナーズ住宅と言われる建物では、室内のドアに天井までの高さがあるような背の高いドアを多用したり、サッシの高さが非常に高いものが使われているケースがあり、間取りも開放的で間仕切り壁が少ないことがあります。

また、昔ながらの和風住宅では、和室の開口の上部に欄間(らんま)が設けられているケースもありますね。
欄間が入っているところは、すき間が大きいので、雑壁の効果は見込めないでしょう。

これらのケースでは、場合によっては雑壁の量が不足してしまう可能性もあります。
このような場合では、筋かいや構造用合板など、耐力壁の量を多めにしておくのが理想です。

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