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建築士でも知らない人が多い、「耐力壁線」

2006年10月02日

耐力壁線という考え方は、ツーバイフォー工法では常識です。
なぜなら、ツーバイフォー工法では、その工法の仕様そのものにその考え方が入っているからです。

しかし、軸組構法(在来工法)だけを設計している建築士の中には、耐力壁線という考え方そのものを知らない人が少なくありません。
耐力壁線という言葉自体も聞いたことが無い人もいるでしょう。
これは、軸組構法(在来工法)の仕様には、近年までそのような考え方が無かったからです。

また、建築基準法においても軸組構法(在来工法)では、耐力壁線の考え方は取り入れられていません。
つまり、耐力壁線のことを考えなくても、確認申請は通ります。

軸組構法(在来工法)で耐力壁線を考えるのは、

 ・軸組構法(在来工法)に「詳しい人」が設計する場合
  (ツーバイフォーも手がける設計者のことが多い)

 ・住宅性能表示制度の、耐震等級2、3を得る場合

がほとんどと言って良いでしょう。

ここで言う軸組構法(在来工法)に「詳しい人」というのは、
昔から軸組構法(在来工法)を作っている人という意味ではなく、
最新の木構造の研究結果・技術などを勉強している人という意味です。

現在、物件を検討されている方は、耐力壁線について知っているか、業者さんに聞いてみるといいですね。
業者さんの、耐震性に関する知識がわかるでしょう。

それでは、耐力壁線を、どのように設計に取り入れていけば良いのでしょうか。

続きは次回のブログで。

軸組構法(在来工法)では、8m以内ごとに耐力壁線を入れる。

2006年10月06日

耐力壁に、筋かいを使った軸組構法(在来工法)では、8m以内ごとに耐力壁線を入れる必要があります。

これは、耐力壁の量が法律を満たしていても、それが離れすぎていては、建物がグラグラしてしまうために決められています。

下の間取りはサンプルのものですが、新築でもこのような間取り・設計になっている建物は存在します。
建物の周りに筋かいを配置してあり、建築基準法上の壁量計算では、これで問題なく確認申請も通ります。

外周部だけで耐力を確保している例

タテ・ヨコに入っている青い点線は、91cm(0.91m)ごとに書かれています。横方向には、10マスありますので、0.91m × 10マス = 9.1mありますね。

9.1mということは、耐力壁線 相互の距離が8mを超えています。このような設計は、軸組構法(在来工法)の設計で日常的に行なわれているのが実情です。
上の平面図を立体的に書くと、下のようになります。

立体図

耐力壁線 相互の距離が8mを越えていると、住宅性能評価の耐震等級 2 or 3は通りません。
これをクリアするためには、耐力壁線の距離が8m以下となるよう、室内のどこかに耐力壁線を配置する必要があります。
今回の間取りでは、赤い点滅部分に耐力壁線を入れるのが一般的でしょう。
室内に耐力壁線を配置し、耐震性を増した設計に変更したのが、下に示す平面図です。
洋室の間仕切り部分と、洋室と階段の境部分に筋かいを配置しました。

室内に耐力壁線を配置し、耐震性を増した設計に変更

Blog2006100604

この設計変更で、耐力壁線同士の距離が8m以下になりました。
これで、住宅性能評価の耐震等級 2 or 3をクリアするためのハードルを1つクリアしました。

私は、普段の業務において多くの図面を見ていますが、このルールが守られていないことが少なくありません。

耐力壁線の距離は、住宅性能評価で建物の耐震性を評価する時に、必ずチェックしなくてはいけない項目です。

また、フラット35の
 「優良住宅取得支援制度の対象となる住宅の技術基準」の中にも、
 耐力壁線の距離に関する規定があります。

つまり、それほど重要であるということです。
家を設計する時、耐震性が高い建物が欲しいときには、「必ず」意識しましょう。

ちなみに、ログハウス(丸太組構法)の場合には、耐力壁線の距離は、6m以内にする必要があります。
(丸太組構法の技術基準告示 第4の5)

つまり、ログハウスでは細かい間隔で壁を入れる必要があり、軸組構法(在来工法)より厳しい条件ということですね。

ツーバイフォー工法(枠組壁工法)では、12m以内ごとに耐力壁線を入れる

2006年10月09日

ツーバイフォー工法(枠組壁工法)でも、同様の基準があり、12m以内ごとに耐力壁線を入れる必要があります。

軸組構法(在来工法)と異なり、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)では、工法の仕様にこの基準が入っていますので、どんな場合でも守らなくてはいけません。

ただし、12mというのは結構長い距離です。
都内の一戸建ての場合、12mの外壁距離がある物件というのはかなり少ないですね。大体の一戸建ては、10m以内に納まるでしょうから制限らしい制限といえません。

軸組構法(在来工法)の8mの基準であれば、都内の一戸建てでも、該当するものがたくさんあるでしょう。

勉強されている方、カンのいい方は、これまでの説明で、あれっ?と思うことがあるかも知れません。
さて、それは何でしょうか?

軸組構法(在来工法)の方がツーバイより開放的に出来るというウソ

2006年10月13日

あれっ?と思った方は、インターネットのホームページや、住まい選びの書籍で、

「軸組構法(在来工法)は、ツーバイよりも開放的な間取りが出来る」

といった文章を見た方でしょう。

 8mごとに壁を入れる必要がある軸組構法(在来工法)と、
12mごとに壁を入れる必要があるツーバイフォー工法

では、どう考えても、間取りを開放的に出来るのはツーバイフォー工法(枠組壁工法)です。
壁を入れなくてもいい距離が、1.5倍も違うのですから。

耐力壁線のことを知っていれば、このようなことは言えないはずなのです。

この耐力壁線相互の距離のルールを知らずに、「軸組構法(在来工法)は、ツーバイよりも開放的な間取りが出来る」と言っている人は、耐力壁の配置ルールについて、建築基準法止まりの知識しかない人でしょう。

建築基準法の決まりではなく、より詳細に耐震性を把握できる住宅性能表示制度のルールで建物を設計するということは、安全な建物を作るためには欠かせません。ちなみに、木造の耐震診断の算定方法にも、耐力壁線相互の距離のルールが反映されています。そのくらい重要だということです。

ツーバイフォー工法(枠組壁工法)よりも、細かな間隔で壁を入れなくてはいけないというのは、軸組構法(在来工法)における設計上の大きな制限です。
しかし、ある対策を行なえば、軸組構法(在来工法)でも、耐力壁線 相互の距離を、ツーバイフォーと同様に、12mに緩和することができます。
続きは次回。

筋かいを止め、合板使えば、耐力壁線の距離は12mでもOK

2006年10月16日

軸組構法(在来工法)でも耐力壁線 相互の距離を、ツーバイと同様の12mに緩和する方法。

それは、筋かいを止めて合板など、靱性(じんせい)のある耐力壁を使うことです。

靱性は、「ねばり強さ」のことです。
耐力壁の強度実験を行うと、筋かいは端部で取れたり、筋かいそのものが折れたりして、強度が急激に低下する、「もろい」壊れ方をします。

これに対して、構造用合板などの面材を使った場合、面材そのものが壊れるということは少なく、面材を留めているクギが徐々に壊れていく、ねばり強さのある壊れ方をします。

どのような建築物、構造物であっても、一般的に構造に求められるのは、ねばりのある壊れ方です。
なぜなら、地震などで建物に被害が及んだとき、ねばりのある壊れ方の方が、倒壊や避難するまでの時間を稼げるためです。

筋かいを使わないことで、耐力壁線の距離を緩和できるのは、このような理由があるといえるでしょう。
逆にいえば、筋かいを使う旧来の設計方法では、壁を細かく入れなければならず、間取りが小さくなってしまうということです。

住宅性能表示制度の耐震等級を得ている物件は、筋かいが無いことが多い

2006年10月20日

住宅性能表示制度の耐震等級2と3を得るためには、耐力壁線の検討が欠かせません。

現在、建売物件でも、耐震等級が全棟 最高ランクの3になっているところもあります。

このような物件で、筋かいを使うと、耐力壁線 相互の距離が8mになってしまいます。
8mの場合、間取りに制限が出てしまうことがありますので、これを緩和するために、耐震等級2、3を得る場合には筋かいを使わないことが一般的になってきました。

住宅性能表示制度そのものを使っている物件がまだまだ少ないため、現在では、筋かいを使っている業者さんが多いですが、勉強している設計者・業者さんほど、筋かいを止めて合板のような面材にしていることでしょう。

年間約1万棟を作っている、在来工法最大手のハウスメーカーでも、現在は筋かいを全く使っていませんが、これは木造を勉強・研究していけば当然の進歩だと思います。

筋かいを使わないと耐力を得られないと思っている設計者もいますが、私から言わせると、そう考えているのは、木造に関して全くの勉強不足です。

筋かいを使わなければ、断熱材の工事がラクで、施工のばらつきも小さくなります。
以前、耐震性能を上げるために、建物の外側に合板など、面材を張ることをお薦めしましたが、面材を使うことは、間取りにも影響することなのです。

耐力壁線で囲まれる面積は、40平方メートル以下にする

2006年10月23日

耐力壁線で囲まれる面積は、40平方メートル以下にする必要があります。
40平方メートルというと、約24畳です。

これは、軸組構法(在来工法)でも、ツーバイフォー工法(枠組壁構法)でも同じです。
ちなみに、木質パネル工法でも同じです。

つまり、耐力壁線で囲まれる面積を考えると、この3つは構法的な制限は同じだということです。
言い方を変えると、間取りの制限のルールもほとんど同じだということ。

制限が同じなのに、なぜ軸組構法(在来工法)は開放的な間取りが出来ると言われるのか?

答えは、「設計者がこのルールを知らない」からでしょう。

耐力壁線に囲まれる面積の仕様

2006年10月27日

軸組構法(在来工法)の場合、耐力壁線で囲まれる面積に、法的な強制力はありません
検討を「しなければならない」のは、住宅性能評価の耐震等級2 または 3を取る場合だけです。

しかし、ツーバイフォー工法(枠組壁構法)や木質パネル工法では、耐力壁線に囲まれる面積というのは、工法の仕様の中に組み込まれていますので、必然的に安全な建物になるのです。

これまでの木造の研究により、耐力壁線で囲まれる面積の制限を守った方が耐震性が高くなるというのは、専門家の間では広く知られています。

悪いことは言いません。
軸組構法(在来工法)でも、このルールを守りましょう。
建物の寿命が長くなれば、地震に遭遇する確率も高くなるでしょう。
ここ数年で大きく進歩した、の木造の研究結果を元に、安全な住まいを選ぶべきです。

ツーバイフォー工法では、60平方メートルへの緩和あり

2006年10月30日

前回、軸組構法(在来工法)、ツーバイフォー工法(枠組壁構法)、木質パネル工法では、耐力壁線で囲まれる面積は40平方メートル以内にするというルールがありました。

しかし、ツーバイフォー工法(枠組壁構法)の場合、床を強くすることで、耐力壁線に囲まれる面積を、1.5倍の60平方メートルまで緩和することができるのです。
60平方メートルというと、かなり大きな空間です。
一般的な住宅であれば、間取りに制限らしい制限は出ないでしょう。

軸組構法(在来工法)の場合には、この緩和措置は現在のところありませんので、室内をより開放的な間取りに出来るのは、軸組構法(在来工法)よりもツーバイフォー工法ともいえます。

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