最近、昔読んだある本を読み返しています。
その本とは、
地震と木造住宅 杉山英男著
という本です。
著者の杉山英男先生(元 東京大学名誉教授)は昨年2月に亡くなられました。
日本の木質構造研究の第一人者です。
専門色が強い本ですので、一般の方にはなかなか読みにくいと思いますが、建築の関係者(特に木造関係)にはぜひ読んで欲しいです。
序章を読むだけでも価値があると思います。
この本の中で杉山先生は、欠陥を防ぎ、耐震性能を上げる方法として、
片筋かいはやめてタスキ筋かいだけにするか、いっそのこと筋かいをやめボード張り壁を考えなくてはならないのではあるまいか。(P316)
と書かれています。
確かに、現場を知る立場からすると、筋かいというのは、取り付ける時のバラツキや方向が気になる時があります。
また、2006年 4月10日のエントリー(筋交い(筋かい)の方向が分からない図面を書く設計者は、構造に疎い)に示したように、方向性のある材料であるにも関わらず、取り付けの方向が書かれていないケースというのも、まだまだあります。
その章の結論では、今後の方向性として
「大壁造では下地板と筋かいに頼らない構法を大幅に採用すること」
とも書かれています。
また、別の章では、通し柱を設けることの懸念や、ホゾ差しの仕口の問題点についても触れられています。
話すと長くなるのですが、アメリカでツーバイフォー工法が出来る前の工法では、筋かいが使われたり、通し柱があったりしました。
しかし、研究の結果、筋かいが無くなり、通し柱も無くなりました。
本当に、木質構造が分かっている専門家(大工一筋○○年という人ではなく、在来にも、ツーバイにも、日本の木造の歴史にも詳しく、地震や構造力学に精通している人)であれば、妥当な判断だと思われるのではないでしょうか。
ちなみに、
1.(社寺建築のような)伝統構法
2.在来工法(いわゆる軸組構法)
3.ツーバイフォー工法(枠組壁工法)
の3つをグループ分けにすると、どれとどれが同じグループになるでしょうか?
ほとんどの方は、1と2が同じグループで、3だけが別物だと思われるでしょう。
しかし構造的に見ると、1の(社寺建築のような)伝統構法だけが単独で、
2.在来工法(いわゆる軸組構法)
3.ツーバイフォー工法(枠組壁構法)
は、「耐力壁構造」で同じグループになるのです。
在来工法(軸組構法)とツーバイフォー工法は、同じ耐力壁の計算方法で耐震性を把握できます。耐震診断の方法でも、この2つの計算方法は基本的に同じです。
(社寺建築のような)伝統構法の構造計算は全くの別物で、計算方法も非常に難しくなります。
木造に精通していてこの計算ができる専門家というのは、1都道府県に1人いるかいないかくらいかも知れません。
最近は、在来工法(軸組構法)でも建物の外側に構造用合板を張ることが増えました。
軸組構法最大手のハウスメーカーでは、標準で通し柱を設けていません。
これらは構法の進化だと思います。
通し柱があると可変性の妨げになり、軸組の組み方や仕口の加工方法によっては部材の断面欠損が大きな問題になるからです。
この後の進化としては、部材規格のさらなる共通化と、施工の簡易化だと思いますが、結局行き着くところは、ツーバイフォーのような規格なのでは?と思っています。
ちなみに、ご存知でない方がほとんどだと思いますが、枠組壁工法(ツーバイフォー工法)は、防火地域に建てることができます。
また、4階建ての住宅も建てることができます。
(ただし、いずれも材料や仕様上の制限があります。)
大規模な実験や研究が出来るのは、構法の統一団体がある強みですね。
(在来工法には、研究や実験を専門的に行っている大きな統一団体が無いので・・・。)
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