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怪しい耐震補強。地震の上下動で柱が抜ける?

2005年07月12日

怪しい耐震補強が多い』、と思う。

怪しい耐震補強とは、補強する部材の強度ばかり全面に出して、全体が見えてこないもの。耐震補強というと、多額の費用がかかると思われているが、そんなに多額の費用がかかるとは思えない。

例えば、築10年の物件を耐震補強するとする。
耐震性能を高くするために、まずは目標を定める。
とりあえず、現在の建築基準法を満たすようにすると良いだろう。在来工法(軸組工法)は、2000年の法改正でかなり耐震性が上がっている。ほんの5年前の話だが、築6年の建物でもこの基準を満たせないものは少なくない。

目標が決まったら、目標と現在との差を調べるため、当時の設計図面を元に壁や柱の位置をパソコンに入力していく。(図面がない場合には、実際の建物での調査が必要となる。)

パソコンにデータを入力し終わったら、現在の建築基準法を満たすように、再計算する。今のパソコンなら、計算は一瞬で終わる。
使うソフトによっては、使用する金物の位置や種類を自動的に拾ってくれる。

使用する金物は、ホームセンターでも売ってある、新築用の金物で「全く」かまわない。むしろ、「自社オリジナル」などという金物より、ずっと安くて信頼性がある。

考えてみてほしい。
現在新築で建てられている一戸建ては、ホームセンターで売ってある汎用の金物で、建築基準法を満たす、十分な耐震性が得られているのである。耐震改修のときにも、それを使わない手はない。

リフォームのときは、室内の石こうボードを取り外すことが多いだろう。石こうボードを取り外した状態であれば、市販されているほとんどの金物は取り付けられる。
石こうボードを取り外し、新しく買ってきたとしても、1枚400円ほど。

ちなみに、筋かいを1本追加した時の材料費は、ホームセンターで買った場合、
 ・筋かい金物が1つ200円以下(筋交い1本につき、2個使用)
 ・筋かいの材料が1000円以下。
合計は、2000円でお釣りがくるほどしかかからない。10万円あれば、筋かいを50本以上取り付けられる材料費になる。(普通の大きさの家では、筋かいを50本も使わない)

金物を取り付けるためのビスは、金物に付いてくるから別に買う必要はない。
あとは、ビスを留めるための電動ドライバーと、筋かいを切るためのノコギリさえあれば、一般の人でも取り付けられる。

筋かいを取り付ける代わりに、構造用合板を張ったとしても、1枚2000円以下。留め付けはクギを打つだけ。

しかし、世に出回っている耐震補強では、耐力壁を1箇所取り付けるだけで何十万というのを目にする。
説明では、その耐力壁の強さは○○倍だとか、金物の強さが最大何トンまで耐えられるとか。

中には、「直下型の地震でP波が来ると、縦揺れによって家が飛び上がり、ほぞが抜ける」などとしているものもある。
2004年の新潟県中越地震は、直下型で縦揺れが大きかった。兵庫県南部地震よりも加速度は大きい。
しかし、新潟県中越地震の波形を見たとき、どう説明すれば縦揺れだけで建物が浮かび上がるのだろう。ちょっと地震のことに詳しい人なら、縦揺れだけではそんなことが起きないというのがすぐに分かるだろう。

「縦揺れのために、家が浮き上がったり、ほぞが抜けてしまったと説明している人は、地震や振動学に詳しくない」と思っていい。

建物全体の耐震性能を上げようと思ったら、局所的に壁を強くしても大した意味はない。
車を速くするために、「エンジンを500馬力にしました」といっても、他の部品の性能を上げなければ、効果が出ないのと同じこと。

部分的なところだけ取り上げて、耐震性能が上がるという説明を見ていると、自ら「構造や力学に詳しくない」と言っているようにも感じる。

建物を作るということは、中に住む人々の命をあずかっているということ。
飛行機のパイロットも、電車の運転手も、バスの運転手も、乗客の命をあずかっている。だからこそ、プロでなければならない。

建物、特に構造に関わる部分に関わる人も、命をあずかっている以上、プロでなければならないのである。

耐震補強においても、「プロの仕事」をして欲しい。


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