最近、
「検討中のマンションは、(壁は内断熱で)屋根だけ外断熱なのですが、これってどうなんでしょうか?」
というご質問を何度かいただきましたので、お答えしたいと思います。
現在作られているマンションは、外壁部分は内断熱であっても、屋根は外断熱にしてあるのがほとんどです。
結論を言うと、現在一般的なマンションで、屋根だけが外断熱工法であっても、建物全体としては、あまり意味はありません。
理由は以下の3点です。
1.屋根の断熱材の有無・厚みが関係あるのは最上階の住戸だけ
2.屋根よりも、外壁の面積の方がずっと広い
3.根本的に、断熱材の厚みが薄い
それぞれの理由を、以下に書き出します。
1.屋上の断熱材の有無・厚みが関係あるのは最上階の住戸だけ
マンションの屋上は、仕上げやその色にもよりますが、夏の時期には表面温度が60℃以上になります。80℃近くになることも珍しくありません。
この高い温度から建物を守るために断熱材を施工するのですが、屋根部分の断熱材の効果があるのは、最上階だけです。
最上階より下の住戸においては、屋根の断熱材が1メートルであろうと全く無かろうと、大きな差はありません。
例えば、5階建てのマンションにおいて、1~4階にお住まいの方にとっては、屋根の断熱が何であったとしても、住まいの温熱環境に大きな影響は与えないということです。
2.屋根よりも、外壁の面積の方がずっと広い
普通のマンションでは、屋根の面積よりも、外壁の面積の方が広くなります。これは、階数が増えれば増えるほど顕著になります。
幅20m、奥行き10m、階高3mのマンションがあるとします。それぞれ、階数が増えると外壁面積と屋根面積は以下のようになります。
| 部位 | 平屋建て | 3階建て | 10階建て | 20階建て | 30階建て |
| 屋根の面積 | 200m2 | ||||
| 外壁の総面積 | 180m2 | 540m2 | 1800m2 | 3600m2 | 5400m2 |
| 屋根:外壁 | 1:0.9 | 1:2.7 | 1:9.0 | 1:18 | 1:27 |
非常に簡単な計算ですが、10階建てでも外壁の面積は、屋根の10倍近くになります。
面積が狭い屋根だけ断熱材を厚くしても、面積が広い壁部分が低断熱では、意味がありません。
3.根本的に、断熱材の厚みが薄い
現在のマンションでは、屋根の断熱には35mmの厚みのポリスチレンフォームという断熱材を使うのが一般的です。この厚みだと断熱材の材料費は1平方メートル当たり1,000円程度で、建物全体からしたら、ほんのわずかな費用です。(ちなみに、一般的な床のフローリングは、1m2当たり数千円です。)
しかし、35mm程度の厚みでは断熱性能が足りません。
次世代省エネ基準をクリアするためには、最低でも80mm。理想としては、100mm以上が必要です。
断熱について分かっている設計者であれば、屋根の断熱厚みを35mmにするというのは到底考えにくいのです。
外断熱を採用する本来の目的は、高断熱化、つまり省エネルギーのためなのですから。(つまり、高断熱でなければ外断熱の必要は無いのです)
長くなりましたが、このような理由で、屋根だけ外断熱というのは建物全体としては効果は薄いと言えます。


